社労士試験の救済とは?足切り点・合格基準・例年の傾向を解説
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皆さんは社会保険労務士試験(以下、社労士試験)について調べていく中で、「救済」や「足切り」という言葉を見つけたことがあるのではないでしょうか。
例年、救済や足切りが実施されるかどうかで試験の合否が決まるケースが多いです。
本コラムでは、皆さんが安心して社労士試験に臨めるように、試験の合格基準や例年の傾向に触れながら、救済や足切りがどのようなものかを詳しく説明していきます。
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社労士試験の足切りとは、全体の得点が高くても科目ごとの合格基準点を下回ると不合格になること。
また救済制度とは、足切りによって不合格者が多い場合、受験者の得点分布を考慮して合格基準点が引き下げられる制度になります。
社労士試験には、試験全体の合格基準点のほかに、科目ごとの合格基準点があります。
全体の得点が高くても、科目ごとの合格基準点をひとつでも下回ると不合格になるとても厳しい試験です。
足切りは社労士試験のほかに、一部の国公立大学の試験や行政書士試験などで実施されています。
効率良く合格者を選抜する方法としてメジャーであり、社労士試験独自の制度ではありません。
一方で救済制度は、社労士試験のほかに実施している試験もありますが、例年のように実施している試験はありません。
選択式・択一式それぞれの足切りと合格基準点
社労士試験の出題形式は、午前に実施される選択式試験と午後に実施される択一式試験の2つにわかれています。
選択式・択一式の例年の合格基準点は、以下のとおりです。
出題形式 | 満点 | 合格基準点 |
選択式(5点×8科目) | 40点 | 合計約25点以上かつ各科目3点以上 |
択一式(10点×7科目) | 70点 | 合計約45点以上かつ各科目4点以上 |
つまり、選択式であれば2点以下、択一式であれば3点以下の科目がひとつでもあると足切りに引っかかってしまいます。
例えば、選択式の全体で30点以上取っている場合でも、難しいといわれる社会保険に関する一般常識(以下、社一)の科目が2点以下だったら不合格です。
選択式では5問中2~3問が同じ論点から出題されるケースもあり、その論点で躓いてしまうと、十分に合格する実力がある方であっても足切りとなってしまい涙を飲むということは珍しくはありません。
全体の得点が高くとも科目ごとの合格基準点を下回ると不合格となってしまう、とても厳しい試験といえるでしょう。
また、各出題形式の合格基準となる合計得点は明確に決められていません。
2023年の試験では、選択式の合格点は26点、択一式の合格点は45点でした。
対して、2022年では選択式の合格点は27点、択一式の合格点は44点です。
※参考コラム:社労士試験の試験科目や試験内容一覧!気になる合格基準点や出題範囲も解説
毎年多少の変動はありますが、選択式・択一式ともに例年7割近く得点できれば合格基準に達するといわれています。
なお、正式な合格基準の発表は、全国社会保険労務士会連合会試験センターより毎年合格発表日に行われます。
救済が起きる基準
それでは、救済はどのような時に行われるのでしょうか。
救済が起こる基準は、科目ごとの合格基準点を適用した場合に、半分以上の受験者が足切りによって不合格になってしまう場合です。
以下、厚生労働省より発表された「[社会保険労務士試験の合格基準の考え方について」より抜粋となります。
各科目の合格基準点以上の受験者の占める割合が5割に満たない場合は、合格基準点を引き下げ補正する。
ただし、次の場合は、原則として引き下げを行わないこととする。
ⅰ) 引き下げ補正した合格基準点以上の受験者の占める割合が7割以上の場合
ⅱ) 引き下げ補正した合格基準点が、選択式で0点、択一式で2点以下となる場合
引用元:社会保険労務士試験の合格基準の考え方について
例外として、救済を行うことで7割以上の受験者が救済後の合格基準点を満たしてしまう場合、また、選択式では最低1点、択一式では最低3点までしか合格基準点を引き下げないことが書かれています。
ただし救済をすることで合格水準に達す受験生があまりにも多い場合は、半分以上が不合格の水準だったとしても救済が行われないことがあるため注意しましょう。
過去の救済の例
過去5回分の試験で行われた救済は、以下のとおりです。
年度 | 選択式 | 択一式 |
---|---|---|
令和5年度(第55回) | – | – |
令和4年度(第54回) | – | – |
令和3年度(第53回) | 労一1点、国年2点 | – |
令和2年度(第52回) | 労一2点、社一2点、健保2点 | – |
令和元年度(第51回) | 社一2点 | – |
選択式は何かしらの科目で救済が行われている一方で、択一式は救済が実施されていません。
選択式の社一、労一は出題範囲が広く足切り対象になる受験生が多いため、救済が起きやすい傾向があります。
また健保に関する救済は、5問中3問を高額療養費が占めた年度と、少々マイナーな論点から数字の穴埋めが多く出題された年度に行われています。
このことから、マイナー論点や、判断の難しい数値に関する出題がなされた際には救済の可能性があるといえるでしょう。
一方で、択一式では合格基準点が10問中4問と選択式よりも基準が緩いこともあり、平成29年を最後に1科目も救済は行われていないため、当たり前のように救済を期待することは難しいと考えられます。
救済は毎年あると思っていい?
選択式では毎年のように何かしらの科目で救済が実施されています。
一方で必ず実施されるとは限らないため、救済ありきで受験することはおすすめしません。
足切りでの不合格も考えられるため、満遍なく全科目を勉強した方が合格しやすいでしょう。
ただし、本試験において見たことのないような論点が出題され、確信を持って回答できなかったとしても諦める必要はありません。
そのような問題は、他の多くの受験生も同様に解けず、救済が行われる可能性があるためです。
そのような問題に直面しても諦めたり、ペースを乱したりせずに、救済を期待して諦めずに最後まで問題を解き切ることが重要です。
※関連コラム「社会保険労務士(社労士)試験の概要」
まとめ
本コラムでは、社労士試験の救済や足切り制度について解説しました。
- 社労士試験には試験全体の合格基準点と科目ごとの合格基準点がある
- 全体の得点が高くても全科目で合格基準点を満たさないと足切りで不合格となる
- 足切りでの不合格が多い場合は、合格基準点が引き下げられる救済が行われる
- 救済は確実に実施される保証はないため、全科目満遍なく勉強するのがおすすめ
前章でもお伝えしたように、救済を前提に試験勉強の計画を組み立ててはいけません。
救済が行われやすい科目は確かにあります。
ただ毎回必ず救済される訳ではないため、救済を前提に試験勉強の計画を立てることはやめましょう。
苦手な科目は作らずに満遍なく勉強をすることで、全ての科目で合格基準点を満たせるようにインプットを行っていくことが確実な合格への近道となります。
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広告代理店で、自らデザインやコピーも考えるマルチな営業を経験後、大手人材紹介会社で長年キャリアアドバイザーを経験、転職サポートを行う。
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その後、研修講師や社外セミナーの講師などを数多く経験。
相手が何に困って何を聞きたがっているのかをすばやく察知し、ユニークに分かりやすく講義をすることが得意。
社会保険労務士試験は、ほぼ独学で就業しながらも毎日コツコツと勉強し、三度目の挑戦で合格した苦労談も面白く、また、三度やったからこそ教えられる「やっていいことと駄目なこと」も熟知している。
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