民法上、法律行為が無効や取消となるケースがあります。また、契約の解除という概念もたびたび登場します。

これらの概念は、効果の点からみると似ている制度ですが、それぞれが用いられるシチュエーションは全く異なるものです。そのため、特に初学者の方の「つまずきポイント」になることも少なくありません。

そこで、今回の記事では、無効と取消と、解除にスポットを当てて、これらを混同しないように、わかりやすく解説します。

勉強開始から間もない方や、これから、契約の取消や無効、解除を主張することを検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。

司法試験・予備試験の合格を
目指している方へ

  • 自分に合う教材を見つけたい
  • 無料で試験勉強をはじめてみたい
  • 司法試験・予備試験・法科大学院の情報収集が大変
  • 司法試験・予備試験・法科大学院に合格している人の共通点や特徴を知りたい

アガルートの司法試験・予備試験・法科大学院試験講座を
無料体験してみませんか?

約13.5時間分の動画講義が20日間見放題!

実際に勉強できる!司法試験・予備試験・法科大学院入試対策の フルカラーテキスト

合格者の勉強法が満載の 合格体験記!

司法試験・予備試験・法科大学院入試試験の全てがわかる!
司法試験/予備試験/法科大学院試験ガイドブック

合格の近道! 司法試験のテクニック動画

『総合講義 民法テキスト』まるごと1冊プレゼント(※なくなり次第終了)

割引クーポンsale情報が届く

1分で簡単!無料

▶資料請求して特典を受け取る

無効と取消と解除の違いとは?

解除とは「法律行為の上成立した契約を無効にすること」、取消とは「取消とは、法律行為に何らかの問題があったため、無効にすること」、無効とは、「無効とは、法律行為にはじめから効果が認められないこと」です。法律行為が元々どの程度効力があったかによって、使用される用語が違います。

無効とは

無効とは、法律行為にはじめから効果が認められないことです。

ここでいう「法律行為」とは、「売買契約」をイメージしておいてください。

誰も主張しなくても無効なものは無効であり、法律行為が成立しません。

例えば、民法94条1項には、「相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする」と書かれています。つまり、お互い売る気も買う気もないのに、売買契約を締結したとしても、その売買契約は初めから何も効果が発生しないということになります。

取消とは

取消とは、法律行為に何らかの問題があったため、これをはじめからなかったことにする意思表示です。

例えば、民法96条1項には、「詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる」と書かれています。

そして、民法121条には、「取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす」と書かれています。

そうすると、例えば、誰かに騙されて売買契約をした場合、取消の意思表示をすることによって、その売買契約は初めから何も効果が発生しなかったことになります。

逆に言うと、取り消さない限りは、その売買契約は有効ですから、その売買契約から発生する義務(売主なら目的物を移転させる義務、買主ならば代金を支払う義務)を履行しなければなりません。

解除とは

解除とは、法律行為そのものには何の問題もなかったけれども、それに基づいた義務について、相手が履行しないことなどを理由に、その法律行為をなかったことにする意思表示です。

例えば、民法541条には、「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。」と書かれています。

そして、解除の意思表示をした場合には、明文はありませんが、その法律行為は初めから無効であったことになると考えられています。

例えば、売買契約は何の問題もなく成立したが、買主が、決められた期日にお金を支払わず、売主がお金を払うように言ってもなお応じないような場合には、売主は解除の意思表示を主張することにより、売買契約を初めからなかったものとすることができます。

解除も、解除をしたい人が解除する旨の意思表示をしなければ、法律行為は無効となりません。なお、契約当事者が合意によって契約を解除することもあります。

無効と取り消しと解除の違いは?

無効の場合、誰も主張しなくても当然に意思表示が無効になります。

無効に時効はありません。いつまででも無効を主張できます。

一方、取消や解除の場合には取消権者や解除権者が主張しなければ法律行為の効果がなくなりません。

取消ができるケースは意思表示に瑕疵がある場合など、法律によって限定されています。

取消権には法定の時効もあります。解除も取消とほぼ同様の制度ですが、意思表示には瑕疵はないが、その意思表示の後に発生した事実が原因であるという点において、取消とは異なります。

また、解除については、合意による解除も可能です。

無効取消解除
効果はじめから無効取消の意思表示があって無効になる解除の意思表示あって無効になる
期限なしありあり
主張できる条件法律で規定されている法律で規定されている法律の規定以外に自分たちでも合意解除できる

民法121条の2 原状回復の義務

民法121条には取消が行われた場合の効果が規定されています。

意思表示が取り消されると、その意思表示は当初から無効であったとみなされます。
そして無効な行為によって債務の給付を受けた場合、原状回復しなければならない(元に戻さねばならない)のが原則です。

ところが無効であることを知らずに給付を受けた第三者がいた場合、原状回復させるのは酷です。

そこで無効であることを知らずに給付を受けた第三者については「利益が現に残っている限度」で返還義務を負うと規定されています(民法121条の2の2項)。

さらに、行為時に意思能力や行為能力がなかった人が取消権を行使した場合には、当事者であっても「現に利益を受けている限度」において返還の義務を負うと規定されています(民法121条の2の3項)。
たとえば未成年者が取消権を行使した場合には、現存利益を返還すれば足ります。

なお、解除については、民法545条1項本文に、「当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。」と規定されています。

この場合は、121条のような、「現に利益を受けている限度」というような限定がないことに注意が必要です。

法律行為が無効となる場合の例

法律行為が無効となるのは、その行為が最初から法律上の効力を一切持たない場合です。 契約を締結する時点で、すでに決定的な瑕疵があったため、誰もその効力を主張できません。

  • 意思能力がない者が行った契約は無効です。
  • 公序良俗に反する契約や、実現不可能な契約も無効となります。

意思能力がない者の行為

・意思能力がない場合、法律行為は無効となる

法律行為は無効です。 契約などの法律行為を行う際、自分の行為の結果を判断する能力を意思能力と呼びます。 泥酔状態の者や重度の認知症にある者など、意思能力を欠く状態の者が行った法律行為は、当然に効力を生じません。 民法の規定上、当事者の一方が意思能力を有していなかった場合には、その法律行為は無効となります。 この無効は、誰からでも、いつまでも主張できるものです。

公序良俗に反する行為

・公序良俗に反する場合、法律行為は無効となる

法律行為は無効となります。 公の秩序または善良の風俗に反する内容を目的とした法律行為は、民法により無効と定められています。 社会的な正義や倫理に著しく反する契約は、法律がその効力を認めないといった考え方です たとえば、人を殺害する請負契約を結ぶ行為や、不当に高い利息を強制する契約を結ぶ行為などが該当するでしょう。 これらは、私的な合意があったとしても、強制的にその効力が否定されます。

法律行為を取り消すことができる場合の例

法律行為を取り消すことができるのは、一旦は有効に成立した法律行為を、後から遡及的に無効にする場合です。 特定の保護すべき事情がある者、すなわち取消権者にのみ、その効力を否定する権利が認められています。

  • 未成年者など制限行為能力者の契約は取り消すことができます。
  • 詐欺、強迫、錯誤による意思表示も取り消しの対象です。

制限行為能力者による行為

・制限行為能力者による行為は、取り消すことができる

法律行為は取り消すことが可能です。 民法において、単独では完全な法律行為を行えない者を制限行為能力者と定めています。 具体的には、未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人が制限行為能力者に該当するでしょう。 制限行為能力者が法定代理人などの同意を得ずに行った行為は、制限行為能力者側から取り消すことができます。 これは、判断能力が不十分な者を保護するために設けられた制度です。 この取り消し権は、法定期間内に行使されなければ時効によって消滅します。

錯誤による意思表示

・錯誤による意思表示は、取り消すことができる

意思表示は取り消すことができる対象です。 錯誤とは、表意者が意思表示の内容を誤解しているといった状態を指します。 たとえば、土地の購入契約において、その土地の面積を大きく誤認していたといった場合などが考えられます。 錯誤による意思表示は、その錯誤が法律行為の目的や内容の重要な部分に関するものであった場合には取り消しが可能です。 ただし、表意者に重過失があった場合や、表意者が自ら錯誤の主張をしない限り、契約は有効である点に注意が必要でしょう。

詐欺または強迫による意思表示

・詐欺または強迫による意思表示は、取り消すことができる

意思表示は取り消すことができます。 詐欺とは、人を欺いて錯誤に陥らせ、それによって意思表示をさせる行為です。 強迫とは、人に恐怖心を与えて意思表示をさせる行為を指します。 どちらの場合も、表意者は自由な意思に基づいて契約を結んでいません。 そのため、民法は、これらの詐欺または強迫による意思表示について、表意者に取り消し権を与えています。 詐欺による取り消しは善意の第三者に対抗できませんが、強迫による取り消しは善意の第三者にも対抗できるといった違いがあります。

まとめ

上記で見てきたように、無効と取消と解除は似ていますが、全く異なる概念です。

このように、法律の学習においては、似ている制度を比較しながら学習をすることがありますので、条文を確認しながら、表を作成してみたりすることも有益です。

ご自身にもし似たようなトラブルがあった場合、無効を主張するか、取消を主張するか、解除を主張するかを正確に選択するための一助になれば幸いです。

司法試験・予備試験の合格を
目指している方へ

  • 司法試験・予備試験・法科大学院試験に合格できるか不安
  • 勉強をどう進めて良いかわからない
  • 勉強時間も費用も抑えたい

アガルートの司法試験・予備試験・法科大学院試験講座を
無料体験してみませんか?

約13.5時間分の動画講義が20日間見放題!

実際に勉強できる!司法試験・予備試験・法科大学院入試対策の フルカラーテキスト

合格者の勉強法が満載の 合格体験記!

司法試験・予備試験・法科大学院入試試験の全てがわかる!
司法試験/予備試験/法科大学院試験ガイドブック

合格の近道! 司法試験のテクニック動画

『総合講義 民法テキスト』まるごと1冊プレゼント(※なくなり次第終了)

割引クーポンsale情報が届く

1分で簡単!無料

▶資料請求して特典を受け取る

▼アガルートアカデミーの司法試験・予備試験・法科大学院講座はこちら▼

令和7年司法試験合格者1581名うち有料受講生618名!占有率39.1%

追加購入不要!これだけで合格できるカリキュラム

充実のサポート体制だから安心

予備試験合格で全額返金あり!!

会員20万人突破記念!
全商品5%OFF!

▶司法試験・予備試験・法科大学院の講座を見る