社労士の実務経験とは?登録に必要な2年の具体例とその積み方を解説
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「社会保険労務士(以下、社労士)の登録に必要な2年間の実務経験って、具体的にはどんな内容なの?」
「一般企業、パートなどでの勤務も実務経験として認められる?」
など、社労士の実務経験に疑問や不安をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
本コラムでは、社労士の実務経験について具体例をあげて、わかりやすく解説します。
社労士事務所以外の一般企業・公務員・パートで、実務経験に認められるケースも紹介。
さらに実務経験なしで、社労士に登録する際に必須となる「実務指定講習」の内容・日程・費用などについてもまとめています。
これから社労士を目指す方のキャリアプランの参考にしていただければ幸いです。
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社労士の実務経験とは?
ここでは、社労士試験の受験要項にある「実務経験」と社労士会登録時に必要な「2年間の実務経験」について説明します。
社労士の受験資格に必要な実務経験
社労士の受験資格は「学歴」「実務経験」「厚生労働大臣の認めた国家試験合格」のどれかひとつを満たしている必要があります。
その中の「実務経験」という要件は、以下の条件で3年以上従事した人です。
- 健康保険組合や労働保険事務組合等の役員又は従業員
- 国や地方公共団体の公務員等
- 日本郵政公社の役員又は職員
- 全国健康保険協会、日本年金機構の役員又は従業員
- 社労士又は弁護士の補助者
- 労働組合の専従役員
- 会社その他法人の労務担当役員
- 労働組合の職員又は法人等若しくは事業を営む個人の従業者
ただし、これらの職に就いていても、従事した業務が社労士法で定める「労働社会保険諸法令に関する事務」に該当しない場合は、実務経験と認められない場合もあります。
例えば、単なる一般事務や庶務的な業務のみでは要件を満たさない可能性があるため、注意が必要です。
詳しくは社会保険労務士試験オフィシャルサイト「受験資格について」をご覧ください。
社労士会登録のために必要な実務経験
社会保険労務士会の登録には、2年間の実務経験が必須となります。
この実務経験とは、社会保険労務士法施行規則第1条の2に定められている、労働基準法や雇用保険法、健康保険法などの「労働社会保険諸法令に基づく事務」を指します。
例えば、各種届出の作成・提出や労務管理に関連する業務などです。
また、実務経験として認められるためには、「従事期間証明書」を勤務先から取得する必要があります。
証明の形式や書類に不備があると、登録が認められない場合もあるため、ご注意ください。
なお、実務経験が2年以上ない場合であっても、社労士会登録はできます。
全国社会保険労務士会連合会が実施する「事務指定講習」を修了することで、登録することが可能です。
ここから先は、社労士会登録のために必要な実務経験について深堀りしていきましょう。
登録に必要な2年の実務経験の具体例
社労士会登録時に必要な「労働社会保険諸法令に関する2年以上の実務経験」とは一体何なのでしょうか。
この実務経験は、単なる一般的な事務作業とは異なり、社労士としての専門的実務であることが求められます。
具体例は以下の通りです。
- 雇用保険、健康保険、厚生年金保険の被保険者資格取得届・喪失届に関する事務
- 健康保険、厚生年金保険の被保険者報酬月額算定基礎届・月額変更届に関する事務
- 雇用保険被保険者離職証明書の作成
- 労働保険の概算・確定保険料の申告・納付に関する事務
- 就業規則(変更)届に関する事務
- 時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定)の作成
- 労働者名簿の調製
これらの事務のすべてに従事している必要はありませんが、複数の事務に携わっていることが望ましいとされています。
なお、給与計算事務は、労働社会保険諸法令関係事務に該当しないため注意が必要です。
実務経験は、必ずしも社労士事務所でしか積めないわけではありません。
以下のような職場でも上記のあげたような実務を担当していれば、実務経験として認められる可能性があります。
- 労働組合や健康保険組合
- 一般企業の人事・総務部門
- 地方自治体・官公庁の職員
- 法律事務所(補助者として)
社労士事務所以外で勤務していても、日常的に社会保険や労務管理業務を担っていれば、実務経験として認められます。
ただし、先にも述べた従事期間証明書の提出が必要となるため、従事した内容については自分で記録を取り、正しい証明が得られるよう準備しましょう。
実務経験の内容や判断基準は、全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。
一般企業・公務員・パートでも実務経験と認められる?
一般企業・公務員・パートであっても社労士としての実務経験を積むことは可能です。
企業内や官公庁での労務・社会保険関連業務、あるいはパートタイムの補助業務でも、労働社会保険諸法令に関する事務であれば、実務経験として認められます。
ここでは、勤務形態別に実務経験の具体的な内容を紹介し、どのような業務が実務経験として評価されるのか解説します。
一般企業での実務経験の積み方
一般企業では、社会保険や労務管理などにかかわる業務が実務経験となります。
社会保険の手続きや労務管理業務に携わることで、労働者の健康・安全・労働条件の向上に貢献する経験を積むことができます。
具体的にいうと、安全衛生管理・メンタルヘルス対策・労働時間や休暇制度の見直しといった業務です。
これらの業務は労働法令に基づいて行われるため、実践的な法律知識を深める貴重な機会となるでしょう。
また、労働環境改善のプロジェクトでは、人事部門だけではなく営業や製造など、他部署との連携を通して、コミュニケーション能力やマネジメント能力も養われます。
こうした多岐にわたる実務経験を積むことで、法令順守の意識や労働者に寄り添う視点が身につき、社労士としての専門性と資質を高められるでしょう。
公務員での実務経験の積み方
公務員として働いている場合でも、労務管理部門や年金業務に従事することで、社労士の実務経験として認められます。
労務管理部門の業務内容は、職員の勤務状況管理や福利厚生制度の運用、労使間のトラブル対応などです。
これらの業務は一般企業における人事労務とほぼ同等の業務内容であり、法律の正しい理解と現場での実践力が求められます。
また、年金業務に携わる場合には、年金制度の加入や給付に関する手続き・相談対応などが中心となります。
年金制度の全体像が把握できるため、実務的な視点で運用するスキルが養われるでしょう。
年金業務を経験することで社労士としての知識・実務スキルを成長させるだけではなく、問題解決力・コミュニケーション能力も高められます。
さらに、公務員での実務経験は、多様な背景をもつ相談者に対して、的確な助言を行う力も自然と育つため、社労士としてのスキルの幅も広げられるでしょう。
パートでの実務経験の積み方
非常勤やパートタイムでの社労士の実務経験の積み方として、社会保険手続き業務や労務管理の補助業務に従事することがあげられます。
社会保険手続き業務とは、社員の入退社に伴う保険の加入・喪失の手続き、給付申請などです。
書類の取り扱いや手続きの期限管理を通して、社会保険の制度内容と手続きの流れの理解が深まります。
また、労務管理の補助業務も社労士を目指す方にとって非常に有益な実務経験です。
勤怠管理や休暇申請対応、社員からの労務相談への対応など、現場の声に触れながら労働環境の整備にかかわることで、社労士としての資質・実務スキルを向上させることができるでしょう。
実務経験なしの場合は事務指定講習を受けよう
社労士登録には試験に合格したあと、さらに2年以上の実務経験か、それに相当すると厚生労働大臣に認められることが必要です。
ただし、実務経験がない場合も「事務指定講習」を修了することで、2年以上の実務経験に相当すると認めてもらえます。
社労士の事務指定講習とは
社労士の事務指定講習は、実務経験が2年に満たない人が社労士として登録するために受講する講習です。
正式名称は「労働社会保険諸法令関係事務指定講習」で、法律に基づき、社労士登録に必要な知識・経験の代替として認められています。
社会保険労務士法第3条より社会保険労務士の資格要件は以下のとおりです。
第三条 次の各号の一に該当する者であつて、労働社会保険諸法令に関する厚生労働省令で定める事務に従事した期間が通算して二年以上になるもの又は厚生労働大臣がこれと同等以上の経験を有すると認めるものは、社会保険労務士となる資格を有する。
一 社会保険労務士試験に合格した者
二 第十一条の規定による社会保険労務士試験の免除科目が第九条に掲げる試験科目の全部に及ぶ者
引用:社会保険労務士法
つまり、試験合格後に労働・社会保険に関する事務に2年以上従事したこと、またはそれと同等以上の経験をもつことが資格要件です。
事務指定講習を修了することで、この同等以上の経験とみなされ、登録が可能となります。
なお、ここでいう実務経験とは、労働保険・社会保険に関する届け出や手続きなど、社労士業務に直結する内容が対象です。
社労士の事務指定講習の内容
事務指定講習では、労働基準法や健康保険法、厚生年金保険法など、社労士の実務で必須となる法律を学びます。
「通信指導課程」と「面接指導課程」の2段階にわかれており、それぞれの学び方は以下のとおりです。
通信指導課程
通信指導課程では、複数企業の事例をもとに、雇用保険の手続きや労災給付の処理方法などを、教材を使って自学自習形式で学びます。
受講期間は例年2月〜5月で、期間は4か月です。
数十件に及ぶ課題を提出し、添削指導を受けながら学習を進めます。
提出期限を守らないと修了と認められないため、学習計画を立てて着実に取り組みましょう。
面接指導課程
面接指導課程では、年金法などを中心に講義形式で学習します。
受講期間は例年7月~9月。
オンデマンド配信のeラーニング(4か月以内)または、東京都の研修センターでの映像視聴(3時間・全4日間)での学習となります。
対面授業は現在実施されていません。
通信指導課程と同年内に終了する必要があるため、受講の順番やスケジュールには注意が必要です。
社労士の事務指定講習の日程と費用
実務講習の受講に定員はなく、申込期間(例年11月1日〜12月1日)内に手続きすることで誰でも受講できます。
受講料は7万7,000円です。
自宅など、通信環境が整った場所であれば受講可能ですが、必要に応じて都内の研修センターでの受講も選べます。
修了後には有効期限のない修了証が発行されますが、紛失してしまうと再発行ができないため、ご注意ください。
まとめ
以上、社労士の実務経験と登録要件について詳しく解説しました。
このコラムの要点は以下のとおりです。
- 社労士試験の受験資格としての実務経験は、特定の職種で3年以上の勤務歴が必要
- 社労士登録時に求められる実務経験は、2年以上の労働社会保険諸法令に関する業務
- 給与計算事務は労働社会保険諸法令関係事務に該当しないため注意が必要
- 一般企業や公務員、非常勤やパートでも実務経験を積むことができる
- 実務経験が2年未満でも、事務指定講習の修了で代替可能
社労士を目指す上で、登録に必要な実務経験の内容と積み方を正しく理解することは非常に重要です。
自分の現在の職務が実務経験の要件を満たしているかどうか不安な場合は、全国社会保険労務士会連合会試験センターに確認しましょう。
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