司法試験・予備試験を受験するに際して、だれもが悩むのが選択科目です。

選択科目の中で最も選択者が少ないのが国際公法、国際関係法(公法系)です。

そのため国際公法がどのような科目特性を有しているのか、どのような勉強法が効果的なのかはあまり広く知られてはいません。

そこでここでは、それらの点についてみていきたいと思います。

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【谷山政司講師が解説!】

アガルートアカデミー司法試験の谷山政司講師が、「選択科目」の国際関係法(公法系)の選び方について解説します。

国際公法は、受験者数全体の1%程と非常に少ない科目ですが、高得点が狙いやすい、足切りになる受験生が少ない、などのメリットもあります。

ぜひ、国際公法のメリットそして勉強法を知って、選択するか、どう学習を進めるかといった判断にお役立てください。

国際公法の特徴

選択科目のなかで最も選択者が少ない科目

国際公法の選択者は令和5度司法試験では、54名(受験者の約1.4%)であり、選択科目のなかで最も選択者が少ない科目でした。

そのため、予備校等で開講されている講座も極めて少なく、司法試験過去問の模範解答をはじめとする司法試験対策用の教材も少ないのが現状です。

したがって教材の充実度という点では国際公法は勉強しにくい科目であるといえるでしょう。

一方で選択者が少なく、受験者のレベルもそれほど高いものではないのでしっかりとした対策をすれば得点が跳ねる可能性は高いといえます。

また、最低ライン未満以下の受験者(いわゆる足切りされる受験者)の少なさも魅力的です。

現に令和5年度の司法試験では、国際公法で最低点を下回った受験生(いわゆる足切りをうけた受験生)は4人しかいませんでした。

国際公法の出題範囲

国際公法では国家間で生じる紛争や問題に関する解決策を答える問題が出題されています。

また出題範囲としては国際法、国際経済法、国際人権法の3法です。

一見出題範囲は広範に思えますが、国際人権法・国際経済法については国際法の体系に属する者に限るとの留保付きである(平成22年7月14日司法試験委員会決定)うえ、国際経済法の出題可能性は極めて低いため他の選択科目と比較したときに、出題範囲が極めて広範であるということはありません。

国際公法の勉強法

1 国際公法のインプット

国際公法の科目特性① インプットの比重が重め

国際公法の司法試験の出題は後述のとおり過去問のくりかえしが多いという特徴があります。

したがって国際公法の知識がしっかり身についていれば過去問を演習することで合格答案のレベルまで到達することができる可能性が高いといえます。

そこで国際公法の科目特性としては、過去問で繰り返し問われている基礎的な知識の正確なインプットが重要と考えられます。

国際公法の効率の良いインプットの方法

国際公法の採点実感では、繰り返し法科大学院教育に求めるものとして「国際法に関する基本的な知識と理解をしっかり身に付けることをまずは目指してもらいたい。」と指摘されています。

したがって比較的広範な国際公法系の出題範囲の中で「基本事項」の該当する範囲は何かを見極め、その部分についての理解を深めていくことが肝要です。

なお、平成31年度の司法試験採点実感では「基本事項」として「国連憲章,海洋法条約,国際司法裁判所規程などの主要な多数国間条約の関係条文の解釈,国家責任に関する理論やICJの判例などに関する理解」が指摘されています。

そこで、国際公法の 「現代国際法講義(第五版)」(有斐閣)をはじめとする基本書を用いて上記「基本事項」の理解を深めていくことが考えられます。

また、国際公法においては判例学習がとても重要になります。

答案では、事件名まで記載することが推奨されますので、「国際法判例百選(第3版)」(有斐閣)や「判例国際法(第3版)」(東信堂)などを使って判例をしっかり読み込むことが大切です。

2 国際法のアウトプット

国際公法の科目特性② 過去問演習が重要

司法試験における国際公法の出題傾向として過去に聞かれた問題点が繰り返し出題される傾向があります。

そのため司法試験との関係では過去問の演習を繰り返し行うことが極めて重要であると考えられます。

国際公法の効率の良いアウトプットの方法

先のとおり国際私法は過去問演習の重要性が極めて高いため平成18年度以降の国際公法の問題を繰り返し解くことは必須です。

また、国際公法の演習書は「《演習》プラクティス国際法」(信山社)がほぼ唯一の演習書であるといった状況です。

さらに、選択者が極めて少ない国際公法ではその受験者数の少なさゆえ、答案作成にかかるノウハウが一般に広がっていないという難しさもあります。

そこで演習の際には小手先の答案作成のテクニックに拘泥せず、法律文書作成の基本である三段論法を遵守して論述していくことが肝要であると考えられます。

※関連コラム:【司法試験・予備試験】選択科目ごとの合格率・難易度を解説!

国際公法のおすすめ基本書

初心者向けの基本書

国際法〔第2版〕(有斐閣ストゥディア

まず「国際公法ってどんなことを勉強するの?」というのをざっと概観したい場合は、『有斐閣ストゥディア 国際法[第2版]』(2022年)に目を通してみるとよいでしょう。

約200ページというコンパクトな分量で、言葉遣いも平易なため、負担なく国際法の全体像を押さえることができます。

国際法 〔第4版〕 (有斐閣アルマ)

※引用:amazon

次に「国際公法をしっかり学んでみよう」と思ったときに、最初の一冊目としておすすめするのが、『有斐閣アルマ 国際法[第4版]』(2021年)です。

司法試験対策という観点からは物足りない部分もありますが、重要な論点についてわかりやすく説明されていて、初学者向けの良書といえます。

中級者向けの基本書

中上級者向けの基本書は多数あり、どれを選んでいただいても問題ありませんが、ここでは2つの書籍をおすすめさせていただきます。

現代国際法講義[第5版] (有斐閣)

※引用:amazon

ひとつは、『現代国際法講義[第5版]』(有斐閣・2012年)です。

初学者が読みこなすのはやや骨が折れるかもしれませんが、重要論点が網羅されており、司法試験対策としても有益だと思います。
10年以上改訂されていないため、最新の国際情勢や判例等は別途補う必要があるでしょう。

プラクティス国際法講義[第4版](信山社

※引用:amazon

もうひとつは、『プラクティス国際法講義[第4版]』(信山社・2023年)です。
こちらは数少ない国際公法の演習書でもある『プラクティス国際法演習』と対をなす書籍であり、合わせて使うことで相乗効果があると思われます。
定期的に改訂がなされている点も魅力です。

これ以外の基本書もたくさんありますので、ご自身にとって読みやすくわかりやすいと思えるものを選んでいただければと思います!

※関連コラム:司法試験・予備試験におすすめの基本書50冊【15科目・目的別】

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この記事の監修者 若杉 咲良 講師

若杉 咲良 講師


平成24年に司法試験合格。
司法修習終了後、現在に至るまで早稲田大学大学院法務研究科においてアカデミック・アドバイザリー業務に従事し、過去問添削などを数多く手がけている。

また、アガルートアカデミーでは公務員試験の法律科目及び数的処理の講義も担当する他、CPA会計学院において企業法の講師もつとめる。

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