行政書士として独立開業するには、行政書士会への登録・事務所の準備などを含む6つのステップが必要です。費用は、最低30万円程度かかります。

事務所は自宅でもレンタルオフィスでも構いませんが、独立性や守秘性といった条件を満たす必要があり、契約前の確認が欠かせません。また、開業後は自分で案件を獲得していくことになるため、営業・集客の準備も並行して進めておくことが重要です。

本記事では、開業の流れから事務所の条件、仕事の取り方、確定申告や法人化まで解説します。

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目次

行政書士が独立開業する流れは?必要なものは?

行政書士が独立開業する流れは?必要なものは?

行政書士が独立開業する流れは以下のとおりです。

  1. 開業資金を用意する
  2. 開業場所と事務所名を決める
  3. 行政書士会に行政書士登録申請書を提出する
  4. 職印や看板、名刺などを用意する
  5. 行政書士登録証交付式に出席する
  6. 管轄の税務署に開業届を提出する

順番に見ていきましょう。

1.開業資金を用意する

まずは開業資金を用意しましょう。

行政書士が開業する際に必要な費用は以下のとおりです。

費用項目相場備考
行政書士会に支払う登録費用約30万円登録免許税:約3万円登録手数料:約2万円入会金:約20万円会費(3か月分):約2万円
職印・ゴム印・名刺・挨拶状2万円〜4万円依頼する業者によってはさらに費用を抑えられる
看板1万円〜
電話・FAX・インターネット環境2万円〜
パソコン・プリンター5万円〜10万円既存のものを使用すれば費用はかからない
事務用品費5万円〜20万円事務机・応接机・書類棚・金庫・文房具など
ホームページ開設費0〜5万円依頼する制作会社によっては高額になる
事務所の賃貸契約料自宅開業0円住居スペースと明確に区別できることが必要
賃貸80万円〜100万円敷金・礼金・仲介手数料・火災保険・家賃(6か月分)
合計自宅開業45万円〜+3か月分の生活費・事務所運営費として約100万円必要
賃貸125万円〜

上記の金額は目安です。契約する業者や購入先など、ケースによって異なります。

例えば自宅以外で開業する場合でも、家賃の安い物件やシェアオフィスを利用するなら上記よりも費用を抑えられます。

事務机や応接机といった事務用品も、既存のものを使用したり知人に譲ってもらったりすれば開業にかかる費用を削減できるでしょう。

反対に、上記より費用がかかる場合もあります。

特に大きな差が出るところはホームページ開設費です。

表内には「0〜5万円」と記載しましたが、これはあくまで自作した場合の費用で、プロに本格的なホームページを制作してもらうなら30〜50万円、制作会社によっては200万円かかることもあります。

また、実務のための書籍やさまざまな申請に活用できる書式集なども購入するなら、さらに費用がかかります。

なお、開業時にかかる費用とは別に、3か月分の生活費と事務所運営費も用意しておくと安心です。「3か月は仕事がなくてもなんとかなる」という安心感があると、どっしり構えて仕事ができるでしょう。

開業資金が足りないときの補助金・融資

開業資金が不足している場合は、補助金や融資の活用を検討しましょう。

まず前提として、「開業したこと」自体を対象とする助成金はほとんどありません。助成金は主に厚生労働省が所管する雇用関係の制度であり、従業員を雇い入れて初めて対象になるものが中心だからです。ひとりで開業する行政書士が現実的に使えるのは、補助金と融資の2つと考えておきましょう。

制度概要注意点
小規模事業者持続化補助金販路開拓の取り組みを支援する補助金。ホームページ制作費、チラシ・看板の作成費などが対象になる商工会議所・商工会の支援を受けて申請する。公募回ごとに要件や上限額が変わる
自治体の創業支援補助金市区町村・都道府県が独自に実施。事務所賃料や設備費の一部を補助するものもある「(自治体名)創業 補助金」で検索。予算枠が小さく、先着や抽選になることも
日本政策金融公庫の新規開業資金創業者向けの融資制度。要件を満たせば無担保・無保証人での借入も可能融資のため返済が必要。事業計画書の作成が必須
制度融資自治体・金融機関・信用保証協会が連携する融資。利子や保証料の一部を自治体が負担する公庫より手続きに時間がかかる傾向がある
※制度は変更されている可能性もあるので詳細は公式サイトで確認してください。

注意したいのは、補助金は原則として後払い(精算払い)である点です。採択されても、いったんは自己資金で支払い、実績報告を経てから入金されます。補助金をあてにして開業資金を組むという計画は成り立たないと考えてください。

また、創業融資として広く知られていた日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は2024年に廃止され、「新規開業資金」に統合されています。古い情報が残っているサイトも多いため、必ず公庫の公式サイトで最新の要件を確認しましょう。

2.開業場所と事務所名を決める

開業資金が貯まったら、開業場所と事務所名を決めましょう。

開業場所は、自宅の一室でも賃貸した事務所でも構いません。ただし、どのような場所でもよいわけではなく、行政書士の事務所として認められるための条件を満たす必要があります。契約してから「登録できない物件だった」となると費用が無駄になるため、物件を決める前に条件を確認しておきましょう。

物件を借りるなら家賃や広さなどはもちろん、もっとも考えなければならないのは立地。仕事がスムーズにできるか、案件を獲得しやすいかといった部分には立地が大きく影響するためです。

例えば「会社設立」をメインに取り扱いたい場合は、法務局の近くに事務所を構えると便利でしょう。

「許認可申請」を専門業務にしようとしているなら、県庁や市区町村役場の徒歩圏内に事務所を借りると移動時間を減らせます。

近年は書面申請よりも電子申請のほうが主流になりつつあり、業務によっては直接官公庁に出向かなくても申請が可能になりましたが、事前の相談や打ち合わせなどは、電話やメールよりも直接資料を持参したほうが早いときもあります。

官公庁近くで開業しているほかの事務所と差別化を図り、そのうえでうまく付き合っていく必要はありますが、自分の業務に関連する官公庁が近くにあることはプラスに作用するでしょう。

行政書士事務所として認められる条件

行政書士の事務所には、法令および各都道府県の行政書士会(単位会)の内規によって、次のような条件が定められています。

  • 業務を行うための独立したスペースが確保されていること
  • 生活空間や他人の空間と明確に区分されていること
  • 事務所の使用権限があること(自己所有、または賃貸借契約・使用承諾がある)
  • 守秘義務を守れる環境であること(施錠可能な書庫やキャビネットがある)
  • 事務所は1か所のみであること(行政書士法第8条により、2か所以上設けることはできません)

登録申請時には事務所の写真提出が求められ、登録後に単位会による事務所調査が行われることもあります。要件を満たしていなければ登録が認められないため、物件を契約する前に、必ず所属予定の単位会へ確認しましょう。

開業形態ごとの可否の目安は以下のとおりです。

開業形態可否の目安ポイント
自宅(持ち家・戸建て)独立した一室を確保できれば認められやすい
自宅(賃貸マンション)賃貸借契約で事務所使用が禁止されていないか要確認。オーナーの承諾書を求められることも
レンタルオフィス(個室)◯〜△施錠可能な専有個室であれば認められる場合が多い
シェアオフィス・コワーキング(フリーアドレス)×専有性・独立性を満たさず、原則認められない
バーチャルオフィス×実体がないため不可
実家・親族宅所有者の使用承諾書が必要

なお、審査の運用は単位会ごとに異なります。同じ形態でもA県では認められ、B県では認められないというケースがあるため、他県の開業体験談をそのまま鵜呑みにしないよう注意しましょう。

自宅開業する場合の間取り・レイアウト

自宅開業のポイントは、「生活空間と事務所空間を物理的に分けられるか」の一点に尽きます。

満たしておきたい条件は次のとおりです。

  • 執務スペースが独立した一室であること(リビングの一角やパーテーションでの仕切りは不可とされることが多い)
  • 玄関から執務室まで、生活空間を通らずに来客を案内できる動線であること
  • 来客時に生活音や生活感が入り込まないこと
  • 書類やパソコンを施錠して保管できること

理想は、玄関のすぐ横の部屋を事務所にする間取りです。玄関から事務所へ直行でき、来客がリビングや水回りを通る必要がありません。

一方、空いているのが2階の部屋だけ、事務所にしたい部屋がリビングの奥にある、といったケースでは来客対応が課題になります。この場合は、打ち合わせを顧客先やレンタル会議室で行う運用にし、事務所は書類作成・保管の拠点と割り切る方法もあります。

また、行政書士法により事務所への標識(表札・看板)の掲示が義務づけられています。集合住宅で掲示が難しい場合は、事前に管理規約とオーナーの意向を確認しておきましょう。

レンタルオフィス・シェアオフィスでも開業できる?

結論として、レンタルオフィスは条件を満たせば開業できる可能性が高く、フリーアドレス型のシェアオフィス・コワーキングスペースは原則として認められません

判断の分かれ目になるのは次の3点です。

  • 専有性:自分だけが使える区画であるか
  • 独立性:壁と扉で仕切られ、施錠できるか
  • 守秘性:書類やパソコンを施錠保管でき、会話や画面が他人に見聞きされないか

天井まで届かないパーテーション区画、共用ラウンジのみの契約、月ごとに席が変わるプランなどは、この3要件を満たせないため認められにくいと考えてください。

契約前に確認したい項目は以下のとおりです。

  • 賃貸借契約(利用契約)で、事務所としての使用が認められているか
  • 契約期間が登録手続きに耐える長さか(短期解約可の契約は不可とされることがある)
  • 郵便物の受け取り・保管方法
  • 表札や看板を掲示できるか
  • 事務所調査の際に立ち入りができるか

これらの取り扱いは単位会によって運用が分かれます。契約書にサインする前に、「この物件・この契約形態で登録できるか」を所属予定の行政書士会へ問い合わせておきましょう。

事務所名を決める

また、行政書士登録までに事務所名も決めなければなりません。

基本的に事務所名は好きにつけてもよいですが、以下のような規定があります。

  • 事務所名には「行政書士」の文言を入れる必要がある
  • 「法律」や「司法」「公共」など、使用できない文言がある
  • 自分の名前を使用する場合を除いて、同一都道府県内ですでに使用されている名称は使用できない
  • 公序良俗に反するものは使用できない

規定を守りつつ、覚えてもらいやすい名称をつけましょう。

3.行政書士会に行政書士登録申請書を提出する

開業場所と事務所名が決まったら、いよいよ行政書士登録申請書を提出します。

申請書には以下のような書類を添付します。

  • 行政書士登録申請書
  • 履歴書
  • 誓約書
  • 行政書士会入会届(個人用)
  • 事務所写真(規定の写真台紙に貼り付ける)
  • 行政書士となる資格を証する書面
  • 住民票
  • 身分証明書
  • 顔写真
  • 戸籍抄本
  • 事務所の使用権を証する書面(申請者と事務所とする建物の所有者が異なる場合)
  • 誓約書(申請時点で会社や士業事務所などに勤務している場合)

上記は東京都行政書士会で案内されている必要書類です。

必要書類は都道府県ごとに異なるため、必ず行政書士会のホームページを確認しましょう。

なお、登録手数料や入会費といった費用関係も申請時に支払います。

申請書類を提出したら、日本行政書士会連合会にて登録審査が行われます。地域や状況にもよりますが、登録完了まで約2か月かかることが一般的です。

登録が完了したら行政書士会から連絡があり、後日行われる「行政書士登録証交付式」の案内が送付されます。

4.職印や看板、名刺などを用意する

行政書士登録証交付式への案内が届いたら、職印や看板、名刺などを用意します。開業後すぐに発送できるよう、開業の挨拶状を作っておくのもよいでしょう。

職印は規格が決まっています。案内に記載されているため、指定に合うものを作りましょう。

職印は交付式の際に使用するため、すぐに手配することをおすすめします。名刺も交付式までに作成しておけば、同期となるほかの新米行政書士たちと名刺交換することが可能です。

専門分野が違えば今後顧客を紹介し合う可能性があるため、交流しておくとよいでしょう。

そのほか、事務所名の入った看板も作成しておく必要があります。

開業と同時でなくても構いませんが、看板を掲げることは行政書士法で義務づけられています。色やデザイン、サイズなどは自由です。

徽章を入れると信頼度が増し、自分としても「本当に行政書士になった」という実感が湧きます。

5.行政書士登録証交付式に出席する

登録証交付式は行政書士会の所属支部で行われます。

登録証交付式とは、行政書士の登録証を受け取る式典です。地域によっては「伝達式」など、呼び名が異なることもあります。

同じタイミングで登録申請した行政書士がいなければ自分ひとりだけですが、ほかにも新規登録者がいるときは一緒に参加します。

同期とは、情報交換をしたりときには支え合ったりとよい関係を築けることもあるため、この出会いは大切にしましょう。

交付式の内容は支部によって異なります。中には、参加者全員で行政書士法施行規則などの読み合わせを行うところもあり、交流の機会にすることが可能です。

6.管轄の税務署に開業届を提出する

行政書士登録証交付式のあと、事務所の住所を管轄する税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を提出します。

提出期限は開業から1か月以内ですが、期限内に提出しなかったからといって、特にペナルティを受けるわけではありません。

ただし、確定申告時に最大65万円の控除を受けられる「青色申告」を行うためには、「青色申告承認申請書」とあわせて開業届を提出する必要があります。

少しでも節税したいなら、期限内に提出しておきましょう。

そのほか、開業届とは別に「個人事業税の事業開始等申告書」も提出する必要があります。提出先は税務署ではなく都道府県税事務所です。

提出期限は都道府県によって異なるため、都道府県税事務所で確認しましょう。

事業開始等申告書にも、提出しないことによるペナルティはありません。しかし提出が必要とされている書類なため、期限を過ぎていても受け付けてもらえるため出しておきましょう。

行政書士は個人事業主|確定申告と青色申告

開業届を提出した時点で、行政書士は個人事業主になります。会社員のように源泉徴収と年末調整で完結することはなく、毎年自分で確定申告を行う必要があります。

申告方法には青色申告と白色申告があり、控除額が大きく異なります。

申告方法主な要件控除額
青色申告複式簿記+e-Taxまたは電子帳簿保存最大65万円
青色申告複式簿記+書面提出55万円
青色申告簡易簿記10万円
白色申告なし

青色申告には、赤字を3年間繰り越せる、家族への給与を経費にできる(青色事業専従者給与)といったメリットもあります。開業初年度は赤字になりやすいため、繰越控除の効果は特に大きいでしょう。

適用を受けるには「青色申告承認申請書」を、原則として開業から2か月以内に提出する必要があります。開業届と同時に提出しておくのが確実です。

経費にできるものには、行政書士会の会費、書籍や書式集、事務所の家賃、通信費、交通費、職印・名刺・看板の作成費、パソコンなどがあります。自宅開業の場合は、事務所として使用している面積割合や使用時間に応じて按分(家事按分)します。

あわせてインボイス制度への対応も検討が必要です。行政書士の顧客は法人や事業者が多く、取引先から適格請求書を求められる場面が想定されます。免税事業者のままだと取引先が仕入税額控除を受けられないため、想定する顧客層を踏まえて登録の要否を判断しましょう。なお、登録した場合の負担を軽減する経過措置には適用期限があるため、最新の取り扱いを国税庁のサイトで確認してください。

会計ソフトの選び方

記帳を紙やExcelで行うことも不可能ではありませんが、青色申告の65万円控除に必要な複式簿記に対応するには、会計ソフトを使うのが現実的です。

選ぶ際のポイントは以下のとおりです。

  • 複式簿記・青色申告決算書に対応しているか
  • e-Taxと連携できるか(65万円控除の要件を満たしやすい)
  • 銀行口座やクレジットカードと自動連携できるか
  • インボイス制度・電子帳簿保存法に対応しているか
  • 月額・年額の料金

クラウド型の会計ソフト(freee会計、マネーフォワード クラウド確定申告、やよいの青色申告 オンラインなど)は、法改正への対応が自動で行われる点が個人事業主向きです。事業用の銀行口座とクレジットカードを分けたうえで連携させると、記帳の手間を大幅に減らせます。

売上規模が大きくなり消費税の申告も必要になった段階では、税理士へ依頼する選択肢も出てきます。記帳は自分で行い、申告だけ依頼するといった使い分けも可能です。

行政書士として独立開業するメリット

行政書士として独立開業するメリットとして、下記のようなことが挙げられます。

  • 低コストで開業できる
  • 自由な働き方ができる
  • やり方次第で稼げる

低コストで開業できる

それほどコストをかけずに開業できる点は、行政書士として独立開業するメリットといえるでしょう。

いくつか準備しなければならないものもありますが、最低限以下のものがあれば開業できます。

  • 行政書士会に支払う登録費用
  • 職印
  • 看板
  • 電話・FAX・インターネット環境
  • パソコン・プリンター
  • 名刺
  • 事務机や応接机、書類棚、コピー用紙などの事務用品

行政書士会の登録会費は約20〜30万円かかります。

あとは細々したものを揃える必要がありますが、例えば自宅の一室で開業し、もともと所持していたパソコンやプリンターを使うなどすればコストを抑えられるでしょう。

はじめから事務所を借りたり職員を雇ったりするならまた別ですが、そうでなければほかの業種よりも低コストでの開業が可能です。

開業資金については次章で詳しく解説します。

自由な働き方ができる

会社などに縛られず自由な働き方ができるところも、行政書士として開業するメリットのひとつです。

顧客の予定や行政機関の開庁時間などに合わせて動かなければならないこともありますが、基本的には「いつ稼働していつ休むか」を自分で決められます。

例えば、仕事の合間に私用を済ませたり、急遽午後から休みにしたりといったことも可能です。

仕事が落ち着いていれば、子どもの行事などにも気兼ねなく参加できるでしょう。
事実、主婦から行政書士になるケースもあります。

また、仕事ができる環境さえ整っていれば、働く場所にも縛られません。

顧客の個人情報を取り扱う際には十分注意する必要がありますが、自宅に仕事を持ち帰ったり出先で作業をしたりといったこともできます。

成功した開業行政書士の年収は高い

やり方次第で大きく稼げる点も独立開業のメリットです。

収入がある程度決まっている会社員とは異なり、頑張り次第で収入を伸ばせるところはモチベーションにもなります。

どの程度の年収が見込めるかについては、行政書士の独占業務である「建設業許可」を専門とした場合の例を見てみましょう。

項目最頻値月の受注数月収例年収例
建設業許可申請(新規・法人)15万円3件45万円540万円

月に3件受注できれば、年収500万円を突破できます。

もちろん、上記はあくまでも一例です。

実際はこのようにコンスタントに案件を獲得できるとは限りません。

しかし、建設業界は横の繋がりが強い傾向にあるため、誠実な仕事をして信頼を勝ち取れば、別の顧客を紹介してもらえる可能性があります。

また、建設業許可は取得して終わりではありません。5年ごとの更新や、年に一度の決算報告が必要であるため、継続して依頼してもらえる可能性も高いでしょう。

現在活躍している行政書士の中には、年収1,000万円など、さらに大きく稼いでいる人もいます。年齢に関係なく稼ぐことができるので、定年後に行政書士として働いて稼ぐことも可能です。

下記の動画では、開業後に狙い目の稼げる仕事を解説しています。

行政書士として独立開業するデメリット

行政書士として開業するデメリットとしては、下記のようなことが挙げれます。

  • 会社員のような収入の安定はしづらい(安定するまで時間がかかる)
  • 経営と行政書士としての業務の両立が大変
  • クライアント確保のための労力がかかる

会社員のような収入の安定はしづらい(安定するまで時間がかかる)

行政書士が開業する場合のデメリットとして、収入が安定しづらい点が挙げられます。

会社員のように、毎月の収入が保証されているわけではないためです。

依頼があればそのぶん収入を得られますが、仕事を受注できなければ「収入0」もあり得ます。

例えばハウスメーカーに営業をかけ、都市計画法や農地法の案件を定期的にもらえるような仕組みをつくるなど、努力や工夫を重ねていけば継続的に収入を得られるようになる可能性はあります。

しかし営業活動が実を結び、収入が安定するまでには時間がかかるでしょう。

開業を検討しているなら、数か月間収入がなくても生活していけるだけの蓄えが必要です。 

経営と行政書士としての業務の両立が大変

事務所経営と実務の両立が大変なところも、行政書士として開業するデメリットのひとつです。

ひとりで事務所を立ち上げた場合、実務をこなしながら経営者として事務所を運営していく必要があります。実務で手一杯でも請求業務や経費の支払い、確定申告なども自ら行わなくてはなりません。

さらに、スタッフがいれば任せられるような雑務も発生します。

事務所を回していくためには、実務や経営はもちろん、雑務もおろそかにはできません。

ただ、人を雇用できるほど金銭的に余裕が出てきたら、補助者や経理担当者を雇ったり税務関連の業務を税理士に任せたりといったことも可能です。

細かい仕事は周りに任せることで、行政書士本人が対応すべき重要度の高い仕事に専念できます。

クライアント確保のための労力がかかる

クライアントの確保に労力がかかるところも行政書士が開業するデメリットといえるでしょう。

独立し事務所を構えたからといって、何もせずに仕事が舞い込むことは稀です。

飲食店などと違って、「最近新しくできたから行ってみよう」とはなりません。

開業後コンスタントに依頼を受けていくためには地道な営業活動を行い、信頼関係を築いていく必要があります。

最初の仕事を獲得するまでに時間がかかったり、獲得できても次につながらず振り出しに戻ったりといった苦労は覚悟すべきでしょう。

とはいえ、仕事の取り方には一定のセオリーがあります。具体的な営業・集客の方法は、次章で詳しく解説します。

行政書士の仕事の取り方|開業後の営業・集客方法

開業後に案件を獲得する方法は、大きく「紹介」「Web集客」「行政書士会・公的機関の活用」「営業活動」の4つに分けられます。ひとつに依存せず、複数の導線を並行して育てていくことが収入の安定につながります。

1.他士業からの紹介を得る

最も再現性が高いのが、士業同士の紹介です。行政書士の業務は他士業の業務と隣接しており、互いに「自分では受けられない案件」を抱えています。

  • 司法書士 → 相続登記の相談から、遺産分割協議書や相続関係書類の作成へ
  • 税理士 → 顧問先の建設業許可、法人設立にともなう許認可
  • 社会保険労務士 → 顧問先の各種許認可申請
  • 弁護士 → 業務範囲外となる許認可申請

紹介を受けるために重要なのは、自分の専門分野を明確に伝えておくことです。「何でもやります」では、いざというときに思い出してもらえません。

2.行政書士会の支部活動に参加する

支部の研修会や親睦会は、地域の先輩行政書士とつながる場です。処理しきれない案件を抱えている事務所から、補助的な業務を回してもらえることもあります。実務未経験で開業した場合は、実務を学ぶ機会としても価値があるでしょう。

3.無料相談会の相談員を担当する

単位会や自治体が実施する無料相談会の担当を引き受けると、実際の相談者と接する経験を積めます。その場で受任につながることもあり、実務経験と案件獲得を同時に狙える方法です。

4.ホームページを「専門分野×地域」でつくる

「行政書士」という単体のキーワードで上位表示を狙うのは現実的ではありません。狙うべきは、「建設業許可 ◯◯市」「相続 ◯◯区 行政書士」のように、専門分野と地域を掛け合わせたキーワードです。

用意したいコンテンツは、取扱業務ごとの詳細ページ、料金表、手続きの流れ、対応エリア、プロフィール、問い合わせフォームなど。なかでも料金を明示しているかどうかは、問い合わせ率に大きく影響します。

5.Googleビジネスプロフィールを登録する

「地域名+行政書士」で検索した際に、地図とともに表示される枠です。無料で登録でき、営業時間・写真・口コミが表示されるため、地域密着型の事務所ほど効果が見込めます。ホームページより先に着手してもよい施策です。

6.SNS・ブログで情報発信する

専門分野に絞った発信を継続すると、同業者や見込み客からの認知につながります。相続や離婚など個人向けの業務はSNSと相性がよく、建設業許可など事業者向けの業務はブログや記事コンテンツのほうが向いています。

7.見込み客のいる業界にアプローチする

待つのではなく、案件が発生する場所へ出向く方法です。

  • 建設業許可 → 建設会社、工務店、業界団体
  • 農地転用・開発許可 → 不動産会社、ハウスメーカー
  • 飲食店営業許可 → 開業支援会社、内装業者
  • 会社設立 → 税理士、創業支援を行う金融機関

更新業務や年次報告が発生する分野を選ぶと、一度の取引が継続案件になりやすく効率的です。

8.商工会・異業種交流会に参加する

商工会議所や商工会への加入、地域の異業種交流会への参加も導線になります。ただし参加するだけでは成果につながりません。「誰の、どんな困りごとを解決できるのか」を一言で説明できる状態にしてから臨みましょう。

9.開業の挨拶状を送る

これまでに築いた人脈全員へ開業を知らせる、最も低コストな営業です。学生時代の友人や前職の同僚・取引先など、思わぬところから相談が来ることがあります。

10.クラウドソーシング・マッチングサイトを活用する

単価は低くなりがちですが、実績がない時期に経験を積む手段としては有効です。ここで得た事例をホームページに掲載し、本命の集客につなげる位置づけで活用しましょう。

重要なのは、これらを開業後に始めるのでは遅いということです。ホームページの制作や人脈への告知は、登録手続きと並行して進めておきましょう。

【行政書士】独立開業で失敗しないためのポイント

行政書士の独立開業で失敗しないためのポイントは以下のとおりです。

  1. 専門分野をもつ
  2. 人脈を有効活用する

それぞれ解説します。

1.専門分野をもつ

独立開業で成功するためには、専門分野をもつことが重要です。

行政書士の業務は幅広く、「浅く広く」の何でも屋では強みに欠けてしまうためです。

例えば相続業務を依頼する際、「何でも幅広くやっています」という行政書士と「相続専門です」という行政書士がいるなら、後者にお願いしたいと思う人のほうが多いでしょう。

また、単に専門分野をもてばよいというわけでなく、「どの分野を専門とするか」についてもよく考える必要があります。

ただなんとなく「相続専門でやっていこうかな」というような安易な決め方では成功しません。

専門分野を決める際は、以下の点を重視しましょう。

  • ニーズはあるか
  • 参入しやすい分野か
  • 自分の活動地域に合っているか

ニーズがあるか、参入しやすいかは新米行政書士にとって重要なポイントです。

例えば建設業許可申請は、行政書士が行える業務の中でも特に需要のある分野であるといわれています。

自動車の新規登録や車庫証明といった自動車関連業務はそこまで専門性が高くないため、経験が浅くても取り組みやすいでしょう。

そのほか、農地が多い地域であれば農地法関連など、地域によって依頼が入りやすい業務は異なります。

成功するためには、上記のポイントを意識したうえで専門分野をもつことが必要でしょう。

2.人脈を有効活用する

これまで築いてきた人脈を有効活用することも、成功するポイントのひとつです。

開業するまで士業の世界とは無縁の生活を送ってきた人は、自分の友人や知人が行政書士業務と結びつかないかもしれません。

しかし、仕事は意外なところから降ってくることもあります。

例えば学生時代の友人が、相続問題や離婚問題で困っているかもしれません。

疎遠だった知人が、飲食店営業許可や深夜酒類提供飲食営業許可を申請したいと考えているケースなども考えられます。ブログやSNSで集客するのもいいでしょう。

これまで出会ってきた人全員に開業の挨拶状を送ってみると、思いのほか反応を得られる可能性があります。

また、士業や行政書士業務とかかわりのある立場の人とのつながりがあるなら、活かさない手はありません。

司法書士とのつながりがあれば、相続登記や法人登記を頼む代わりに、建設業許可申請や古物商許可申請といった業務を回してもらえる場合があります。

不動産会社とつながりがあれば、農地法や都市計画法関連の依頼をもらえるケースもあるでしょう。

そこからさらに紹介で仕事が広がっていくこともあるため、自分のもっている人脈はフルに活用してみることをおすすめします。

行政書士は未経験・即独でも開業できる?

結論から言えば、実務未経験のままいきなり独立する「即独」は可能です。行政書士には、他士業の一部にあるような実務修習や勤務経験の要件がなく、試験に合格して登録すればその日から業務を行えます。

そもそも行政書士事務所の数自体が限られており、勤務先を見つけること自体が容易ではないため、即独を選ぶ人は珍しくありません。

アガルートの受講相談に寄せられた声を見ると、独立を見据えて学習を始める方が約6%(5.8%)となっています。割合は多くないものの、資格取得後の選択肢に「独立」があることは間違いありません。

※出典:アガルート行政書士講座 受講相談データ

実際にすぐ独立するかは個人の判断によるものの、開業の選択肢を検討することはおすすめです。

行政書士法人と株式会社の違い|法人化という選択肢

個人事業主として軌道に乗ったあとの選択肢が、行政書士法人です。

行政書士法人とは

行政書士法に基づいて設立される法人で、行政書士業務を組織として行うための形態です。かつては社員(出資者)が2人以上必要でしたが、法改正により現在は行政書士1人でも設立できます。

株式会社との違い

項目行政書士法人株式会社
根拠法行政書士法会社法
社員(出資者)の資格行政書士に限られる制限なし
事業内容行政書士業務および付随する業務原則自由
社員の責任無限責任有限責任(出資額の範囲)
株式による資金調達不可可能
設立後の届出日本行政書士会連合会等への届出が必要不要

最大の違いは、行政書士でない人が出資者として参加できない点と、社員が無限責任を負う点です。外部から出資を受けて事業を拡大するという発想は、行政書士法人では成り立ちません。

なお、行政書士業務は行政書士でなければ行えないため、株式会社を設立して行政書士業務を行うことはできません。コンサルティングなどの周辺業務を株式会社で、独占業務を個人または行政書士法人で行うという形をとる事務所もあります。

法人化を検討するタイミング

法人化を検討する目安は次のとおりです。

  • 所得が増え、法人化したほうが税負担で有利になってきた
  • 従業員を雇用し、組織として運営していきたい
  • 法人格があることで受任しやすい取引先(大企業や官公庁の入札など)を狙いたい
  • 複数の拠点を設けたい(個人は事務所1か所のみですが、法人は従たる事務所を設置できます)

一方で、法人化すると社会保険への加入義務が生じ、会計処理も複雑になります。決算や登記にかかるコストも発生するため、開業直後に検討する話ではありません。まずは個人事業主として実績を積むことが先決です。

まとめ

行政書士として開業する方法や開業するメリット、廃業しないためのポイントについて解説しました。

最後に、コラムの要点をまとめます。

  • 行政書士には低コストで開業できる、自由な働き方ができるなどのメリットがある
  • ただし、収入が安定しづらい点や実務と経営の両立が大変といったデメリットもある
  • 開業するためには、まず開業資金を用意する必要がある
  • 事務所は独立性・守秘性などの条件を満たす必要があり、契約前に単位会への確認が必須
  • 仕事の獲得には、他士業からの紹介とWeb集客の両輪が有効
  • 実務未経験からの「即独」も可能だが、研修・定型業務・生活資金の3点で備えておきたい

行政書士として開業し、成功することは決して簡単ではありません。しかし必要な準備や工夫をすれば、長く活躍できる仕事でもあります。

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