土地家屋調査士の新人研修では何をする?実務研修・特別研修・年次研修も解説
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土地家屋調査士として独り立ちするためには、試験の合格だけではなく、現場での実践力を養うことが欠かせません。
合格者の中には、「測量や登記に関する実務って、どう進めたらよいの?」と不安になる方も多いでしょう。
信頼される土地家屋調査士になるための第一歩として実施されているものが、「新人研修」です。
本コラムでは、土地家屋調査士の新人研修について詳しく解説します。
加えて、土地家屋調査士の実務研修・特別研修・年次研修についても説明するため、研修内容について知りたい方はぜひ最後までチェックしてください。
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土地家屋調査士の新人研修とは
土地家屋調査士の新人研修とは、資格取得後に実務家としての第一歩を踏み出すために欠かせない研修です。
毎年開催されており、土地家屋調査士として必要な心構えや基礎知識を身につけることを目的としています。
また、研修は2日間であり、講義の一部については、eラーニングでの事前視聴が実施されます。
研修期間中は食事も提供され、同期との交流はもちろん、すでに現場で活躍している先輩たちと直接話せる貴重な機会にもなるでしょう。
知識を身につけるだけでなく、人とのつながりを築く意味でも実りのある研修です。
新人研修の開催概要
受講対象者
新人研修の受講対象は、原則として新人研修を未修了かつ登録後おおむね1年以内の土地家屋調査士会員です。
なお、令和元年度および令和2年度に実施された新人研修を登録前に修了している場合でも、修了後5年以内に登録した場合に限り、受講免除を申請することができます。
費用・受講料
新人研修の費用は、28,000円(税込)です。
ただし、振込手数料は受講者負担になります。
また、納入した受講料は、いかなる場合でも原則として返金されません。
提出書類
新人研修に参加するためには、以下の書類を提出しなければなりません。
- 土地家屋調査士新人研修 必要事項提出書
- 写真票
提出書類は、所属する土地家屋調査士会を通じて連合会に提出します。
また、提出書類の受付方法や受付期間については、所属する土地家屋調査士会への問い合わせが必要です。
新人研修の日程と会場
例年の新人研修は、東京と大阪の2箇所で開催されます。
また、日程は開催年によって変わる可能性もありますが、東京は例年9月〜10月中の2日間(日・月)、大阪は2月中の2日間(日・月)です。
どちらの会場を選んでも、基本的にホテルで開催されます。
ただし、宿泊施設は手配されないため、宿泊が必要な場合には各自で予約する必要があります。
当日の持ち物
新人研修当日に必ず持って行かなければならないものは、以下の5つです。
- 筆記用具
- 会員証
- 土地家屋調査士 業務取扱要項
- 各事務所で定めている報酬額基準表(土地家屋調査士会会則モデル第93条)
- 電卓(報酬額の計算に使用)
必要なものは一部変更になる可能性があるため、研修直前の連絡を必ず確認しましょう。
新人研修の内容・カリキュラム
新人研修は、開催する年によって内容が変わるため、本コラムでは最新の令和7年の内容について紹介します。
eラーニング
新人研修では、参加する前に一部の講義をeラーニング形式で視聴する必要があります。
令和7年度のeラーニング講義内容は、以下のとおりです。
※出典:令和7年度土地家屋調査士新人研修の実施について | 日調連の活動 | 日本土地家屋調査士会連合会
- 会員の福利厚生、国民年金基金、賠償保険のガイダンス(20分)
- 会員心得、職務上請求書の取扱い(65分)
- 土地・建物の所有及び利用上の規制関連法(戸籍・相続)(120分)
- オンライン登記申請(60分)
- 筆界と所有権界(90分)
- 筆界確認の実務(120分)
- 土地・建物の所有及び利用上の規制関連法(土地・建物)(85分)
- 筆界特定制度、ADR(境界紛争解決における土地家屋調査士の関わり)(85分)
- 土地家屋調査士の懲戒制度と懲戒処分事例(75分)
- 土地家屋調査士業務取扱要領(第1章~第2章)(75分)
- 土地家屋調査士業務取扱要領(第3章~第7章)(80分)
- 登記基準点測量マニュアル(55分)
- 一筆地測量マニュアル(60分)
合計13本にも渡る長時間の動画を視聴するため、早めに視聴しておくことが大切です。
なお、このeラーニング視聴は必修ですので、視聴が完了していないと、仮に研修に参加しても修了証が授与されませんので、注意してください。
会場での生講義
新人研修の当日は、講師による生講義や映像講義が行われ、土地家屋調査士として職務を行うにあたり重要な知識を学びます。
具体的には、以下の内容となります。
※出典:令和7年度土地家屋調査士新人研修の実施について | 日調連の活動 | 日本土地家屋調査士会連合会
- 調査士の職責と倫理(90分)
- 報酬の考え方(90分)
学ぶ内容は、会員の心得や職務上請求書の取扱い、職責・倫理など、調査士としての基礎となる事項です。
特に、「品位を保持すること」は法律にも規定されているほどですので、意識の向上に重点をおいた内容となっています。
グループ研修
新人研修では、全国から集まった土地家屋調査士会員とグループ研修も行います。
令和7年度のグループ研修の課題は、以下の内容です。
※出典:令和7年度土地家屋調査士新人研修の実施について | 日調連の活動 | 日本土地家屋調査士会連合会
- 倫理について(80分)
- 報酬額の計算について(80分)
情報の共有や意見交換、地域ごとの違いも学べるため、かなり有意義な時間となるはずです。
各情報の詳細については、日本土地家屋調査士会連合会のホームページをご覧ください。
土地家屋調査士の実務研修とは
実務研修とは、日々の業務に直結する実践的な知識と技術の習得を目的とした研修です。
新人研修とは違って、すでに業務を開始している土地家屋調査士会員が対象であり、業務経験を積んだあとのさらなる知識・技術の向上を目指します。
研修では、測量技術の向上・登記申請の最新手続き・関係法令の改正点・協会に関する専門知識の深化など、幅広いテーマが用意され、常にアップデートしています。
以下、実際に行われた研修テーマの一例です。
- AIは今後私たちの世界をどのように変えるのか?
- 初心者のための測量実務研修
- 筆界特定技法研修
- 調査士のための危機管理講座 ~交通安全と暴力団対策~
- 土地家屋調査士が知って得する法律講座
最新技術や危機管理など、時代を見据えた講座も多数実施されています。
なお、実務研修の受講は義務ではありませんが、自己研鑽の一環として多くの会員が参加しています。
多角的な視点から実務を見直すきっかけとなる実務研修は、継続的な学びの場として役立つでしょう。
実務研修の詳細は、日本土地家屋調査士会連合会の研修インフォメーションをご覧ください。
土地家屋調査士の特別研修とは
特別研修とは、ADR認定土地家屋調査士として境界紛争の解決に関与するために必要な法的知識と実務力を身につける専門研修です。
特別研修は、土地家屋調査士法第3条第3項に基づき法務大臣が指定する研修であり、研修を受けたものだけが「ADR認定土地家屋調査士」と認められます。
また、研修の具体的な目的は、土地の筆界が不明確であることを原因とする民事紛争に対応するための高度な専門性を養うことです。
研修を修了し認定を受けることで、弁護士と共同で受任しながら境界に関するADR(裁判外紛争解決手続)の調停代理人として活動をスタートできます。
ADR認定土地家屋調査士になれば、法的知識に基づいた調停支援が可能になり、中立かつ実践的な立場で当事者に寄り添い、解決に導くことができるでしょう。
ここでは参考として、第20回(令和7年実施)土地家屋調査士特別研修を参考に概要をまとめます。
特別研修の詳細は日本土地家屋調査士会連合会の特別研修ページをご覧ください。
受講料・費用
特別研修の新規受講にかかる費用は、土地家屋調査士会の会員が8万円、有資格者が10万円です。
なお、過去に新規受講を行い、法務大臣の認定を受けられなかった場合は、再考査制度や再受講制度が設けられており、約2〜4万円の安価な費用で再チャレンジが可能です(一定の条件を満たす必要があります)。
特別研修の日程と内容
特別研修では、民間紛争解決手続における「主張立証活動」「代理人としての倫理」「代理関係業務に必要な知識」の3つの領域を中心に、合計45時間のカリキュラムで知識を習得します。
カリキュラムは、基礎研修・グループ研修・総合研修・総合講義にわかれており、最後には理解度を確認するための考査(テスト)を実施し、合格できると認定されます。
なお、受講申込の受付は、令和7年4月2日をもって締め切られました。
基礎研修
基礎研修の日程は、令和7年6月30日〜7月13日です。
基礎研修の講義内容は、以下のとおり。
- 憲 法(2時間)
- 民 法(3時間)
- 民事訴訟法(4時間)
- ADR代理と専門家責任(2時間)
- ADRの意義と機能(4時間)
- 筆界確定訴訟の実務(2時間)
基礎的な知識を、eラーニング形式で学びます。
グループ研修
グループ研修の日程は、令和7年7月22日〜8月21日です。
グループ研修は15時間以上予定されており、少数人数のグループで討論した上で課題を作成します。
集合研修・総合講義
集合研修・総合講義の日程は、令和7年8月22日〜24日です。
集合研修は10時間と設定され、グループ研修で作成した議題に対して弁護士などの講師が解説し、知識の理解を深めます。
対して、総合講義は3時間で、弁護士の講師による倫理を主体とした講義を行います。
考査
考査の日程は、令和7年9月6日です。
代理人として必要な法律知識の習得を確認する最終チェックをし、合格できればADR認定土地家屋調査士として認められます。
土地家屋調査士の年次研修とは
年次研修とは、土地家屋調査士としての専門家責任や倫理意識の維持・向上を目的とした短時間の研修です。
対象者は、登録後3年目・8年目、以降は5年ごとの節目に該当する会員となっています。
研修では、職務上請求書の取扱いに関する確認・倫理や懲戒処分事例の映像教材の視聴・グループ討論などを通じて、実務に必要な意識の再確認と知識のアップデートが図られます。
長期的な実務活動を支える継続研修として、重要な役割を果たすカリキュラムです。
まとめ
本コラムでは、土地家屋調査士の各種研修について詳しく解説しました。
以下、コラムの要点をまとめて紹介します。
- 新人研修:資格取得直後に実施される研修で、心構えや基礎知識を学ぶ
- 実務研修:現職の土地家屋調査士が対象で、日々の業務に直結するテーマを扱う
- 特別研修:ADR認定土地家屋調査士を目指すための専門研修
- 年次研修:登録3年目・8年目以降5年ごとに実施される短時間研修で、倫理や懲戒事例、職務上請求書の取扱いなどを再確認する
新人研修をはじめ、土地家屋調査士を対象とした研修は、キャリアの各段階で求められる知識や実務力を高めることに役立ちます。
新人期はもちろん、中堅・ベテランになってからも学び続ける姿勢が、専門家として信頼される礎となるでしょう。
それぞれの研修内容を把握し、タイミングを逃さずに受講することが大切です。
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