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予備試験とは|司法試験コラム

予備試験とはどういう試験か(司法試験とはどう違うのか,受験資格・日程・試験形式・科目等はどういうものなのか・難易度や受験者数はどれくらいか),また予備試験に合格するメリット,予備試験に最短で合格するために有効な対策,などに焦点を置いて解説をしていきたいと思います。

そして,予備試験の最終合格率は例年3%から4%で推移しており,実際相当の努力を重ねなければ合格できない難関の試験ではありますが,勉強の方針を間違えずきちんと努力をすれば,合格できる試験であると,お伝えしていきたいと考えております。

予備試験とは

予備試験とは,「法科大学院を修了者と同等の学識及びその応用能力並び委法律に関する実務の基礎素養を有するかどうかを判定する」(司法試験法5条)ための試験です。正式名称は,「司法試験予備試験」ですが,一般的には「予備試験」と呼ばれるのが通常です。現在の司法試験は受験資格が求められており,①予備試験に合格するか(予備試験ルート)②法科大学院を卒業するか(法科大学院ルート)のいずれかのルートをとらなければなりません。予備試験はそのためのルートの1つのルートとなります。後述する通り,予備試験はコスト等様々な面から大きなメリットがあることから,予備試験に合格し司法試験を受けるというルートが今後主流化していくことが考えられます。

司法試験合格までのルート

予備試験ルート

予備試験の受験資格

予備試験の受験資格は司法試験とは異なり,受験資格は設けられておりません。また,司法試験は法科大学院終了後または予備試験合格後5年5回という受験期間制限が設けられているのに対して,予備試験には受験期間制限もありません。この点から,予備試験は広く門戸が開放された試験であるといえます。

予備試験の日程

予備試験には,短答式試験,論文式試験,口述試験の3つの試験があり,1ずつ順番に合格しないと次の試験を受けられません。そして,口述試験に合格すると予備試験最終合格となり,翌年から司法試験を受験できます。実施期間については,司法試験は5月に5日間かけて一気にすべての試験を終わらせるのに対して,予備試験は短答式試験が5月中旬の1日,論文式試験が7月上旬の2日間,口述試験が10月下旬の2日間と期間を空けて各形式の受験します。

◇短答式試験(5月中旬の1日)
◇論文式試験(7月上旬の2日間)
◇口述試験(10月下旬の2日間)

短答式試験について

科目と配点および試験時間

短答式試験は,複数の肢の中から問題文指定の選択肢を選び,マークシートに記入する形式です。また短答式試験の科目については憲法,民法,刑法,民事訴訟法,刑事訴訟法,商法,行政法,一般教養の8科目になります。配点は一般教養が60点,それ以外の科目(憲法・民法・刑法・民事訴訟法・刑事訴訟法・商法・行政法)が各30点の合計270点満点です。試験時間については民法・商法・民事訴訟法が合わせて90分,憲法・行政法が合わせて60分,刑法・刑事訴訟法が合わせて60分,一般教養が90分です。短答式試験の問題量は決して少なくないことから,時間的にはタイトです。試験では時間切れに気を付けながら問題を解いてください。その為,練習の時から時間は意識して勉強する必要があります。

また法律科目については,内容を思い浮かべられるかもしれませんが,一般教養科目についてはどうでしょうか。一般教養科目とは人文科学から理系の知識まで様々な知識が問われます。一般教養科目の問題の難易度は高く,高得点をとるのは困難であるため,一般教養科目を計算には入れず,できるだけ法律科目で高得点をとることが短答式試験を確実に突破するためには必要となります。

◇憲法,民法,刑法,民事訴訟法,刑事訴訟法,商法,行政法(配点:各30点)
◇一般教養科目(配点:60点)

合格ラインとその推移

短答式試験の合格率は例年20%前後で推移しており,近年は大体2000人強が合格しています。そして合格点については,平成26,27年(270点満点中170点以上)/平成28年(270点満点中165点以上)/平成29年(270点満点中160点以上)となっており,合格点は160~170点の間で推移しています。2年連続で合格点が下がってはいますが,今後もこの傾向が続くとは限りません。合格ラインを得点率で表すと,約6割強を得点することが必要となります。予備試験では司法試験と異なり,一般教養や民事訴訟法・刑事訴訟法・商法・行政法などの下4法と呼ばれる科目に関しても試験科目となっていることから勉強範囲は広く,短答式試験といっても決して侮れるものではありません。

年度 受験者数 合格者数 合格率
平成23年度 6477 1339 20.7%
平成24年度 7183 1711 23.8%
平成25年度 9224 2017 21.9%
平成26年度 10347 2018 19.5%
平成27年度 10334 2294 22.2%
平成28年度 10442 2426 23.2%
平成29年度 10743 2299 21.4%

試験対策

短答式試験では短答でしか問われない細かい知識(短答プロパー知識)が問われます。したがって,論文知識に必要な勉強だけをしていたのでは合格はできません。そこで短答式試験の対策として最も有効な方法は,やはり司法試験・予備試験の短答式試験過去問を解くことでしょう。司法試験も平成26年までは下4法の過去問がありました。また網羅性の観点から,予備試験の過去問のみならず司法試験の過去問も併せて解くことがとても有効な対策となります。そして,過去問は1周2周で終わらせはせず,完璧に近づけるまでやり続けるのが理想です。また,それと合わせて,短答プロパー知識が載ったテキストを参照,もしくは予備校の講座を受講しながら,短答プロパー知識を確認することも必要となります。また,条文もしっかり意識しながら勉強することも必須です。これらを並行してやりながら対策をすれば,短答式試験突破に必要な知識は必ず身に着けることができます。

このように,短答式試験では短答プロパーの知識がたくさん出ることから身構える方もいらっしゃるかもしれませんが,出題形式や合格率からして,一定の学習をし,しっかりと知識を身に着けることができれば,必ず合格することができる試験です。

論文式試験について

科目と配点および試験時間

次に論文式試験について,科目は短答式試験よりも増えて憲法,行政法,民法,商法,民事訴訟法,刑法,刑事訴訟法,法律実務基礎科目民事,法律時通基礎科目刑事,一般教養科目の10科目です。試験時間は憲法・行政法が合わせて140分,民法・商法・民事訴訟法が合わせて210分,刑法・刑事訴訟法が合わせて140分,法律実務基礎科目(民事・刑事)が合わせて180分,一般教養科目が60分となっております。配点は各50点の500点満点です。

論文式試験の問題形式は長文の問題文を読んだうえで,1500字程度(A4用紙4枚以内)の論述による回答をします(一般教養科目だけ原稿用紙のような答案用紙に回答するなど,少し異なります)。このことからも明らかなように,論文式試験においても時間は非常にタイトであり,途中答案にならないように気を付ける必要があります。

合格ラインとその推移

次に論文式試験の合格ラインについて解説します。合格者数は,平成26年は392人,平成27年は428人,平成28年は429人,平成29年は469人となっており,近年は増加傾向です。しかし,増加傾向とは言っても全体受験者からの合格確率は約3~4%ほどです。この数字だけを見たら委縮してしまうかもしれません。しかし,短答式試験の合格者の中からは約2割程度,つまり5人に1人が合格しているのです。短答式試験に合格する程度の知識がある人であれば,対策方法さえ誤らなければ,論文式試験合格も決して不可能ではないのです。

年度 受験者数 合格者数 合格率
平成23年度 1301 123 9.5%
平成24年度 1643 233 14.2%
平成25年度 1932 381 19.7%
平成26年度 1913 392 20.5%
平成27年度 2209 428 19.4%
平成28年度 2427 429 17.7%
平成29年度 2185 469 21.5%

試験対策

予備試験の論文式試験はどのように対策すればいいのでしょうか。予備試験の論文式試験は司法試験とは異なり,基礎知識が中心に問われます。しかし,この基礎知識の正確性はかなりのものが求められます。したがって,皆さんが基礎としているインプット用の本(アガルートアカデミーの講座で言うと総合講義300のテキスト)で,基礎知識の正確性を高める必要があります。いうまでもなくインプットは必須です。

また,論文式試験であるためアウトプットの練習を重ねることも必須です。これは基本論点がある程度網羅的に掲載された問題集(アガルートアカデミーでいえば重要問題習得講座の問題集)を完璧にすることが理想です。予備試験は上述した通り,基礎的な論点が問われる問題がほとんどであることから,そのような問題集に掲載された問題の精度を高めることによって対応できます。この精度を本番までに出来る限り高めてください。

そして,それだけではなく,予備試験過去問の答案作成を,時間を計って何度もすることが必要となります。短答式試験を受験した後から毎日1通は実際に時間を計って起案するのが理想です。答案作成の能力は起案すれば起案するほど伸びていくため,できるだけたくさんの答案を作成するように心がけましょう。

口述試験について

そして最後に口述試験について,科目は法律実務基礎科目(民事)と法律実務基礎科目(刑事)の2科目です。試験時間については定められておらず,配点についてですが60点が基準点とされており57点から63点の間で採点されると公表されております。ただし,その成績が特に不良であると認められる者に対しては,その成績に応じ,56点以下とするとされております。また,60点が概ね半数程度となるように運用することが公表されています。口述試験は短答式試験や論文式試験とは異なり,合格させることを前提とした試験です。これは,口述試験に落ちてしまう人が2・30人程度にとどまり,全体の数%にとどまることからも明らかです。したがって,対策さえ怠らなければ,過度に心配する必要はありません。

ではどのように対策すればよいのでしょうか。口述試験に必要な知識は論文式試験で勉強した内容で十分足ります。したがって,法律実務基礎科目の内容を中心に論文式試験の時に勉強した民事刑事の知識を確認すれば知識としては十分です。また,口述試験は面接であることから,予備校などの口述模試などを受けることにより,口述試験の形式になれることも必須であると考えます。これさえ怠らなければ口述試験には合格することができます。

年度 受験者数 合格者数 合格率
平成23年度 122 116 95.1%
平成24年度 233 219 94.0%
平成25年度 379 351 92.6%
平成26年度 391 356 91.1%
平成27年度 427 394 92.3%
平成28年度 429 405 94.4%
平成29年度 469 444 94.7%

予備試験の難易度

予備試験は過去の合格率などから見ても,決して簡単な試験ではありません。行政書士試験や司法書士試験と比べても,難易度は高いです。また司法試験と比べても,予備試験合格者の司法試験合格者が極めて高いことから,一面では予備試験合格のレベルは司法試験よりも高いとさえいうことができるかもしれません。

しかし,合格率をみて過度に恐れる必要はありません。予備試験合格に必要なものは,努力と適切な勉強方針です。この2つの要素を意識し,対策を重ねれば予備試験にも合格できます。それほど適切な勉強方針を立てられていない受験生,努力をし切れていない受験生は多いのです。したがって,この2つの要素を意識し適切な対策を重ねられれば,受験者の中でも相対的にかなり上位に位置するということができますし,合格もできます。社会人の方が仕事をつづけながらでも合格されている方が多くおられることからもこのことは明らかです。

確かに予備試験は決して簡単な試験ではありません。しかし適切な勉強方針を立てたうえで努力を重ねることによって必ず合格することができるレベルであるのです。

合格率と受験者数

予備試験合格の最終合格率は上述した通り約3~4%ほどですが,短答の合格率は20%強,そして短答合格者の中での論文合格率も約20%程度であり,短答受験者の中には記念受験的な受け方をしている人も多いことから,実質の合格率はもう少し高くなるでしょう。そして,受験者数は平成29年で10743人であり,社会人の方も数多く受けておられます(社会人受験生の数は3537人)。そして,社会人の合格者の合計は,平成29年は50人でした。社会人の方々は時間的制約があるため合格率は少し低いですが,決して不可能な数字ではないことがお分かりいただけると思います。

対して,学生の受験者数は4437人であり,最終合格者数は321人であることから,合格率は高いです。予備試験合格には相当時間の勉強が必要ではありますが,きちんと勉強の方針を立てて,努力さえ重ねれば合格することができる試験であるといえます。

年度 出願者数 受験者数 最終合格者数 最終合格率
平成23年度 8971 6477 116 1.8%
平成24年度 9118 7183 219 3.1%
平成25年度 11255 9224 351 3.8%
平成26年度 12622 10347 356 3.4%
平成27年度 12543 10334 394 3.8%
平成28年度 12767 10442 405 3.9%
平成29年度 13178 10743 444 4.1%

予備試験ルートのメリット

予備試験合格のメリットはいくつも挙げられます。まずは法科大学院に通う必要がなくなることから,お金も時間も節約することができる点です。法科大学院に入学したら少なくとも2年間は法科大学院で過ごさねばならず,またその際に必要となる学費や教科書代などもかさむことから,時間もお金もかなりかかってしまうこととなります。しかし,予備試験に合格すれば,時間はもちろん,お金についても予備校代だけで足りることからかなりの節約になります。

次に予備試験合格者の司法試験合格率がかなり高いことから,司法試験に合格しやすい点が挙げられます。予備試験に合格した人の司法試験合格率は60~70%であり,どの法科大学院の合格率よりも高いのです。したがって,予備試験に合格すれば,最終目標である司法試験の合格にグッと近づくことができます。

また予備試験の合格は就職にも非常に有利に働きます。みなさんが耳にしたことがあるような大手の企業法務事務所の就職の際には予備試験に合格しているということが非常に有利に働きます。また,ほかの就職においても,予備試験に合格していれば優秀な人材であることが担保されることから,当然有利に働くと考えられます。

最短で合格する方法

司法試験に最短で合格するためには,勉強を効率化することが必須です。そのためには自分一人で勉強するのではなく,予備校の講座を受講することが最も効率的であるといえます。予備校は過去の傾向などを徹底的に分析し,予備試験合格に必要不可欠なルートを提示してくれます。この提示されたルートが上で述べた適切な勉強方針に当たるので,みなさんはこれに沿って努力を重ねるだけで必ず合格を果たすことができます。したがって,予備試験に最短で合格するためには予備校の講座を受講し,徹底的にそこで提示されるルートに沿って努力してください。そうすれば必ず予備試験合格を果たすことができます。

予備試験に合格したら

司法試験の対策

予備試験に合格する知識のある人は,司法試験合格に必要な知識もあるといえます。しかし,司法試験は予備試験よりも問題の難易度が高く,司法試験に向けた対策を重ね,それに慣れる必要があります。そのための対策として挙げられるのは,何よりも司法試験過去問を完璧にすることです。司法試験過去問は,司法試験の対策をするうえで最良の教材です。この最良の教材を司法試験と同じ時間制限で,司法試験と同じ緊張感をもって答案を作成してください。そしてこれを何度も繰り返してください。そうすることによって,司法試験に慣れることができ,司法試験で必要とされる知識の使い方がかなり磨かれます。その結果,司法試験の合格を果たすことができます。

司法修習に向けて

司法試験に合格したら,晴れて司法修習生となることができます。司法修習では,司法試験よりもより実務に直結する能力を身に着けることとなります。司法修習では,刑事裁判・民事裁判・検察・選択修習・後期聚合修習を各2か月ずつの合計12か月間を過ごすこととなります。そして,最後に2回試験という試験に合格して晴れて実務家になることができるのです。

2回試験では近年5%から10%程度の不合格者が出ており,2回試験に落ちると,就職先の内定が取り消されることも少なくありません。したがって,確実に2回試験に合格する力を付けなければなりません。そこで,修習に入ってからも出遅れることなく,確実に実務家になるために,修習に入る前から実務科目について復習しておくとよいでしょう。

法曹三者について

法曹には弁護士と検察官と裁判官の三者が存在します。弁護士は私人として働くこととなりますが,検察官と裁判官は公務員として働くことになります。三者には三者とも魅力があります。弁護士は自由業であることから,自由に働くことができる点に魅力があります。そして,頑張った分だけ経済的にも豊かになるといえることから,夢のある職業であるということもできます。これに対して検察官の魅力は公益の代表者として正義を追及することができる点にあります。

予備試験の問題例

〔司法試験平成26年度民事系科目第29問・司法試験予備試験平成26年度民法第12問〕

不法行為に関する次の1から4までの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。

1.Aの前方不注意による自動車の運転によってBが重傷を負い,Bを治療したCの過失によってBが死亡した場合において,ACの各行為が共同不法行為となるときであっても,Bの死亡という結果の発生に対するA及びCの寄与の割合をそれぞれ確定することができるときは,Aは,Bの死亡による損害の全額を賠償する責任を負わない。

2.土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによってAに損害が生じた場合において,その工作物の占有者であるBが損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは,その工作物の所有者であるCが,Aに対し,その損害を賠償する責任を負う。

3.複数の加害者であるABの過失と被害者Cの過失が競合する1つの交通事故において,その交通事故の原因となった全ての過失の割合を認定することができ,A,B及びCの過失割合が順次5:3:2である場合には,ABは,Cに対し,連帯して,その損害の8割に相当する額を賠償する責任を負う。

4.Aの不法行為により未成年者Bが重傷を負った場合において,Bが事理弁識能力を有していなかったときであっても,その損害の発生についてBの親に監督上の過失が認められるときには,Aは,過失相殺による損害額の減額を主張することができる。

[正解は1]

[予備試験 平成23年度民法]
 Aは,平成20年3月5日,自己の所有する甲土地について税金の滞納による差押えを免れるため,息子Bの承諾を得て,AからBへの甲土地の売買契約を仮装し,売買を原因とするB名義の所有権移転登記をした。次いで,Bは,Aに無断で,甲土地の上に乙建物を建築し,同年11月7日,乙建物についてB名義の保存登記をし,同日から乙建物に居住するようになった。
 Bは,自己の経営する会社の業績が悪化したため,その資金を調達するために,平成21年5月23日,乙建物を700万円でCに売却し,C名義の所有権移転登記をするとともに,同日,Cとの間で,甲土地について建物の所有を目的とする賃貸借契約(賃料月額12万円)を締結し,乙建物をCに引き渡した。この賃貸借契約の締結に際して,Cは,甲土地についてのAB間の売買が仮装によるものであることを知っていた。
 その後,さらに資金を必要としたBは,同年10月9日,甲土地をDに代金1000万円で売却し,D名義の所有権移転登記をした。この売買契約の締結に際して,Dは,甲土地についてのAB間の売買が仮装によるものであることを知らず,それを知らないことについて過失もなかった。
 同年12月16日,Aが急死し,その唯一の相続人であるBがAの一切の権利義務を相続した。この場合において,Dは,Cに対し,甲土地の所有権に基づいて,甲土地の明渡しを求めることができるかを論ぜよ。

[平成26年度予備試験論文式試験一般教養科目]
 エリート(選良)という言葉は,今日,両義的な意味合いで用いられる。例えば,「トップエリートの養成」というと,肯定的な含意がある。これに対して,「エリート意識が高い」というと,否定的な含意がある。エリートをどう捉えるかは,社会をどう捉えるかと同等の,極めて根源的な問題の一つである。
「エリートとは何か」をめぐる,以下の二つの文章を読んで,後記の各設問に答えなさい。

[A]「エリートとは何か」は,それぞれの社会の持つ歴史的・地理的な制約によって,その様相が異なる問題である。
これに関連して,イタリアの経済学者・社会学者V.F.D.パレートは,「エリートの周流」(circulation of elites)という理論を提示している。この理論は,エリートが周流的に交替する(旧エリートが衰退し,新エリートが興隆する)ことを,一つの社会法則として提示しようとしたものである。
パレートはこう説く。エリートは,本来,少数者(特定の階級)の利益を代表している。新エリートは,当初(旧エリートの階級性を批判しつつ)多数者の利益を代表して登場する。しかし,旧エリートと交替すると,今度は少数者の利益を代表するようになる,と(「社会学理論のひとつの応用」1900年による。)。

〔設問1〕
[A]の文章中のパレートの理論を参照しつつ,近代社会において「学歴主義」(学歴を人の能力の評価尺度とすること)が果たしてきた役割について,15行程度で論じなさい。
[B] 現代社会(ここでは,「現代社会」という言葉を,古典的な近代社会に対して近代的な近代社会という意味内容で用いている。)が,いかなる様相を持つ社会であるかは,当該社会に生きる私たちにとって現実的な問題である。例えば,アメリカの経営学者P.F.ドラッカーは,「ポスト資本主義社会」という概念を提示している。ドラッカーはこう説く。従来の資本主義社会では,土地・労働・資本の三つが,生産の資源であった。しかし,今日のポスト資本主義社会では,知識が生産の資源になる。資本主義社会では,資本家と労働者が,中心的な階級区分であった。しかし,ポスト資本主義社会では,知識労働者とサービス労働者が中心的な階級区分になる,と(『ポスト資本主義社会』1993年による。)。
このドラッカーの主張は,エリートとは何かを論じる目的でされたものではないが,現代社会において「エリートとは何か」を考える上で,一つの素材となり得るものである。

〔設問2〕
[B]の文章中のドラッカーの主張を素材として,現代日本社会におけるエリートとは何かについて,10行程度で論じなさい。

[平成27年度予備試験口述試験 法律実務基礎科目民事]
試験委員:それでは事案を読み上げます。よく聞いてください。
XはYに対して,1000万円を貸し付けました。Yは銀行に対して500万円の預金債権を有しています。Yは,弁済期になってもXに対して代金を支払ってくれません。この場合,Xの代理人Pとして,本件貸し付けの代金を回収するためにどのような手段が考えられますか?
受験生:Yに対して1000万円を支払うよう訴訟を提起します。
試験委員:うん。それで?
受験生:その債務名義をもってYの銀行に対する預金債権を差し押さえます。
試験委員:うん。Yの銀行に対する預金債権に対して強制執行をするということでいいかな?
受験生:はい。
試験委員:では,強制執行するためにはどのようなものが必要ですか?
受験生:はい。債務名義と執行分の付与が必要であると思います。
試験委員:その場合の債務名義って何?
受験生:えっ…通常の債務名義…
試験委員:うーん。そのような債務名義を何ていうの?
受験生:(わからない。とりあえず何かしゃべろう。)えっと…民事訴訟を提起して確定判決を得て執行の申立をするので…
試験委員:そう。確定判決ですね。
受験生:はい。そうです。
試験委員:はい。では,その前の段階では,どのような手段が考えられますか?
受験生:(保全の話か?)えっと,仮処分…ではなくて,仮差押えが考えられます。
試験委員:はい。そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。
受験生:(優しい)はい。
試験委員:では,仮差し押えと言うことでしたが,それはどのような方法で行われますか?
受験生:第三債務者,今回では銀行に対して,弁済を禁止するという方法で行われると思います。
試験委員:はい。では,XがYに対して遅延損害金も含めて訴訟を提起することにしました,その場合の訴訟物を応えてください。
受験生:消費貸借契約に基づく貸金返還請求権,履行遅滞に基づく損害賠償請求権です。
試験委員:個数は?
受験生:1個,1個で2個です。
試験委員:併合形態は?
受験生:単純併合です。

試験委員:はい。では,その請求原因は何ですか?
受験生:XがYに対して平成○年○月○日に,1000万円を貸し付けた,あ,遅延損害金を年1割として貸し付けた,そして今回は確定期限がありますので,返還時期を平成○年○月○日とした,それが到来した,です。
試験委員:今回は到来でいいの?
受験生:確定期限ですので到来で良いと思うのですが…
試験委員:うーん。到来と経過の違いは?
受験生:到来はその日がきたこと,経過はその日がすぎたことです。あ,遅延損害金も請求していますので,経過が必要です。
試験委員:はい。その日に支払えば遅延損害金は発生しないため,今回は経過が必要ですね。
受験生:はい。
(以下略)

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