行政事件訴訟法とは?行政不服審査法との違いもわかりやすく解説!
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行政事件訴訟法は、行政活動によって国民の権利や利益が侵害された際に、裁判を通じてその救済を図るための重要な法律です。
この法律は、行政事件に関する訴訟の基本原則と種類を定め、国民が行政の行為に対し異議を申し立てる道を開いています。
本記事では、行政事件訴訟とな何かについてわかりやすく解説。混同しがちな行政不服審査法との違いもまとめたので、ぜひ最後までご覧ください。
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行政事件訴訟法とは?わかりやすく解説
行政事件訴訟法とは、行政事件に関する訴訟において、他の法律に特別の定めがある場合を除き適用される一般法です。
この法律の目的は、裁判を通じて違法な行政活動から国民の権利利益を救済することにあります。
行政事件訴訟法の目的と位置づけ
行政事件訴訟法は、国民が行政庁の公権力の行使によって不利益を受けた際に、裁判所へ訴えを提起してその救済を求めるための制度です。
行政活動の適法性を確保し、それによって国民の権利や法律上の利益を保護することを目的としています。
行政事件訴訟法は、行政事件訴訟の一般法として位置づけられており、行政事件訴訟に関する基本的なルールを定めています。
行政事件訴訟法は「一般法」?「特別法」との関係
行政事件訴訟法は、行政事件訴訟全般に適用される一般法です。しかし「他の法律に特別の定めがある場合」には、その特別法が優先されます。
たとえば、地方自治法第242条の2に規定されている住民訴訟は、行政事件訴訟法の特別法の例として挙げられます。
行政事件訴訟法に規定されていない事項については、民事訴訟の規定が準用されます。
行政不服審査法との違いは?【行政事件訴訟法の対象】
行政事件訴訟法と行政不服審査法は、ともに国民が行政に対して不服を申し立てる手段ですが、その性質と対象が異なります。
- 行政不服審査法
違法または不当な行政行為に対して、行政機関に直接クレームをつけ、行政機関自身がその行為を見直すことを求める手続き - 行政事件訴訟法
違法な行政行為のみを対象とし、裁判所がその適法性を判断。不当な行政行為は、原則として行政事件訴訟法の対象外
わかりやすくいうと、審査請求は「行政にクレームをつける方法」で、処分の取消訴訟は「裁判所に『行政の処分を取り消してくれ』とクレームをつける方法」といえるでしょう。
行政事件訴訟法の経緯と現行法
行政事件訴訟に関する日本の法律の歴史は、第二次世界大戦後の1948年(昭和23年)に制定された「行政事件訴訟特例法」に遡ります。
この特例法は民事訴訟法の特例を定める簡易な法律でしたが、欠陥が多く、その後の社会情勢の変化に対応するため、1962年(昭和37年)に法改正が行われ、現在の「行政事件訴訟法」が制定されました。
行政事件訴訟法の4つの種類と分類
行政事件訴訟法における訴訟は、全部で4種類に分類されます。
また、これらは大きく「主観訴訟」と「客観訴訟」に分けられます。
行政事件訴訟法の種類は?
行政事件訴訟は以下の4つの種類があります。
- 抗告訴訟
- 当事者訴訟
- 民衆訴訟
- 機関訴訟
これらの訴訟は、それぞれ異なる目的と特性を持っています。
「主観訴訟」と「客観訴訟」の違いとは?
行政事件訴訟は、訴訟の目的によって主観訴訟と客観訴訟に分類されます。
主観訴訟:国民の権利・利益を保護する裁判
主観訴訟とは、個人の権利や法律上の利益の保護を目的とする訴訟のことです。
裁判に勝つと、自分に直接メリットがあるため、「自分のためにする裁判」ともいえます。
主観訴訟には、抗告訴訟と当事者訴訟が含まれます。
客観訴訟:行政の適法性を確保する裁判
客観訴訟とは、法規に適合しない行為の是正や、行政機関相互間の紛争解決を目的とする訴訟です。
これは「みんなのためにする裁判」であり、裁判に勝っても自分に直接的なメリットはありません。客観訴訟には、民衆訴訟と機関訴訟が含まれます。
「主観訴訟」の詳しい解説【抗告訴訟・当事者訴訟】
国民の権利や法律上の利益の保護を目的とする主観訴訟には、抗告訴訟と当事者訴訟があります。
抗告訴訟とは?行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟
抗告訴訟は、行政庁の「公権力の行使」に納得できないときに行う裁判です。
公権力の行使とは、たとえば、運転免許の取消し(権利の制限)、罰金の賦課(義務の課税)、ラーメン屋の営業許可の拒否処分(許認可の拒否)などが挙げられます。
抗告訴訟は全部で7種類!【一覧】
抗告訴訟には、具体的に以下の7種類があります。
- 処分の取消訴訟
- 裁決の取消訴訟
- 無効等確認訴訟
- 不作為の違法確認訴訟
- 義務付け訴訟
- 差止め訴訟
- 無名抗告訴訟(法定外抗告訴訟)
※1~6に該当しない抗告訴訟
これらはそれぞれ異なる行政行為の不服に対応しています。
処分の取消訴訟の定義と具体例
処分の取消訴訟とは、行政庁の処分や、その他公権力の行使に当たる行為の取消しを求める訴訟です。
たとえば、飲酒運転の事実がないにもかかわらず90日間の運転免許停止処分を受けた人が、その処分を取り消すために裁判所に訴えを提起する場合が該当します。
また、飲食店の営業許可申請が書類不備がないにもかかわらず拒否された場合に、その拒否処分を取り消すために行うことも可能です。
強制力のある行政指導(例:医療法に基づく病院開設中止勧告で、無視すると健康保険が使えなくなるケース)に対しても、処分の取消訴訟が認められた判例があります。
裁決の取消訴訟の定義と具体例
裁決の取消訴訟とは、審査請求などの不服申立てに対する行政庁の裁決の取消しを求める訴訟です。
行政の処分に納得できず審査請求をしたものの、その審査請求の結果である「裁決」(例:「営業停止処分は妥当」という結論)にも納得がいかない場合に行います。
裁決には、認容、棄却、却下の3種類があり、いずれも取消訴訟の対象です。
通常は「処分の取消訴訟」が優先されますが、法律に「裁決主義」が定められている場合など、処分の取消訴訟ができないときに裁決の取消訴訟を選択することが考えられます。
無効等確認訴訟の定義と具体例
無効等確認訴訟とは、行政がした処分や裁決が無効であることの確認を裁判所に求める訴訟です。
たとえば、食中毒を起こしていない飲食店が保健所から1年間の営業停止処分を受けた場合、その処分は「重大かつ明白な瑕疵」があり無効です。
この無効な処分を無視して営業を続けることは可能ですが、裁判所から「この処分は無効である」というお墨付きを得ることで、客や社会に対し堂々と営業の正当性を主張し、安心感を提供できます。
不作為の違法確認訴訟の定義と具体例
不作為の違法確認訴訟とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分や裁決をすべきであるにもかかわらず、それをしないこと(不作為)が違法であることの確認を裁判所に求める訴訟です。
これは行政が「返事をサボる」状態を指します。
たとえば、飲食店の営業許可申請から2ヶ月経っても保健所から何の連絡もない場合に、その不作為が違法であることを確認してもらうために行われるものです。
この訴訟は、法令に基づく申請が前提となります。
義務付け訴訟の定義と具体例【申請型・非申請型】
義務付け訴訟とは、裁判所が行政に対し、特定の処分や裁決を行うよう命じることを求める訴訟です。
義務付け訴訟には、以下の2種類があります。
- 申請型の義務付け訴訟
国民が行政庁に申請をしたにもかかわらず、希望する処分や裁決がされない場合に、その処分を行うよう命じる訴訟 - 非申請型の義務付け訴訟
国民が行政庁に申請をしていないにもかかわらず、行政庁が特定の処分を行うべき状況でそれを行わない場合に、その処分を行うよう命じる訴訟
差止め訴訟の定義と具体例
差止め訴訟とは、行政庁が特定の処分や裁決をすべきでないにもかかわらず、それが行われようとしている場合に、その処分や裁決をしてはならない旨を命じることを求める訴訟のこと。
これは、将来行われるであろう行政の違法な行為を事前に阻止するための裁判です。
たとえば、飲食店が食中毒を出していないにもかかわらず、来月から1年間の営業停止処分を受ける予定だと連絡を受けた場合、その営業停止処分を阻止するために、裁判所へ差止め訴訟を提起することなどが考えられます。
無名抗告訴訟(法定外抗告訴訟)とは?
無名抗告訴訟とは、行政事件訴訟法第3条第2項から第7項に具体的に定められている6種類の抗告訴訟(処分の取消訴訟、裁決の取消訴訟、無効等確認訴訟、不作為の違法確認訴訟、義務付け訴訟、差止め訴訟)以外の抗告訴訟を指します。
これらは、既存の類型には当てはまらないものの、行政の公権力の行使に対する不服を訴える必要性がある場合に用いられます。
当事者訴訟とは?当事者間の法律関係を争う訴訟
当事者訴訟とは、当事者間の法律関係を確認または形成する処分・裁決に関する訴訟や、公法上の法律関係に関する訴訟を指します。
これは、国家と国民の関係(公法上の法律関係)が問題となることが多く、内容的には民事訴訟に近い性格を持つ裁判です。
当事者訴訟には、形式的当事者訴訟と実質的当事者訴訟の2種類があります。
形式的当事者訴訟の定義と具体例
形式的当事者訴訟とは、処分や裁決に関する訴訟であり、法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするものを指します。
ポイントは「当事者の一方を被告」とすることです。
たとえば、土地収用において、収用委員会が出した補償額に不満がある場合に、土地収用法により補償金の実際のやり取りを行う当事者である市を被告として訴訟を提起するケースがこれに当たります。
通常は処分庁を訴えるところを、特別法によって別の当事者が被告となる点が特徴です。
実質的当事者訴訟の定義と具体例
実質的当事者訴訟とは、公法上の法律関係に関する確認の訴え、その他の公法上の法律関係に関する訴訟を指します。
ポイントは「公法上の法律関係」を争う点です。
具体例としては、公務員が懲戒免職処分の無効を前提として退職金の支払いを請求する訴訟や、日本国籍の確認を求める訴訟などが挙げられます。
これは、国と国民の間の公法上の権利義務関係そのものを争う訴訟です。
「客観訴訟」の詳しい解説【民衆訴訟・機関訴訟】
国民の権利や利益の保護を直接の目的とせず、行政の適法性の確保を目的とする客観訴訟には、民衆訴訟と機関訴訟があります。
民衆訴訟とは?自己の法律上の利益にかかわらない訴訟
民衆訴訟とは、国または公共団体の機関が法規に適合しない行為を行った場合に、その是正を求める訴訟です。
特徴は、自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起されること。つまり、「自分のためではなく、みんなのためにする裁判」であり、勝訴しても自分に直接的な金銭的メリットなどはありません。
代表的な例は、選挙における「1票の格差」に関する訴訟です。また、地方自治法に規定されている住民訴訟も民衆訴訟の典型例となります。
機関訴訟とは?国や公共団体の機関相互間の紛争解決
機関訴訟とは、国または公共団体の機関相互間における権限の存否、またはその行使に関する紛争についての訴訟を指します。
最大の特徴は、訴訟の当事者(原告と被告)がともに行政機関であり、国民が関与しない点です。
たとえば、「政府と県」「県と市」「市と市」といった、行政機関同士の権限争いや紛争解決のために行われる裁判が該当します。
行政事件訴訟法の重要ポイントと専門用語
行政事件訴訟法を理解する上で重要な概念や専門用語について解説します。
取消訴訟の原告適格とは?「法律上の利益」を解説
原告適格とは、訴訟を提起する者(原告)が、その訴訟において法律上保護されるべき利益を有しているかどうかの資格のことです。
取消訴訟においては、この「法律上の利益」を有する者のみが訴えを提起できます。
たとえば、営業停止処分を受けた飲食店の店主が、その処分が取り消されれば営業を続けられるという「飲食店を営業する権利が回復する」という法律上の利益がある場合に、原告適格が認められます。
第三者の原告適格が認められるケース【判例も紹介】
処分や裁決の相手方以外の第三者が原告適格を有するかどうかを判断する際、裁判所は、単に当該処分や裁決の根拠となる法令の文言だけではなく、以下の3つの要素を総合的に考慮します。
- 根拠法令の条文:処分や裁決の直接的な法的根拠。
- 根拠法令の趣旨・目的:その法令が何のために制定されたのか、どのような目的を達成しようとしているのか。関連法令の趣旨・目的も参照されます。
- 利益の内容・性質:処分が法令に違反して行われた場合に害される利益が、どのような性質を持ち、どの程度害されるのか。
これらを考慮し、裁判所は第三者にも法律上の利益を認めることがあります。
取消訴訟の「取消し理由の制限」とは?
取消訴訟においては、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として、処分の取消しを求めることはできません。
これは、取消訴訟が「自分のため」に行う主観訴訟であるという性質に基づくものです。
たとえば、友人が受けた営業停止処分について、その友人のために取消訴訟を提起しようとしても、提起者自身の法律上の利益とは無関係であれば認められません。
また、教科書検定で不合格になった本の作者が、生徒の「教育を受ける権利」や教師の「教育の自由」侵害を主張して取消訴訟を提起しても、作者自身の法律上の利益と無関係な主張であるため、認められないという判例があります。
処分の取消訴訟と審査請求の関係【自由選択主義・審査請求前置主義】
処分の取消訴訟を提起する際に、事前に審査請求を行う必要があるかどうかは、原則と例外があります。
- 自由選択主義(原則)
法律に特別な定めがない限り、処分の取消訴訟と審査請求のどちらか一方を自由に選択して行うことができます。両方を同時に行うことも可能です。 - 審査請求前置主義(例外)
法律に「処分の取消訴訟は、審査請求に対する裁決が出た後でなければ提起できない」と特別に定めがある場合、先に審査請求を行い、その裁決を経てからでなければ処分の取消訴訟を提起できません。
審査請求前置主義が適用されるのは、不服申立てが大量で裁判所がパンクするのを避ける場合や中立機関による公正な判断が期待できる場合、専門的な知識が必要な場合などがあります。
審査請求前置主義の例外とは?
審査請求前置主義が適用される場合でも、以下の3つのいずれかに該当すれば、審査請求を省略して直ちに処分の取消訴訟を提起することができます。
- 審査請求から3ヶ月を経過しても裁決がない場合。
- 処分やその執行、または手続の続行によって著しい損害を避けるため緊急の必要がある場合
- 上記1、2以外に、裁決を経ないことにつき正当な理由がある場合
これらの例外は、「3ヶ月経過」「緊急の必要」「正当な理由」のいずれかによって審査請求を省略し、直接裁判に移行することを可能にします。
行政事件訴訟法に定めがない事項の扱い【民事訴訟の例】
行政事件訴訟法は、すべての行政事件訴訟に関する事項を詳細に定めているわけではありません。
法律に定めがない事項については、民事訴訟法の例によることとされています。これは、民事訴訟の考え方やルールを適用するという意味です。
当事者能力・訴訟能力とは?
民事訴訟の例による事項には、当事者能力や訴訟能力などがあります。
- 当事者能力
訴訟の当事者(原告または被告)となることができる資格を指します。民事訴訟法では、権利能力(法的な権利義務の主体となることができる資格)があれば、当事者能力があるとされます。 - 訴訟能力
自分一人で訴訟行為を有効に行うことができる資格を指します。民事訴訟法では、行為能力(単独で法律行為を有効に行うことができる資格)があれば、訴訟能力があるとされます。未成年者や成年被後見人など、行為能力がない者は訴訟能力もありません。
まとめ
今回は、行政事件訴訟法とは何かについてわかりやすく解説しました。
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