『契約法』は言わずと知れた名著「債権総論」の著者である中田裕康先生が、契約法分野に絞って書かれた本です。

「債権法が改正され、債権各論分野、特に契約法分野にどのような影響があるのかを学びたい。」「契約法について体系的にまとめられた基本書はないだろうか」このような悩みを持たれている受験生の方はいないでしょうか。

そのような方には、ぜひ本書を使ってほしいと思います。

以下で本書の特徴や試験での使い方について書いていきたいと思います。

『契約法(中田裕康著)』の内容と特徴

本書の特徴としては、

• 改正法の概要とその取り扱いのみならず、改正に至るまでの経緯や流れがきちんと記されていること
• 判例と通説の解説にとどまるのではなく、それらに対する著者の意見や他の学説にまでしっかり言及されていること

が挙げられます。詳しく解説していきます。

特徴①　改正に至るまでの経緯や流れがきちんと記されている

本書では、債権法の改正部分について解説がなされているのはもちろんのこと、なぜ改正されるに至ったのか、その経緯まで詳しく解説が付せられています。

もちろん、試験との関係では改正部分のみ知っておけば良いという考え方もあるかと思います。

しかし、改正に至る流れまで知っておく、ということは改正法の趣旨を知るという点では非常に有用であると考えています。

歴史を学ぶことで、覚えなければならない改正法のことをしっかりと理解した上で頭の中に入れることができます。

ですから、本書の改正法に関する記述は、法律の歴史などに興味がある方にはもちろん、そうでない受験生の方々にとっても魅力的であるといえるでしょう。

特徴②　著者の意見や他の学説にまでしっかり言及されている

②については、上述した「債権総論」も同じなのですが、中田先生の著書は非常に多岐にわたる学説について解説がなされています。

判例・通説だけを勉強して司法試験に合格したいと考える受験生の方も多いことは筆者も重々承知しております。

しかし、近年の司法試験の出題傾向を見ると、司法試験委員会が、判例・通説のみならず学説に対する理解も受験生に対して求めていることは明らかです。

どこまで学説勉強に時間を割くかは別として、最低限の知識と理解は本書で十分可能な程度に丁寧に解説がされています。

その意味でも、本書は受験生にとって魅力的であると言えます。

司法試験の勉強での使い方

司法試験における使い方として

• 通読
• 参考書

の2種類があります。

通読

まずは、スピード感をもって本書を通読することを意識しましょう。

どの基本書学習にも共通することですが、難しくてもいちいち立ち止まらずに読み切ってしまうことが重要です。

なぜなら、基本書通読の目的は、その科目の概要を把握することにあるからです。

その意味では、本書の特徴でもある学説に関する解説部分は一週目の段階では読み飛ばしても良いのかもしれません。

科目の概要を掴むという観点からすると判例・通説部分の解説を流し読みするだけでも十分です。

参考書としての活用

問題演習をこなす中で難しかったところ、理解が浅いと感じたところについて参考書的に読み直してみてください。

その際に注意することは、

• 該当の箇所に絞って読む
• 他の学説に関する解説部分も丁寧に読み込んでいく

ことです。

この時点ではある程度契約法に対する理解も深まっていることでしょうから、しっかり集中して難しい部分にも立ち向かっていきましょう。

この、「浅く広く」から「狭く深く」の意識をもって本書に取り組んでいただければ、高い学習効果が期待できるかと思います。

『契約法(中田裕康著)』の評価

以上の通り、本書は受験生にとてもオススメできる一冊となっています。特に、契約法の分野については、ここまで体系的に書かれた基本書は多くないと思います。

既出の「債権総論」をすでに使用している方はもちろん、そうでない方にとっても、とても有益な一冊でしょう。

ぜひ本書を手に取って、勉強に役立てていただければと思います。