行政書士が「相続」でできることとは?司法書士の相続業務との違い
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「行政書士は、相続業務でどんなことができる?」「司法書士の業務範囲とどう違う?」と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。
行政書士が取り扱う仕事は幅広く、その中には「相続」に関連する業務も多く含まれています。
しかし、一言で相続業務といってもその内容は多岐にわたり、法律によって行政書士が「できること」と「できないこと(他士業の領域)」に分かれています。
【相続】行政書士ができること一覧▶ 行政書士ができないこと一覧▶
本記事では、相続業務に関して行政書士が取り扱える内容と取り扱えない内容などを解説します。
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行政書士が「相続」についてできること

行政書士は、相続人同士で争いのない円満なケースにおいて、事実証明に関する書類の作成や、煩雑な各種手続きの代行をトータルでサポートできます。
行政書士が相続に関連する業務でできることは以下のとおりです。
- 遺言書作成のサポート
- 相続人の調査
- 相続関係説明図や法定相続情報一覧図の作成
- 遺産分割協議書の作成
- 相続財産目録の作成
- 金融機関での相続手続き
- 相続分譲渡証書や相続分亡きことの証明書の作成
- 自動車の名義変更
遺言書作成のサポート
行政書士は、自筆証書や公正証書など、遺言書の文案作成や的確なアドバイスを通じて、法的に有効な遺言書作りをサポートできます。
遺言書とは、生前に自分の財産について、誰に何を相続させたいかの意思を記した文書のことです。
遺言書にはいくつか種類がありますが、主なものとして、自分で書く自筆証書遺言と公証人が作成する公正証書遺言があります。
遺言書は生前の意思を残す大切な文書ですが、自己流で作ると不備で無効になったり、意図と違う内容になったりするリスクを秘めています。
行政書士のサポートを受けることで、こうしたリスクを未然に防ぐことが可能です。
ただし、行政書士が行うのはあくまでも遺言書作成のサポートであり、作成そのものは本人または公証人が行わなければなりません。
相続人の調査
行政書士は戸籍の収集や読み取りなどの手間のかかる複雑な相続人の調査を、短期間で正確に完了させられます。
相続の各種手続きを行うためには、まずは亡くなった人が生まれたときから死亡までの戸籍謄本類(ケースによっては親の代まで)を集め、相続人が誰なのかを確定させなければなりません。
配偶者と子供が相続人となる場合は比較的簡単ですが、子供がいない場合や再婚している場合などは、相続関係と相続分が非常に複雑になります。
複数の役所から書類を取り寄せ、古い戸籍の内容を自分で読み取るのは困難なため、行政書士に依頼することで確実かつスムーズに調査を終えられます。
相続関係説明図や法定相続情報一覧図の作成
行政書士は、銀行などでの相続手続きの負担を大幅に軽減する「相続関係説明図」や、法務局に提出する「法定相続情報一覧図」を作成できます。
相続関係説明図とは、相続人の調査結果をもとに確定した相続人を一覧表にしたものです。
また、それに似たものとして、戸籍資料一式などと一緒に法務局に提出し、認証入りの証明資料を発行してもらうための法定相続情報一覧図があります。
法定相続情報一覧図があると、金融機関で手続きをする際に分厚い戸籍一式を毎回提出せずに済むなど、その後の手続きが簡単になります。
自分でこれらの専門的な書類を正確に作るのは難しいため、行政書士に作成を依頼すれば安心です。
遺産分割協議書の作成
行政書士は、相続人同士で争いがない場合において、相続後のトラブルを防ぐための法的に有効で漏れのない「遺産分割協議書」を作成できます。
遺産分割協議書とは、誰がどの財産を相続するかを法定相続人全員で話し合い、その決定した内容を記して全員が記名捺印しなければならない文書のことです。
相続人同士で合意していれば、特定の相続人だけが財産をすべて相続するなど、民法で決められた法定相続分や遺言書と異なる財産の分け方をすることも可能です。
専門家である行政書士に作成を依頼することで、形式や内容に不備のない確実な書面を完成させられるでしょう。
相続財産目録の作成
行政書士は、預貯金や不動産、借金など多岐にわたる財産状況を調査し、形式の整った見やすい「相続財産目録」を作成できます。
相続財産には、預貯金、有価証券、不動産、自動車といったプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含めて様々なものがあります。
それらの内容を漏れなく調査して一覧にしたものが相続財産目録です。相続人は、この相続財産目録を参照したうえでどのように財産を分けるかを話し合うのが一般的です。
行政書士が専門家の視点で正確な相続財産目録を作ることで、形式の整った見やすい目録となり、相続人同士の話し合いがスムーズに進みやすくなります。
金融機関での相続手続き
行政書士は、相続人からの委任を受けて、銀行や証券会社などの金融機関における預貯金や有価証券の解約・名義変更手続きを代理できます。
相続が発生したことが金融機関に伝わると、口座が凍結されて引き出しなどができなくなります。
そのため、残高証明書の発行を請求して財産の内容を確認したうえで、解約や名義変更の手続きを行わなければなりません。
平日の日中に行わなければならないこれらの煩雑な手続きを行政書士に任せることで、相続人の負担を軽減することが可能です。ただし、金融機関によって取り扱いが異なる場合があります。
相続分譲渡証書や相続分なきことの証明書の作成
行政書士は、遺産分割協議に参加しない場合などの特殊な事情がある際に必要となる「相続分譲渡証書」や「相続分がないことの証明書」を正確に作成できます。
相続人は、自分の相続分について他の相続人に譲渡することができ、譲渡した相続人は遺産分割協議に参加する必要がなくなります。
この譲渡を行う場合に作成するのが「相続分譲渡証書」です。
また、相続人が生前に贈与を受けたことなどから、相続分がない場合もあります。この場合には「相続分がないことの証明書」を作成します。
専門知識が求められるこれらの書類について、行政書士に作成を依頼することで、イレギュラーなケースでも手続きを滞りなくスムーズに進めることが可能です。
自動車の名義変更
行政書士は、平日の日中に運輸支局へ足を運べない多忙な相続人に代わって、自動車の名義変更手続きを代行できます。
相続財産の中に自動車がある場合、その自動車を引き継ぐためには相続人への名義変更が必要になります。
しかし、名義変更の手続きは運輸支局で平日の日中に行う必要があり、仕事などで多忙な相続人の場合、なかなか足を運べないことが少なくありません。
専門家である行政書士に手続きの代行を依頼することで、時間や手間をかけることなく、スムーズに自動車の名義変更を完了させることが可能です。
【相続】行政書士ができないことと司法書士や弁護士などの他士業ができること
行政書士は相続に関する幅広い業務をサポートできますが、他士業の業務と定められている領域には介入できません。
万が一、手続きの途中で争いが起きたり、不動産登記や税務申告が必要になったりした場合は、それぞれの専門家へ引き継ぐ必要があります。
行政書士が対応できない主な業務と、それを依頼すべき専門家(対応可能な士業)は以下の表のとおりです。
| 対象業務 | 対応可能な士業 |
| 相続税の申告 | 税理士 |
| 相続放棄の申述 | 司法書士・弁護士 |
| 遺産分割調停 | 弁護士 |
| 争いのある遺産分割協議 | 弁護士 |
| 相続登記 | 司法書士 |
| 遺留分侵害額請求の調停や訴訟 | 弁護士 |
相続税の申告
相続税の申告は誰もが必要なわけではありませんが、一定以上の財産がある場合には、相続が起きてから10ヶ月以内に相続税の申告及び納税が必要となります。
相続税の申告書作成は、税理士の独占業務であり、行政書士が行うことはできません。
また、相続税についての相談に乗ったり、申告書作成のアドバイスすることもできないため、注意が必要です。
相続放棄の申述
相続放棄は、相続財産に借金など負の財産がある場合などに、自ら相続人の地位を手放す手続きです。相続放棄ができる期間には限りがあり、基本的には相続の開始を知ってから3ヶ月以内です。
相続放棄をするためには、家庭裁判所に相続放棄申述書を提出し、受理される必要があります。
この相続放棄申述書については、行政書士が作成することはできません。
裁判所に提出する書類を作成することができるのは、弁護士または司法書士です。
遺産分割調停
相続人同士の話し合いでは遺産の分け方について話がまとまらない場合に、家庭裁判所に遺産分割調停の申し立てを行います。
家庭裁判所の調停では、調停委員がそれぞれの相続人の主張を聞きながら、合意ができるように意見の調整を図ってくれます。
この遺産分割調停に関与できるのは弁護士で、行政書士が関与することはできません。
争いのある遺産分割協議
遺産をどのように分けるのかは、円満に話し合いで合意できるとは限らず、相続人間で争いが起こってしまうこともあります。
相続人間で遺産分割で揉めている場合に、行政書士が相続人の代理人になって他の相続人と交渉したり、仲裁したりすることはできません。争いが起こっていることが判明した時点で手を引く必要があります。
弁護士以外は紛争性のある遺産分割に関与することができず、弁護士法違反になってしまうため注意が必要です。
相続登記
相続財産に不動産がある場合に、不動産の名義を換える手続きが相続登記です。
登記申請ができるのは司法書士で、行政書士が行うことはできません。
不動産を含めた相続財産についての遺産分割協議書を作成することはできますが、それを使って行政書士が相続登記をすることはできません。
本人が相続登記を申請するか、司法書士に依頼するかを選択することになります。
遺留分侵害額請求の調停や訴訟
遺留分(いりゅうぶん)とは、相続人に最低限度保証されている相続分の割合のことです。
遺留分があるのは、配偶者と子供・親で、きょうだいが相続人となる場合には、遺留分はありません。
たとえば、遺言書ですべての財産を子供Aだけに相続させるという内容だった場合には、他の相続人である子供Bや配偶者は、子供Aに対して遺留分を支払うように請求することができます。
この遺留分侵害額請求の手続きについては、一部の手続きしか行政書士は関与できません。
行政書士ができるのは、たとえば請求する相手に内容証明郵便を作成するといったところまでです。
相手が内容証明郵便を受け取って素直に応じてくれる場合にはそこで解決しますが、そうではない場合には、調停など裁判所の関与が必要な手続きに進むため、行政書士が取り扱うことはできません。
行政書士の相続業務の報酬
日本行政書士会連合会の報酬額の統計調査(令和7年度)によると、行政書士の相続業務の報酬は以下のような結果となっています。
| 遺言書の起案及び作成指導 | 平均76,855円 |
| 遺産分割協議書の作成 | 平均69,752円 |
| 相続人及び相続財産の調査 | 平均61,722円 |
| 相続分なきことの証明書作成 | 平均29,488円 |
| 相続土地国庫帰属の承認申請 | 平均113,111円 |
報酬の金額は、手続きの複雑さや相続人の人数、財産の内容などによって変わるでしょう。
難易度が高い内容であればあるほど、報酬は高くなるのが通常です。
また、相続手続きは一つだけ頼まれるというケースは少なく、相続に関わる手続きをまとめて依頼される場合が多く、それなりの大きな報酬額になることが多い傾向があります。
ただし、上述のとおり、一部の手続きは行政書士では取り扱えないため、その場合は提携する他士業などに取り次ぐなどの対応が必要です。
逆に、他士業から行政書士に相続業務を紹介されることもあります。
そのため、他士業との協力関係を築いておくことも大切です。
まとめ
相続業務は幅が広く、行政書士が取り扱える業務だけでも様々なものがあります。
相続は争いの種になりやすく、それを防ぐために遺言書の作成などの重要性が高まっています。
弁護士に依頼するほど争いがあったり多額の資産があるわけではない人達にとって、気軽に相談できる存在として行政書士のニーズはこれからも高くなるでしょう。
また、相続業務に限らず、町の身近な法律家として行政書士は活躍しています。
興味のある方は、資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。
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この記事の監修者 東 優 講師
アガルートアカデミー 行政書士 実務・開業講座担当
2005年に個人事務所を名古屋にて開設。
2007年より、愛知県行政書士会にて相続・遺言実務研修会講師を担当。
2013年に行政書士法人化し、池袋、品川、名古屋にて活動。同年より東京リーガルマインドにて実務家講演会講師を担当。
2016年より、Gネット関東にて相続・遺言実務研修会講師を担当。
その他、一般市民向けの相続、遺言、後見、終活セミナー講師多数。
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