司法試験予備試験の学習で最も躓きやすいのは、「論文が書けない(書き方が分からない)」という点だと思います。

本コラムでは、司法試験の勉強をはじめたばかりの方に向けて、論文試験の答案作成で大事になる①三段論法、②ナンバリング、③答案構成について解説していきます。

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動画で分かる!【司法試験・予備試験】論文答案の肝!法的三段論法とは?|アガルートアカデミー

司法試験論文式における三段論法

法的三段論法とは

司法試験における論文答案の書き方は、三段論法が基本となります。

そもそも三段論法とは、論理学において用いられる論理的推論の型をいいます。

大前提(主に普遍的な法則)と小前提(個別の単なる事実)から結論を導き出す推論方法です。

大前提:一般的・普遍的な原理
小前提:目前の具体的な事実
結論

上記のフォーマットを下記のように用います。

大前提:全ての人間は死すべきものである。
小前提:ソクラテスは人間である。
結論:ゆえにソクラテスは死すべきものである。

これを法的判断に応用したものが法的三段論法です。

法的三段論法は、下記で構成されます。

大前提:要件→効果(法命題)
小前提:事実→要件(事実へのあてはめ)
結論:事実→効果(具体的な価値判断)

例えば、窃盗罪を規定する刑法235条を例にとって説明すると、下記のようになります。

大前提:要件A(「他人の財物を窃取」すること)→効果B(10年以下の懲役又は50万円以下の罰金)
小前提:事実C(Vの自転車を乗り捨てる)→要件Aに該当
結論:事実C(Vの自転車を乗り捨てる)→効果B(10年以下の懲役又は50万円以下の罰金)

法律答案では、この法的三段論法が守られていなければなりません。

答案における三段論法

ここまで小難しいことを書いてきましたが、特に理解する必要はありません。
答案では、以下の要領で三段論法を表現して頂ければ大丈夫です。

  1. 規範
  2. あてはめ
  3. 結論

1 規範

規範とは「あてはめの対象になるもの」です

条文そのものが規範になることもありますし、条文を解釈した結果が規範になることもあります。

例えば、民法95条2号の錯誤取消しを可否を検討する場合、①95条2号の錯誤があること、②「その事情が・・・表示されていた」(95条2項)ことなどを検討する必要があります。

このうち、①の要件を検討する時は、条文の解釈が必要ないため、条文の文言である「表意者が・・・認識が真意に反する錯誤」が規範となります(条文そのものが規範になるパターン)。
②の要件を検討する時は、一般的に条文の解釈が必要と言われているため、2項を解釈した結果である、『法律行為の基礎とした事情に関する表意者の認識が相手方に示され、相手方に了解されて法律行為の内容となっていた』かが規範となります(条文を解釈した結果が規範になるパターン)。

規範とは問題を解決するうえでの抽象的なルールくらいで認識しておくとよいと思います。

2 あてはめ

あてはめは、自分が定立した規範に対応する事実があるかないかを判断する段階です

規範が法律に関するお話だとすると、あてはめは事実に関するお話しです。

あてはめで大事なことは規範に対応したあてはめをすることです。

先ほどの95条2項を例にとると、「法律行為の基礎とした事情に関する表意者の認識が相手方に示され、相手方に了解されて法律行為の内容となっていたか」と定立したとします。

この規範に適切にあてはめをするとすれば、
①法律行為の基礎とした事情に関する表意者の認識とは本問では何かを認定し、
②それが相手方に示されたといえる事実があるか、
③相手方が了解したといえる事実があるか、
④法律行為の内容となったか、
をそれぞれ検討する必要があります。
※③と④は区別しない見解もあります。

論文を書き始めたばかりの人は、規範とあてはめを別のものとして捉えてしまうことが多く、規範とあてはめがズレてしまうことがあるのですが、あてはめは自分が定立したルールに対応する事実があるかを探す作業なので、規範とあてはめの一致は早い段階から意識できるとよいでしょう。

3 結論

結論は、あてはめの結果、規範に対応する事実がないのであれば否定の結論、規範に対応する事実があるのであれば肯定の結論を示せばよく、この点は分かりやすいと思います。

1点あるとすれば、あてはめで力尽きて結論を書き忘れることがあるので、その点だけは気を付けましょう。

法的三段論法の答案解答例を3段階で解説!

それでは答案における三段論法を具体的な問題文と解答例を用いて確認してみましょう。

上記で説明した規範・あてはめ・結論の3段階に分けて解説します。

問題文

Aは、友人から近いうちに甲土地の地価が大幅に上がるとの情報を聞いたため、そのことを甲土地の所有者Bにも伝えた上で、時価より相当高額を支払って甲土地をBから購入し、登記も自己に移転した。しかし、後にこの情報は虚偽であったことが判明した。

当該情報が虚偽であることは甲土地の付近ではある程度知られており、Bもそれを知っていた場合、AはBに対して代金の返還を請求することができるか。

※アガルート|「論文答案の書き方講座 民法第1回[2]」より

解答例「95条2項の要件該当性」

Ⅰ規範

「法律行為の基礎とされていることが表示されていたとき」(同条2項)とは、①法律行為の基礎とした事情(事実)に関する表意者の「認識」が相手方に示され、②相手方に了解されて、③「法律行為の内容」となっていたとの意味であると解すべきである。

Ⅱあてはめ

本問では、①「近いうちに甲土地の地価が大幅に上がる」とのAの認識がBに示され、②Bにもこのことが了解されて③本件売買契約が締結されているから、「法律行為の内容」となっていたといえる。

Ⅲ結論

よって、「法律行為の基礎とされていることが表示されていたとき」の要件を充足する。

まず赤字の部分が規範になります。

今回の規範は①~③の要素に分解できますので、今回はわかりやすさの便宜から番号を振っております。

次に青字の部分があてはめになります。

あてはめの①~③を見て頂くと規範の①~③と対応していることが分かると思います。これが規範に対応したあてはめのイメージになります。

最後にピンク部分が結論になります。結論はこれまで何の話をしていたかを明確するために必要であるため、簡潔かつ明確に書くようにしましょう。

司法試験論文式におけるナンバリング

1 はじめに

ナンバリングとは、答案本文を書き始める前に振られる「第1」「1」「ア」などの記号を指します

学習をはじめたばかりの方は、「どうやってナンバリング振ればいいの?」「そもそもルールとかあるの?」などの疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

2 一応のお作法

ナンバリングには一応のお作法があります。
それは「第1」→「1」→「(1)」→「ア」→「(ア)」の順番で書いていくというものです。

これは絶対のルールではないため、この順番を守らないと合格できないという性質のものではないですが、多くの受験生が上記お作法に従って答案を書くので、早い段階で身に着けておきましょう。

3 ナンバリングの振り方

ナンバリングには上記の形式的なお作法はあるのですが、それ以外に決まりはありません。

ナンバリングは自分の思考の整理を採点者に分かりやすく伝えるためのものであるため、自分が思う意味のまとまりごとに振って頂ければ問題ありません。

司法試験論文式における答案構成の書き方

答案構成って何?

答案構成とは、答案を書くための設計図のようなものです。

設計図なしに答案を書き始めると理論的な一貫性を欠いてしまったり、訂正の量が多くなって読みにくくなってしまうため、多くの受験生は答案を書き始める前に答案構成をします。

答案構成で意識する点

(1)時間を決める

試験の時間は決まってるため、いつまでも答案構成をしていると答案を書く時間がなくなってしまいます。

そのため、答案構成は○○分までみたいな感じで制限時間を設け、それを守ることが重要です。
なお、答案構成時間は科目によって異なっても構いません。

(2)結論を決める

次に意識すべき点は、答案構成で結論を決めてしまうという点です。
結論を決めずに答案を書き始めると、論理の流れが分かりにくくなることがあります。

例えば、たしかに・・・であるため肯定すべきようにも思える。しかし・・・であるから否定すべきとも思える。ただ、・・・であるため肯定すべきである。
みたいな感じで結論を決めずに答案を書くと、自分が迷っている過程がそのまま答案にあらわれてしまい、読み手からすると「この答案どっちの結論になるんだろう?」と不安になりながら読むことになります。

これは思考が定まってないことを露呈しているため、悪い印象を与えてしまいます。

そのため、答案構成段階でしっかり結論を決め、答案では
たしかに・・・であるため否定すべきとも思える。しかし、・・・であるため肯定すべきである。
といった感じで書き手の思考を綺麗に整理した形で書けるようにしましょう。

(3)分量

答案構成では、今回の答案で書く必要のある論点を抽出することになります

論点の抽出に加えて当該論点に割く分量まで決めておくと答案が安定します。

答案ではいくつもの論点を処理する必要がありますが、当該問題においてすべて重要というわけではありません。
そのため、重要度の低い論点に答案の大半を使ってしまうと、本来書くべき重要論点が書けなくなってしまい、相対的に低い評価になってしまいます。

そのような事態を避けるため、答案構成段階で、「○○の論点は1頁以内」など、大まかでよいので分量を決めておくとメリハリのついた答案になります。

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この記事の著者 富川 純樹 講師

富川 純樹 講師


関西学院大学法科大学院(未修)を卒業後,平成27年に司法試験に合格(69期)。


アガルートアカデミーでは,ラウンジ(個別指導)や受験生の受講相談も担当している。


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Twitter:@dsx79079

 

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