【司法試験・予備試験】論文式試験の憲法で問われること

「憲法適合性」を論ぜよ

かつての司法試験・予備試験の論文式試験憲法では,事例の中から「憲法上の問題」を発見し,一方当事者の「憲法上の主張」と相手方の反論を論じ,これに加えて自分の見解を示すことが要求されていました。

具体的には,事例中の法律もしくは国家の行為が憲法に違反するか否かを,判例を意識しつつ,原告・被告・私見の立場から論じさせる問題が多く出題されていました。

現在では、司法試験・予備試験ともに、端的に『憲法適合性』を問う問題が多く出題されるようになってきています。

具体的には,ある法律の憲法適合性の検討を依頼された弁護士の立場に立って,その憲法適合性,即ち,合憲か違憲かの意見を論じることが求められており,その限度において,必要に応じて,関連する判例や反対の考え方に触れることが求められています。

基本的には,「私見」を論じていくというイメージを持っておいていただければと思います。
結論は,合憲でも違憲でも良く,それを導く理由付けが,事実を引用しつつ説得的になされていれば,合格点となります。

「三者間の視点」問題と,「憲法適合性」

憲法適合性を問う場合においても,どの部分が中心的な争点になるのか(=答案の中で厚く論じることになるのか)を発見する視点として,三者間の論述をする際に用いる視点は有益です。
なぜなら,違憲の主張をすべき原告の視点と,それについて被告が反論をするか否か(=争点となるか)という視点は,憲法適合性を論じる際にも非常に重要だからです。

そこで,憲法の学習においては,基本的な判例を通じて問題点の対立を理解し,原告と被告のそれぞれの立場からどのような主張が考えられるかを日頃から意識する必要があります。
そして,これを踏まえて,まずは判例がどのような立場に立っているかを理解することが重要です。

このような学習を通じて得た視点や知識を,法律答案の基本的な作成方法である法的三段論法に落とし込んでいくことが極めて重要になってきます。

【司法試験・予備試験】論文式試験における憲法の勉強法

抽象的な学問である

憲法を苦手とする受験生が多い理由の1つとして,憲法という科目が抽象的な学問であることが挙げられます。

例えば,憲法の勉強を始めると,憲法13条は国民の幸福追求権を保障している,ということを学びます。

しかし,日頃の生活の中で幸福追求権が保障されていることを意識して生活している人はほとんどいないはずです。
そのため,幸福追求権がどのような権利なのかをなかなかイメージができず,抽象論に終始した勉強をしてしまう人が少なくありません。

また,憲法は,具体的な訴訟の中で主張されるものなのですが,どんなトラブルがあり,どんな訴訟が提起されているのかをイメージしないままに,抽象的な概念だけおさえてしまいがちです。

対立点の発見が難しい

先ほど述べた通り,司法試験・予備試験憲法の論文式試験では,原告・被告の観点から争点を発見するという視点が重要です。

しかし,問題の事例を読んでもなかなか対立点を見つけることができないという受験生の話をたびたび聞きます。

その原因としては,上述の通り,抽象論の勉強から抜け出せないことが挙げられると思います。

確かに,憲法は抽象的な学問ではあるものの,憲法上の問題は日頃の生活という生の事実から生じるものなのです。
従って,抽象論に終始した勉強をしたままでは,憲法上の対立点をなかなか発見することはできません。

※関連コラム:司法試験・予備試験の論文式試験の勉強法(総論)

【司法試験・予備試験】論文式試験の憲法における判例の使い方

憲法判例の重要性

憲法の勉強を始めると,判例が重要であるということをしばしば聞くことがあると思います。
実際に,平成27年の司法試験の出題趣旨にも「判例上で議論されている当該判断枠組みがどのような内容であるかを正確に理解していることが必要である。」と書かれています。

しかし,受験生の中には,判例が重要であることは知っているものの,なぜ判例が重要であるかを理解している人が多くないように思います。
では,なぜ憲法の勉強をする上で判例は重要なのでしょうか。

第1に,条文が少なく,抽象的な学問である憲法においては,問題を解決する上で判例が果たす役割が大きいということが挙げられます。

先ほども述べたように,憲法13条は国民の幸福追求権を保障していますが,幸福追求権とは何かについて憲法には何も書いてありません。

そこで,このような抽象的な文言を具体的に形付けてくれるのが判例なのです。
判例は,「法解釈のお手本」となるものなのであって,同一の事件においては事実上その判断が尊重されるものですから,これを学ばない手はないのです。

第2に,前述の通り,司法試験・予備試験における憲法では,原告・被告の対立を分析しつつ,憲法適合性を論じることが要求されますが,争点を論じる場合には原告と被告立場から分析した言い分を踏まえて論述をすることが求められます。

これは,問題となっている紛争について,裁判官の立場から判決を書くようなものです。

すなわち,原告と被告の対立を学ぶためには実際に問題となった紛争,すなわち判例が最も適切な素材であるということになります。

第3に,これまで述べてきたことから,現に司法試験・予備試験においても,「判例の事案」がベースとなっている問題が出題されています。

試験後に検証をしてみると,憲法を学んでいれば確実に触れるであろう基本判例が毎年出題のベースになっています。
特に,判例百選掲載判例については,その学習が不可欠になってきます。

憲法判例の勉強法

では,憲法判例はどのように勉強すればよいのでしょうか。

先に述べた通り,判例は抽象的学問である憲法を具体化することに加え,三者間の対立点を学べる点で重要です。

このことから,憲法判例を学ぶ上で,①判例の具体的な事案,②問題の所在,③それぞれの当事者の主張,④裁判所の判断を意識することが重要です。

つまり,抽象的な憲法を具体的にイメージする上では,実際にどのような事実の下で(①),憲法上の問題が生じるのか(②)を理解する必要があります。

そして,三者間の対立を学ぶために,判例で各当事者が何を主張し(③),これに対して裁判所がどのようなルールを示したか(④)を理解することが大切です。

憲法判例を自分の法律答案に落とし込む

これまでのお話で,憲法の判例の重要性は理解いただけたと思います。
では,判例の流れや,言い回しをそのままインプットして,それを答案に書いていくということになるのかといえば,そういうわけではありません。

法律答案には,条文の要件充足性を中心とした法的三段論法という,絶対的なルールが存在します。
全ての法律の上位に位置づけられる憲法においても,それは変わりません。

例えば,国家公務員の政治的行為を制約する法律が制定され,この法律に基づいて,実際に国家公務員が政治的行為を行ったために処罰されたという事案があったとしましょう。
この時にまず問題となるのは,当該法律が,表現の自由を保障した21条1項に反し違憲かという点です。
ここから,①21条1項に反するか否かの規範定立(違憲審査基準の設定等と言われます)→②事実の当てはめ→③21条1項に反するか否かの結論という大枠が設定されます。

これは,法的三段論法の流れそのものに他なりません。

また,そもそも,国家公務員の政治的行為の自由が憲法21条1項で保障されなければ,憲法適合性を論ずることはできませんから,この点を確認する必要があります。
ここも厳密にいえば,①21条1項が保障する表現行為とは何か②政治的行為が表現行為といえるのか③政治的行為が21条1項により保障されるかの結論という流れになります。

このような枠組みの中に,判例の判旨や,キーフレーズを落とし込んでいくことが求められるのです。
そして,それが出来れば,「判例を踏まえた論述」がされていると判定されます。

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この記事の著者 谷山 政司 講師

谷山 政司 講師

平成23年度に(新)司法試験に合格後、伊藤塾にて主に予備試験ゼミを中心とした受験指導業務を担当。
谷山ゼミ受講者のうち、およそ70名ほどが予備試験に合格。谷山ゼミ出身者で、最終的な予備試験の合格率は7割を超える。

自身の受験経験だけでなく、答案の徹底的な分析やゼミ生への丁寧なカウンセリングの結果確立した論文作成ノウハウをもとに、アウトプットの仕方はもちろん、インプットの仕方までをも指導するスタイルは、ゼミ生の圧倒的支持を受けた。

また、期をまたいだゼミ生の交流会等を定期的に行うなど、実務に出た後のフォローも積極的に行っている。

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ブログ:「谷山政司のブログ」
Twitter:@taniyan0924

 

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