国家公務員総合職のエキスパート】池田俊明講師による受験生応援コラム第3段

国家公務員総合職試験が、人物重視に舵を切ったと言われて久しいですが、その象徴が人物試験(人事院面接)です。

時間にして僅か15~20分程度と短く、事前に提出した面接カードに従って質問されるだけなのに、配点は専門科目試験と全く同じ…。

勉強は一人でできても、面接は一人では十分な対策はできません。このコラムを読んで、早めに対策を立てましょう。

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国家総合職の人物試験(人事院面接)とは?

国家公務員総合職試験の人物試験(人事院面接)は、春試験(学部・院卒区分)・秋試験(教養区分)を問わず、第2次試験の1科目として実施される『人柄、対人的能力などについての個別面接』(募集要項より)です。

面接時間は15~20分程度 3名の面接官が順次質問する形式

時間は僅か15~20分程度で、事前に提出した面接カードに従って、3名の面接官が順次質問する形式で行われます。

「なんだ、それだけか」と思ったあなた、配点を聞いたら、おそらく冷静ではいられないと思います。

配点は、教養区分6/28・春試験全区分3/15

教養区分での配点は、6/28です。
(申込者の約1割しか通過できない1次試験の基礎能力試験(ⅠおよびⅡの合計)よりも比重が高い!)

春試験の全区分は、3/15と、想像以上に高いものとなっています。
(1次試験の基礎能力試験よりも高く、専門択一試験と配点比重が全く同じ)

しかも、院卒区分および教養区分受験者の場合、人物試験は例年、集団討論である「政策課題討議試験」の直後という、体力・精神的に疲弊した状態で迎えることになり、集中力の持続も求められます。

このように書いただけでも、入念な準備が必要だということはわかってもらえたと思いますが、ではどんな対策をすればよいのか不安になりませんか?

例年、人物試験は次のように実施されます。

①座席の配置と面接官

座席が下記のように配置され、受験者1名に対し面接官3名(通常、真ん中の面接官は人事院の職員で、この人が主に質問する)となっている。

②面接カードが使用される

基本的に面接カードの記述内容に沿って質問がなされる。

国家総合職の人物試験で問われること

さきほども述べたように、人物試験は「人柄、対人的能力などについての個別面接」です。

総合職の場合、合格後に官庁訪問があることから、個別の省庁職員としての適性というより、あくまで国家公務員としての適性を合否の判断としています。

インターネットを検索すると、受験経験者による体験談が無数にあり、皆、自分の感覚に従い評価ポイントを挙げていますので、どれを信じればよいのか読者は混乱していることと思います。

なので、ここでは可能な限り、人事院あるいはその関連機関による文書(※)を参考に説明します。

実は、平成18年度より総合職試験(当時は国家Ⅰ種試験)は、下記のように大きく変化しました。

  • 関係構築力等の対人的能力についてコンピテンシーの考え方を導入する。
  • 人物評価の信頼性、妥当性を高めるため、質問から評価に至る過程の「構造化」を行う。

上記の方針に従い、従来は、

  1. 積極性
  2. 社会性
  3. 責任感
  4. 情緒安定性
  5. コミュニケーション能力

の5つが評定項目であったのが、新たに、

  1. 積極性(意欲/行動力)
  2. 社会性(他者理解/関係構築力)
  3. 信頼感(責任感/達成力)
  4. 経験学習力(課題の認識/経験の適用)
  5. 自己統制(情緒安定性/統制力)
  6. コミュニケーション力(表現力/説得力)

へ変更されました。

実際に先ほど提示した面接カードを見比べてみると、経験を問う内容になっています。

巷でボランティアの有無が面接の評価に大きく影響すると言われるのは、こうした事情によるのかもしれません。

しかし、経験だけあってもダメです。

後ほど紹介しますが、面接カードに経験をたくさん書いても、「それが公務員志望にどう影響したのか」とか「その経験から何を得たのか」というように、どんどん深堀りされていきます。

面接カードに書いたものについては、どんどん突っ込まれても大丈夫なように、脳内で想定問答を行っておくことを勧めます。

※【参考文献】
人物試験技法研究会(2005)『人物試験におけるコンピテンシーと「構造化」の導入』
人事院(2009)『採用試験の在り方を考える専門家会合報告書』

国家総合職と他の公務員の人物試験に違いはある?

人物試験は、総合職特有のものではありません。

というか、官民問わず就活では必須です。

自分のことについて初対面の人にきちんと理解してもらうという姿勢が最重要視されている点は、全ての就活において共通しています。

ただし、既に述べたように、面接を通じて国家公務員総合職としての適性を見ていることから、地元志向もしくは現場志向が相当強い人は地方公務員の方が向いていると思います。

また、同じ国家公務員でも一般職との併願をする受験生も多いと思いますが、リーダーシップの経験が乏しかったり、教育や環境など特定の分野に強い拘りを持っているようでしたら、総合職よりは一般職の方が向いていると言えるでしょう。
(本当によく勘違いされるのですが、ゼミやサークルにおける役職の有無は、リーダーシップの有無とはさほど関係ありません!役職なんかついてなくても、グループで何かを成し遂げるときに中心的に頑張った経験があるかどうかが大事なのです)

今あげたことは、面接でたくさん投げかけられる質問を通じて明らかになってきますので、変に話を盛らない方がいいです。
(就活時期になると、やたらと自称サークル副代表が発生するのは、その象徴と言えます)

仮に、盛った話で人物試験を潜り抜け最終合格したとしても、官庁訪問は2週間朝から晩まで続くので、化けの皮はどこかの時点で必ず剥がれます。

ゆえに、面接カード作成を通じて、自分の性格を正しく把握するように努めてください。

実際の人物試験の流れと質問内容

基本は面接カードに書いた容について聞かれますが、ここでは過去の受講生のケースをいくつか紹介しましょう。

やり取りを通じて、どんな内容のカードを書いたのか等、想像してみてください。

なお、面接官は3人います。

【事例1】 院生(経済) 面接時間:20分弱

■中央の面接官

  • こういう面接したことある?
  • 院試の面接のときより緊張してる?
  • いくつか面接カードに沿って質問していきますね。まず、留学行きたいと思った理由は?
  • (留学先で)唯一の日本人っていうけれど、周りに東洋系の学生はいた?
  • 中国人韓国人に何か言われなかった?
  • (力を入れたことに関して、学校設立の手伝いと書いたことに対して)学校創立の手伝いって何?その学校で働きたいとは思わなかったの?
  • ガイド活動ってどこでやったの?
  • どんなことを学べた?
  • (多様性に強い関心を有していることに対して)今、民間でも多様性って言われているけれど、何であなたは公務員志望なの?
  • 志望動機欄に関して、○○省と××省って結構違うけれど、それぞれにおいて、どう貢献したいのか?
  • 最初に戻るけど専門は○○だよね。なんで、あなたは経済区分で受けたの?
  • それだけ公務員になりたいってこと?

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■二人目の面接官

  • あなたは他の人からはどう思われてるの?
  • (自分のいいところに関して)他には?他には?他には? (とにかくたくさん答えさせようとする)
  • それはどういう状況でそういう評価を得られるの?
  • ネガティブな評価されたことは?
  • (ネガティブな評価に関して)他には?
  • それはどういう状況でそういう評価になったと思う?
  • 自分の悪いところはどこだと思う?

三人目の面接官

  • 一点だけ。学校創立に関わるようになった経緯は?
  • なんで関わろうと思ったの?
  • (その活動を通じて)何を学んだの?

【事例2】 転職歴ありの社会人(院卒区分で受験) 面接時間:21分

 ■中央の面接官 男性。40代くらいで眼鏡、目つきが鋭い。

  • 先ほどは、政策討議がありましたが、振り返ってみてどうでしたか?
  • ○○さんは、前職を辞めて、どうして今の職場に就職しようと考えたのですか?
  • 最初、前職で働こうと思ったのは何故ですか?
  • 修士課程のときと、現在の仕事を比較して自分が変わったと思うところは何ですか。
  • 今の質問に関してですが、◎◎においてどのように調整を図っているのですか?自分の業務が特定されないように答えてください。
    もう少し具体的に、今の業務や過去の業務でありますか?
    ⇒(この部分に関して、かなり突っ込んだ質問および回答が繰り返される。)
  • 業務の中で困ったこととしてどのようなことがありますか?
  • ○○さんはどのような点において、志望先である△△省の業務に貢献できると考えていますか。

■左の面接官 30代後半くらいの男性。

  • 学生生活において力を入れたこととして、コミュニティサイクルにおける事前評価の困難さと、チームワークの大切さを痛感したとありますが、どのような点を学びましたか。
  • 面接カードには、ゼミ長とあるけど、これは何人くらいの規模のゼミで、どのようなことをしていたのですか。
  • これまでの話を聞いて△△省と××省というのは分かるんだけど、なんで●●省も志望しているのですか。

※他にも質問された気がしますが、覚えておらず。

■右の面接官 50歳くらい?年齢が高めの男性。

  • (スポーツに関して)○○を中学からされているということですが、どのようなところに魅力を感じますか。
  • 先ほど、業務に関してクレームが3~4時間あると言ってましたが、どうしてそんなにクレームが来るのですか。○○さんに問題があるのですか、それとも別のところに問題があるのですか。
  • 面接カードの一番下には、フットワークの軽さやコミュニケーションを生かして調整するとありますが、先ほどは聞いていない内容として、他府省庁との調整についてどのように調整しているか教えてください。
  • ○○さんは、□□などを学んでいるということで技術者試験の方が専門だと思いますが、なぜ事務系を受験したのですか。

※他にも質問された気がしますが、覚えておらず。


2名だけ紹介しましたが(いずれもちゃんと最終合格しています)どうですか?

よくある質問集みたいな本を読むよりも、こういう一連の流れを追った方が、臨場感があって、「面接対策をしっかりやらないといけない!」という気にさせるのではないでしょうか。

いずれも、1つの質問に答えたら、次の質問に…ではなく、深く掘り下げられていくことに気付いたかと思います。

ゆえに、繰り返しになりますが、カードを書きながら、脳内で想定問答を延々と繰り返し、さらに、模擬面接を繰り返すことが大事です。

ちなみに、紹介した2名についてですが、両名とも、私は5~6回模擬面接をやっています。

数をこなし、フィードバックをちゃんともらうことが最強の面接対策と言えるでしょう。

人物試験の評価方法

最後に、評価についてですが、全て点数化されます。

配点比率は決まっていても、標準偏差等の関係で年によって、点数は若干変動しますが、A~Eの5段階評価で、通常はC評価になります。

なお、E評価がついてしまうと、他の試験結果にかかわらず不合格となってしまいます。

春試験ならば、他の試験次第ではありますが、E評価にさえならなければ、最終合格は可能ですが、教養区分の場合は、B評価を目指してください。

C評価だと2次試験の残りの科目をB評価でクリアしないと、最終合格はかなり厳しくなります。

なお、評価は既に紹介した6項目でみるので、ノックの回数とかお辞儀の仕方はゼロとは言いませんが、気にしなくて結構です。

ただ、身だしなみや姿勢が良いに越したことはありません。

同じことを話していても、自信なさそうに話すのと堂々と話すのでは、面接官への伝わり方は全く異なるので…。

いずれにせよ、人物試験は座学だけでは意味がありません。実践あるのみです。

予備校や信頼できる人相手に、何度も繰り返し模擬面接をしてダメ出しをしてもらうことが、合格への最短ルートになります。

池田俊明講師による受験生応援コラム
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この記事の著者

池田 俊明講師 (講師紹介はこちら


20年以上にわたり、数多くの受験生をキャリア官僚として、霞ケ関へ送り込んだ国家公務員総合職のエキスパート。

また、現職の大学の経済学教員でもあり、試験科目として経済学が課される全ての資格試験の出題傾向に精通している。

国家公務員総合職経済区分試験向け講座の講師を担当。

ごあいさつ
このコラムでは、国家公務員総合職を目指す人々に正しく、そして役立つ情報を提供します。
夢の実現に向けて頑張るみなさんには、出所不明な噂に惑わされることなく、最も信頼できる心の拠り所として、このコラムを活用していただければ幸いです。

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