技術士二次試験は、一次試験を通過し実務経験を積んだ人だけが受験できる、狭き門の試験です。申し込めばだれでも受験できるわけではなく、合格率も低いので、しっかりとした対策が必要といえます。

普段から試験勉強に取り組んでいる人は、どうすれば合格できるのか悩むものです。

このコラムでは、技術士二次試験の主に筆記試験の勉強方法について中心に解説していきます。

令和4年度受講生の合格率
一次試験60.00%(全国平均の1.42倍)、二次試験77.78%(全国平均の6.65倍)!

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技術士二次試験について

技術士二次試験は筆記試験と口頭試験があります。

筆記試験は例年7月初旬から中旬に実施されています。試験実施期間は、必ず毎年3月中に公益社団法人日本技術士会ホームページでご確認ください

なお口頭試験は例年11月下旬~翌年1月下旬頃に実施され、最終合格発表は翌年3月中旬頃に行われています。

先に筆記試験が行われ、筆記試験合格者のみが口頭試験に進むという流れであり、まずは筆記試験に合格できるかが重要となります。

筆記試験は、総合技術監理部門と20技術部門で実施されます。
必須科目と選択科目からなり、総合技術監理部門の必須科目の一部を除き、全て記述式で実施されます。

20技術部門の範囲は、専門知識・応用能力・問題解決・課題遂行能力が考査されます。

総合技術監理部門は、必須科目と選択科目からなりますが、すでに技術士試験合格もしくはその登録者が受験申し込みの申請により、選択科目が免除されます。
なお総監部門の選択科目の範囲は、20技術部門の必須科目と選択科目を指します。

技術部門(20部門)必須科目技術部門全体の専門知識や応用能力、問題解決、課題遂行能力
選択科目選択科目についての専門知識と応用能力
総合技術監理部門必須科目課題解決能力と応用能力(択一式と記述式)
選択科目技術部門全般と選択科目の専門知識、応用能力、問題解決能力、課題解決能力※技術士試験合格者もしくはその登録者は、受験申込時の申請により、免除されます。

筆記試験、口頭試験ともに60%以上の得点が合格ラインとなっています。
一次試験は3科目が50%以上の合否ラインですが、基準そのものが10%も上がっているのが特徴です。

二次試験概要について詳しくはこちら▶技術士二次試験の概要まとめ!受験資格・科目配点・合格基準までわかりやすく解説

技術士二次試験の難易度は高い

技術士二次試験の合格率は平均11%程度という、非常に厳しい難易度の試験です。

以下の表は、過去5年間の技術士二次試験の合格率です。

年度受験者数合格者数合格率
令和5年度(2023年度)22,8772,69011.8%
令和4年度(2022年度)22,4892,63211.7%
令和3年度(2021年度)22,9032,65911.6%
令和2年度(2020年度)20,3652,42311.9%
令和元年度(2019年度)24,3262,81911.6%
出典:技術士第二次試験 統計情報

技術士二次試験の合格率は近年11%前後で推移しており、いかに難易度の高い試験なのかを物語っています。

【注意】技術部門別で難易度の差はない

選択する技術部門によって合格率は異なります。令和5年度の統計では、合格率が高い3部門、低い3部門は下記の通りです。

合格率が高い3部門合格率が低い3部門
繊維部門28.6%資源工学部門4.3%
船舶・海洋部門20.0%情報工学部門6.3%
生物工学部門20.0%電気電子部門9.2%

かなり差があるように見えますが、実は基本的に技術部門別で難易度の差はありません

合格率は受験者に対する合格者の割合ですから、分母になる受験者が少なければ、合格率が高くなります。

技術士試験制度を勘違いして、合格率数字の高い箇所を受験する方がいます。受験者が少ない部門は、難易度の前にその技術部門で技術士になりたい方が少ないことを意味しています。

この点、ご注意ください。

関連コラム:技術士試験の難易度は?一次・二次試験の合格率全部門総合&部門別にまとめ

ちなみに、アガルートの技術士試験講座受講生の令和4年度の技術士第二次試験の合格率は77.78%で、全国平均の6.65倍でした。試験対策に利用する講座選びは、自分が合格できる可能性を上げるために重要です。

技術士二次試験の勉強方法Q&A

難易度が高い技術士二次試験は、しっかりとした対策が必要です。

勉強時間はどれくらい必要なのか、どのような勉強方法がベストなのか、アガルート技術士講座を担当している日比講師に勉強方法について質問しました。

Q.技術士二次試験合格に必要な勉強時間はどれくらいですか?

A. 600から1000時間が試験対策の目安と考えましょう。

ただし受験生の実務経験年数により、培われた技術知識や課題設定・問題解決能力が異なりますから、目安として考えましょう。          

合格水準の論文体裁が完成するまでに最低600時間の記述練習が必要です。

参考までに筆者の受験指導者経験から、実務経験7年間程度の専門技術者の場合、論文体裁が完成するまでに最低600時間は必要と考えています。 

では最低600時間を対策時間に割り当てる場合、どのくらいの期間が適当でしょうか?

1年間で平均的に割り当てると、1日あたり2時間程度になります。平日1日あたり2時間程度の勉強時間を確保できれば、勉強期間は1年程度ということです。
論文記述に慣れていない受験生は、時間配分と練習の余裕を十分に考え、勉強時間確保をしましょう。                            

試験対策は、受験前年の2月開始が余裕をもった対策期間のベスト条件

全く論文作成経験のない受験者の場合、論文記述作法の習得、過去問の題意要求(何を問うているのか)の正確な把握手順、専門キーワードの整理を経て、記述品質を合格水準に引き上げるために、1年6ヶ月の期間は確保しましょう。

Q.二次試験の対策に必要なものはありますか?

A. 手元に用意すべきものは、主に下記4つです。

  1. 関連白書など試験関連資料
  2. 過去問
  3. 技術部門の専門書
  4. 自作キーワード集

自学研鑽、受験対策講座受講に共通して、各自準備した方が良いものです。

1.関連白書、専門業界ホームページなど、試験関連資料を収集整理する

受験を予定する技術部門に関連する白書は必ず準備しましょう。
白書とは、政治・社会・経済・科学技術の実態及びそれらに対する政府の施策の現状について国民に周知させることを目的とした政府刊行物類を言います。

技術士試験は、国家試験ですから、科学技術全体の政府の考え方を知っておく必要があります。
建設部門・上下水道・資源工学部門・衛生工学部門では、国土交通白書、機械部門・金属部門・化学部門・経営工学部門などは、ものづくり白書、その他、環境白書は、全部門で確認をしておきましょう。

2.令和元年度以降の過去問を確認する

令和元年度以降の過去問題について、必須科目と選択科目ごとに必ず確認しましょう。出題傾向とその内容を把握しておきます。わからない用語等があれば、必ず調べて整理しておきましょう。

なお令和元年以前の試験は、現制度と選択科目範囲が異なります。ただし体系的専門知識の参考になりますので、余裕がある方は確認しておきましょう。

3.技術部門の専門書

過去問から出題傾向とその内容を整理したら、技術部門関連の専門図書などで、技術の背景・内容、現在の課題や問題点などの観点で情報を整理しておきます。

特に令和元年度以降の新制度から、多様な観点で課題提示をする設問がありますから、留意して整理しましょう。

4.自作キーワード集

過去問からわからない用語等を抜き出し、白書・専門図書を参考に解説書を作ります。これを自作キーワード集と言います。
また単なる解説集ではなく、可能な範囲でキーワードに関連する自身の実務経験をコンピテンシー視点で整理すると、試験対策に有用です。

コンピテンシーとは、技術士の資質能力の体系を指します。詳細は、公益社団法人日本技術士会ホームページを確認ください。

Q.二次試験の勉強の進め方や合格するためのポイントについて教えてください。

A. 「1. 出題問題の趣旨と設問要求事項を正確に読み取る力」と「2. 的確かつ正確な記述応答の仕方」が必要です。

技術士二次試験は、知識確認試験ではありません
令和元年の新制度から、択一式の知識確認試験はなくなり、総合技術監理部門必須試験の一部を除き、すべて記述式試験となりました。その範囲は、技術部門全般にわたる専門知識、応用能力、問題解決能力及び課題遂行能力に及びます。

出題内容に対し、的確かつ正確に記述で応答する能力を考査されます。

合格を勝ち取るポイントは、いうまでもなく論文作成技術の習得にあります。

論文作成には、次の2つの視点が必要です。

  1. 出題問題の趣旨と設問要求事項を正確に読み取る力
  2. 的確かつ正確な記述応答の仕方

1.出題問題の趣旨と設問要求事項を正確に読み取る力

主題された問題に対して、何を解答することを要求されているのかを常に念頭しておかなければなりません。出題の趣旨と出題者の意向に反して、解答すると評価を得ることはできません。

必須科目は、技術部門全体を通して解答します。言い換えれば、技術部門を構成する選択科目の全範囲の視点で解答しなければなりません。一方、選択科目は、選択科目の技術領域を深掘りし、解答します。

的確かつ正確な題意要求事項(問題と設問が要求している内容)を把握するためにクリティカルリーディングという手法を活用します。

クリティカルリーディングとは、問題と設問が何を論じ、何を要求しているのかを分析し、問題で論じられている見解、立場の合理性などを評価しながら、読むことを言います。

2.的確かつ正確な記述応答の仕方

技術士二次試験の記述式解答は、一種の小論文です。
小論文とは、問題文等で問いが与えられ、これに的確かつ正確に応答することを要求されます。
参考までに、論文とは、問いを立てる(リサーチクエッションと言います)ことから始まり、その問いに対して、論理的かつ科学的に記述展開することを言います。

技術士試験答案は、小論文です。よって、パラグラフライティング手法が有効です。パラグラフとは、意味のまとまりのある段落を示します。この段落を要約したものが、表題になります。表題を詳述したものが、段落内容(説明文)となります。

このパラグラフライティングを習得すれば、難なく技術士試験は突破できます
パラグラフライティングを参考に記述練習するときは、クリティカルリーディング手法を活用し、正確に題意要求を読み取り、パラグラフライティング手法を活用し、的確かつ正確に応答できるように進めます。

このプロセスで、技術士有資格者の校閲(添削)を受ければ上達が加速します。  

Q.これから二次試験合格を目指す方へ向けて、アドバイスをお願いします。

A.  先にも述べたように技術士試験は、知識確認試験ではありません

市販問題集を暗記し、過去問対策集をいくら精読してもなかなか合格の道は見えません

受験者の多くは、すでに技術者としてプロの方ばかりです。技術知識の確認ではなく、技術者の応用能力や課題問題解決能力を記述式で応答する試験であることを再確認しましょう。

受験を決意したら、最初に今まで培った業務経験を整理しましょう。経験業務の範囲が、受験する技術部門にピッタリ当てはまらないからです。
例えば、電気関連の業務経験がある場合、精査せずに電気電子部門受験としては早計です。実際の業務が、電子機器の設計の場合、機械部門の設計が適切な場合があります。
また、学生時代の修業科目にこだわりすぎると、口頭試験で評価される応答ができない場合もあります。

このようなことを防止するために、技術士登録技術者の助言を受けてください
また、セミナーハウスや通信講座では、このようなことに迷い込まない指導を適切に受けることができますので、早期に合格を勝ち取るためには外部の助言も念頭してください。

技術士二次試験の勉強方法まとめ

  • 技術士二次試験の難易度は高い
  • 基本的に技術部門別で難易度の差はない
  • 技術士二次試験合格に必要な勉強時間の目安は600~1000時間が目安
  • 二次試験対策として用意するものは①関連白書など試験関連資料②過去問③技術部門の専門書④自作キーワード集
  • 技術士二次試験は、知識確認試験ではない
  • 論文作成には「1. 出題問題の趣旨と設問要求事項を正確に読み取る力」と「2. 的確かつ正確な記述応答の仕方」が必要
  • 早期に合格を勝ち取るには技術士登録技術者の助言を受ける

令和4年度受講生の合格率
一次試験60.00%(全国平均の1.42倍)、二次試験77.78%(全国平均の6.65倍)!

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この記事の監修者

日比 幸人 講師

北海道大学卒業後,工業用界面活性剤と食品油脂を製造する会社のプラントマネジャーを経て,大手製薬会社系列食品会社で食品素材の研究・開発ならびにテクニカルサービス業務を経験。


1994年に独立し,技術コンサルタント会社を創業,現在に至る。


平成28年,技術士(経営工学部門と総合技術監理部門を併願)試験を受験し,合格。

平成29年3月2部門同時登録。同年から技術士試験受験指導にも携わり,先達の導きもあり,4年間で数十名の受験生を支援する。

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