社会保険労務士(社労士)として開業したとしても、厳しい現実に直面して失敗してしまう方は少なくありません。

資格取得自体の難易度も高いことから、「本当に資格を取るべきなのか?」「失敗しないコツはないのか?」など不安になっている方もいるでしょう。

当コラムでは、社労士開業の失敗例や先輩社労士の体験談を通して、独立成功のコツについて解説します。

資格取得後に独立を検討している方はぜひ参考にしてください。

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社労士開業で後悔したと感じる具体例6選 

社労士開業で公開したと感じる具体例としては、以下のような理由が挙げられます。

  • 開業資金・運転資金が予想以上にかかる
  • 営業・集客が大変で売上が立たない
  • 専門知識の習得に対応できない
  • 経営者としての知識がない
  • 忙しすぎてワークライフバランスが崩れる
  • 人間関係・孤独感に悩まされる

開業資金・運転資金が予想以上にかかる

開業資金・運転資金などが予想以上にかかることは、社労士開業を後悔する代表的な理由です。

社労士として独立開業をする際には、以下のような費用がかかります。

  • 登録免許税:30,000円
  • 登録手数料:30,000円
  • 社労士会入会金:50,000円(東京都)
  • 社労士会年会費:96,000円(東京都)
  • 活動費・広告費など
  • 事務所の賃料・維持費など

具体的な必要経費は状況によって変わりますが、社労士としての登録料や社労士会への入会金・年会費は確定で必要です。

特に、年会費は継続的に毎年払わなくてはなりません。

初期投資として最低でも100万円は確保しておきたいところですが、運営しているうちに資金繰りに困窮し、事業継続が困難になる可能性は決して低くありません。

営業・集客が大変で売上が立たない

営業や集客の段階でつまずき、十分な売上が立たずに廃業に追い込まれるパターンもあります。

社労士は社会的な需要の高い職業ですが、有資格者だからといってすぐに顧客を得られるとは限りません。

営業戦略がうまくいかずに顧客や契約獲得に苦戦し、売上が立たなければ運営を続けることはできないでしょう。

社労士は何も仕事をしなくても、社労士会への年会費などの経費がかかる資格です。

売り上げがないにもかかわらず資格の維持費だけはかかるといった状況に陥る可能性もあります。

専門知識の習得に対応できない

専門知識の習得に対応しきれず、自信を失くして廃業してしまう方もいます。

社労士は資格自体の更新は必要ありませんが、知識は常にアップデートする必要がある職業です。

社会保険や年金といった分野は法改正や制度改正が頻繁に行われるため、多忙な業務の中で最新情報を積極的に取り入れる必要もあります。

社労士サービスの質を維持するためにも、知識の刷新は欠かせない作業です。

企業内社労士であれば情報を共有してもらえる可能性が高いですが、独立した場合は受け身の姿勢でいることはできません。

自由を求めて独立したのに、勤務していた頃より忙しい現実に心が折れてしまう方もいるでしょう。

経営者としての知識がない

独立開業したはいいものの、経営者としての知識がなく運営に行き詰まってしまうパターンもあります。

事務所を構えて開業した時点で、社労士だけでなく「経営者」でもあります。

個人事務所で他に人手がなければ、必然的に社労士業務以外にも以下のような作業を行わなければなりません。

  • 売り上げ・経費の管理
  • 請求書の発行
  • 確定申告

さらに、事務所を成り立たせるために経営戦略を立て、売り上げを立てていく具体的な方法を考える必要もあるでしょう。

特に開業当初は社労士以外の業務の方が忙しく、本業に集中できないといったケースもみられます。

忙しすぎてワークライフバランスが崩れる

忙しすぎてワークライフバランスが崩れ、運営が困難になることもあります。

社労士の業務は、ただでさえ多忙になりがち。

開業の場合はさらに経営者としての仕事も必要になり、昼夜問わず仕事のことを考えるような状況に陥ることがあります。

開業社労士は仕事のペース自体は自分で裁量できますが、基本的になんでも自分でこなさなければなりません。

私生活が犠牲になることはもちろん、家庭をもっている場合は家族との時間が取れずに関係が悪化する可能性もあります。

人間関係・孤独感に悩まされる

人間関係の希薄さや孤独感に対する悩みは開業社労士ならではの課題といえます。

個人事務所を開業する場合、「同僚」のような仕事上で気兼ねなく接することのできる存在はいません。

家族がいたとしても業務内容に関しては相談できず、閑散期などにひとりで悶々と悩みを抱えてしまう方もいます。

対等な立場で相談できる「横のつながり」から得られる安心感は意外と大きいもの。

開業社労士は経営者としての側面からも壁にぶつかりやすい一方で気軽な相談相手はもちにくく、精神的に追い込まれやすい立場といえるでしょう。

社労士開業で苦労した体験談 

現在、開業社労士として活躍されている方に開業後もっとも苦労した点について質問したところ、以下のようなお答えがありました。

いわゆる金なしコネなしでの開業だったので、どうやって仕事を得るか、仕事を得たとしてどのように業務を進めていくか、知識習得という点も含めて苦労したように思います。

最初の数年は深夜遅くや土日も仕事をしていましたし、起きているときはずっと仕事のことを考えていました。

引用:【社労士 実務家インタビュー】社会保険労務士法人ステラコンサルティング 坂田 新悟様

最初の1,2年は、社労士としてひよっ子の自分を自信を持って売り込めず、仕事が少なく経済的に苦労していました。

この時に残った時間を知識の習得に充てたことが、自分を自信を持って売り込むことができ、仕事を多くいただいている今の状況に繋がったと思います。

引用:【社労士 実務家インタビュー】東京人事労務ファクトリー 山本 多聞様

体験談からわかるように、開業してすぐはどのように仕事を得るか、個人事務所として実務にどう対応するかといった点で苦労する人が多いです。

特に、「経営者」としての立場にすぐに適応できない点がネックになりやすいでしょう。

社労士は開業前に実務経験か事務指定講習の受講が必要ですが、経営者は経験の有無に関わりなく開業後に即必要な業務が発生します。

社労士としては十分な経験を積んでいたとしても、経営者としてすぐに軌道に乗れるわけではありません。

運営がうまくいかない時期を腐らず知識吸収の時間にできるかどうかが成功を左右するでしょう。

社労士開業で後悔しないための6つのコツ 

社労士開業で後悔しないためのコツとしては、以下の6つが挙げられます。

  • 徹底した開業前準備と計画案を立てる
  • マーケティング戦略を考えて営業を行う
  • 継続的に学習とスキルアップを行う
  • ポジティブ思考になる
  • 相談できる仲間を作る
  • 初心を忘れない

徹底した開業前準備と計画案を立てる

本格的な開業前に、徹底した準備と計画案を立てましょう。

開業社労士は個人事業主のため、会社員のように安定した給与は期待できません。

開業後にしばらく売り上げがなくても運営が行き詰まらないよう、十分な資金を用意しておくことは必須です。

さらに、収支計画や事業計画書、各種リスクヘッジなども開業を検討する前にじっくりと考えておくとよいでしょう。

運営に関連する具体的な業務や雑務は実際に開業しなければわからない部分もありますが、想定できる部分は先に考えをまとめておくことが大切です。

ある程度方針が固まっていれば、不測の事態にも対処しやすくなるでしょう。

マーケティング戦略を考えて営業を行う

営業を行う際は、マーケティング戦略をしっかり意識しましょう。

いくら社労士の資格をもっているといっても、「有資格者」というだけで顧客を得ることはできません。

他社労士と差別化すべきポイントや自分ならではの強みを明確にし、ブランディングに合わせた集客方法を選択することが大切です。

親しみを押し出す・頼りがいを演出するなど、本人の個性によって適切なブランディングは異なります。

また、近年は集客や営業に使えるツールもインターネットやSNSなど多様。

仕事の紹介がありそうな人脈形成を考えることも有効です。

継続的に学習とスキルアップを行う

学習とスキルアップは継続的に行いましょう。

開業時点で経験や知識が乏しかったとしても、依頼者にとっては「プロの社労士」です。

社労士としても経営者としてもプロという意識をもって依頼に対応しましょう。

特に、まじめな人ほど取りがちな「初心者だから謙虚に振る舞う」といった態度は、依頼者に対面するときだけは要注意。

プロに依頼をかけにきている人の目からは腰の低い態度が自信なさげに見え、不信感や不安感を与えてしまう可能性があります。

ポジティブ思考になる

開業に伴う失敗を恐れすぎず、ポジティブ思考をもつことが大切です。

業界や経験を問わず、仕事に失敗はつきもの。

万が一失敗したとしても、「失敗したことで学べた」とポジティブな方向に思考を切り替えるよう心がけるとよいでしょう。

ひとつの選択の結果が失敗であっても、改善に繋げて試行錯誤を繰り返すPDCAサイクルの確立に繋げられます。

恐れずチャレンジを続ければ、経験値と自信をどんどん蓄積することができるでしょう。

相談できる仲間を作る

困ったときに相談できる仲間を早い段階で作っておきましょう。

社労士の先輩や同期など、対等な立場で交流できる相手が見つかればベストです。

同業者でなければ理解し合えない課題なども多くあるため、可能であれば同じ社労士の仲間を見つけるとよいでしょう。

現状で頼れる相手がいない場合は、士業向けのセミナーや研究会、交流会などに参加して人脈づくりを試してみてもよいでしょう。

社労士でなくても税理士や行政書士など他業種の仲間ができて見聞が広がる・依頼人に紹介し合えるといったメリットを得られる可能性があります。

初心を忘れない

挫けそうになったときは「なぜ社労士を目指したのか」という初心を忘れないようにしましょう。

挫けそうになったとき、社労士を目指しはじめた頃の情熱や目標に立ち返れば「もう少し頑張ってみよう」とメンタルを立て直せるかもしれません。

社労士は国家資格の中でも非常に難易度の高い試験です。

受験時点で挫折してしまう人も多い中、受験を乗り越えられた「原点」や「モチベーション」があったはず。

迷った時は当時の気持ちを真剣に思い出し、「これからどうすべきか」を慎重に検討しましょう。

それでも社労士開業に失敗・廃業したらどうする? 

試行錯誤の結果、なお社労士開業に失敗・廃業となることはあり得ますが、社労士は本来多様な働き方が可能な資格であることを忘れないでください。

開業社労士として失敗したとしても、資格を活かせば他の社労士事務所や一般企業で働くことができます。

企業内社労士として経験を積み、改めて開業を目指してもよいでしょう。

社労士は取得難易度が非常に高く、挫折する受験生も多くいる中で有資格者となっただけでも十分に「すごいこと」です。

経営者としてうまくいかなかったとしても資格の強さは変わらないため、「開業が失敗したら再就職しよう」という気楽なメンタルをもつとよいでしょう。

企業内社労士の場合は経営面の業務を別の担当者が負担してくれるため、社労士としての業務に集中できるメリットも大きいです。

まとめ

当コラムでは、社労士として開業した場合に後悔しやすいポイントなどについて以下の内容で解説しました。

  • 社労士として開業して後悔しやすい理由としては、大まかに経済面と知識面、メンタル面がある。経営者としての知識がないことや想定以上に資金が必要なことがネックになりやすい。
  • 社労士と経営者の業務にひとりで対処する必要があることで、ワークライフバランスや人間関係が悪化するケースも。
  • 社労士開業で後悔しないためのポイントとしては、準備を徹底することや考え方を工夫することなどが挙げられる。
  • 万が一開業に失敗したとしても、社労士は多様な働き方が可能な資格。社労士事務所や一般企業に再就職する道は常に開かれている。

社労士として開業しても、経営者としての業務や資金繰りの難しさに直面して挫折してしまう方は少なくありません。

本格的な開業ステップの前に準備や計画立案を行う・相談できる仲間を見つけるなどの対策をしっかり取り、挫けにくい状況を作りましょう。

とはいえ社労士は有力な資格のため、廃業してしまった場合も再就職は比較的容易です。

準備は怠らずに行いつつ、メンタル面では「失敗しても大丈夫」と気楽に構えることが重要なポイントとなるでしょう。

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