技術士 情報工学部門は情報処理技術者(経済産業省所管)と並行して受験する方も多く、情報系技術資格のなかで、最も難しい国家試験と言われています。

今回は資格概要や試験内容、勉強法について書きました。技術士情報工学部門に興味がある方、また受験対策について知りたいは参考にしてみてください。

令和4年度受講生の合格率
一次試験60.00%(全国平均の1.42倍)、二次試験77.78%(全国平均の6.65倍)!

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技術士 情報工学部門 とはどんな資格?

技術士とは文部科学省所管の技術部門の国家資格です。

技術士は、科学技術に関する課題解決能力を認められ、技術コンサルタントとして活躍します。
その業務内容は、計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導と技術士法第二条で定義されています。

情報工学部門の技術士は、ITシステムの開発や情報領域に関するコンサルティングなどの技術管理を担います。

技術士の基本情報はこちら:技術士とはどんな資格?受験資格・仕事内容・技術士になるまでの流れを解説

技術士情報工学部門の合格率・難易度は?

技術士情報工学部門の試験の難易度はどれくらいなのでしょうか?合格率を確認しておきましょう。

下記は技術士情報工学部門と全部門平均、近年の一次試験・二次試験の合格率です。

年度一次試験
(情報工学部門)
一次試験
(全部門平均)
二次試験
(情報工学部門)
二次試験
(全部門平均)
令和5年度62.3%39.7%6.3%11.8%
令和4年度63.9%42.2%12.7%11.7%
令和3年度55.1%31.3%7.8%11.6%
令和2年度65.0%43.7%7.6%11.9%
令和元年度68.8%51.4%7.4%11.6%
出典:公益社団法人日本技術士会

情報工学部門に限ったことではないですが、技術士二次試験の合格率は低いです。
令和5年度の全部門の平均で11.8%、情報工学部門で6.3%(部門受験者413名に対し、26名合格)となっています。

全部門平均と比較すると、ハードルが高く感じます。
しかし全部門の問題内容は異なりますが、設問形式はほぼ統一されましたので解答視点は同じです。
合格率算出の分母が小さくなると、その率は大きく変わることに注意ください。
とりわけ情報工学部門が難しいわけではありません

関連コラム:技術士試験の難易度は?一次・二次試験の合格率全部門総合&部門別にまとめ

技術士(情報工学部門)試験の内容

技術士情報工学部門も他部門と同様、第一次試験に合格後、第二次試験に合格し、登録することでこの部門の技術士となります。

技術士になるまでの流れについての解説はこちら▶

技術士第一次試験・第二次試験の内容について、基本事項をおさらいしておきましょう。

まず一次試験の専門科目を決めましょう。必ずしも一次試験と二次試験の技術分野が同じである必要はありません。現在の専門科目でも良いし、他の関連科目でも良いです。例えば環境部門で一次試験を合格し、建設部門を受験することができます。

第一次試験の概要

第一次試験の受験資格

技術士第一次試験に受験資格はありません。

年齢、学歴、業務経歴等による制限はなく、希望する誰でも受験できます。

第一次試験の科目について

試験科目は基礎科目・適性科目・専門科目の3科目で、マークシート形式の試験です。

試験は、総合技術監理部門を除く20の技術部門について行われます。なお一定の資格を有する者については、技術士法施行規則第6条に基づいて試験の一部を免除されます。
なお合格点は、各科目50%以上の正解です。

下記は公益社団法人日本技術士会第一次試験要綱から引用しました。

1.基礎科目

科学技術全般にわたる基礎知識出題分野は、次の(1)~(5)のとおり

(1) 設計・計画に関するもの(設計理論、システム設計、品質管理等)
(2) 情報・論理に関するもの(アルゴリズム、情報ネットワーク等)
(3) 解析に関するもの(力学、電磁気学等)
(4) 材料・化学・バイオに関するもの(材料特性、バイオテクノロジー等)
(5) 環境・エネルギー・技術に関するもの(環境、エネルギー、技術史等)

2.適性科目

技術士法第四章(技術士等の義務)の規定の遵守に関する適性

3.専門科目

20技術部門の中から1技術部門を選択します。

第二次試験の概要

第二次試験の受験資格

二次試験の受験資格についても確認しておきましょう。

二次試験を受けるには、技術士補となる資格を有し、次のいずれかに該当することが必要です。

下記は公益社団法人日本技術士会第二次試験要綱から引用しました。

(1) 技術士補として技術士を補助したことがある者で、その補助した期間が通算して次に定める期間((2)の期間を算入することができる) を超える者

・総合技術監理部門を除く技術部門 4年
・総合技術監理部門 7年

(2) 科学技術(人文科学のみに係るものを除く。) に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価(補助的業務を除く) 又はこれらに関する指導の業務を行う者(注1) の監督(注2) の下に当該業務に従事した者で、その従事した期間が技術士補となる資格を有した後、通算して次に定める期間((1)の期間を算入することができる。) を超える者

・総合技術監理部門を除く技術部門 4年
・総合技術監理部門 7年

(3) 科学技術(人文科学のみに係るものを除く) に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価(補助的業務を除く。) 又はこれらに関する指導の業務に従事した期間が通算して次に定める期間を超える者

・総合技術監理部門を除く技術部門 7年
・総合技術監理部門 10年(既に総合技術監理部門以外の技術部門について技術士となる資格を有する者にあっては7年)なお、(1)~(3)のいずれにおいても学校教育法による大学院修士課程(理科系統のものに限る。) 若しくは専門職学位課程(理科系統のものに限る。) を修了し、又は博士課程(理科系統のものに限る)に在学し、若しくは在学していた者にあっては、2年を限度として、当該期間からその在学した期間を減じた期間とする。

二次試験の内容について

筆記試験及び口頭試験からなり、口頭試験は、筆記試験に合格した者について行われます

試験は、21の技術部門について行われ、試験科目は、必須科目及び選択科目からなります。

既に総合技術監理部門を除くいずれかの技術部門の第二次試験に合格している者が、総合技術監理部門を既に合格している技術部門に対応する選択科目で受験する場合は、試験科目のうち選択科目を免除されますが、申込時に申告が必要です。

技術士情報工学部門 勉強方法

ここからは一次試験ならびに二次試験の試験対策と勉強法について説明します。

第一次試験の勉強方法

最初に一次試験です。すでに一次試験に合格された方は、読み飛ばしてください。

基礎科目、適性科目ならびに専門科目とも座学研鑽で過去問対策が主になります。

勉強時間は、概ね6か月は確保しましょう。じっくり臨めば合格は難しくありません。

しかし適性科目は、技術者倫理視点を含む技術士法の把握が必要になりますので、受験決意とともに最初に始めましょう。ほとんどの技術者は、社会科学的出題に慣れていません。

基礎科目は、科学技術全般にわたる基礎知識出題分野の範囲になります。
先にご紹介した通り、設計・計画、情報・論理、解析、材料・化学・バイオ、環境・エネルギー・技術に関するものです。

過去問を5年間程度整理して、苦手な分野を把握したうえで、市販問題集を併用して勉強しましょう。
計算問題もありますから、単なる知識の暗記ではなく解答プロセスの理解が必要になります。

専門科目は、20技術部門の中から自身の専門性に近い科目もしくは関連する1技術部門を選択します。こちらも過去問を5年間分整理して、基礎科目同様、市販参考書を併用して進めます。

第二次試験の対策・勉強法

二次試験は、一次試験のようにはいきません。

最初になぜ二次試験を受験するのか、合格後の活躍イメージを整理したうえで、合格までのマイルストーン(目標)を意識した勉強計画を立てましょう。

勉強の計画を立てたら、次の順序で進めていきます。 


1.試験関連資料を収集し、記述解答のネタをそろえる

国土交通白書・第4次社会資本整備計画・ものづくり白書・情報通信白書の4資料は、常備しましょう。
これらのほとんどはインターネットで閲覧できます。
試験対策使用を目的にダウンロードして、pdf化した資料を準備しましょう。

すべて読み込むのではなく、これらの概要を目次⇒白書概要の順で把握し、重要箇所を備忘します。
熟読をせず、試験に必要な情報整理を目的に臨みましょう。

なお、これから技術士になる皆さんです。ダウンロード後の著作権には、十分注意と配慮をしましょう。

2.情報工学部門過去問5年分で出題傾向を把握する

公益社団法人日本技術士会のホームページに過去問題のデータベースがあります。

情報工学部門の必須科目と選択科目の最低3年分(新制度の過去問)をダウンロードし、出題傾向を分析して、キーワード集を作ります。キーワード集は、自身が解説できないものに絞り、整理します。

余裕があれば、過去5年間(平成28年度まで)に遡り、過去問題を収集してください。
特にⅡ―1はキーワード整理には有効な問題群です。

2-1.自作キーワード集について

3~5年間分の過去問題(必須と選択科目)から、出題傾向の確認と重要キーワードの抽出を行います。

重要キーワードは、自作キーワード集に集積して、自身が解説を付けておきましょう。

解説内容は、技術の内容とその背景、技術課題や問題点、関連業際技術などです。自身で整理総括したキーワード集は、実務における専門知識整理に役立つだけでなく、記述問題の視点検討や記述内容に大きく貢献します。

3.選択科目で選択した技術専門書を使う

選択科目で選択した科目専門書は手元に一冊おきましょう。

技術内容の確認整理にも使えますが、重要なのは専門書の目次とその項目です。
例えば、「情報通信」と題する専門書の目次がどのような項目から構成されているかを把握することは、答案構成目次を作るうえで大変有用です。

十年前の「情報通信」と現在の「情報通信」は異なります。なるべく出版年数が現在に近い専門書籍を選んでください

関連白書の目次、説明図表の挿入とその体裁を確認することも同時に進めましょう。
専門書籍と関連白書の目次は、必要事項を規定スペース内で編纂しなければならず、見やすさに加え記述項目の配置参考になります。

4.記述練習を計画的に行う

過去問を活用して実試験時間を意識して記述練習をしましょう。

必須と選択科目Ⅲは、出題範囲が異なるのみで、出題形式はよく似ています
必須科目は、情報工学部門全体の出題、選択問題Ⅲは、受験申込時に選択した科目の範囲です。
出題傾向は、同じように見えますが、範囲が異なるので、設問内容が異なります。この点を正確に理解していないと、評価を得ることはできません。

また選択科目Ⅱ-1は、技術説明問題ですから、苦手な方はいらっしゃらないと思います。
もしここで解答に迷うならば、過去問を参考に技術用語(キーワード)を整理してください。

最難関は、選択科目Ⅱ‐2の応用能力を問う問題です。
今まで培った技術者経験を念頭にケーススタディ的な出題に応答します。
必須・選択科目とも、1.~4.の準備の後、計画的に記述練習をします。

合格レベルの答案作成には、私の指導経験実績から資料勉強時間含め120時間は必要です。

技術士情報工学部門を取得するメリット

このような対策をして情報工学部門技術士に合格し、所定手続きを経て、登録することで技術士(情報工学部門)と名乗ることができます。

登録によって、資格の効力とメリットが生まれます。また国家資格者であり、技術士法に準拠して技術業務責任者の立場になります。以下に主なメリットを示します。

名称独占ができる

技術士登録者は、技術士法 第46条 (技術士の名称表示の場合の義務)により、技術士の名称を表示するときは、その登録を受けた技術部門を明示し、登録を受けていない技術部門を表示してはいけません。

仮に技術士登録者であっても、登録していない技術部門を表示すると、第46条に違反することになります。きわめて厳格に名称表示が規定されています。

しかし情報処理技術者試験(経産省所管)ほど知名度は高くありません。これは資格が役に立たないことを意味するのではなく、情報処理技術者と比較した場合の相対です。

情報工学部門技術士は、全技術部門の2%余の登録であり、ニッチな高度IT専門家として位置づけられます。

高度な専門知識と業務思考能力の証明ができる

情報工学部門の技術士は、主に公共事業の受注を担う建設部門や上下水道部門と比較すると独占性が弱いです。

しかし情報領域に関する広範囲な専門知識を熟知していることは当たり前で、技術者倫理についても精通しています。

また継続研鑽が義務付けられており、資質能力(コンピテンシー)要件を意識して、能力の維持と開発を常にしています。

知名度の低さはやや気になりますが、建設業など他業界の高評価の背景から、技術士の価値を認識する官公庁・研究機関や経営層も増えています。

技術士二次試験では、筆記試験と口頭試験で、専門技術や知識以上に応用能力と課題解決能力が求められます。

この試験を筆記と口頭で通過し、登録した技術者(技術士)は、明らかに公的な実務能力証明になります

自己研鑽制度の一貫として技術士資格取得の奨励をしている大手IT企業もあります。

技術管理者としてのポジションにふさわしい資格となる

技術士資格は、技術者の最も権威のある国家資格であると世間で言われています。

技術士資格の保有は、専門知識の多寡よりも課題解決や応用能力の発揮に焦点が当たっていることを認識しましょう。

昨今、技術者が発端となる企業不祥事が後を絶ちません。
製品やサービスの設計時点の品質や製造時点の品質やプロセスに対して、技術士視点でチェックや承認を受けることを顧客が要求する社会は、すでに来ています。
技術管理者であるあなたは、このことを忘れてはいけないのです。

しかし情報科学分野では、情報処理技術者試験(経産省所管)が企業に広く認知され、技術者スキルの評価標準になっています。

多くのIT企業では、情報処理技術者試験合格者に資格手当制度を設け、資格取得によって自己研鑽することを奨励しています。

一方、情報工学部門技術士は、試験突破が難関であること、資格奨励などの告知活動の不足など、資格人気が今一つです。技術士資格を取得よりも、スキル別に情報処理技術者試験を受験するメリットが大きいと認識されていることは少し残念です。

技術士情報工学部門は独学でも合格できる?

情報工学部門の技術士受験を考えるみなさんは、すでに情報技術の専門家です。
地道にコツコツと専門書を読破し、過去問を参考に記述練習を重ねれば必ず合格できます。

しかし確固たる信念をもち、受験勉強に臨んだとしてもご自身で記述内容の評価判断はできません。

そこで先達技術士に指導を仰ぐのです。技術士試験に突破し、実務錬磨をしている技術士にコメントをもらうことは大変有用です。

しかし優秀な技術士が、現在の試験制度に沿った的確な試験対策ができるわけではありません。
合格までの道筋と受験対策に投資する時間の効率を考えると、的確な試験対策を通信講座で受けることは、時間節約と受験対策の実効性の双方を獲得でき、効果的な早道です。

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一次試験60.00%(全国平均の1.42倍)、二次試験77.78%(全国平均の6.65倍)!

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この記事の著者

日比 幸人 講師

北海道大学卒業後,工業用界面活性剤と食品油脂を製造する会社のプラントマネジャーを経て,大手製薬会社系列食品会社で食品素材の研究・開発ならびにテクニカルサービス業務を経験。


1994年に独立し,技術コンサルタント会社を創業,現在に至る。


平成28年,技術士(経営工学部門と総合技術監理部門を併願)試験を受験し,合格。

平成29年3月2部門同時登録。同年から技術士試験受験指導にも携わり,先達の導きもあり,4年間で数十名の受験生を支援する。

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