「弁護士、司法書士、行政書士はどのような違いがあるの？」と気になっている方も多いのではないでしょうか？
よく知られるこの3つの職業ですが、違いについて説明するのは難しいですよね。
このコラムでは、弁護士、司法書士、行政書士の仕事の違い、資格難易度の違いなどを紹介します。
弁護士、司法書士、行政書士の違いについてご興味のある方に、このコラムが参考になれば幸いです。

弁護士・司法書士・行政書士の違い

弁護士・司法書士・行政書士はいずれも法律に関する専門職ですが、それぞれ取り扱う業務の範囲や権限に違いがあります。

弁護士は法律の専門家で、裁判その他法的紛争における代理権を持ちます。なお、弁護士であれば、弁理士、税理士、行政書士の資格も有します。
司法書士は登記の専門家であり、簡易裁判所での一部訴訟代理も可能ですが、範囲は限定されています。
行政書士は、許認可や書類作成の代行を行う役割を担っており、裁判業務には関与できません。

資格	裁判の代理	登記業務	官公庁書類作成
弁護士	◎（全て）	△（可）	△（可）
司法書士	△（簡裁のみ）	◎（主業務）	△（一部）
行政書士	×（不可）	×（不可）	◎（主業務）

弁護士の仕事・業務範囲

弁護士の主な業務は、裁判業務、法律相談、交渉・示談の代理、書類の作成、債務整理、顧問弁護士、刑事弁護、被害者支援、行政とのやり取りなどです。

法律的な紛争全般に関して、依頼者から委任を受けて、代理人として依頼者のために法律事務を取り扱います。

取り扱う事件は事務所によって様々ですが、一般的には、交通事故、離婚、相続、成年後見などの一般民事や、国選弁護人などの刑事事件の他、顧問先の企業からの法律相談、株主総会への対応などを取り扱う事務所が多いです。

司法書士の仕事・業務範囲

法務局、裁判所、検察庁などへ提出するための書類を作成しますが、不動産登記の手続が主な業務です。

主な業務としては、

• 不動産の売買、贈与、相続などに伴う名義変更
• 住宅ローン完済後の抵当権抹消
• 新築・中古物件購入時の所有権移転登記

などが挙げられます。

その他、商業登記・会社登記、企業法務、成年後見業務、遺言・相続業務、財産管理業務、企業経理支援業務などが挙げられます。

登記とは「これは私のものです」と事実や権利を公的な帳簿に記録することです。

つまり、権利を守る職業であると言えます。

行政書士の仕事・業務範囲

行政書士の仕事は、官公署へ提出する申請書やその添付書類、その他の書類の作成、提出が業務の中心です。

大きく分けると、書類作成業務、許認可申請の代理、相談業務に分類されます。

例えば、農地転用許可や、開発許可などは、許可を受けるための要件が複雑で、申請書やその添付書類を作成するのにも時間と手間がかかり、一般の人が直接行うのは困難な場合が多いです。

このような許認可の手続については、行政書士が土地所有者等の代わりに必要な書類を作成したり、許可を受けるために必要な事項について事前相談をしたりする業務を行います。

土地の取引に関係する業務を行うことが多いため、多くの行政書士が宅地建物取引士の資格も有しています。

司法試験・司法書士試験・行政書士試験の違い

司法試験・司法書士試験・行政書士試験は、受験資格や試験内容、難易度、受験資格が違います。
具体的に違いをみていきましょう。

難易度の違い

合格率は、司法試験が40%～50%程度、司法書士試験が4～5％、行政書士試験が10%～15%程度です。

合格率だけをみると、司法試験が最も高いですが、司法試験の場合、その受験を資格するハードルが高く、受験資格を取得するために必要な予備試験の合格率は、3~4%です。

弁護士になるための勉強時間目安は、3000～8000時間。司法書士は3000時間以上。行政書士は800時間といわれています。

これらのことから、合格率から見る難易度は、司法試験が最も難しく、次に司法書士、行政書士という順になるでしょう。

科目の違い

試験科目の違いは以下の通りです。

①司法試験

短答式：憲法・民法・刑法

論文式：憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・ 刑事訴訟法・選択科目

②司法書士試験

択一式：憲法・民法・刑法・商法・ 民事訴訟法・民事執行法・民事保全法・司法書士法・供託法・不動産登記法・商業登記法

記述式：不動産登記法・商業登記法。

③行政書士試験

試験科目：憲法・行政法・民法・商法・基礎法学・行政書士の業務に関し必要な基礎知識

全60問の中に一部記述式が含まれる。

いずれも、択一式と記述式の試験がありますが、司法試験が最も試験時間、配点割合、答案の分量の点から、論文式に重点が置かれている試験といえるでしょう。

受験資格の違い

行政書士試験と司法書士試験は、受験資格はありません。
学生で取得する人もいますが、社会人になってから業務上必要になるなどして取得するという人もいます。

司法試験は、受験資格が必要で、予備試験合格か法科大学院を修了していること（修了見込みも含む。）が必要です。

司法試験は、受験資格を得るのが難しく、合格率が3～4％の予備試験に合格するか、2～3年間法科大学院に通学、卒業する必要があります。

予備試験合格者の司法試験合格率は、例年90％を超えていますから、予備試験に合格できれば、司法試験に合格できる可能性も相当高くなるといえるでしょう。

合格には数年単位の学習が必要になりますので、その覚悟を持った人が望む資格だと考えておくといいでしょう。

弁護士・司法書士・行政書士、どれを目指すか迷ったら？

弁護士・司法書士・行政書士のどれを目指すか迷った場合、それぞれに向いている人の特性を知り、ご自身の適性を判断することが大切です。

弁護士に向いている人

• 社会正義に興味がある
• 本気で難関資格にチャレンジしたい
• 人のために争うことに魅力を感じる
• 精神・肉体がタフ

弁護士は、他人のトラブルの間に入って紛争を解決することを主な業務とします。
大手のローファームでは、多くの弁護士が深夜まで働いていますし、いわゆる一般民事事件を扱うまち弁も、国選弁護人など、夜間や土日休日の対応が必要となることもあるため、司法試験に合格するのに精神的肉体的タフさが求められます。

資格を取得して弁護士になった後も、精神的肉体的なタフさが求められる職業といえるでしょう。反面、事件を解決するやりがいや達成感が大きい職業でもあります。

司法書士に向いている人

• きっちりした作業が得意
• 法律文書が好き
• 責任感が強い人

司法書士は、主に法務局に提出する登記手続に必要な書類の作成その他の業務を行いますから、正確性、迅速性が求められます。定型的な業務も多いため、固定の顧客を数多く抱えている司法書士は、収入も安定しています。

司法書士に向いている人

• 独立志向がある
• 身近な人の役に立ちたい
• 事務処理が得意

行政書士は、官公署に提出する申請書類等を作成、提出したり、事前相談や調整をすることを主な業務としますので、書類作成の事務処理能力が求められます。
また、土地の取引にかかわる業務を行うことが多いため、宅地建物取引士の資格も併せて持っている場合が多いです。

まとめ

• 弁護士は裁判代理や法律相談など法的紛争全般に対応する法律の専門職
• 司法書士は登記業務のプロで、簡易裁判所での一部訴訟代理も可能
• 行政書士は官公署向け書類作成や許認可手続の代行が主な業務
• 試験難易度は「弁護士＞司法書士＞行政書士」で、必要な勉強時間も異なる

弁護士、司法書士、行政書士は、業務内容に違いがあります。難易度や試験内容も異なるため、受験の際には自分の得意なことや性格なども踏まえて、どの資格を目指すのが最適か考えてみましょう。