「伝聞法則」は、刑事訴訟法の中で特に大きな論点の一つであり、司法試験でも何度も問われている最重要論点です。

しかし、伝聞法則は理解することが困難な点が多々あることに加え、実際に論述する際に伝聞法則の処理手順が独特で慣れないということもあるため、苦手意識を持っている司法試験受験生が多いのではないでしょうか。

そこで今回のコラムでは、難解な「伝聞法則」の理解を促し、処理手順についても身につけられるようになる良著である、『事例でわかる伝聞法則』についてご紹介します。

伝聞法則に苦手意識のある方、伝聞法則を得点源にしたい方はぜひご覧ください。

事例でわかる伝聞法則の内容・特徴

『事例でわかる伝聞法則』は、伝聞法則の適用が問題となる事例を数多く紹介し、その考え方の趣旨や解説を行っている本です。

著者は弁護士兼法科大学院の教授でもあるため、実務家の視点と学者の視点を踏まえた内容となっています。

多くの方が伝聞法則について理解できない、論述できないと悩む理由は、証拠構造についての理解が足りないから、要証事実の設定に慣れていないからという点に集約できるといえます。

これらに対応するため、本書は図を多用して伝聞か非伝聞かの別を解説しているため、視覚でイメージをしやすいために理解が捗ります。

また、多くの短文事例、趣旨、解説という形式で執筆されているため、まるで法科大学院の授業のように事例判断を即座に行えるため、伝聞法則に慣れるための経験値を多く得ることができます。

このように、本書は刑事訴訟法を一通り学び終えた方で、特に伝聞法則についての理解を深めたい、伝聞法則の苦手意識を払拭したいという中級者以上の方におすすめの本です。

初級者の方は、本書ではなく、他の基本書や予備校教材などを通して最低限の伝聞法則の知識を習得してから、本書を利用すると円滑に学習が進みます。

勉強への使い方

司法試験に向けた学習との関係では、まず本書を通読しながら、出題されている短文事例を自分で解く、ないし答案構成を行い、そのうえで解説を熟読するのが良いでしょう。

その際、

今回の要証事実はなにか
伝聞に当たるのか、非伝聞に当たるのか
伝聞に当たるとして伝聞例外に当たらないか
伝聞例外に当たるとしていかなる条文に当たるのか

といった、流れを意識し、自分の答案のどこに問題点、つまづきのポイントがあったのか、逐一検証していくことで、証拠構造の理解が深まるとともに、伝聞法則の思考力が格段に高まっていくでしょう。

さらに、本書は司法試験の過去問の中で伝聞法則が問われた年度の解答例も用意されています。

そのため、司法試験レベルの伝聞法則の練習もできるとともに、解答例も付いているために自学自習にも向いているといえます。

本書を一通り読み進め、最後の腕試しに司法試験過去問にチャレンジしてみましょう。きっと、自分の成長度合いを実感できるのではないでしょうか。

また、伝聞法則は伝聞か非伝聞かの思考過程がとても重要な論点です。

そのため、自主ゼミなどで議論を交わしながら読み進めて思考過程を追っていくのも有益ですし、イラストが多用されたり、読みやすい文体になっていたりすることから、自習にも最適です。

事例でわかる伝聞法則の評価

本書は伝聞法則に特化した、伝聞法則を理解し、苦手意識をなくし、さらには伝聞法則を得点源にすることも可能にしてくれる、良著です。

そして、本書はなるべく解説が冗長にならず、簡明な解説となっているため、まったく伝聞法則を学んだことのない初学者や初級者には難しいかもしれません。

むしろ、刑事訴訟法を学習し、その中で特に伝聞法則を苦手に感じている中級者や、伝聞法則を得意にしたいと考える上級者には、とても多くの学びを与えてくれるといえます。

伝聞法則が分からなくて困っているという司法試験受験生の方はぜひ手に取って利用してみてはいかがでしょうか。

【講座紹介】アガルートの「事例でわかる伝聞法則」解析講座

「伝聞ノック」で解法を習得！
伝聞法則に関する問題について解説！

『事例でわかる伝聞法則』では、テキスト掲載の全問題について、講師自身が作成した答案例を用い解説を行います。
また、補講として、テキストに掲載されていない司法試験・予備試験の伝聞法則に関する問題についても解説を行います。

司法試験｜「事例でわかる伝聞法則」解析講座