「社労士は引く手あまたと聞くけれど、本当にそんなに需要があるの？」

と疑問を感じている社労士の方、もしくは社労士を目指している方は多いのではないでしょうか。

本コラムでは、社労士が求められる背景を3つの視点から解説します。

また、企業や社会での具体的な活躍の場や、引く手あまたな社労士になるために必要な4つのポイントを紹介。

さらに社労士の今後10年の需要予測についても解説します。

社労士としての可能性を広げたい方、社労士の仕事に興味のある方はぜひ参考にしてください。

社労士が「引く手あまた」な3つの背景

「社労士バブル」という言葉が生まれたほど、近年社労士の需要が急増しています。

その要因として以下の3つの背景があります。

• 働き方改革の推進と労働環境の変化
• 頻繁な法改正への対応
• 年金問題への関心の高まり

 働き方改革の推進と労働環境の変化

近年、働き方の多様化が進む中、社労士の需要が高まっています。

リモートワーク・男性の育児休業促進・女性管理職の登用・副業の解禁など、柔軟な働き方への対応が企業に求められ、これに伴うトラブルも増加中です。

企業は事業の安定と成長のため、従業員との良好な関係を重視しています。

そのため、これらの変化やトラブルの適切な対処には、社労士の専門知識とスキルが不可欠です。

社労士は労使間の良好な関係をサポートする重要な役割を担っています。

また、独占業務である1号・2号業務以上に、3号業務であるコンサルティングの需要が高まる可能性があります。

例えば、新型コロナウィルス蔓延時に企業が直面したテレワークでの労務管理問題（労働時間・勤怠管理の難しさなど）は、社労士がサポートできる領域のひとつ。

また、ダイバーシティやSDGs対応、定年延長といった社会の変化に伴い、企業の制度設計や労務管理の重要性が増しています。

法的な視点をもつ社労士は、多様化する労働環境に柔軟に対応し、企業運営と従業員の保護の両面で大きな役割を果たせるでしょう。

頻繁な法改正への対応

頻繁な法改正への対応も社労士が「引く手あまた」である理由のひとつ。

労働法や社会保険制度は頻繁に改正されており、企業はその都度、迅速に対応しなければなりません。

労働時間の規定、雇用形態の見直し、社会保険料の改定など、複雑な変更が続いています。

こうした状況下で、企業が自力で法改正の内容を理解し、適切な手続きを行うことは困難です。

特に、法改正に伴う労務関連書類の作成は企業の負担が大きく、社労士の専門的なサポートが不可欠。

なおAIの活用によって法改正への対応業務が減る側面もありますが、AIには代替えできない業務も多いです。

例えば、AIによる就業規則の自動作成においても、社労士の高度な専門性と判断力は欠かせないでしょう。

新制度に対応した適法な規則を整備するためには、最新の法知識に加えて企業の実情を踏まえた視点も必要なためです。

年金問題への関心の高まり

高齢化の進行により、年金制度に対する不安が広がっており、年金に関する相談が増えています。

社労士は、公的年金制度の専門家として、老齢年金のほか、障害年金や遺族年金などに関する手続きや相談対応を行っています。

年金の不安を抱える人々に対して、的確なサポートを提供できる社労士は、今後ますます「引く手あまた」となるでしょう。

社労士の具体的な活躍の場

ここでは、社労士が実際にどのような職場で活躍しているのか、代表的な就職先や働き方を紹介します。

社労士の具体的な活躍の場は以下の4つです。

• 社会保険労務士の事務所
• 士業事務所
• 一般企業の人事・総務
• 独立開業

社会保険労務士の事務所

社会保険労務士の事務所は社労士の専門スキルをダイレクトに活かせる代表的な職場です。

社会保険労務士事務所や社労士法人は、企業や個人から依頼を受け、社会保険手続きの代行や就業規則の作成、給与計算、助成金申請などを行います。

また、労務トラブルの未然防止や人事制度設計のコンサルティングも業務に含まれます。

実務経験を積む場としても最適。

将来の独立を視野に入れる方にとっては、ノウハウを学べる貴重なフィールドです。

ただし、大規模な事務所は少なく、求人は少数精鋭の傾向があります。

即戦力が求められる場面も多い点に注意が必要です。

士業事務所

士業事務所は他士業との連携により、幅広い業務にかかわれるチャンスが多いです。

弁護士事務所や税理士法人など、他士業が運営する事務所でも社労士が活躍しています。

例えば、税務と労務のワンストップサービスを提供する会計事務所では、社労士資格者の採用が進んでいます。

また、労働法関連の問題に取り組む弁護士法人では、就業規則の整備や労働トラブルにおける対応など、専門性の高い業務が期待されるでしょう。

なお、特定社労士資格をもっている場合は、紛争解決の手続き代理も可能なため、より専門的で責任ある役割を担うことができます。

一般企業の人事・総務

社労士は、一般企業において「勤労社労士」として人事・総務部門で働くこともあります。

業務内容は、労務管理・社会保険手続き・就業規則の整備・給与計算・社内規定の見直しなど、多岐にわたります。

近年は法改正の対応に苦慮する企業が多く、社労士有資格者へのニーズは増加傾向です。

また、社内に社労士がいることで、トラブルの予防や社員の働きやすさ向上にも繋がるため、社労士の存在は重宝されます。

ただ、実務力を問われる場面も多いため、未経験者は採用されにくい傾向も。

独立開業

社労士として一定の経験を積んだあと、独立開業という選択肢もあります。

独立開業は自分の裁量で仕事ができる、やりがいのある働き方。

自ら事務所を構え、クライアントを開拓しながら業務を行うため、働き方や収入の面で自由度が高いことが特徴です。

なお、実務未経験から開業して、成功するケースも少なくありません。

努力次第で高年収を目指すことも十分可能です。

独立後は、社労士としての知識だけではなく、営業力や経営力も求められますが、自分の理想とする働き方を実現しやすいでしょう。

引く手あまたな社労士になるために必要なこと4選

引く手あまたな社労士になるために欠かせない4つの力は以下のとおりです。

•  専門知識と最新情報のキャッチアップ能力
• コミュニケーション能力と課題解決能力
• 自分の得意分野と顧客ニーズを見極める力
• ブルーオーシャンを開拓する力

専門知識と最新情報のキャッチアップ能力

法改正や社会情勢の変化に常に対応する学習意欲があることも、引く手あまたな社労士になるために必要不可欠です。

労働基準法や雇用保険法、社会保険関係の制度は毎年のように見直しが行われており、その都度、企業の対応も変わります。

そのために、社労士には情報把握力と学習習慣が求められます。

過去の知識に頼るだけではクライアントの信用は得られません。

定期的なセミナー参加や情報収集を欠かさず、アップデートされた知識で課題に対応できる人こそ、選ばれる社労士となるでしょう。

コミュニケーション能力と課題解決能力

専門性だけでなく、経営者や従業員との円滑な関係を構築できる人柄も重要です。

加えて、クライアントの課題を正確に把握し、最適な解決策を提案する力も求められます。

社労士の業務は書類作成だけではありません。

経営者や従業員と信頼関係を築くための丁寧なコミュニケーションが不可欠です。

専門用語をかみ砕いて説明する力や、相手の話にしっかり耳を傾ける姿勢が、安心感と信頼に繋がります。

また、課題をただ聞くだけではなく、「本質的な問題な何か」「どの制度が最適か」を見極め、的確に提案・対応する課題解決能力も大切。

法的な知識だけではなく、状況判断と実行力を兼ね備えることで「引く手あまたな社労士」に近づけるでしょう。

自分の得意分野と顧客ニーズを見極める力

引く手あまたな社労士になるためには、自身の専門分野を明確にし、顧客ニーズに合ったサービスを提供する視点が必要です。

労務分野は広く、多様なニーズがあります。

すべてを網羅しようとするよりも、自身の得意分野を明確にし、それを必要としているクライアントとつながることが大切。

自分の得意分野と市場ニーズが重なる部分を的確に見極め、専門性を深めることが、継続的な依頼に繋がるカギとなるでしょう。

ブルーオーシャンを開拓する力

まだ競争の少ない未開拓市場、いわゆるブルーオーシャンを見極める力も必要です。

対応できる社労士が少なければ、自分がその分野の第一人者として活躍できます。

社労士業界にも「競争が激しい分野」と「手つかずの分野」があります。

例えば、外国人雇用や副業制度、高齢者雇用、スタートアップ支援などは、まだまだ対応できる専門家が少ない分野です。

こうしたブルーオーシャンを狙い、自ら情報を集めて知見を深めることで、自分の市場価値をあげることができるでしょう。

社労士バブルは10年後も続く？今後の需要

社労士の需要は10年後も続くと考えられます。

働き方改革や人手不足が進行する現代において、企業の労務管理ニーズは増大の一途を辿っています。

社労士は企業の持続的な成長に不可欠な存在といえるでしょう。

マイナンバー導入やAIの進化により、定型的な書類作成や事務作業（1号・2号業務）は減少する可能性が指摘されます。

しかし、複雑な法律改正や新たな労働制度が生まれるたびに、柔軟に対応するためには社労士の専門知識が必須です。

特に、各事業所の特徴を踏まえた的確なアドバイスや臨機応変な労務コンサルティング（3号業務）はAIには困難な領域。

高度な専門性をもつ社労士でなければ適切な対応は難しいです。

社労士の役割は、AIが苦手とする「人」に関する専門的判断やコンサルティングへとシフトしており、その専門性は今後も社会から求められ続けるでしょう。

まとめ

以上、社労士が引く手あまたと言われる理由について、多角的に解説してきました。

本コラムの要点は以下のとおりです。

• 働き方改革や労働環境の多様化により、社労士の知見が企業に必要とされている
• 頻繁な法改正の対応において、社労士の専門性が企業の負担軽減に貢献している
• 高齢化に伴い、年金制度への関心が高まり、年金相談の専門家としてのニーズが増加
• 活躍の場は、社労士事務所・他士業事務所・一般企業・独立開業など多様
• 今後はAIに代替されにくいコンサルティング業務（3号業務）での活躍が期待される

今後も社労士は「人」と「制度」を繋ぐ存在として、専門性と実践力の両面でますます需要が高まるでしょう。

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