公務員に転職する際の給与は、それ以前に働いていた期間によって号俸が変わる「職歴加算」が加味されます。

職歴加算について理解できれば、公務員になった際の給与の目安が判断できるため、転職の際の参考となるでしょう。

そこで今回は、公務員の職歴加算について解説しています。是非参考にしてください。

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公務員の職歴加算とは?

公務員の「職歴加算(前歴加算)」とは、中途採用で公務員になった際に、採用前の経歴が公務員の給与に反映される制度です

具体的には、民間企業やほかの公官庁で働いた期間に「換算率」を乗じた年数分働いた職員と同程度の給与水準となります。

例えば、換算率が1.0の民間企業で10年間働いた場合は、採用された自治体の10年目の職員と同水準の給与となる仕組みです。

換算率は各自治体によって異なる部分がありますが「公務員の仕事に直接関係する仕事」である場合、1.0である場合が多いです。

一方で「公務員の仕事に直接関係ない」といった場合は0.8といった加算率が適用されます。

国家公務員と地方公務員での職歴加算の違い

国家公務員と地方公務員の職歴加算の大きな違いは「加算率」です

例えば、国家公務員の職歴加算の加算率は以下のようになっています。

経歴職歴加算率
公務員として同種の職務に従事した機関1.0
公務員として類似する職務に従事した期間1.0以下
公務員として従事したその他の期間0.8以下(部内の他の職員との均衡を著しく失する場合は、100/100以下)
民間企業の職務が公務員の仕事に直接役立つと認められる場合の期間1.0以下
民間企業の職務が公務員の仕事に直接役立つと認められない場合の期間0.8以下
教育機関への在学期間1.0以下
その他の期間(無職など)0.25以下
国家公務員の経験年数換算表

※参考:人事院規則九―八(初任給、昇格、昇給等の基準)

国家公務員の換算率は上記の通りですが、地方公務員の換算率は異なる場合があります。

一例として東京都の換算率は以下のようになっています。

経歴の種類職員の職務との関係具体例換算率
(官公庁)
国家公務員、地方公務員又は公共企業体、政府関係機関若しくは外国政府の職員としての在職期間
職務の種類が同種のもの市役所事務10
(官公庁)
国家公務員、地方公務員又は公共企業体、政府関係機関若しくは外国政府の職員としての在職期間
その他のもの
(=異種)
警察官、
消防士
8
(民間)
民間における企業体、団体などの職員としての在職期間
職務の種類が同種のもの民間企業事務(内勤)10
(民間)
民間における企業体、団体などの職員としての在職期間
その他のもの
(=異種)
販売員5
東京都の前職加算率一覧

※参考:第4章 現行制度の運用状況と制度的課題|東京都の人事

このように、一言で職歴加算といっても採用先によって換算率が変わります

その結果、自身の初任給が大きく変動する可能性もあるため、事前に受験先の換算率を確認しましょう。

民間企業から公務員に転職した場合の職歴加算はいくら?

民間企業から公務員に転職した際の換算率は概ね以下のようになっています。

  • 民間企業の職員として、公務員の職務に直接関係する仕事をしていた期間:1.0
  • 民間企業の職員として、公務員の職務に直接関係しない仕事をしていた期間:0.8

例えば東京都の職員に転職する場合で、以下の経歴をもっていると仮定します。

  • 民間企業勤務(公務員の職務に直接関係する):6年
  • 民間企業勤務(公務員の職務に直接関係しない):5年

この場合の職歴加算は「10年」になります。計算方法は以下の通りです。

  • 6年+(5年×0.8)=10年

つまり、10年目の職員と同水準の給与となる計算です。

ちなみに東京都職員の35歳(経験年数15年)の給料月額は「322,200円」で、平均給与は「386,640円(令和7年時点・大学卒)」です。
平均給与に各種手当を含んだ額が最終的な給与となります。

東京都職員の大卒程度の初任給が270,600円(地域手当含む)であるため、職歴加算の影響は非常に大きいことがわかります。

また、国家公務員の場合も基本的な計算は同じです。
ただし、換算率の影響で職歴加算が変動する可能性がある点に留意しましょう。

なお、職歴加算はあくまでも「認められた場合にのみ」適応される制度であるため、必ずしも紹介した額になるわけではない点に注意が必要です。

※出典:東京都人事委員会公式ホームページ | 給与決定と算出のしくみ

公務員から公務員に転職した場合の職歴加算はいくら?

公務員から公務員に転職する際の換算率も、民間企業同様1.0~0.8となっている場合が多いです。

基本的には民間企業のケースと同じように計算を行います。

  • 公務員として、転職後の職務に直接関係する仕事をしていた期間:1.0
  • 公務員として、転職後の職務に直接関係しない仕事をしていた期間:0.8

例えば、東京都の職員に転職する場合で、以下の経歴を持つ方の職歴加算は15年となります。

  • 学校教員:11年
  • 非常勤講師:8年

計算方法は以下の通りです。

  • 11年+(8年×0.5)=15年

そのため、この方の給与水準は勤務15年の職員と同程度となります。

なお、東京都の勤続年数15年時点の平均給与は「330,799円(令和6年・大学卒)」です。
ここに各種手当が加わった額が最終的な給与となります。

国家公務員の場合も基本的な計算は同じですが「非常勤」や「無職」といった期間の加算率は各自治体によって扱いが大きく異なるため注意が必要です。

なお、民間企業からの転職と同様に、職歴加算はあくまでも「認められた場合」にのみ適用される制度です。

必ずしも上記の額になるわけではない点に注意しましょう。

公務員に中途採用で転職したときの給料

公務員から公務員へ転職、または民間企業から公務員へ転職した場合の給料と年収について紹介します。

中途採用者に特化した平均給与や年収は公開されていませんが、経験年齢別の平均給与から転職した場合の給与水準を推測することが可能ですのでご参照ください。

地方公務員に転職して中途採用された場合の平均給料

地方公務員に中途採用された場合の平均給与月額は、約25万円~約33万円と考えられます。

令和6年度地方公務員給与の実態によると、経験年数が10年未満の場合、全地方公共団体の一般行政職(大学卒)の経験年齢別平均給与月額は200,048円~253,527円でした。

平均給料月額には諸手当(約7万円~8万円)が加算されていないため、ご留意ください。

経験年数平均給料月額
1年未満200,048円
1年以上2年未満205,456円
2年以上3年未満211,382円
3年以上5年未満221,390円
5年以上7年未満235,248円
7年以上10年未満253,527円

職歴加算には証明書が必要

公務員に転職する際に職歴加算を受けるためには、以前勤めていた際の在職証明書の提出が必要となります

在職証明書は基本的に人事課から発行されます。

用紙については、転職先で指定されているケースが多いです。

採用前に案内があるかとは思いますが、受験先の情報を個別に調べておきましょう。

また、会社の倒産といった理由で在職証明書が発行できない場合は、以下の用紙の提出を要するケースが多いです。

  • 自己作成した在職証明書
  • 証明書の内容を補足できる書類

ほかにも、前職が会社員以外であった場合に職歴加算を受けるためには、以下のような提出書類を要します。

  • 教育機関在籍:卒業証明書
  • 個人事業主:自身で作成した在籍証明書・申告内容を補足できる書類

なお、各種証明書を提出できない場合は、職歴加算が適用されない恐れがあるため注意しましょう。

公務員の職歴加算によくある質問

職歴加算の制度になじみのない人は多いため、さまざまな疑問が生じるでしょう。

そこでここでは、公務員の職歴加算でよくある質問にお答えします。

在職期間が1年未満の場合はどうする?

在職期間が1年未満の端数が生じる場合の取り扱いは自治体によっても異なります。

全期間を計算に参入できる場合が多いですが、中には在職期間が9か月以上であれば切上げするケースなども存在するため、詳細は受験先ごとに確認しましょう。

しかし、換算率を乗じた後の年数については切捨てになるケースが多い点に注意が必要です。

アルバイト・パート経験も職歴加算に入る?

アルバイトやパートの経験も職歴加算に含まれるケースが多いです

ただし、1週間の勤務時間や継続した勤務期間に条件を設ける自治体もある点に留意しましょう。

また、換算率も自治体によるため、受験先の個別情報の調査は必須といえます。

職歴加算は退職金にも影響する?

職歴加算は給与に影響を及ぼすものであり、退職金には影響しません

退職金を決定する主な要素は「退職理由」「退職時の給与」「勤続年数」です

基本的に勤続年数が長くなるほど退職金も増加する傾向にあるため、転職を考えている方は早めに行動するのがおすすめです。

まとめ

今回は公務員の職歴加算について解説しました。

民間企業やほかの公官庁で働いていた場合、前職の経験が転職後の給与に反映されます。

多くのケースでは、前職の在職期間と同様の期間を公務員として働いた場合の給与水準となります。

詳しい加算率は各自治体によっても変動するため、自身の受験先の情報を正しく理解しましょう。

職歴加算について理解が深まれば、公務員に転職すべきか否かを判断するひとつの材料ともなるため、是非参考にしてください。

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この記事の執筆者 渡邉新太

渡邉新太(わたなべ あらた)

大学現役時に以下の公務員試験に独学で合格。
・国家公務員一般職
・国税専門官
・東京特別区
・地方上級(地元県庁)

そして、公務員としての勤務を経た後に、フリーランスのWebライターとして独立。
現在は公務員時代の知識や経験を活かして、多くの方の人生の選択に役立てるよう日々奮闘しています。

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