経理に関する資格があれば、年収アップやキャリアの構築に役立ちます。

しかし経理・会計関連の資格にはさまざまな種類があるため、どの資格を取ればいいか迷ってしまいますよね。

「経理職でキャリアアップするためには、どんな資格を取ればいいの?」
「簿記以外で経理に役立つ資格を知りたい」

本コラムでは、上記のようなお悩みをもつ方に向けて、経理に役立つ資格を紹介します。

簿記以外の資格や、海外で活躍したい方におすすめの資格についても解説しているので、是非参考にしてください。

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経理に資格はいらない?

経理職に就業するうえで、資格は必須ではありません。

ただし経理に必要な資格はないとはいえ、経理業務に関連する資格を持っていると、一定の知識やスキルを有していることを証明できます。

経理の仕事は幅広く、たとえば一口に経理事務といってもさまざまな業務が含まれています。

事務作業をメインとしたものから、会計の知識を要するものまで多岐にわたるため、資格の取得によって仕事の幅が広がるでしょう。そして資格を取得することで知識が身に付くため、自信を持って業務に取り組むことができます。

また、経理の転職市場においては、簿記などの資格が必要な求人が多く見受けられます。

特に中途採用においては、経理の実務経験または資格のいずれかを応募条件として定めているものも多いです。資格を持っていれば、転職の際のアドバンテージとなるでしょう。

加えて経理業務では、専門性の高さと給与水準が比例する傾向があります。

そのため、経理の資格を取得し、専門性を高めることで、就業中の給与アップやキャリアアップなども期待できます。

経理におすすめの資格【簿記】

日商簿記検定(以下、日商簿記)とは、日本商工会議所および各地商工会議所が実施する検定です。

日商簿記には学歴や年齢などの受験資格が定められていないため、誰でも受験できます。

ここでは、各級の概要や、取得がおすすめな理由について解説します。

日商簿記3級

日商簿記3級の試験概要は以下の通りです。

  • 試験科目:商業簿記
  • 試験時間:60分
  • 合格基準:70%以上
  • 受験料:2,850円

出典:簿記 試験科目・注意事項 | 商工会議所の検定試験

日商簿記3級の試験科目は、商業簿記のみです。商業簿記とは、企業間の取引を記録する技法のことを指し、主に製造業以外の企業で用いられます。

日商簿記3級では、基本的な簿記の知識および技能の習得が求められ、目安としては中小企業で経理実務を行えるレベルと言われています。

日商簿記3級は、ビジネスにかかわるすべての方におすすめの資格です。日商簿記3級の知識があれば、損益計算書や貸借対照表の内容を理解することができます。

また、会計用語や、決算の流れなども理解しやすくなります。加えて「数字に強い人」というプラスの印象を与える効果も期待できるでしょう。

商工会議所が公開している受験者データによると、2022年4月以降に実施された日商簿記3級の合格率は、30〜45%前後で推移しています。

また、簿記3級の取得に必要な勉強時間の目安は60〜120時間と言われており、仕事や勉強をしながらでも挑戦しやすい難易度となっています。

初めて簿記の資格を取得する方や、簿記の基本的なスキルを身につけたい方にも向いているでしょう。

日商簿記2級

日商簿記2級の試験概要は以下の通りです。

  • 試験科目:商業簿記・工業簿記(原価計算を含む)
  • 試験時間:90分
  • 合格基準:70%以上
  • 受験料:4,720円

出典:簿記 試験科目・注意事項 | 商工会議所の検定試験

日商簿記2級では、商業簿記のほかに、工業簿記が試験科目に加わります。工業簿記とは、製造業における原価計算を行うための簿記のことです。

また、商業簿記においても、より高度な知識を要する問題が出題されます。

日商簿記2級で身につけるスキルの目安は、製造業を含むさまざまな企業での経理業務や、会計業務などを行えるレベルと言われています。

日商簿記2級は、経理の実務で役立つ資格をとりたい方におすすめです。日商簿記2級の知識があれば、財務諸表から会社の経営状態を読み解くことができます。

また、一般的に「経理のスキルがある」との評価を得られるのは、2級以上であると言われています。

日商簿記2級の取得によって、経理の実務を十分に行えるだけの能力をアピールできるため、転職の際も有利になるでしょう。

商工会議所が公開している受験者データによると、2022年4月以降に実施された日商簿記2級の合格率は、20〜37%前後となっています。

必要な勉強時間の目安は、200〜350時間前後です。ただし、初学者が2級からの合格を目指す場合と、すでに3級の知識がある場合とでは、勉強時間が大きく異なります。

2級から挑戦する場合は、十分な余裕を持った学習計画を立てましょう。

日商簿記1級

日商簿記1級の試験概要は以下の通りです。

  • 試験科目:商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算
  • 試験時間:90分×2回
  • 合格基準:70%以上※ただし、1科目ごとの得点は40%以上
  • 受験料:7,850円

出典:簿記 試験科目・注意事項 | 商工会議所の検定試験

日商簿記1級では、商業簿記・工業簿記に加えて、会計学や原価計算などが出題されます。

日商簿記1級の特徴は、一部税理士試験と共通の範囲が組み込まれていることです。そのため、難易度が高く、企業経理の実務においては不要な内容も含まれています。

日商簿記1級は、経理のスペシャリストとして高度なスキルをアピールしたい方におすすめの資格です。また、将来的に税理士や公認会計士を目指したい方にも適しています。

特に、高卒の方が税理士を目指す場合、「資格による受験資格」を得るために、簿記1級を取得するケースが多いです。

商工会議所が公開している受験者データによると、日商簿記1級の合格率は10%前後で推移しています。

2002年6月以降で最も合格率が低い第114回で3.5%・最も合格率が高い第116回で13.6%となっており、難易度の高さが伺えるでしょう。

日商簿記1級の合格に必要な勉強時間の目安は、500~700時間前後と言われています。2級と比較しておよそ2倍の時間が必要となるため、長期的な学習計画が必要です。

経理におすすめの資格【簿記以外】

経理におすすめな資格は、日商簿記以外にも多く存在します。
特におすすめしたい簿記以外の資格は、以下の8つです。

  • 公認会計士
  • 税理士
  • FP(ファイナンシャルプランナー)
  • ビジネス会計検定
  • 経理・財務スキル検定(FASS)
  • 経理事務パスポート検定(PASS)
  • 給与計算実務能力検定
  • MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)

ここではそれぞれの概要や、取得がおすすめな理由について解説します。

公認会計士

公認会計士は、会計関連資格の最高峰に位置する難関資格です。

公認会計士の主な仕事である監査業務は独占業務であり、企業や法人における財務諸表の適正性を証明する際は、公認会計士による監査が義務づけられています。

公認会計士試験は、公認会計士・監査審査会によって実施され、試験は「短答式試験」と「論文式試験」に分かれています。

公認会計士試験には受験資格が定められていないため、年齢や学歴を問わず、誰でも受験可能です。

公認会計士は、3大国家資格のひとつとして非常に知名度の高い資格です。短答式試験に合格するだけでも、会計の専門家として高い評価を得られます。

また、公認会計士の資格を取得後に開業登録を行えば、開業することも可能です。就職・転職が有利になるだけでなく、独立という選択肢が加わることは、大きなメリットとなるでしょう。

加えて、公認会計士の資格があれば、税理士試験が免除になります。そのため、税理士と公認会計士のダブルライセンスを目指す方にもおすすめです。

税理士

税理士は税金の専門家であり、税理士資格は国家資格となります。

税理士の仕事内容は、会計業務・税務書類の作成・税務訴訟における補佐人など、多岐にわたります。中でも、税務代理・税務書類の作成・税務相談の3点は、税理士の独占業務です。

税理士試験は国税庁によって実施され、下記3種類、合計5科目の試験が行われます。

  1. 会計学に関する2つの必須科目
  2. 所得税法または法人税法のいずれか1科目
  3. その他7つの科目から自由に選択する2科目

試験は科目合格制で、一度合格した科目は生涯有効となります。税理士は、いずれかの科目に合格しているだけでも、企業から高い評価を得られる資格です。

特に、企業経理において実用性の高い「簿記論」「法人税法」「財務諸表論」などを取得していれば、有利な条件での就職・転職が実現するでしょう。

また、税理士資格があれば、独立開業も可能です。税理士試験の必須科目である会計学の分野に関しては、簿記の知識が求められます。そのため日商簿記の上位資格として、税理士を目指す方も多く見受けられます。

FP(ファイナンシャルプランナー)

ファイナンシャルプランナー(以下、FP)は、主に個人の資産に関するアドバイスや、ライフプランの設計を行うための資格です。

FPの試験を実施するのは、日本FP協会または一般社団法人金融財政事情研究会です。それぞれ試験科目が異なるため、詳しい内容は以下の公式サイトをご確認ください。

FP技能検定|一般社団法人 金融財政事情研究会
FP技能検定|日本FP協会

FPの業務内容は、お金の専門家として、家計相談や資産運用などの相談に応じることです。これらの業務を行うためには、多様な知識が求められます。

そのため、FPの資格を取得することで、お金にまつわるさまざまな仕組みや、法的制度に関する知識を得られるでしょう。

経理の実務において、FPの知識を直接活かせる場面は限られていますが、社会保険制度や金融に関する知識があることをアピールできます。

また、FPは、日常生活に役立つ資格としても知られています。FPは3級から1級までに分かれており、スキルとして評価されるのは2級以上と言われています。

2級以上を取得すれば「金融リテラシーが高い人」と認識され、金融業界などへの転職が有利になるでしょう。

ただし、各級において受験資格が定められているため、研修や実務経験の要件を満たさない場合は、3級から取得するのがおすすめです。

ビジネス会計検定

ビジネス会計検定とは、財務諸表に関する知識と分析力の向上を目的とした民間資格です。ビジネス会計検定試験は、大阪商工会議所および施行商工会議所によって実施されます。

ビジネス会計検定では、財務諸表に示される数値の理解に重きを置いています。そのため、会計業務に関する知識や、数字を読み解く力が必要です。

また、日商簿記に比べて、よりビジネスに役立つ実践的な知識が求められます。

ビジネス会計検定は3級から1級まで設置されており、2級以上では、企業の経営戦略にかかわる内容が出題されます。そのため、経理担当者だけでなく、経営分析が求められる営業担当者や、管理職の方にもおすすめです。

また、すでに日商簿記の資格を保有している方は、本資格において簿記の知識が有利に働きます

ビジネス会計検定とのダブルライセンスによって、知識と実務スキルの両方をアピールできるでしょう。

経理・財務スキル検定(FASS)

経理・財務スキル検定(以下、FASS)は、経理・財務関連業務における実務のスキルを客観的に証明するための資格です。

FASSは「経理・財務人材育成事業」として設置され、経済産業省の委託により、一般社団法人日本CFO協会が試験を実施しています。

FASSの特徴は、専門的な知識を高めることよりも、実務におけるスキルの向上を重視している点です。そのため、FASSの取得により、経理・財務に関する実務的な能力を裏付けることができます

すでに経理職に従事している方は、本資格によって実務のスキルを高めることができます。また、経理職への就職・転職を検討している方は、即戦力としての評価を得られやすくなるでしょう。

経理事務パスポート検定(PASS)

経理事務パスポート検定(以下、PASS)とは、事務の現場で求められる実務知識に焦点を絞った資格です。PASSは、一般社団法人日本CFO協会と株式会社パソナによって共同開発されました。

経済産業省が公表する「経理・財務サービススキルスタンダード」に基づき、実務のレベルに応じて、3級から1級までが設けられています。

PASSの特徴は、FASSよりもさらに範囲が限定されていることです。

また、PASSでは、eラーニングによる研修・問題演習・認定試験がセットで実施されます。そのため、特に実用性の高いスキルだけを、短時間で無駄なく取得できます。

PASSは、人材派遣などで即戦力をアピールしたい方や、実務スキルを示したい経理事務未経験者の方におすすめの資格です。

また、経理事務のスタッフを雇用する企業が、従業員教育の一貫としてPASSを取り入れるケースも見られます。

給与計算実務能力検定

給与計算実務能力検定は、給与計算の実務に求められる知識や、能力を認定する資格です。

給与計算実務能力検定試験は、一般財団法人職業技能振興会と一般社団法人実務能力開発支援協会によって実施されます。

給与計算実務能力検定の取得においては、労働法令や税法に関するさまざまな知識が求められます。また、労務コンプライアンスの理解や、人事労務担当者としての実務能力も必要です。

従業員数の多い大企業では、経理担当者が給与計算を行うことは少ないかもしれません。しかし、中小企業では、給与計算・経理・総務などの兼務を求められる場合があります。

給与計算実務能力検定を取得していることで、バックオフィスに関するビジネススキルを評価されるでしょう。

また、人事労務に関する知識があると認められるため、未経験で転職を目指す際にも有利です。

MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)

マイクロソフトオフィススペシャリスト(以下、MOS)とは、エクセルやワードをはじめとするMicrosoft Office製品の操作スキルを証明するための資格です。

MOSの試験は、Officeのバージョンごとに実施されます。また、ワードとエクセルに関しては、上級レベルの「スペシャリスト」・一般レベルの「エキスパート」の2つのレベルが設置されています。

経理事務において、ワード・エクセルの操作スキルは不可欠といってもいいでしょう。MOSを取得することで、これらのツールをスムーズに使いこなせるスキルが身に付くため、業務の効率化が期待できます。

また、MOSの資格を履歴書に記載することで、「事務に強い人」という印象を与えることができます

そのため、経理事務を含めたさまざまな事務職において、転職の際の強みとなるでしょう。

海外で活躍したい方におすすめの経理の資格

ここでは、海外で活躍したい方におすすめの経理の資格を3つ紹介します。

  • 米国公認会計士試験(USCPA)
  • 米国公認管理会計士(USCMA)
  • 米国税理士(EA)

それぞれ詳しく解説します。

米国公認会計士試験(USCPA)

米国公認会計士試験(U.S. Certified Public Accountant)(以下、USCPA)は、米国で公認会計士を名乗るために必要な資格です。

日本と外国とでは法律や会計基準が異なるため、日本で公認会計士の資格を取得していても、日本以外の国では公認会計士を名乗ることができません。米国で公認会計士業務に携わりたい方は、USCPAの取得が必要となります。

USCPAは、世界規模の知名度を誇る会計資格です。

また、米国の資格ではあるものの、日本国内で受験することが可能です。ただし、試験はすべて英語で出題されるため、一定以上の語学力が前提となります。

USCPAの取得により、外資系企業への転職や、米国監査法人への就職などが見込めます。そのため、公認会計士としてグローバルに活躍したい方におすすめの資格です。

公認会計士として海外で活躍の場を広げたい方は、ぜひチャレンジしてみましょう。

米国公認管理会計士(USCMA)

米国公認管理会計士(U.S.Certified Management Accountant)(以下、USCMA)とは、米国での管理会計業務に役立つ資格です。米国では、USCPAと並ぶ2大会計資格として知られています。

USCMAの試験は、米国管理会計人協会(Institute of Management Accountants)によって実施されます。

USCMAは英語で試験が行われるため、管理会計の知識に加え、語学力が必要です。また、USCMAの受験には、大卒資格や実務経験などの条件が定められています。

USCMAは、管理会計の専門家として国際的に活躍したい方におすすめの資格です。

USCMAは権威のある資格であり、会計や監査に関する高度な能力に加え、一定の英語力も証明できます。そのため、外資系企業や現地法人などでの就労を目指す方にも適しています。

米国税理士(EA)

米国税理士(Enrolled Agents)(以下、EA)とは、米国の内国歳入庁(IRS)が認可する国家資格です。EAの取得によって、米国居住者の税務申告を代行することができます。

学歴などの受験資格が定められておらず、18歳以上なら誰でも受験できます。

EAは米国以外にも、日本・インド・イギリス・韓国・カナダでの受験が可能です。ただし開催日によって受験可能な場所が異なるため、詳しい内容は公式サイトを確認しましょう。

EAの取得により、語学力と米国における税務のスキルを示せます。そのため、米国と取引がある大手企業や、米国内での就労を目指す方におすすめです。

また、USCPAと一部共通の試験範囲が含まれるため、ダブルライセンスによって、より高度な知識をアピールできるでしょう。

経理の資格は独学可能?

経理におすすめの資格は多くあり、難易度もさまざまです。

独学で取得できる資格もありますが、難易度が高いものは予備校や通信講座の活用がおすすめです。

例えば、比較的難易度が低いFP3級や日商簿記3級であれば、独学でも取得しやすいでしょう。

しかし、日商簿記2級以上や、さらに上の国家資格を目指す場合は、多くの勉強時間を要します。資格によっては、複数回のチャレンジが必要になるケースもあり、挫折してしまう方も多くおられます。

資格取得までに長い時間がかかってしまうと、モチベーションの維持は困難です。また、資格取得を前提としたキャリアプランの遅延にも繋がりかねません。

働きながらスキルアップを目指したい方にとって、勉強時間の確保は大きな負担となります。

勉強時間の確保が難しい場合には、予備校や通信講座を活用することで重要なポイントを効率よく学び、最短距離での資格取得を目指しましょう。

経理におすすめの資格一覧!まとめ

本コラムでは、経理におすすめの資格を紹介しました。

以下に、紹介した資格を一覧で記載します。

日商簿記検定日商簿記3級
日商簿記2級
日商簿記1級
日商簿記以外で
経理におすすめの資格
公認会計士
税理士
FP(ファイナンシャルプランナー)
ビジネス会計検定
経理・財務スキル検定(FASS)
経理事務パスポート検定(PASS)
給与計算実務能力検定
MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)
海外で活躍したい方に
おすすめの経理の資格
米国公認会計士(USCPA)
米国公認管理会計士(USCMA)
米国税理士(EA)

経理業務に役立つ資格は多くありますが、資格の内容や難易度はそれぞれ異なります。資格取得を目指す際は、取得の目的や、将来の目標を明確に定めておくことが重要です。

また、経理に関連する資格の中には、難易度が高いものも多く存在します。そのため、独学にこだわらず、必要に応じて通信講座や予備校を活用するのがおすすめです。

本コラムを参考に自分に合った資格を選び、キャリアアップを目指しましょう。

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