建築を学んでいる人や建築業界で働く人のなかには、公務員の建築職という進路が気になりつつ、どんな仕事を担い、どの試験に合格すれば就けるのか分かりにくいと感じる人もいるでしょう。

公務員の建築職とは、国や地方自治体で建築の専門知識を生かし、官庁施設や公共施設の整備、建築確認などの建築行政、まちづくりを担う技術職です。

国家公務員は人事院の採用試験の建築区分・工学区分、地方公務員は各自治体の人事委員会などが行う採用試験の建築区分に合格すると就けます。

試験日程・採用予定数・倍率・平均年収などは年度によって変わるため、人事院や各自治体が公表している最新の情報を確かめてください。

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公務員の建築職とは?

公務員の建築職とは?

公務員の建築職とは、国の府省や都道府県・市区町村で、建築の専門知識を生かして官庁施設や公共施設の整備、建築行政、まちづくりを担う技術職です。

ここでは、建築職の位置づけと、国家公務員と地方公務員の違いを順に見ていきましょう。

公務員の建築職は建築の専門知識を生かす技術職

公務員の建築職は、土木・機械・電気などと並ぶ技術系の職種で、事務系の職種とは別の試験区分で採用される職種です。

採用試験の建築の区分には次のようなものがあります。

  • 国家公務員採用一般職試験(大卒程度):「建築」区分
  • 特別区(東京23区)職員採用試験:「建築」区分

一方、国家公務員採用総合職試験には建築の区分がなく、「工学」区分の中で建築系の科目を選んで受験する仕組みです。

※出典:「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)受験案内」人事院

※出典:「採用試験の概要」特別区人事委員会

国家公務員と地方公務員の建築職の違い

国家公務員の建築職は、国土交通省の官庁営繕部門を例にとると国の官庁施設の整備や指導・監督を、地方公務員の建築職は公共施設の整備に加えて建築確認やまちづくりなど住民に身近な建築行政を担います。

両者の違いをまとめると、次のとおりです。

項目国家公務員地方公務員
勤務先の例国土交通省官庁営繕部、地方整備局営繕部など(官庁営繕部で採用された総合職の主な配属先)都道府県・市区町村
仕事の例官庁施設の整備と指導・監督公共施設の整備・建築行政・まちづくり

※出典:「国の建物をつくり、活かす 官庁営繕 採用案内[総合職]」国土交通省大臣官房官庁営繕部

※出典:「11職種の紹介 建築」特別区人事委員会(2019年度の採用情報)

公務員の建築職の仕事内容

公務員の建築職の仕事内容は、国家公務員の官庁営繕部門では官庁施設の整備と指導・監督、地方公務員では公共施設の整備、建築確認などの建築行政、公営住宅の整備、都市計画・まちづくりが中心です。

それぞれの仕事を詳しく見ていきます。

国家公務員の建築職の仕事内容(官庁営繕)

国土交通省の官庁営繕部門に配属された国家公務員の建築職は、庁舎や研究施設などの官庁施設の整備と、指導・監督を担います。

官庁営繕の役割は、次の3つです。

  • 官庁施設の整備
  • 官庁施設の指導・監督(営繕計画書に関する意見書の送付、勧告、保全の実地指導)
  • 整備や保全に関する基準の設定

また、官庁営繕は「国民の共有財産である官庁施設に関して、良質な施設及びサービスを効率的に提供し、公共建築分野において常に先導的な役割を果たすこと」をミッションに掲げています。

業務は建築系・電気系・機械系の3職種が連携して進める体制で、建築職はその中で建築の専門知識を生かして官庁施設の整備に携わります。

※出典:「国の建物をつくり、活かす 官庁営繕 採用案内[総合職]」国土交通省大臣官房官庁営繕部

※引用:「官庁営繕の業務」国土交通省

公共施設の計画・設計・工事監理

地方公務員の建築職は、学校や福祉施設など自治体が持つ公共施設について、計画・設計から施工・工事監理、維持管理までを担います。

たとえば特別区では、建築の仕事として「教育・福祉施設などの計画・設計・施工・工事監理・維持管理」が挙げられています。

地方公務員の建築職が担うのは、新築の段階から完成後の維持管理まで、建物の一生に関わる仕事です。

※出典:「11職種の紹介 建築」特別区人事委員会(2019年度の採用情報)

建築確認・違反建築物の是正指導などの建築行政

地方公務員の建築職は、建築基準法に基づいて建築物の確認・許可を行い、違反建築物の調査・是正指導などで建物の安全を守ります。

建築確認の仕組みは、建築基準法で次のように定められています。

  • 人口25万以上の政令で定める市と都道府県は、建築確認などの事務をつかさどる建築主事を置く(第4条)
  • 建築主は、一定の建築物を建築しようとするときは、工事に着手する前に、計画が建築基準関係規定に適合することについて建築主事等の確認を受け、確認済証の交付を受ける(第6条第1項)

建築主事は都道府県や市町村の職員の中から命じられるため、建築確認は自治体の建築職が担う仕事の1つです。

また、特別区の建築の仕事には、建築行政に当たる次の業務が含まれます。

  • 建築物の確認・許可
  • 違反建築物の調査・是正指導
  • 建築相談・都市計画相談
  • 建築紛争調整

※出典:「建築基準法」第4条・第6条 e-Gov法令検索

※出典:「11職種の紹介 建築」特別区人事委員会(2019年度の採用情報)

公営住宅の整備など住宅分野の仕事

地方公務員の建築職は、県営住宅などの公営住宅の整備をはじめ、まちづくりや住宅など住民の生活に密着した分野の仕事も担います。

たとえば、神奈川県が紹介する建築職の仕事には、住宅に関わる次のものがあります。

  • 県営住宅の整備
  • 住宅など県民生活に密着した分野の仕事

神奈川県の建築職の主な配属先にも、住宅計画課・公共住宅課・住宅営繕事務所が含まれています。

※出典:「建築|職種紹介|神奈川県職員採用案内」神奈川県

都市計画・まちづくりと耐震化の促進

地方公務員の建築職は、都市計画やまちづくり計画の策定、再開発事業、建築物の不燃化・耐震化の促進など、まち全体の安全と暮らしやすさに関わる仕事も担います。

特別区の建築の仕事では、次のような業務が挙げられています。

  • 都市計画・まちづくり計画の策定
  • 再開発事業の計画・立案
  • 建築物の不燃化促進・耐震化促進
  • 建築物のバリアフリー整備・景観指導

特に、耐震化促進では、特別区人事委員会の採用情報で紹介されている建築職の職員が、木造住宅の耐震化工事費やブロック塀を安全にする工事費の一部助成などを担当しています。

※出典:「11職種の紹介 建築」特別区人事委員会(2019年度の採用情報)

公務員の建築職の年収・給料の仕組み

公務員の建築職の年収のもとになる給料は、国家公務員は原則として一般職の職員の給与に関する法律の行政職俸給表(一)、地方公務員は各自治体が条例で定める給料表によって、職務の級と号俸(号給)の組み合わせで決まります。

年収の額は勤務先・年齢・役職によって変わるため、ここでは給料が決まる仕組みを解説します。

国家公務員の建築職には原則として行政職俸給表(一)が適用される

国家公務員の建築職には、他の俸給表の適用を受けない限り、事務系の職員と同じく一般職の職員の給与に関する法律の別表第一にある行政職俸給表(一)が適用されます。

なお、行政職俸給表(一)は、他の俸給表の適用を受けない職員に適用する表です。

俸給の額は職務の級と号俸の組み合わせで決まると考えるとよいでしょう。

このうち職務の級は職務の複雑さ・困難さ・責任の度合いに応じて分けられ、同じ級の中では昇給によって号俸が上がる仕組みです。

俸給のほかに、同法に基づく諸手当(扶養手当・地域手当・住居手当・通勤手当など)と期末手当・勤勉手当も支給されます。

※出典:「一般職の職員の給与に関する法律」第6条・第8条・別表第一 e-Gov法令検索

地方公務員の建築職は自治体の給料表で決まる

地方公務員の建築職の給料は、各自治体が条例で定める給料表で決まり、支給額は給料表の「級」と「号給」の組み合わせで決まります。

地方公務員の給与には、地方公務員法第24条に基づく次の原則があります。

  • 職務給の原則:職務と責任に応じて給与を定める
  • 均衡の原則:生計費や国・他の自治体の職員、民間事業の従事者の給与などを考慮して定める
  • 条例主義:給与は条例で定める

ただし、給料表は職種に応じて異なるものが適用される点に注意が必要です。

そのため、受験先の自治体が公表している給与の資料で、建築職に適用される給料表を確かめてください。

また、給料のほかに、自治体は条例で扶養手当・地域手当・住居手当・通勤手当・期末手当・勤勉手当などを支給できると地方自治法で定められています。

※出典:「地方公務員の給与の仕組み」総務省

※出典:「地方公務員法」第24条 e-Gov法令検索

※出典:「地方自治法」第204条 e-Gov法令検索

公務員の建築職になるための試験内容

公務員の建築職になるには、国家公務員は人事院の採用試験の建築区分(一般職)・工学区分(総合職)、地方公務員は各自治体の採用試験の建築区分に合格する必要があります。

国家公務員一般職(大卒程度)の建築区分の試験内容は、基礎能力試験・専門試験(多肢選択式・記述式)・人物試験で、記述式では建築設計製図が出題されます。

ここからは、国家公務員一般職、国家公務員総合職、地方公務員の順に試験を紹介しましょう。

国家公務員一般職(大卒程度)建築区分の試験

国家公務員の建築職を目指す場合、一般職試験(大卒程度)の建築区分では、第1次試験が基礎能力試験と専門試験(多肢選択式・記述式)、第2次試験が人物試験で行われます。

試験種目と内容は、次のとおりです。

試験試験種目内容
第1次基礎能力試験(多肢選択式)知能分野と知識分野の筆記試験
第1次専門試験(多肢選択式)工学に関する基礎、構造力学(建築)・建築構造、建築材料・建築施工、環境工学(建築)・建築設備、建築史・建築計画・建築法規・都市計画
第1次専門試験(記述式)建築設計製図
第2次人物試験人柄や対人的能力などをみる個別面接

なお、建築区分の専門試験(多肢選択式)は、出題されたすべての問題に解答する形式です。

記述式の建築設計製図では、直定規と直角三角定規を持参して使えます。

※出典:「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)受験案内」人事院

国家公務員総合職は工学区分で受験する

国家公務員総合職試験で建築を生かす場合は「工学」区分で受験し、専門試験で建築系の科目を選んで解答します。

工学区分で選べる建築系の科目は、次のとおりです。

  • 専門試験(多肢選択式):構造力学(建築)、建築構造・建築材料・建築施工、建築計画・建築法規・建築設備、建築史・都市計画
  • 専門試験(記述式):建築設計または都市設計

ちなみに、記述式の建築設計・都市設計は、建築物や都市・地区の設計を課題として、マスタープラン(図面及び論述)を作成する問題です。

※出典:「国家公務員採用総合職試験(院卒者試験・大卒程度試験)受験案内」人事院

地方公務員の建築職の試験

地方公務員の建築職の採用試験は各自治体の人事委員会などが行い、試験の方法も人事委員会などが定めるため、試験の内容は自治体ごとに異なります。

地方公務員法では、採用試験について次のように定められています。

  • 採用試験は人事委員会等が行う(第18条)
  • 採用試験は筆記試験その他の人事委員会等が定める方法により行う(第20条第2項)

たとえば特別区では、建築の試験区分がⅠ類(春試験・秋試験)、Ⅲ類、経験者採用に設けられています。

受験先を決めたら、その自治体の試験案内で試験区分と試験科目を確かめておきましょう。

※出典:「地方公務員法」第18条・第20条 e-Gov法令検索

※出典:「採用試験の概要」特別区人事委員会

公務員の建築職に建築士の資格は必要?

公務員の建築職の採用試験を受けるのに建築士の資格は求められず、受験資格は主に年齢や学歴で定められています。

一方、建築確認を担う建築主事になるには、一級建築士試験の合格が前提になります。

採用試験の受験に建築士の資格は不要

公務員の建築職の採用試験は、建築士の資格を持っていなくても受験できます。

たとえば国家公務員一般職試験(大卒程度)の受験資格は、次の2点で定められています。

  • 受験できる年齢は生年月日の範囲で定められている
  • 年齢の範囲の下限に満たない人は、大学・短大・高専の卒業(見込み)などが条件になる

具体的な生年月日の範囲は、受験する年度の人事院の受験案内で確かめてください。

地方公務員の受験資格は各自治体の人事委員会等が定めるため、建築士の資格が条件に含まれるかどうかも受験先の試験案内で確認しておきましょう。

※出典:「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)」人事院

※出典:「地方公務員法」第19条 e-Gov法令検索

建築主事になるには一級建築士試験の合格が前提

公務員の建築職のうち、自治体で建築確認をつかさどる建築主事は、一級建築基準適合判定資格者の登録を受けた職員から任命され、その検定は一級建築士試験の合格者が受けられます。

建築主事になるまでの流れは、次のとおりです。

  • 一級建築士試験に合格する(第5条第5項)
  • 一級建築基準適合判定資格者検定に合格し、建築行政や確認検査などの実務経験2年以上を経て国土交通大臣の登録を受ける(第77条の58)
  • 市町村長または都道府県知事から建築主事に命じられる(第4条第6項)

また、二級建築基準適合判定資格者の登録を受けた職員から命じられる建築副主事という職もあります。

※出典:「建築基準法」第4条・第5条・第77条の58 e-Gov法令検索

民間から公務員の建築職への中途採用

公務員の建築職には、民間企業などでの職務経験がある人を対象にした経験者採用(中途採用)の試験・選考があり、建築に関連する業務の経験が受験の条件になります。

ここでは、特別区の経験者採用を例に見ていきましょう。

特別区の経験者採用(建築区分)

特別区を例にとると、公務員の建築職の経験者採用試験・選考に建築の区分があり、建築に関連する業務従事歴が受験の条件になります。

この業務従事歴には、民間企業などでの建築に関連する業務の経験も含まれる点がポイントです。

建築区分の経験者採用には、たとえば次の採用区分が設けられています。

  • 経験者1級職
  • 経験者2級職(主任):係長職への昇任を前提とした、係長職を補佐する職

なお、建築区分を設ける級や、業務従事歴の年数・数え方(通算できるかどうかなど)は、年度ごとの試験・選考案内で定められています。

経験者採用の条件は自治体ごとに異なるため、他の自治体の経験者採用は各自治体の試験案内で確かめるとよいでしょう。

※出典:「採用試験の概要」特別区人事委員会

公務員の建築職のやりがいと大変なところ

公務員の建築職のやりがいは住民や国民の安全な暮らしとまちづくりに関われること、大変なところは是正指導や紛争調整など立場の異なる相手との調整が求められることです。

公務員の建築職がきついかどうかは、やりがいと大変なところの両方を知ったうえで判断するとよいでしょう。

建築を通じて住民の安全とまちづくりに関われる

公務員の建築職は、耐震化の促進や公共施設の整備を通じて、住民の安全な暮らしとまちづくりに関われる点がやりがいになります。

特別区人事委員会の採用情報で紹介されている建築職の職員は、耐震助成を通じて耐震化の向上と区民の安全を確保する仕事に誇りを持っていると語っています。

また、国土交通省の官庁営繕部門の採用案内では、官庁施設が地域に根ざし、まちの風景の一部となるものとして紹介されており、国家公務員の建築職はまちの風景をつくる建物の整備に関われます。

※出典:「11職種の紹介 建築」特別区人事委員会(2019年度の採用情報)

※出典:「国の建物をつくり、活かす 官庁営繕 採用案内[総合職]」国土交通省大臣官房官庁営繕部

立場の異なる相手との調整が求められる

公務員の建築職は、違反建築物の是正指導や建築紛争の調整など、立場の異なる相手と向き合って調整する仕事も担います。

特別区の建築の仕事にも「違反建築物の調査・是正指導」「建築紛争調整」が含まれ、利害の異なる建築主や近隣住民と向き合う場面もあるでしょう。

さらに、特別区の採用情報で紹介されている建築職の職員は、まちづくりの仕事を進めるうえで、自分の業務に加えて関係部署などとの協力が欠かせないと考えています。

このように、公務員の建築職には、建築主や近隣住民など庁外の相手だけでなく、庁内の関係部署とも調整しながら仕事を進めることが求められます。

※出典:「11職種の紹介 建築」特別区人事委員会(2019年度の採用情報)

公務員の建築職は建築の知識でまちを支える技術職

公務員の建築職は建築の専門知識を生かす技術職で、国家公務員の官庁営繕部門では官庁施設の整備と指導・監督、地方公務員は公共施設の整備・建築行政・公営住宅の整備・都市計画やまちづくりを担います。

給料は国家公務員が原則として行政職俸給表(一)、地方公務員が自治体の給料表で決まり、どちらも職務の級と号俸(号給)の組み合わせで額が決まる仕組みです。

建築職になるには、国家公務員は人事院の採用試験の建築区分・工学区分、地方公務員は各自治体の採用試験の建築区分に合格する必要があり、国家公務員一般職(大卒程度)の建築区分では建築設計製図を含む専門試験が課されます。

採用試験の受験に建築士の資格は求められない一方、建築主事になるには一級建築士試験の合格が前提となる点も押さえておきましょう。

建築に関連する業務の経験がある人には、経験者採用の道も用意されています。

やりがいは住民の安全とまちづくりに関われること、大変なところは立場の異なる相手との調整が求められることといえるでしょう。

まずは受験先の試験区分と試験案内を確かめ、建築職の採用試験に向けた対策を始めてください。

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