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予備試験とは|司法試験コラム

予備試験とは

予備試験とは,法科大学院修了者と「同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定する」(司法試験法5条)ための試験です。正式名称は,「司法試験予備試験」ですが,「予備試験」と呼ばれるのが通常です。
現在の司法試験は誰でも受けられるわけではありません。司法試験の受験資格を得るには,①予備試験に合格するか(予備試験ルート),②法科大学院を卒業するか(法科大学院ルート)のいずれかのルートをとらなければなりません。予備試験はそのうちの1つのルートということになります。

予備試験のスケジュール

予備試験の概要(日程・科目・配点・受験資格)

短答式試験,論文式試験,口述試験の3つの試験があり,順番に1つずつ合格していかないと次の試験を受けることができません。そして,口述試験まで合格すると,晴れて司法試験の受験資格を得ることができ,翌年の司法試験を受験することができるようになります。

実施時期・日程

◇短答式試験(5月中旬の1日)
◇論文式試験(7月上旬の2日間)
◇口述試験(10月下旬の2日間)

試験形式・試験科目

◇短答式試験(5月中旬):憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法・一般教養科目
◇論文式試験(7月中旬):憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法・一般教養科目・法律実務基礎科目(民事,刑事)
◇口述試験(10月下旬):法律実務基礎科目(民事,刑事)

配点

短答式試験 配点
憲法 30点
行政法
民法
商法
民事訴訟法
刑法
刑事訴訟法
一般教養科目 60点
論文式試験 配点
憲法 50点
行政法
民法
商法
民事訴訟法
刑法
刑事訴訟法
法律実務基礎科目民事
法律実務基礎科目刑事
一般教養科目
口述試験 配点
法律実務基礎科目民事 57点~63点※
法律実務基礎科目刑事

※ 57点から63点の間で採点され,60点が基準点とされている。ただし,その成績が特に不良であると認められる者に対しては,その成績に応じ,56点以下とするとされている。また,60点が概ね半数程度となるように運用することが公表されている。

受験資格

予備試験には,受験資格や受験回数の制限はなく,誰でも何回でも受験することができます。

予備試験の合格率,合格者数

予備試験は,毎年最終合格率が3%から4%程度となっており,1万人以上が受験し,わずか400人前後しか合格しません。非常に難易度の高い試験といってよいでしょう。

    短答式試験 論文式試験
年度 出願者数 受験者数 合格者数 合格率 受験者数 合格者数 合格率
平成23年度 8971 6477 1339 20.7% 1301 123 9.5%
平成24年度 9118 7183 1711 23.8% 1643 233 14.2%
平成25年度 11255 9224 2017 21.9% 1932 381 19.7%
平成26年度 12622 10347 2018 19.5% 1913 392 20.5%
平成27年度 12543 10334 2294 22.2% 2209 428 19.4%
平成28年度 12767 10442 2426 23.2% 2427 429 17.7%
平成29年度 13178 10743 2299 21.4% 2185 469 21.5%
  口述試験
年度 受験者数 合格者数 合格率 最終合格率
平成23年度 122 116 95.1% 1.8%
平成24年度 233 219 94.0% 3.1%
平成25年度 379 351 92.6% 3.8%
平成26年度 391 356 91.1% 3.4%
平成27年度 427 394 92.3% 3.8%
平成28年度 429 405 94.4% 3.9%
平成29年度 469 444 94.7% 4.1%

短答式試験について

複数の肢の中から問題文指定の選択肢を選び,マークシートに記入する形式の問題です。例年270点満点中165点から170点が合格点となっています。
また,合格率は対受験者ベースで例年20%台で推移しています。
短答式試験でしか問われない独自の細かい知識(短答プロパー知識)が問われますが,出題形式や合格率からして,一定程度の学習をし,しっかりと知識を身につけることができれば,突破することが難しい試験ではありません。
例えば,次のような問題が出題されています。

〔司法試験平成26年度民事系科目第29問・司法試験予備試験平成26年度民法第12問〕

不法行為に関する次の1から4までの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。

1.Aの前方不注意による自動車の運転によってBが重傷を負い,Bを治療したCの過失によってBが死亡した場合において,ACの各行為が共同不法行為となるときであっても,Bの死亡という結果の発生に対するA及びCの寄与の割合をそれぞれ確定することができるときは,Aは,Bの死亡による損害の全額を賠償する責任を負わない。

2.土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによってAに損害が生じた場合において,その工作物の占有者であるBが損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは,その工作物の所有者であるCが,Aに対し,その損害を賠償する責任を負う。

3.複数の加害者であるABの過失と被害者Cの過失が競合する1つの交通事故において,その交通事故の原因となった全ての過失の割合を認定することができ,A,B及びCの過失割合が順次5:3:2である場合には,ABは,Cに対し,連帯して,その損害の8割に相当する額を賠償する責任を負う。

4.Aの不法行為により未成年者Bが重傷を負った場合において,Bが事理弁識能力を有していなかったときであっても,その損害の発生についてBの親に監督上の過失が認められるときには,Aは,過失相殺による損害額の減額を主張することができる。

[正解は1]

論文式試験について

予備試験では,短答式試験に合格した受験生のうち20%前後しか合格しない試験であり,一定の実力を身に着けた方の中での戦いになります。
問題形式は,長文の問題文を読んだ上で,1500字程度(A4用紙4枚以内)の論述による解答をします。
論文式試験は,求められる知識の範囲は短答式試験より広くありませんが,法律文書という専門的な文章を書くことになり,学者の間でも議論が尽くされていないような未知の問題点について問われることもあるため,高度な思考力が要求されます。
非常に難易度の高い試験で,予備試験の天王山と言われます。
この論文式試験を突破することが最大の目標になります。例えば,次のような問題が出題されています。なお,一般教養科目の論文式試験は,小論文のような形で出題されています。

[予備試験 平成23年度民法]
 Aは,平成20年3月5日,自己の所有する甲土地について税金の滞納による差押えを免れるため,息子Bの承諾を得て,AからBへの甲土地の売買契約を仮装し,売買を原因とするB名義の所有権移転登記をした。次いで,Bは,Aに無断で,甲土地の上に乙建物を建築し,同年11月7日,乙建物についてB名義の保存登記をし,同日から乙建物に居住するようになった。
 Bは,自己の経営する会社の業績が悪化したため,その資金を調達するために,平成21年5月23日,乙建物を700万円でCに売却し,C名義の所有権移転登記をするとともに,同日,Cとの間で,甲土地について建物の所有を目的とする賃貸借契約(賃料月額12万円)を締結し,乙建物をCに引き渡した。この賃貸借契約の締結に際して,Cは,甲土地についてのAB間の売買が仮装によるものであることを知っていた。
 その後,さらに資金を必要としたBは,同年10月9日,甲土地をDに代金1000万円で売却し,D名義の所有権移転登記をした。この売買契約の締結に際して,Dは,甲土地についてのAB間の売買が仮装によるものであることを知らず,それを知らないことについて過失もなかった。
 同年12月16日,Aが急死し,その唯一の相続人であるBがAの一切の権利義務を相続した。この場合において,Dは,Cに対し,甲土地の所有権に基づいて,甲土地の明渡しを求めることができるかを論ぜよ。

[平成26年度予備試験論文式試験一般教養科目]
 エリート(選良)という言葉は,今日,両義的な意味合いで用いられる。例えば,「トップエリートの養成」というと,肯定的な含意がある。これに対して,「エリート意識が高い」というと,否定的な含意がある。エリートをどう捉えるかは,社会をどう捉えるかと同等の,極めて根源的な問題の一つである。
「エリートとは何か」をめぐる,以下の二つの文章を読んで,後記の各設問に答えなさい。

[A]「エリートとは何か」は,それぞれの社会の持つ歴史的・地理的な制約によって,その様相が異なる問題である。
これに関連して,イタリアの経済学者・社会学者V.F.D.パレートは,「エリートの周流」(circulation of elites)という理論を提示している。この理論は,エリートが周流的に交替する(旧エリートが衰退し,新エリートが興隆する)ことを,一つの社会法則として提示しようとしたものである。
パレートはこう説く。エリートは,本来,少数者(特定の階級)の利益を代表している。新エリートは,当初(旧エリートの階級性を批判しつつ)多数者の利益を代表して登場する。しかし,旧エリートと交替すると,今度は少数者の利益を代表するようになる,と(「社会学理論のひとつの応用」1900年による。)。

〔設問1〕
[A]の文章中のパレートの理論を参照しつつ,近代社会において「学歴主義」(学歴を人の能力の評価尺度とすること)が果たしてきた役割について,15行程度で論じなさい。
[B] 現代社会(ここでは,「現代社会」という言葉を,古典的な近代社会に対して近代的な近代社会という意味内容で用いている。)が,いかなる様相を持つ社会であるかは,当該社会に生きる私たちにとって現実的な問題である。例えば,アメリカの経営学者P.F.ドラッカーは,「ポスト資本主義社会」という概念を提示している。ドラッカーはこう説く。従来の資本主義社会では,土地・労働・資本の三つが,生産の資源であった。しかし,今日のポスト資本主義社会では,知識が生産の資源になる。資本主義社会では,資本家と労働者が,中心的な階級区分であった。しかし,ポスト資本主義社会では,知識労働者とサービス労働者が中心的な階級区分になる,と(『ポスト資本主義社会』1993年による。)。
このドラッカーの主張は,エリートとは何かを論じる目的でされたものではないが,現代社会において「エリートとは何か」を考える上で,一つの素材となり得るものである。

〔設問2〕
[B]の文章中のドラッカーの主張を素材として,現代日本社会におけるエリートとは何かについて,10行程度で論じなさい。

口述試験について

予備試験においては,短答式試験,論文式試験を合格した者を対象として,口述試験が実施されます。口述試験は,法的な推論,分析及び構成に基づいて弁論をする能力を有するかどうかの判定のために行われる,いわゆる面接試験です。
受験者のうち例年9割前後が合格していますので,試験形式は特殊ですが,難易度がそこまで高いというわけではありません。問題は,公表されていませんが,受験生の再現によると,次のような形で試験が実施されているようです。

[平成27年度予備試験口述試験 法律実務基礎科目民事]
試験委員:それでは事案を読み上げます。よく聞いてください。
XはYに対して,1000万円を貸し付けました。Yは銀行に対して500万円の預金債権を有しています。Yは,弁済期になってもXに対して代金を支払ってくれません。この場合,Xの代理人Pとして,本件貸し付けの代金を回収するためにどのような手段が考えられますか?
受験生:Yに対して1000万円を支払うよう訴訟を提起します。
試験委員:うん。それで?
受験生:その債務名義をもってYの銀行に対する預金債権を差し押さえます。
試験委員:うん。Yの銀行に対する預金債権に対して強制執行をするということでいいかな?
受験生:はい。
試験委員:では,強制執行するためにはどのようなものが必要ですか?
受験生:はい。債務名義と執行分の付与が必要であると思います。
試験委員:その場合の債務名義って何?
受験生:えっ…通常の債務名義…
試験委員:うーん。そのような債務名義を何ていうの?
受験生:(わからない。とりあえず何かしゃべろう。)えっと…民事訴訟を提起して確定判決を得て執行の申立をするので…
試験委員:そう。確定判決ですね。
受験生:はい。そうです。
試験委員:はい。では,その前の段階では,どのような手段が考えられますか?
受験生:(保全の話か?)えっと,仮処分…ではなくて,仮差押えが考えられます。
試験委員:はい。そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。
受験生:(優しい)はい。
試験委員:では,仮差し押えと言うことでしたが,それはどのような方法で行われますか?
受験生:第三債務者,今回では銀行に対して,弁済を禁止するという方法で行われると思います。
試験委員:はい。では,XがYに対して遅延損害金も含めて訴訟を提起することにしました,その場合の訴訟物を応えてください。
受験生:消費貸借契約に基づく貸金返還請求権,履行遅滞に基づく損害賠償請求権です。
試験委員:個数は?
受験生:1個,1個で2個です。
試験委員:併合形態は?
受験生:単純併合です。

試験委員:はい。では,その請求原因は何ですか?
受験生:XがYに対して平成○年○月○日に,1000万円を貸し付けた,あ,遅延損害金を年1割として貸し付けた,そして今回は確定期限がありますので,返還時期を平成○年○月○日とした,それが到来した,です。
試験委員:今回は到来でいいの?
受験生:確定期限ですので到来で良いと思うのですが…
試験委員:うーん。到来と経過の違いは?
受験生:到来はその日がきたこと,経過はその日がすぎたことです。あ,遅延損害金も請求していますので,経過が必要です。
試験委員:はい。その日に支払えば遅延損害金は発生しないため,今回は経過が必要ですね。
受験生:はい。
(以下略)

予備試験のメリットデメリット

予備試験のメリット

お金と時間がかからない,いつでも何回でも受験できる

法科大学院ルートでは,最短でも2年という時間がかかってしまいますし,学費も高額です(これに加え,教科書代や生活費等の費用がかかるほか,法科大学院入学後も予備校を利用する方がほとんどなので,予備校の授業料も必要です。)。また,そもそも既修者コースに入学するためにはそのための勉強が必要になるので,現実にはより時間もお金も必要となってしまいます。
これに対して,予備試験には,受験資格や受験回数の制限はなく,いつでも,何回でも受験することができます。そのため,最短では,学習を始めてから1年後に受験し,合格することも可能となっており,お金と時間をかけずに司法試験を受験することができるルートであると言えます。

予備試験に合格できれば,司法試験に合格しやすい

予備試験ルートで司法試験を受験した方の司法試験合格率は,どの法科大学院をも上回る非常に高いものとなっています(例年60%~70%)。予備試験に合格すれば,最終目標である司法試験の合格にグッと近づくことができます。

就職にも有利

法曹志望者に大変人気がある,大手法律事務所は予備試験合格者を優先的に採用しています。法科大学院在学生も積極的に予備試験を受験していますが,その理由の1つが就職活動においてアドバンテージを得ることにあります。司法試験合格者の就職難が叫ばれて久しいですが,予備試験に合格できれば,そのような不安は全くないといってよいでしょう。

難関法科大学院を「保険」として利用できる

現在の最もポピュラーな司法試験の受験ルートは,予備試験合格を第1志望としつつ,保険として難関法科大学院を「保険」として利用するというものです。予備試験は,要求される科目も多く,大変な難関試験ですから,その合格を目指して本気で学習すれば,仮に予備試験に合格できなかったとしても,難関法科大学院に合格することは容易です。学費の全額免除,半額免除等の奨学生を狙うことも可能でしょう。難関法科大学院を「保険」として利用することによって,リスクヘッジをしつつ,司法試験合格を目指すことができます。

予備試験のデメリット

難しい

予備試験は,合格率が3%~4%という大変な難関試験です。その難しさが最大のデメリットです。もっとも,受験回数に制限はありませんので,難関法科大学院進学という「保険」をかけつつ学習すれば,この点はさほど大きな問題ではないかもしれません。

受験仲間ができにくい

法科大学院に進学せずに予備試験ルート一本で司法試験の合格を目指す場合,受験仲間ができにくいという面があります。受験仲間がいないと,モチベーションを維持しずらい,受験情報が入ってきにくいなどのデメリットが考えられます。予備校のガイダンスやイベント等を積極的に利用し,受験仲間を作っていってください。

勉強時間を確保する必要がある

予備試験合格を目指す以上,当然のことかもしれませんが,しっかりと勉強時間を確保する必要があります。大学生であれば,サークル活動やアルバイトに割ける時間が減りますし,社会人であれば,平日の夜や土日を勉強に充てなければなりません。予備試験合格を目指すには,それなりの覚悟が必要です。

予備試験に合格するためには

第1に論文式試験をいかにして突破するのかという点がポイントとなります。
また,第2に,短答式試験は肢切り点(例年,270点満点で160点から170点)をクリアできればよく,それ以上の点数は必要ないため,その点数をいかにして効率よく稼ぐかという点がポイントになります。
予備試験の1年合格法については,こちらの記事をご覧ください。