私が扱う案件の8割ほどを占めるのがこの「建物表題登記」です。

大手ハウスメーカーさんと提携している事務所では1日に何棟も申請するのではないでしょうか。

おおまかな一連の流れとしては下記の通りです。

  1. お客様からの登記依頼
  2. 必要資料を入手
  3. 資料調査
  4. 現場調査
  5. 図面作成
  6. 必要書類の手配
  7. 登記申請
  8. 登記完了後納品
  9. 領収証作成・送付

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「建物表題登記」普通建物・戸建住宅の一連の流れ

1.お客様からの登記依頼

弊社の場合このお客様(ハウスメーカー)とは取引実績が多数あり案件の金額が決まっているため、見積書の作成が省略されます。

依頼の際の大事な確認事項が「登記の完了日」です。

現金でのお支払いや提携ローンでのご契約の場合は、物件の引渡し後に表題登記を申請するので特に問題は無いのですが、「○月○日に融資実行なのでその日までに表題登記を完了させるように」等、諸事情により登記の完了日に制限がある場合があります。

そのような時は完了日から逆算して表題登記を申請しなければならず注意が必要です。

管轄登記所の所要日数を毎日確認しながら申請日を決定します。

2.必要資料を入手

確認済証・確認申請書・設計図面等がまとめられたファイル、その他の必要資料(当該地の公図、地積測量図、土地登記事項等)を入手します。

3.資料調査

入手した各種資料を調査します。確認申請書から登記申請に直接係わる項目である、建物の「種類・構造・床面積」「所在地」「所有者」と、書類の手配時に必要な「工事施工会社」等案件の詳細を調査します。

また図面上で建物の形状を拾い確認申請の形状・床面積との差異が無いかを確認します。

これは建築基準法での床面積の算出の仕方と不動産登記法での床面積の算出の仕方が異なる場合があるためです。

2階のベランダの一部分を確認申請では床面積に算入しているが、不登法では当然のことながら算入されない、ということがたまにあります。

さらに図面上の出窓・吹き抜け・ベランダ・小屋裏等を拾い出し、現場での確認項目とします。

この資料調査と次の現場での調査が、仕事の7割から8割ほどを占めているように感じます。

4.現場調査

予め工事担当者に現場調査に伺う旨を連絡し、キーボックスの場所や番号を確認しておきます。

まずは地図(通常は公図を使用しますが、この現場は14条地図が備え付けられていました)・地積測量図で現地を特定します。

検査済証が発行されている場合は建物の寸法を測ることはしませんが、この案件は翌日が検査のため建物の寸法と当該地における配置寸法(離れと呼んだりします)を採寸。

図面と照らし合わせて内部各部屋の位置・形状と確認項目を調査し、調査報告書(調査士の試験勉強的には法定添付書類ではありませんが実務では必ず提出します)に添付するために外観と内部の写真撮影。

電気がつかない時は雨戸を開け室内を明るくして撮影します。

この現場には小屋裏がありました。

階層・床面積に算入するには条件がありますよね。

下の写真のように高さを確認します。

弊社では採寸している写真までは添付せず報告書に高さを記載するだけですが、今までのところ法務局から問い合わせがあったり、却下されたことはありません。

5.図面作成

現場調査の結果を基に建物図面・各階平面図を作成し、確認申請と登記申請の床面積の差異をチェックします。

案件の9割は確認申請と登記申請の面積が同じになりますが、資料調査の欄に書いたように差異が生じることもあります。

登記の申請後や完了後に金融機関から「確認申請と登記申請の面積が違うのはなぜですか?」といった問い合わせが入るので、「~の部分については登記法上床面積に算入できないためです」と対応できるように準備しておきます。

6.必要書類の手配

登記申請に必要な書類(委任状・住民票・申請人の身分証明書・工事完了引渡証明書等)を作成し各所に手配します。

工事完了引渡証明書は施工会社の書式で発行される場合もあるので、その辺りを確認しながら手配することになります。

7.登記申請

建物表題登記の法定添付書類は「建・各・住・所・代」です。

建物図面・各階平面図・住民票・所有権証明書(・確認済証・工事完了引渡証明書・通常の案件では検査済証を併せて添付しますが本件は添付できず)・委任状と調査報告書を揃えオンライン申請。

添付書類は郵送する「半ライン」です。

8.登記完了後納品

登記完了後「登記完了証」「住民票」(原本還付しています)「建物図面・各階平面図(職印押印)」「請求書」を納品し、借りていた資料ファイルを返却します。

9.領収証作成・送付

費用の入金確認後「領収証」を作成・送付します。

案件により各作業の順番が多少前後することもありますが、以上がおおよその作業の流れとなります。

今でこそ数をこなしたおかげでスムーズに進められるようになりましたが、当初はわからない事だらけで失敗も多々ありました。

ミスは恥ずかしいですが、次は同じ間違いをしないように経験値と作業速度を上げるしかありません。

様々な失敗を基にいまどのような点に注意しながら作業しているかを紹介します。

我々はその資格名に『調査士』を冠している以上、登記を申請すべき不動産について「調査すること」が仕事の根幹であり、調査の対象は各種資料と現実の不動産(土地・建物)です。

まずは各種資料を入手しなければなりません。

書類では[確認済証][確認申請書]発行されていれば[検査済証][土地または建物の売買契約書の写し]など、図面は名称が異なる場合がありますが、[案内図][配置図][計画概要][面積表][各階の平面図][立面図][矩計図]など、また当該地の[公図][地積測量図][土地登記事項]は必須です。

次に入手した各種資料の内容を確認・調査。登記記録に記載される登記事項については特に注意を要します。

[確認申請書]の[建築主][用途][構造][床面積][屋根]などは申請内容に直結するので見逃すことは許されません。

[工事施工者]は後述の工事完了引渡証明書の発行元として確認します。

また、[建物の所有者]を把握する必要があります。

[建物の所有者]とは「当該建物の建築費用・工事代金を支払った者」のことです。

所有者は単独なのか、共有なのか。2名以上の共有であれば表題登記には持分を記載して申請しなければならず、持分が等分の割合(2名なら2分の1ずつ、3名なら3分の1ずつ以下同じ)でない時は[持分確認書]に実印で押印のうえ[印鑑証明書]と併せて登記申請時に提出することとなります。

[所有権証明書]として添付される[確認済証][検査済証]は誰の名義で発行されているか、名義人は同一か。

検査機関の発行する確認済証・検査済証は公的書類と同等の扱いをするので、名義人が異なる場合は経緯がわかるように[建築主変更届]を入手しなければなりません。

当初ご主人単独名義で確認済証が発行された後に、奥様も工事代金を支払ったことにより、検査済証はご夫婦の名義で発行されたケースもあります。

この時は建築主変更届を添付し、ご夫婦の共有名義で表題登記を申請しました。

工事施工会社が発行する[工事完了引渡証明書]については弊社の書式で良いのか、先方の書式で発行してもらうのかを確認しながら手配します。

これまでに経験したのは次の3パターンです。

1 建築主が個人Aさん・工事会社B社 Aさん名義で登記申請の場合

引渡し時にB社からAさんに対して[工事完了引渡証明書]が発行されます。

上記の[工事完了引渡証明書]を所有権証明書として添付します。

2 建築主がB社・工事会社がC社 B社が個人Dさんに販売しDさん名義で登記申請の場合

引渡し時にC社からB社に対して[工事完了引渡証明書]が発行されます。

さらにB社からDさんへの[譲渡証明書]を発行してもらい、上記の[工事完了引渡証明書]と[譲渡証明書]を所有権証明書として添付します。

3 建築主がB社・工事会社もB社 B社が個人Dさんに販売しDさん名義で登記申請の場合

これはハウスメーカーが自社施工している場合です。

自分が作ったものを自分に納品・引渡しはできませんので、下請工事会社であるC社からB社に対して[下請工 事完了引渡証明書]が発行されます。

さらにB社からDさんへの[譲渡証明書]を発行してもらい、上記の[下請工事完了引渡証明書]と[譲渡証明書]を所有権証明書として添付します。

いずれの場合も建築主・施工会社・所有者(申請人)を正確に把握し、必要な書類を手配しなければなりません。

私は何度か手配先を間違え、書類の再作成・再手配で慌てたことがありました。

作成した書類は全て社内チェックを通します。先輩からの指摘を受けることも度々でしたが、表題登記に関してはやっとミスなく進められるようになりました。

建物は全ての案件で異なり非常にバラエティーに富んでいます。

確認申請書の[屋根]に「コロニアル葺」あるいは「繊維混入セメント板」と記載されていたら、申請は何ぶきになるかわかりますか?社内の先輩の案件では先日「張力膜屋根」を申請していました。

社内には関係法令集・登記申請マニュアル・関係書籍が山のようにあります。

不明な点はまず自分で調べてみて、それでもわからない時は先輩や本職にアドバイスを仰ぐという姿勢で今まで続けております。

先輩も本職も丁寧に教えてくれるので、「日々勉強し少しでも仕事ができるようにならなければ」と思う毎日です。

今私が最も注意しているのが、「漢字の間違い」です。「そんな単純なことか」と思われるでしょうが、表題部に所有者として記録される申請人の法人名や個人名を間違えてしまうと大変なことになります。

かつて私は、この「してはいけない失敗」をしてしまいました。次回はその時の話を紹介します。


次:【某土地家屋調査士による業務忘備録2】1日で「建物表題部所有者氏名更正登記」を完了させた話

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某有資格者による業務忘備録

2019年の12月からアガルート講座の2期生として中山先生の薫陶を受け、2020年の土地家屋調査士試験に合格しました。

現在、関東某所の調査士事務所に所属中で、主に建物の登記を担当しております。

諸般の事情により名を明かすことができませんが、これまで経験した建物の登記申請業務について備忘録として発信していく予定です。

参考にしていただける部分があれば幸いです。あくまで弊社の仕事の仕方ですので各事務所によって方法が異なる部分もあるかと思いますが、その辺りはご容赦頂きたく存じます。

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