【司法試験・予備試験】短答式試験における民法の特徴

出題範囲

短答式試験の民法は、総則分野から親族相続分野まで満遍なく出題されます。

論文対策としては手薄になりがちな分野からも出題されますので、幅広い知識を身に着ける必要があります。

また、担保物権分野や相続法分野では計算が必要となる出題もあり、単純に知識があるだけでは解答できない問題も出題される場合があります。

消去法が使える

短答式試験の民法では消去法が使えます。

例えば司H26-3は、以下のような問題でした。

代理人の権限に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。

ア.売買契約を締結する権限を与えられて代理人となった者は,相手方からその売買契約を取り消す旨の意思表示を受ける権限を有する。
イ.成年被後見人が日常生活に関する行為をすることができる場合,成年後見人は,成年被後見人の日常生活に関する法律行為について成年被後見人を代理することはできない。
ウ.家庭裁判所が選任した不在者の財産の管理人は,不在者を被告とする土地明渡請求訴訟の第一審において不在者が敗訴した場合,家庭裁判所の許可を得ないで控訴をすることができる。
エ.委任による代理人は,本人の許諾を得たときのほか,やむを得ない事由があるときにも,復代理人を選任することができる。
オ.個別に代理権の授権がなければ,日常の家事に関する事項についても,夫婦の一方は,他の一方のために法律行為をすることはできない。

1.ア イ 2.ア ウ 3.イ オ 4.ウ エ 5.エ オ

この問題では、オの肢は誤りであることが比較的容易に判断できると思います。

オが確実に誤りと判断できるような場合、注目すべきは1と4です。

例えば、仮に1に含まれているアとイがいずれも「誤っているもの」だと仮定した場合、3にもイ及び(確実に誤っていると判断した)オが含まれているため、正解が二つになるという出題ミスではない限り想定できない状態になります。

したがって、この時点で1を切ることができます。

これと同様に、5との関係で4を切ることができます。そうすると、残るは2,3,5になり、オは、この問題で選ぶべき「誤っているもの」に含まれますから、3と5を優先して検討することになります。

以上のとおり、短答式試験の民法では、確実に分かる肢があれば一定程度選択肢を絞ることができるという特徴があります。

これに対し、憲法などはすべての肢の正誤を判断できないと正解に辿り着けない問題がほとんどだったりします。

※関連コラム:司法試験・予備試験の短答式試験の勉強法(総論)

【司法試験・予備試験】短答式試験における民法の勉強法

論文でも頻出の分野から固める

短答式試験の民法は先にも記載したとおり、範囲の膨大さから「何から手をつければ、、」という状態になりがちです。

この点については、まず論文でも馴染みのある分野から取り組むことをお勧めします。

たとえば、司H25-4/予H25-2のオの肢は以下のようなものでした。

夫が,日常の家事の範囲を越えて,妻を代理して法律行為をした場合,相手方において,その行為がその夫婦の日常の家事に関する法律行為に属すると信ずるにつき正当の理由があるときは,権限外の行為についての表見代理に関する規定の趣旨が類推され,妻は夫がした法律行為によって生じた債務について,連帯してその責任を負う。

この肢は論文との関係でもAランクの論点である日常家事債務と代理がそのまま肢になっています。

以上のように、短答式試験の民法では細かな知識だけが出題されるわけではありませんので、範囲の膨大さに圧倒された時には「まずは論文頻出分野から」を意識して学習を進めましょう。

似て非なる事案を正確に理解する

短答式の民法では、似ている事案だが少し違うので結論が変わるというような肢がよく出題されます。
このあたりの似て非なるものを正確に理解しておかないと、本番で正解することは出来ません。

例えば司H23-9の3の肢は以下のようなものでした。

意思無能力者である取引の相手方からその所有する動産を譲り受けた者も,相手方が意思無能力者であることについて善意無過失であれば,即時取得により当該動産についての所有権を取得する。

また予H28-5のイの肢は以下のようなものでした。

Aは,甲をBに売却したが,その売買契約当時,Aは意思能力を有していなかった。その後,Bが甲をCに売却し,Cは,甲がBの所有物であると過失なく信じて,現実の引渡しを受けた。この場合,Aの法定代理人は,Cに対し,甲の返還を求めることができる。

上記2つの肢は問題状況がよく似ていますが、即時取得が成立するかという点において結論が分かれます。

このように似て非なる事例は比較して理解しておかなければ現場で迷いが生じてしまいます。

そのため、普段の勉強から似て非なる事例が出てきた場合には、比較しながら結論を分ける理由を分析することをお勧めします。


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この記事の著者 富川 純樹 講師

富川 純樹 講師


関西学院大学法科大学院(未修)を卒業後,平成27年に司法試験に合格(69期)。


アガルートアカデミーでは,ラウンジ(個別指導)や受験生の受講相談も担当している。


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Twitter:@dsx79079

 

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