【国家総合職】教養区分とは?試験内容・難易度・試験対策
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キャリア官僚を目指す人の登竜門である国家総合職は、「院卒者試験」と「大卒程度試験」の大きく2つに分けられます。
そして、受験に際して専攻分野の違いで有利不利にならないよう、各試験は多くの試験区分に細分化されています。
その中で最も注目を集め、人気も高いのが教養区分です。教養区分は大卒程度試験の1つですが、大学院生の方も受験することができます。
今回は教養区分の全体像について、予備校講師ならではの情報も含めお話しします。
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国家総合職の教養区分とは?

国家総合職教養区分は、専門試験なしで国家総合職を目指せる試験区分です。
試験準備の負担が小さいことに加え、近年、各省庁で教養区分合格者の採用数が増加していることもあり、国家総合職の中で最も人気の高い試験区分です。
教養区分は大卒程度試験の1区分ですが、大学院生の方も受験することができます。
他の試験区分との違い
教養区分と春試験(法律・経済などの専門区分)との違いは、下表の通りになります。
| 教養区分 | 教養以外の大卒試験 (法律・経済等) | |
|---|---|---|
| 実施時期 | 春および秋 (大学2年になる春から受験可) | 春のみ (大学4年になる春から受験可) |
| 1次試験 | 基礎能力試験 総合論文 (1次試験の合否は基礎能力試験のみ) | 基礎能力試験 専門択一試験 |
| 二次試験 | 企画提案試験 政策課題討議試験 人物試験 | 専門記述試験 政策論文 人物試験 |
| その他 | 官庁訪問は夏および12月 (夏の官庁訪問失敗後、同年12月官庁訪問をしても採用可能性はほぼない) 採用候補者名簿の有効期限7年間 | 官庁訪問は夏のみ (技術系は既合格者向けも可) 採用候補者名簿の有効期限5年間 |
現在、国家総合職試験では教養区分の人気が高いですが、その理由は、専門試験が一切課されていない点にあるようです。
しかし、実際には、教養区分の人気の秘密は、負担の軽さ以外にもあります。
教養区分を受験するメリット
教養区分は他の試験区分と比べ、筆記試験の負担が軽いことが人気の一因であると先ほど説明しましたが、教養区分受験のメリットはそれだけではありません(むしろ、2次試験については、教養区分の方がはるかに負担が大きいという意見も多いです)。
第1に、大学2年になる春から受験可能なので、合格するまで何度でもチャレンジできる点が挙げられます(しかも、春・秋の年2回も受験可能)。
第2に、受験機会が多いことに関連して、早期に最終合格することで、4年次の夏の官庁訪問開始までの間は、官民問わず広範な就職活動ができるだけでなく、大学サークル活動にも注力することが可能である点が挙げられます。
人物重視が顕著な国家総合職試験において、これは大きな魅力ですよね。
そして、第3に、近年どの省庁においても教養区分からの採用者数が多数を占めている点が挙げられます。ただし、これには注意が必要です。
春試験の場合、最終合格から官庁訪問までの時間が短いため、十分な面接対策をとることができません。これに対して、教養区分の場合、一般的なケースとして、大学3年次に最終合格することで、4年次夏の官庁訪問まで十分な準備時間が確保されるため、採用数が多いのです。
決して、「教養区分だから優先的に採用される」という意味ではありません。
国家総合職 教養区分の受験資格・スケジュール
国家総合職の教養区分は、19歳(大学2年になる春)から受験できる試験区分です。
試験は春と秋の年2回実施され、秋試験は7月末に出願受付が始まり、10月に第1次試験、12月に最終合格発表という流れで進みます。
受験資格(年齢・学歴)
教養区分の受験資格は次の通りです(2026年度の場合)。
- 1996年4月2日〜2007年4月1日生まれの方(学歴は問わない)
- 2007年4月2日以降に生まれ、大学を卒業(または卒業見込み)の方
わかりやすく言えば、大学2年になる春(2027年からは2月下旬に前倒し実施)から春・秋の年2回受験可能なので、学部在学中、最大6回チャレンジできます。
さらに、採用候補者名簿の有効期限も7年間と長いため、例えば、大学3年の秋に教養区分に最終合格し、その後大学院に進学した場合、博士課程3年次の官庁訪問まで権利が有効となります。
それゆえ、将来についていろいろ悩んでいる人は、先に権利だけとっておくというのもありですね。
試験スケジュール
ここでは、最も一般的なケース(大学3年次の秋受験)で説明します。
| 受付期間 | 7月31日~8月24日 |
| 第1次試験日 | 10月4日 |
| 第1次試験合格発表日 | 10月21日 |
| 第2次試験日 | 11月24日及び25日または、11月26日及び27日のうち、いずれか指定する連続した2日間 |
| 最終合格者発表日 | 12月17日 |
| 官庁訪問 | 翌年6月上旬~下旬 |
出願受付は毎年夏休み期間中に行われるためなのか、教養区分は毎年3分の1もの極めて高い欠席率を記録しています。
皆さん、スケジュール表にしっかり試験日を明記するなどして忘れないようにしましょう。
また、1次試験合格発表日に、2次試験の企画提案試験の参考資料が人事院より公表されます。
それゆえ、合格発表日は番号の確認だけでなく、必ず企画提案試験の参考資料の確認もしましょう。
さらに、表を見れば明らかなように、2次試験は2パターン(2026年度はいずれも平日)ありますが、日程変更は認められていませんので注意してください。
国家総合職 教養区分の試験内容・科目
教養区分の1次試験は基礎能力試験(Ⅰ部・Ⅱ部)と総合論文試験、2次試験は企画提案試験・政策課題討議試験・人物試験で構成されます。
他の総合職試験と異なり、専門試験は一切課されない一方、2次試験の全科目において、現職官僚が試験官である点が特徴的です。
1次試験の内容(基礎能力試験・総合論文試験)
| 試験科目・時間 | 試験内容および備考 |
|---|---|
| 基礎能力試験 Ⅰ部:2時間20分 Ⅱ部:1時間 | ・基礎能力Ⅰ(知能・時事・情報分野)30問 配点2.5/24 文章理解 ⑩、判断・数的推理(資料解釈を含む。)⑭ 自然・人文・社会に関する時事、情報 ⑥ ・基礎能力Ⅱ(知識分野)20問 配点1.5/24 自然・人文・社会⑳ 全て必須解答 |
| 総合論文試験 2.5時間 | 幅広い教養や専門的知識を土台とした総合的な判断力、思考力についての筆記試験 政策の企画立案の基礎となる教養・哲学的な考え方に関するもの 1題 配点6/24 |
1次試験の合否は基礎能力試験の点数のみによって決定され、総合論文試験は最終合格において点数が加算されます。
また、最終合格者決定に際して、英語試験(TOEFL・TOEICなど)による加点制度もあります(最大25点)。
ただし、スコア等を証明する書類の原本を人物試験日に提出することができるものに限られますので、加点希望の方は早めに準備しておきましょう。
2次試験の内容(企画提案・政策課題討議・人物試験)
教養区分の2次試験は、下記の科目から構成されており、全科目、現職官僚が評価者という点が、他の公務員試験と比べ際立った特徴となっています。
| 企画提案試験 配点比率:6/24 | 企画力、建設的な思考力及び説明力などについての試験 ・Ⅰ部:政策概要説明紙(プレゼンテーションシート)作成 課題と資料を与え、解決策を提案させる(90分) ・Ⅱ部:プレゼンテーション及び質疑応答 政策概要説明紙(プレゼンテーションシート)の内容について試験官に説明、その後質疑応答を受ける(約30分) |
| 政策課題討議試験 配点比率:4/24 | 課題に対するグループ討議によるプレゼンテーション能力やコミュニケーション力などについての試験 |
| 人物試験 配点比率:4/24 | 人柄、対人的能力などについての個別面接 |
企画提案試験は、教養区分第1次試験合格発表日に人事院ホームページ上に、参考文献や資料等が提示されます(各省庁の白書の一部であることが多い)。全ての受験者は、事前にそれらを読み、内容を十分理解した上で、試験当日に備えます。
当日は、はじめに政策概要説明紙(プレゼンテーションシート)を作成します。これは、A4両面1枚に、箇条書きや図、表を用いるなど自由な形式で課題に対する政策の内容をまとめるものです。
そして、休憩後、プレゼンテーションシートの内容について試験官(2名)に説明し、その後試験官から質疑応答を受けます(発表時間5分間、質疑応答:概ね20分間)。
政策課題討議は、6人1組のグループを基本に、当日は下記のようなスケジュールで実施され、レジュメ作成も含め試験時間は約2時間です。
「レジュメ作成(20分)→個別発表(1人当たり3分)→グループ討議(45分)→討議を踏まえて考えたことを個別発表(1人当たり2分)」
最後に、人物試験は面接官3名を相手に行う個別面接で、教養区分の場合、政策課題討議試験終了直後に実施されますので、集中力の持続が求められます。
配点比率と合否判定の仕組み
各試験の配点比率については既に説明していますが、実際の各科目の点数はどのように算出されるのでしょうか。
実は、受験者の筆記試験等の得点は、各試験種目の素点(基礎能力試験の場合は正解数、総合論文試験及び企画提案試験の場合は複数の評定者による評定結果の換算点)ではなく、試験種目ごとに平均点、標準偏差を用いて下記の方法で算出した「標準点」としています。
計算式の詳細については、「2026年度国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)(教養区分)合格者の決定方法」を参照してください。
また、政策課題討議試験及び人物試験においては、各受験者についてA~Eの5段階で評価し、この評価結果が正規分布するものとみなして、各段階の標準点を算出しています。
試験問題の難易度、母集団等が異なるため、同じ素点でも標準点は異なることから正確性に欠きますが、1次試験合格のためには、概ね30問(全体の6割)の正答数を目標にするとよいでしょう。
また、各試験には基準点が設けられており、それを下回ると、他の科目の結果に関係なく不合格となりますので気を付けましょう。
国家総合職教養区分の難易度
多くの受験生の間では、「教養区分は国家総合職の試験の中で最も難易度が高い」という印象が定着しているようです。
確かに、コロナ禍前までは倍率が20倍に達する年もありましたが、2020年代に入り合格者数を大幅増加させていることもあり、かつてに比べ合格しやすくなっています。
合格率・倍率の推移
多くの受験生が「教養区分=国家総合職で最難関試験」というイメージを抱いているようです。
確かに、コロナ禍前までは下表の通り、倍率が20倍前後で推移していました。
| 申込者数 | 最終合格者数 | ||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2020 | 2019 | 2018 | 2017 | 2016 | 2020 | 2019 | 2018 | 2017 | 2016 |
| 3,172 | 2,893 | 2,928 | 2,811 | 2,558 | 163 | 148 | 145 | 135 | 135 |
しかし、コロナ禍以降、教養区分の最終合格者数は2021年に初めて200人を超えたと思ったら、2023年には一気に400人超へと急増し拡大することとなり(2026年からは春・秋の2回実施のため、合格者数はさらに増加する見通し)、結果、対1次試験受験者数で測った実質倍率は10倍以下で推移しています。
| 年 | 申込者数 | 1次試験受験者数 | 最終合格者数 |
|---|---|---|---|
| 2023 | 4,014 | 2,531 | 423 |
| 2024 | 4,734 | 3,092 | 467 |
| 2025 | 5,914 | 3,898 | 426 |
| 2026(春) | 3,133 | 2,175 | 213 |
教養区分が「難易度が高い」と言われる理由
国家総合職の人気低下が叫ばれて久しいですが、そのような状況下でも教養区分だけは順調に申込者数を伸ばし、現在では法律区分に匹敵する申込者数を確保するに至ってます。
その要因としては、次の2つが考えられます。
第1に、負担の軽さです。試験対策として専門科目の学習が不要であることから、民間企業の就活も積極的に行うことができます。
第2に、教養区分からの採用者数の多さです。とはいえ、これについては「教養区分受験のメリット」のところでも指摘したように「教養区分だから優先的に採用される」という意味ではありません。
それでも、採用者数が多いという事実は、総合職を本気で志望している学生を惹き付けます。事実、2026年春試験の試験結果をみると、教養区分を除く大卒者試験の最終合格者数に占める東大生の割合は2割にも満たない一方、教養区分では最終合格者の4割強が東大生によって占められています。
そのことが、「教養区分=難易度高い」とされる所以なのかもしれません。
国家総合職 教養区分の対策・勉強法
教養区分合格のためには、まずは1次試験の基礎能力試験を突破する必要があります。
総合職の試験問題自体、他の公務員試験に比べ難しいので、特に数的処理と文章理解(現代文・英語)への十分な試験対策が必要となります。
1次試験(基礎能力試験)の対策
総合職の試験問題自体、他の公務員試験に比べ難しいので十分な試験対策が必要となりますが、予備校を利用すべきかどうかは、ご自身のこれまでの受験勉強の経験次第といえます。
ちなみに、私の主宰する予備校では、受講相談時に中学受験経験の有無について必ず質問し、「経験あり」といった人には、独学でも問題ないとお伝えしています(過去問題集を繰り返し演習する必要はあります)。
それは、同じ大学の学生であっても、高校まで公立学校だった学生と中学から私立だった学生で、毎年数的処理の点数に大きな差があるからです(当然、後者の方がかなり高いです)。
それでも、教養区分は1次試験については科目数が少ないことから対策は立てやすいといえます。
知識分野も、自然・人文・社会すべてを網羅する必要はありません。大学受験時の知識がどれだけ記憶に残っているかにもよりますが、一般論として、文系学部の人は、人文・社会に特化して、自然は高校時に学習した科目のみ対策する。
一方、理系学部の人は自然は絶対落とさず、人文・社会については高校時に学習した科目のみ対策する。
重要なのは、1次試験では6割取ることであり、1次の配点は低いので、基礎学力試験の点差なんか全く気にする必要ないです。
いずれにせよ、受験を志したら、すぐに過去問題集を入手しましょう。
総合論文試験・2次試験の対策
総合論文は、かつての「○○について、あなたの考えを論じなさい」から、近年は、「資料1 ~ 3 の内容をそれぞれ簡潔にまとめた上で、行政(あるいは行政官)の△△についてあなたの考えを論じなさい」へと変化しています。
それゆえ、英語が苦手だからといって、資料を無視した論文は評価されず、基準点未満とされる可能性が高いので注意しましょう。
その上で、最も効果的な試験対策は、実際に論文を書いて、添削を繰り返し受けることです(一度に大量に添削を依頼しない)。
与えられた資料を踏まえて、日本語で1500字程度の文章を書き、さらに、他人に記述内容を理解してもらえるレベルに到達するまでには、相当の時間を要します。
しかし、企画提案試験のプレゼンテーションシート作成能力の向上にも役立つので、論文対策を軽視しないでください。
それ以外の、プレゼン・グループディスカッション・面接対策ですが、ゼミやサークル活動で他者と日常的に接する機会のある方は、積極的に話すようにしましょう。
ただし、自分の考えをわかりやすく伝えることも大切ですが、相手の話を聞き、さらに、絶対に全面否定しないことを意識づけてください。
出題傾向分析は、そうした習慣が身についた後に行うことで、初めて効果を発揮します。くれぐれも順番を間違えないでください。
教養区分合格後の流れ(官庁訪問)
教養区分最終合格=採用ではありません。国家総合職志望者は全員、志望府省等に採用されるための最後の関門である官庁訪問に参加し、志望先の省庁から内々定がもらえないと、総合職として勤務することができません。
しかも、省庁にもよりますが、官庁訪問の倍率は3~4倍程度と非常に狭き門なので、試験勉強と平行して官庁訪問対策を行ってください。
官庁訪問で行われるのは、もちろん、採用面接です。詳細については、官庁訪問に関するブログでお話ししますが、省庁により、面接の形式や内容はそれぞれ異なります。
いずれにせよ、参加者は全員最終合格者なのに、圧倒的多数が不採用者となるのが官庁訪問です。それゆえに、総合職志望者は、このブログを読んだら、相応の覚悟を決めてください。
なお、教養区分(秋試験)合格者の方は、制度上、1年に6月と12月の2回、官庁訪問のチャンスがありますが、私自身、かなり長く予備校講師をしていますが、6月失敗⇒12月内定という話は聞いたことがありません。
そもそも、6月と12月では求める人物像もまるで異なります。12月官庁訪問を再チャレンジのつもりで考えるのはやめましょう。
「6月に失敗したら、また来年」これが通常です。ゆえに、安易な気持ちで6月官庁訪問に臨まないようにしましょう。
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この記事の著者
池田 俊明講師 (講師紹介はこちら)
金沢大学大学院社会環境科学研究科博士課程後期修了(博士(経済学/金沢大学))
CIMAアカデミー・シニアパートナー
(兼)東洋大学経済学部,昭和女子大学全学共通教育センター非常勤講師
1992年 金沢大学 経済学部卒業
1994年 金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了
2001年 金沢大学大学院社会環境科学研究科博士課程後期修了(博士(経済学/金沢大学))
2001年 大手資格試験予備校専任講師として国家一種経済職(現・国家公務員総合職経済区分)試験向け講座およびゼミを担当。
在職中、公認会計士、不動産鑑定士、証券アナリスト、中小企業診断士試験向け講座の講義も担当(いずれも経済学)
2013年 国家公務員総合職試験対策に特化したCIMAアカデミーを立ち上げ,官僚志望者への受験指導を開始
2016年 アガルートアカデミー公務員試験対策講座を担当。
25年以上にわたり、数多くの受験生をキャリア官僚として、霞ケ関へ送り込んだ国家公務員総合職のエキスパート。
また、現職の大学の経済学教員でもあり、試験科目として経済学が課される全ての資格試験の出題傾向に精通している。
国家公務員総合職経済区分試験向け講座の講師を担当。
ごあいさつ
このコラムでは、国家公務員総合職を目指す人々に正しく、そして役立つ情報を提供します。
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