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社会保険労務士試験の選択式とは

「選択式」とは,社労士試験の出題形式の1つで,1問あたり,5つの空欄について20個の選択肢の語句・数値から解答する出題形式です(空欄補充問題です)。
1問につき4個の選択肢が用意されている計算です。

「選択式」は,10:30~11:50の80分で行われます。
計8科目出題され,空欄1つにつき1点,合計8問(40点満点)。

選択式の場合,合格基準(基準点)は,原則として「総得点40点満点中28点前後正解,各科目5点中3点以上正解」です。

特に注意したいのが「各科目5点中3点正解」の箇所で,1科目でもこれを下回る結果となったら,その時点で不合格(いわゆる「基準点割れ」です)となってしまいます。

ただし,「補正」(いわゆる救済措置)として,この基準が一部の科目で変更されることがあります。

社会保険労務士試験合格ライン(合格基準点)の推移

次に,近年の選択式の試験結果を見てみましょう。

年度合格基準補正
平成18年度総得点 22点以上
各科目 3点以上
2点:労基労衛,労災,雇用,社一,厚年
平成19年度総得点 28点以上
各科目 3点以上
平成20年度総得点 25点以上
各科目 3点以上
2点:国年
1点:健保
平成21年度総得点 25点以上
各科目 3点以上
2点:労基労衛,労災,厚年
平成22年度総得点 23点以上
各科目 3点以上
2点:健保,厚年,社一
1点:国年
平成23年度総得点 23点以上
各科目 3点以上
2点:労基労衛,労災,社一,厚年,国年
平成24年度総得点 26点以上
各科目 3点以上
2点:厚年
平成25年度総得点 21点以上
各科目 3点以上
2点:労災,雇用,健保
1点:社一
平成26年度総得点 26点以上
各科目 3点以上
2点:雇用,健保
平成27年度総得点 21点以上
各科目 3点以上
2点:労一,社一,健保,厚年
平成28年度総得点 23点以上
各科目 3点以上
2点:労一,健保
平成29年度総得点 24点以上
各科目 3点以上
2点:雇用,健保
平成30年度総得点 23点以上
各科目 3点以上
2点:社一,国年
令和元年度総得点 26点以上
各科目 3点以上
2点:社一
令和2年度総得点 25点以上
各科目 3点以上
2点:労一,社一,健保
令和3年度総得点 25点以上
各科目 3点以上
1点:労一2点:国年
令和4年度総得点 24点以上
各科目 3点以上
令和5年度総得点 26点以上
各科目 3点以上
令和6年度総得点 25点以上
各科目 3点以上
2点:労一

先ほどもお伝えしましたが、合格基準(基準点)は原則として「総得点40点満点中28点前後正解、各科目5点中3点以上正解」です。

ただし,ほとんどの年で,この基準の「補正」が行われています。
「補正」が行われた科目の試験結果に注目すると,その特徴として,「ほとんどの受験生が対応することができない空欄が出題されてしまった」ことが挙げられます。

以上のことから,「選択式」では,あらかじめ合格基準が決まっているものの,ほとんどの受験生が解けないようなものが出てしまったら,それに合わせて救済がされると言えるでしょう。

ただし,本試験中に,どの科目について救済がされるか分からないところが怖いところです。

社会保険労務士の選択式の勉強法

⑴ 勉強の方針

ここまでの話を踏まえて,最後に「『選択式』の勉強法」を考えてみましょう。

まず「選択式」には,「合格基準」が設定されていました。
基準のなかには「各科目5点中3点以上正解」とあります。

したがって,すべての科目について,しっかりと勉強する必要がありますが、テキストの読み込みや択一式の過去問の学習を進めていけば、選択式の正答率も自然と上がっていきますので、基本的には選択式のためだけの勉強というものは必要ありません。

ただし,「特定の科目が極端に苦手である」という状態にしてはなりません。

また,ほとんどの年で,「選択式」は「補正」(救済措置)が行われています。

したがって「ほとんどの受験生が知らないような難問・奇問はある程度落としても仕方がない」ということになりますが,奇問・難問にも出題傾向が見られますので,それに沿う情報収集だけは必要です。
同時に「他の受験生が確実に正解するであろう問題を確実に正解できるようにする」必要があるとも言えます。

いわゆる択一式でも問われるような基礎・基本的な内容を,しっかりと勉強するようにしましょう。

⑵ 選択式ならではの勉強

「選択式」は,空欄補充問題です。
社労士を始めとする法律家たちが日頃接するような専門的な文章が題材となっています。

そのため,そのような文章を読めるよう,日頃から文章を読む訓練はしておく必要がありますが,テキストの読み込みなどでも文章は読むことになりますので,このためだけにやっておくことというのは特にありません。

まずは,「択一式」の勉強を優先して始めましょう。

「選択式」と「択一式」は同じ題材から作問されるものですし,選択肢の1つ1つを読むことを通じて,文章を読む訓練になります。

それだけでなく,テキストの解説文をしっかりと読むことを心がけましょう。

奇問・難問対策としては、日頃から厚生労働省のHPで「統計調査」や「厚生労働白書」に目を通しておくのも対策になります。

また、最近は実務で話題になっているテーマや改正点などについても、アンテナを伸ばしておく必要が出てきています。
Twitterで実務家のツイートを確認したり、情報収集を積極的に行っておくことも効果的でしょう。

「選択式」は,文章の主旨や文脈が空欄を補充する語句を選ぶにあたってのヒントとなることがありますので、日頃から文章を通じて内容を深く理解する訓練をしておくといいと思います。

⑶ まとめ

① 基礎・基本的な内容をしっかりと勉強すること

② まずは,テキスト・「択一式」の勉強から始めて,知識の理解・記憶を進めること,専門的な文章を読み慣れておくこと

社会保険労務士の選択式の解き方のコツ

選択式に関しては,易しい問題と超難問が入り混じるのが最近の傾向となっています。
特に,難問は労一,社一に多く見られます。

まず,試験前から,奇問・難問が必ず1問は出ると覚悟を決めておきましょう。
パニックになってはいけません。

奇問・難問が出てきたら後回しにし,解けるものからどんどん処理をして,奇問・難問に十分な時間を確保して下さい。

時間を確保したら,以下①~③のように対策を取りましょう。

①奇問・難問は,まずは問題文を一読して,大体のテーマを把握する。

②選択肢が20個ある中で,1問4個に絞るグループ分け(グルーピング)を行う。

このグルーピングさえ出来れば,確率的には最低1点は取れる計算です。
1つの空欄に対する正解の確率が25%で,これが5空欄あるからです。

おそらく救済が入る問題です。
もう1点取れれば良いわけです。

この正解肢候補の4個を比較し,かつ,問題文の内容やテーマと照らし合わせ,最も適当と考えられる選択肢を選んでいきます。

この際の注意点としては,分からない,知らないからといって安易に「知らない語句」を選んではいけません。
問われ方が変わっているだけで,語句そのものは見たことがある,知っていることが多いからです。

③(A~Eの順にこだわらず)埋まり易い問題から埋めていく。

問題文の空欄Aが難しそうだという場合は,順序に関係なく埋めやすそうな空欄から埋めていきましょう。
こうすることで埋めた空欄に対応するグルーピングした選択肢が消え,残っている選択肢が減っていき,更に解答も特定しやすくなっていきます。

以上の対応方法を実践すれば,初めて見る問題であっても,3点以上得点できる確率を高めることができるでしょう。

また,仮に2点になっても救済補正に期待をつなげることができます。

最後に

社労士試験では,「選択式」と「択一式」の2つの出題形式があります。

しかし,勉強の中心は,まずは「択一式」です。
「択一式」の勉強により,社労士試験の合格に必要となる「基礎体力」を鍛えることとなりますし、選択式の正答率も自然と上がっていきます。

そして,「選択式」ですが,これは普段の学習の中でテキストをじっくり読んだり,『厚生労働白書』や『労働経済白書』を読んだりして,知識の幅を広げるようにしましょう。

「択一式」の勉強を通じて基礎知識の理解・記憶を確立し,「選択式」の勉強を通じて幅広い発展知識を身につけ,みごと社労士試験の合格を勝ち取りましょう!

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この記事の監修者 池田 光兵講師

池田 光兵講師

広告代理店で、自らデザインやコピーも考えるマルチな営業を経験後、大手人材紹介会社で長年キャリアアドバイザーを経験、転職サポートを行う。

面接対策のノウハウや数々の自作資料は現在でも使用されている。

その後、研修講師や社外セミナーの講師などを数多く経験。

相手が何に困って何を聞きたがっているのかをすばやく察知し、ユニークに分かりやすく講義をすることが得意。

社会保険労務士試験は、ほぼ独学で就業しながらも毎日コツコツと勉強し、三度目の挑戦で合格した苦労談も面白く、また、三度やったからこそ教えられる「やっていいことと駄目なこと」も熟知している。

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