遠方への異動が決まった国家公務員や自衛官、その家族のなかには、広域異動手当の対象になるのか、いくら・いつまで支給されるのか、地域手当と重複した場合の扱いや単身赴任手当との違いが分かりにくいと感じる人もいるでしょう。

広域異動手当とは、国家公務員が官署を異にして異動した場合などに、異動前後の官署間の距離と、異動前の住居から異動後の官署までの距離がどちらも60km以上であるときに支給される手当です。

支給額は俸給などの月額に官署間の距離に応じた割合(300km以上は10%、60km以上300km未満は5%で、地域手当を受ける場合はその割合を差し引く)を掛けた額で、異動の日から3年を経過する日まで支給されます。

この記事は一般職の職員の給与に関する法律と人事院規則9―121(広域異動手当)などの法令に基づいて説明しているため、実際の支給の可否と額は所属の給与担当で確かめてください。

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広域異動手当とは?

広域異動手当とは?

広域異動手当とは、一般職の職員の給与に関する法律第11条の8に基づき、官署を異にして異動した国家公務員のうち、官署間の距離と住居から官署までの距離がどちらも60km以上となる職員に支給される手当です。

ここでは、手当が設けられた趣旨と、支給される人を順に見ていきましょう。

※出典:「一般職の職員の給与に関する法律」第11条の8 e-Gov法令検索

広域的な転勤がある民間企業の賃金水準を反映するための手当

広域異動手当は、広域的に転勤のある民間企業の賃金水準を国家公務員の給与に反映するため、給与構造改革の中で設けられた手当です。

政府の答弁書によると、給与構造改革では国家公務員の俸給水準を、民間賃金水準の低い地域の水準も考慮して引き下げました。

一方、他県に支店を持つような広域的に転勤のある民間企業では従業員の賃金水準が地域の平均的な民間の賃金水準より高いことを考慮して、広域的な人事異動が行われる国家公務員の給与水準を調整するために広域異動手当が設けられています。

手当の割合は異動前後の官署間の距離に応じて決まり、異動先で地域手当を受ける場合はその割合を差し引く仕組みで、詳しくは「広域異動手当の支給額と計算方法」で説明します。

※出典:「異動を伴う公務員に対して支給される手当等に関する質問に対する答弁書」衆議院

※出典:「一般職の職員の給与に関する法律」第11条の8 e-Gov法令検索

広域異動手当は国家公務員と自衛隊の自衛官に支給され、地方公務員は対象外

広域異動手当は、一般職の職員の給与に関する法律が適用される国家公務員に支給され、防衛省の職員の給与等に関する法律により自衛隊の自衛官にも支給され、地方公務員は支給の対象外です。

防衛省の職員の給与等に関する法律第14条は、事務官等と自衛官に広域異動手当を支給するとしたうえで、一般職の職員の給与に関する法律の規定(第11条の8を含む)を準用しています。

一方、地方公務員については、政府の答弁書で、制度の趣旨を踏まえて広域異動手当を導入の対象外としたと説明されています。

なお、地方公務員の給与は、地方公務員法第24条により地方公共団体の条例で定められるものです。

※出典:「防衛省の職員の給与等に関する法律」第14条 e-Gov法令検索

※出典:「異動を伴う公務員に対して支給される手当等に関する質問に対する答弁書」衆議院

広域異動手当の支給要件

広域異動手当の支給要件は、官署を異にする異動(官署の移転を含む)があり、異動前後の官署間の距離と、異動前の住居から異動後の官署までの距離がどちらも60km以上であることです。

距離の要件、通勤時間による特例、支給の対象外になる場合の順に紹介しましょう。

官署間の距離と住居から官署までの距離がどちらも60km以上

広域異動手当は、官署間の距離と住居から官署までの距離の2つがどちらも60km以上であるときに支給されます。

2つの距離は、それぞれ次のように定められています。

  • 官署間の距離:異動の日の前日に在勤していた官署の所在地から、異動の直後に在勤する官署の所在地までの距離
  • 住居と官署との間の距離:異動の直前の住居から、異動の直後に在勤する官署の所在地までの距離

また、職員が在勤する官署を異にして異動した場合に加えて、在勤する官署が移転した場合も対象になります。

※出典:「一般職の職員の給与に関する法律」第11条の8 e-Gov法令検索

住居から官署まで60km未満でも通勤に2時間以上かかる場合は対象

住居から官署までの距離が60km未満でも、通勤に要する時間などから60km以上と同じと認められる場合は、広域異動手当の支給の対象になります。

人事院の運用通知は、60km以上と同じと認められる場合を、最も経済的かつ合理的な経路・方法(航空機を除く)で通勤するものとして、異動後の官署の始業時刻に間に合うように異動直前の住居を出発する時刻から始業時刻までが2時間以上である場合と定めています。

ちなみに、運用通知の基準に準ずる場合で人事院事務総長が認める場合も含まれます。

※出典:「人事院規則九―一二一(広域異動手当)」第3条 e-Gov法令検索

※出典:「広域異動手当の運用について」人事院

6か月以内の研修に伴う異動は支給の対象外になる

距離の要件を満たしても、6か月以内の研修に伴う異動のうち、研修の前後に元の官署との間を行き来する異動と、新たに採用された職員の初任研修の前後の異動は、広域異動手当の対象外になります。

人事院規則9―121第4条が定める対象外の異動は、次の2つです。

  • 研修を受けるために元の官署から移る異動(初任研修以外は、研修の直後に元の官署へ戻ることが予定されている場合に限る)
  • 研修を受けた直後の異動(初任研修以外は、元の官署へ戻る異動に限る)

つまり、初任研修以外の研修では、元の官署へ戻ることを前提にした行き帰りの異動が対象外で、研修の後に別の官署へ移る場合はこの扱いに当たりません。

※出典:「一般職の職員の給与に関する法律」第11条の8 e-Gov法令検索

※出典:「人事院規則九―一二一(広域異動手当)」第4条 e-Gov法令検索

広域異動手当の距離の計算方法

広域異動手当の距離は、最も経済的かつ合理的と認められる通常の経路・方法で移動するものとして、徒歩・鉄道・船舶・バスなどの交通方法ごとの距離を合算して計算します。

交通方法ごとの距離の測り方と、分室や1日に2回以上異動した場合の扱いを順に見ていきます。

交通方法ごとの距離を合算して計算する

広域異動手当の距離は、人事院規則9―121第2条と運用通知に基づき、通常の経路について交通方法ごとに定められた距離を合算して計算します。

運用通知が定める交通方法ごとの距離は、次のとおりです。

交通方法使う距離
徒歩国土地理院が提供する電子地図などで測定した距離
鉄道鉄道運送事業者の調べに係る鉄道旅客貨物運賃算出表に掲げる距離
船舶海上保安庁の調べに係る距離表に掲げる距離
バスなどその他の交通機関道路運送法の事業計画などに記載されている距離

なお、経路と方法の想定からは、自動車等と航空機が除かれています。

※出典:「人事院規則九―一二一(広域異動手当)」第2条 e-Gov法令検索

※出典:「広域異動手当の運用について」人事院

分室に在勤する場合や1日に2回以上異動した場合の扱い

広域異動手当の運用通知では、分室に在勤する場合や1日に2回以上異動した場合など、距離の起点・終点の扱いが定められています。

具体的な扱いは、次の2つです。

  • 官署と所在地が異なる分室・分場などに在勤する職員は、その分室等を官署として扱う
  • 1日に2回以上異動したときは、最初の異動の直前の官署から最後の異動の直後の官署に直接異動したものとして扱う

たとえば、本庁から離れた分室に異動した場合は、本庁ではなく分室の所在地までの距離で判断することになります。

※出典:「広域異動手当の運用について」人事院

広域異動手当の支給額と計算方法

広域異動手当の月額は、俸給・俸給の特別調整額・専門スタッフ職調整手当・扶養手当の月額の合計額に、官署間の距離が300km以上なら10%、60km以上300km未満なら5%を掛けた額で、地域手当を受けている場合は地域手当の割合を差し引いた割合になります。

ここからは、支給割合と計算例、地域手当との調整、期末手当・勤勉手当との関係の順に解説します。

国家公務員の広域異動手当は官署間の距離に応じた割合で決まる

国家公務員の広域異動手当の支給割合は、官署間の距離が300km以上なら100分の10、60km以上300km未満なら100分の5です。

ただし、令和8年の人事院勧告で、60km以上300km未満は8%、300km以上は16%への引上げ(令和8年4月実施)が勧告されており、法改正後は割合が変わります。

計算のもとになる額は、俸給、俸給の特別調整額、専門スタッフ職調整手当、扶養手当の月額の合計額です。

たとえば、地域手当の支給がない職員で、俸給と扶養手当の月額の合計が30万円、官署間の距離が300km以上の場合、30万円×10%=月額3万円が支給されます。

この計算例の金額は説明のための仮のもので、割合は現行の法律の割合を使っている点に注意しましょう。

※出典:「一般職の職員の給与に関する法律」第11条の8 e-Gov法令検索

※出典:「本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み」(令和8年8月)人事院

地域手当と重複する場合は地域手当の割合を差し引く

広域異動手当と地域手当がどちらも対象になる職員は、広域異動手当の割合から地域手当の割合を差し引いた割合で広域異動手当が支給され、差し引いた結果がゼロ以下なら広域異動手当は支給されません。

現行の法律の割合(広域異動手当は5%・10%、地域手当は級地に応じて4%〜20%)で例を挙げると、次のとおりです。

  • 広域異動手当10%・地域手当4%の場合:広域異動手当は6%
  • 広域異動手当5%・地域手当12%の場合:広域異動手当は支給されず、地域手当だけが支給される

ただし、実際の地域手当の支給割合は勤務地によって定められているため、自分の勤務地の割合は所属の給与担当で確かめておきましょう。

※出典:「一般職の職員の給与に関する法律」第11条の3・第11条の8第4項 e-Gov法令検索

期末手当・勤勉手当(ボーナス)の計算にも含まれる

広域異動手当は、期末手当・勤勉手当(ボーナス)の計算のもとになる額にも含まれます。

一般職の職員の給与に関する法律第19条の4第4項では、期末手当基礎額を、俸給・専門スタッフ職調整手当・扶養手当の月額と、これらに対する地域手当及び広域異動手当の月額などの合計額としています。

また、勤勉手当の基礎額にも同じく広域異動手当の月額が含まれます(第19条の7)。

※出典:「一般職の職員の給与に関する法律」第19条の4・第19条の7 e-Gov法令検索

広域異動手当はいつまで支給される?

広域異動手当がいつまで支給されるかは法律で定められており、異動の日から3年を経過する日まで支給されます。

3年以内に再び異動して広域異動手当の対象になった場合は、再異動の支給割合が最初の異動の割合以上なら再異動に係る手当に切り替わり、下回るなら最初の異動に係る手当が支給期間の終わりまで続きます。

支給期間は異動の日から3年を経過する日まで

広域異動手当の支給期間は、異動の日から3年を経過する日までです。

なお、3年を経過する日を過ぎると広域異動手当の支給は終わり、3年以内に再び異動した場合の扱いは次の見出しで説明します。

※出典:「一般職の職員の給与に関する法律」第11条の8 e-Gov法令検索

3年以内に再び異動した場合の扱い

最初の異動から3年以内の再異動で再び広域異動手当の対象になった場合は、最初の異動と再異動の支給割合を比べて扱いが決まります。

第11条の8第2項が定める扱いは、次のとおりです。

  • 再異動の支給割合が最初の異動の割合以上の場合:最初の異動に係る手当は再異動の日の前日で終わり、再異動の日以後は再異動に係る手当が支給される
  • 再異動の支給割合が最初の異動の割合を下回る場合:最初の異動に係る手当の支給期間中は最初の異動に係る手当が引き続き支給され、再異動に係る手当はその期間が終わるまで支給されない

つまり、割合が同じか高くなる再異動では新しい手当に切り替わり、割合が下がる再異動では最初の手当が続くと覚えておくとよいでしょう。

※出典:「一般職の職員の給与に関する法律」第11条の8第2項 e-Gov法令検索

広域異動手当と単身赴任手当の違い

広域異動手当は官署間などの距離に応じて俸給などに一定割合を上乗せする手当、単身赴任手当は異動に伴い配偶者と別居して単身で生活することとなった職員に支給する手当で、要件の異なる別の手当です。

2つの手当の違いをまとめると、次のとおりです。

項目広域異動手当単身赴任手当
根拠条文第11条の8第12条の2
主な要件官署間の距離と住居から官署までの距離がどちらも60km以上異動等に伴い住居を移転し、異動前の住居から異動後の官署への通勤が困難と認められ、父母の疾病などのやむを得ない事情で同居していた配偶者と別居し、単身で生活することを常況とする
支給額俸給などの月額の合計額×5%または10%月額3万円(配偶者の住居との交通距離に応じた加算あり)

このように、2つの手当は要件がそれぞれ別に定められているため、自分がどちらの要件にあてはまるかは所属の給与担当に問い合わせてください。

※出典:「一般職の職員の給与に関する法律」第11条の8・第12条の2 e-Gov法令検索

まとめ

広域異動手当は、広域的な転勤がある民間企業の賃金水準を考慮して国家公務員に設けられた手当で、自衛官にも支給されます。

官署間の距離と住居から官署までの距離がどちらも60km以上で支給され、通勤に2時間以上かかる場合の特例もあります。

また、距離は最も経済的かつ合理的な経路で交通方法ごとの距離を合算して計算する仕組みでした。

月額は俸給などの合計額に5%か10%(令和8年の人事院勧告で、60km以上300km未満は8%、300km以上は16%への引上げが勧告されている)を掛けた額で、地域手当と重複する場合は地域手当の割合を差し引き、ボーナスの計算にも含まれます。

支給期間は異動の日から3年を経過する日までで、単身赴任手当とは要件の異なる別の手当である点も押さえておきましょう。

自分の支給の可否と額は、所属の給与担当で確かめてください。

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