「高卒でも弁護士になれるのだろうか?」と悩んでいる方は少なくありません。

しかし、大学に行っていないからといって、弁護士の夢を諦める必要はないのです。

実際に、高卒で司法試験に合格し、弁護士として活躍している人も存在します。

とはいえ、具体的なルートや合格率、年収などが気になる方も多いのではないでしょうか?

このコラムでは、高卒で弁護士になる最短ルートや合格者の割合、年収事情、メリット・デメリット、勉強法まで詳しく解説します。

弁護士を目指す全ての方にとって、有益な情報となっていますので、ぜひご覧ください。

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高卒で弁護士になる最短ルートとは?

高卒で弁護士になるには、2つのルートがあります。1つは大学を経て法科大学院に進学する「法科大学院ルート」、もう1つは大学に進学せずに司法試験の受験資格を得られる「予備試験ルート」です。

法科大学院ルートは、大学受験・4年間の大学生活・さらに法科大学院での2~3年間の学びが必要となり、最短でも7年程度の時間がかかります。

一方、予備試験ルートは、予備試験に合格すれば大学を経由せずに司法試験の受験資格を得られるため、学費や時間を大幅に削減できます。

そのため、高卒から最短で弁護士を目指すなら、予備試験ルートが断然おすすめです。

ただし、試験の難易度は非常に高いため、計画的な学習が欠かせません。

高卒で弁護士になった人の割合は?

令和7年の司法試験合格者数は1,581人。

そのうち「高卒」で合格した人は3人で、全体のわずか0.1%に過ぎません。

高卒で弁護士になるのは非常に難易度が高い道のりであることがわかります。

また、司法試験を受験するために必要な予備試験の合格率も高卒か否かにかかわらず、3~4%と非常に低く、全国トップクラスの努力と学力が求められます。

これらの数字から、高卒から弁護士になることのハードルの高さが伺えます。

ただし、不可能ではありません。合格者がゼロではないことが、それを証明しています。

※参考:令和6年司法試験予備試験

高卒で弁護士になった人の年収は?

高卒で弁護士になった人の年収に関する公式データは存在しませんが、他の弁護士と比べて特別に低くなる理由はありません。

厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によれば、高卒の平均年収は346万6,800円。

一方、日本弁護士連合会の調査によると、弁護士全体の平均年収は1,119万円です。

仮に高卒でも司法試験に合格して弁護士として働ければ、年収が約3倍以上に跳ね上がる可能性があります。

これは、学歴に関係なく「資格」が評価される職業ならではの特徴です。

弁護士になることができれば、学歴の壁を大きく越え、経済的にも飛躍的なステップアップが期待できます。

※参考:令和6年賃金構造基本統計調査の概況

近年の弁護士の活動実態について – 日本弁護士連合会

高卒で弁護士になるメリット

高卒で弁護士になるメリットは、「年収をあげられる」「高卒から弁護士という経歴が武器になることもある」「一生ものの資格を得られる」ということです。

学歴に関わらず、実力や努力によって評価される点は大きな魅力です。

また、弁護士資格を取得すれば独立や転職の選択肢も増え、自分の人生を主体的に切り開ける可能性が広がります。

年収をあげられる

高卒で司法試験に合格し、弁護士になれば、平均的な高卒者よりも大幅な年収アップが見込めます。

前述の通り、高卒の平均年収は約346万円。

一方で、弁護士の平均年収は1,100万円を超えます。

年収ベースで見れば、約3倍もの差があるのです。

学歴によって収入が制限されがちな世の中で、資格によって収入を大きく変えられる職業は希少です。

高卒から弁護士という経歴が武器になることも

司法試験は難関国家試験のひとつ。

その試験に、大学に通わず合格したという事実は、それ自体が一種の「ブランド」になります。

弁護士としての就職活動や、開業後の営業においても、「高卒から弁護士になった努力家」として注目されることがあるでしょう。

多くの人が通らない道をあえて選び、乗り越えた経験は大きな武器です。

一生ものの資格を得られる

弁護士資格は、合格すれば生涯有効です。

法律事務所に勤務するだけでなく、企業の法務部や大学の教員、公務員など、さまざまな進路が広がります。

また、年齢にかかわらず仕事を続けやすいため、長期的に安定したキャリア形成が可能です。

自分の努力で「一生使える国家資格」を手にできるのは、大きなメリットといえるでしょう。

 高卒で弁護士を目指すデメリット

高卒で弁護士を目指す際のデメリットは、やはり難易度の高い予備試験を突破しなければならないという点です。

予備試験は法学部に在籍している学生にとっても超難関といえる試験であるため、大学の授業などで法律の基礎を学べる環境がない場合はさらに難しくなります。

また、周囲に同じ目標を持つ仲間が少ないと、孤独感が強くなり、途中で挫折してしまう可能性も高くなります。

そのため、強い意志と継続力が求められます。

このように高卒で弁護士を目指すデメリットは、難関試験に原則一人で立ち向かわなければならないという点にあるでしょう。

高卒から弁護士になるまでの流れ

先のとおり大学に進学せずとも、予備試験ルートであれば高卒で司法試験の受験資格を得ることができます。

高卒で弁護士になる流れは「1.予備試験に合格する」「2. 司法試験に合格する」「3. 司法修習と司法修習生考試(二回試験)を受ける」「4.弁護士会に登録する」「5. 就職する」となります。

 1.予備試験に合格する

司法試験の受験資格を得るためには、予備試験の合格が必要です。

予備試験は以下の3段階に分かれています。

短答式試験(マークシート式)

実施時期:7月頃

出題形式はマークシート式。

出題科目は以下のとおりです。

  • 民法
  • 商法
  • 民事訴訟法
  • 憲法
  • 行政法
  • 刑法
  • 刑事訴訟法
  • 一般教養科目

 合計270点満点

論文式試験(記述式)

実施時期:9月頃

出題科目は以下のとおりです。 

  •  法律7科目(憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法・行政法)に加えて、選択科目1つ(倒産法、租税法など8科目から選択)
  • 法律実務基礎科目(民事・刑事)

 合計10科目が課されます。記述式で、A4用紙4枚分(約2000~4000字)の論述が求められます。

口述試験(面接形式)

実施時期:1月頃

対象科目は、法律実務基礎科目(民事・刑事)の2つ。

各科目15~30分の面接形式で、法的知識や応答力、判断力を問われます。

面接官とのやり取りの中で、実務的な思考ができるかどうかを評価されます。

2. 司法試験に合格する

予備試験に合格した後、司法試験を受けることができます。

司法試験は年1回、7月に実施されます。

論文式試験(記述式)

3日間にわたって実施されます。

出題科目は以下のとおりです。

  • 民法
  • 商法
  • 民事訴訟法
  • 憲法
  • 行政法
  • 刑法
  • 刑事訴訟法
  • 選択科目1つ

配点は800点満点。

短答式試験(マークシート式)

出題形式はマークシート式。

出題科目は以下のとおりです。

  • 民法
  • 憲法
  • 刑法

175点満点。

3. 司法修習と司法修習生考試(二回試験)を受ける

司法試験に合格した後は、「司法修習」と呼ばれる実務研修期間に入ります。

約1年間の研修で、民事裁判・刑事裁判・検察・弁護の4つを実地で学びます。

修習期間の終わりには、「司法修習生考試(二回試験)」が実施され、修習の成果が評価されます。

この試験に合格すれば、正式に法曹(弁護士・検察官・裁判官)としての資格が得られます。

4.弁護士会に登録する

司法修習修了後は、弁護士として活動するために、各地域の弁護士会に入会し、日本弁護士連合会(日弁連)の審査を受ける必要があります。

審査が通ると「弁護士登録」が完了し、正式に弁護士として活動することができます。

5. 就職する

多くの新人弁護士は、法律事務所に就職します。

その他、企業内弁護士(インハウスロイヤー)として企業の法務部門で働く人や、大学の研究者・講師、公務員などとして活躍する人もいます。

選択肢が非常に広く、活躍のフィールドは年々多様化しています。

高卒から弁護士になる!勉強法

高卒から弁護士になるには、まず、予備試験に合格する必要があります。

予備試験では、「短答式試験」「論文式試験」「口述試験」があり、それぞれの問題形式に沿った対策が必要です。

短答式試験

短答式では正確な知識が問われるため、「過去問演習」が最重要です。

正答率を上げるには、過去問を繰り返し解きながら、出題傾向を把握し、条文や判例をしっかりと理解していく必要があります。

市販の問題集や解説書を活用して、自分の弱点分野を重点的に補強しましょう。

論文式試験

論文試験では、論述の「型」を身につけ、何度もアウトプットを繰り返すことが重要です。

単なる知識ではなく、「問題文に対してどう考え、どう構成して書くか」が問われます。

模範解答を参考にしながら、自分の答案を添削してもらえる環境(予備校やオンライン添削)を活用するのも有効です。

口述試験

口述試験は、実務的な質問にその場で答える力が求められます。

過去の再現問題を使って練習し、想定問答を繰り返すことが効果的です。

口頭で自分の考えを整理して伝える力を身につけるため、模擬面接や音読などもおすすめです。

まとめ

  • 高卒でも予備試験に合格すれば司法試験を受けられる
  • 最短ルートは「予備試験 → 司法試験」
  • 司法試験の高卒合格者は0.1%程度だが、実例あり

高卒から弁護士を目指すのは、決して容易な道ではありません。

しかし、適切なルートを選び、継続的に努力すれば夢は実現可能です。

学歴の壁を超えて活躍できる資格「弁護士」は、一生のキャリアと可能性を広げてくれます。

本コラムをきっかけに、あなたの一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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この記事の著者 富川 純樹 講師

富川 純樹 講師


2010年 神戸学院大学法学部卒業
2013年 関西学院大学法科大学院(未修コース)卒業
2017年~2018年 関西学院大学法科大学院にて指導

関西学院大学法科大学院(未修)を卒業後,平成27年に司法試験に合格(69期)。
アガルートアカデミーでは,ラウンジ(個別指導)や受験生の受講相談も担当している。

富川講師の紹介はこちら

Twitter:@dsx79079

 

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