税理士試験を目指す方の中には、以下のような悩みや疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。

「税理士試験を目指しているけれど、自分に受験資格があるのかわからない」
「税理士試験の緩和について詳しく知りたい」

このコラムでは税理士試験の受験資格・受験資格の緩和・受験資格がない場合の対処法・受験資格の学歴等について解説します。

国税庁が公表した2023年度(令和5年)の税理士試験の科目別合格率は18.8%。過去5年間の合格率は15%〜17%で推移している難関資格です。

受験資格が厳しいという意見も多かった税理士試験ですが、近年より受験資格が緩和されています。

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税理士試験の受験資格とは?

会計学科目については受験資格要件が撤廃され、誰でも受験できるようになりました。

税法科目の主な受験資格は学識(学歴)・資格・職歴の3つです。いずれか一つを満たせば、受験が可能です。

また、上記以外に個別認定申請により受験資格が認められる場合もあります。

いずれの場合にも、受験申請の際に受験資格を証明する書類を提出しなくてはならないため、事前に確認しておきましょう。

ここからはそれぞれの受験資格と要件について解説していきます。

学識による受験資格

学識による受験資格と提出する証明書類は次の通りです。

受験資格 提出する書面※いずれもコピー可
大学、短大又は高等専門学校を卒業した者で、
社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
成績証明書
(卒業年月の記載がないものは卒業証明書も必要)
大学3年次以上の学生で
社会科学に属する科目を含め62単位以上を取得した者
成績証明書
(大学3年次以上であることが確認できるもの)
(年次の記載がないものは大学3年次以上であること
が確認できる書類(年次の記載がある在籍証明書等)も必要
※大学3年次以上であることが確認できない
成績証明書が多いので注意してください。)
専修学校の専門課程
(①修業年限が2年以上かつ
②課程の修了に必要な総授業時数が1,700時間以上に限る。)
を修了した者等で、
社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
成績証明書
(卒業年月の記載がないものは卒業証明書も必要)
及び課程証明書
(当該専門課程が左欄の①及び②の要件を満たす
課程であることについて都道府県知事等が発行した
証明書を専修学校が原本証明したもの)
司法試験に合格した者 所管官庁の合格証明書
旧司法試験法の規定による司法試験の第二次試験
又は旧司法試験の第二次試験に合格した者
公認会計士試験短答式試験合格者
(平成18年度以降の合格者に限る。)
公認会計士・監査審査会会長発行の
「公認会計士試験短答式試験合格通知書」
又は「短答式試験合格証明書」
公認会計士試験短答式試験全科目免除者 公認会計士・監査審査会会長発行の
「公認会計士試験免除通知書」又は「免除証明書」
引用:受験資格について|国税庁

社会科学に属する科目とは?

「社会科学に属する科目」の例として、日本国憲法・民法・刑法などの法律学に関する科目や、経営学・財政学・会計学などの経済学に関する科目のほか、社会学、政治学、行政学など、文系・理系を問わず、多くの学生に履修の機会がある科目が挙げられます。

また、該当の科目が専門科目ではない「教養科目」や「共通科目」であった場合もその対象となります。

詳しくは以下の表を参考にしてください。

法律学に関する科目経済学に関する科目その他の科目
・法学
・法律概論
・日本国憲法
・民法
・刑法
・商法
・行政法
・労働法
・国際法 など
・(マクロ又はミクロ)経済学
・経営学
・経済原論
・経済政策
・経済学史
・財政学
・国際経済論
・金融論
・貿易論
・会計学
・簿記学
・商品学
・農業経済
・工業経済 など
・社会学
・政治学
・行政学
・政策学
・ビジネス学
・コミュニケーション学
・教育学
・福祉学
・心理学
・統計学 など
引用:受験資格について|国税庁

資格による受験資格

資格による受験資格には、日商簿記検定1級・全経簿記検定上級の合格者、または会計士補(2005年までの公認会計士試験合格者に与えられた資格)及び会計士補となる資格を持つ人が該当します。

受験申請時に気を付けたいのが、日商簿記検定1級と全経簿記検定上級の証明書類が、合格証書ではなく合格証明書であることです。間違えないように注意しましょう。

受験資格 提出する書面※いずれもコピー可
日本商工会議所主催
簿記検定試験1級合格者
日本商工会議所発行の合格証明書
(合格証書は不可)
公益社団法人全国経理教育協会主催
簿記能力検定試験上級合格者
(昭和58年度以降の合格者に限る。)
公益社団法人全国経理教育協会発行の合格証明書
(合格証書は不可)
会計士補 日本公認会計士協会発行の登録証明書
会計士補となる資格を有する者 公認会計士・監査審査会発行の
旧公認会計士試験第二次試験合格証明書
又は同試験の免除科目が全科目に及ぶことを証する書面
引用:受験資格について|国税庁

職歴による受験資格

職歴による受験資格については、下記の事務または業務に従事した期間が通算2年以上になる人が対象となります。

詳しくは下表を参考にしてください。

受験資格 提出する書面※いずれもコピー可
弁理士・司法書士・行政書士・社会保険労務士・不動産鑑定士の業務 登録証明書及び当該業務に2年以上従事したことを証する書面
(同業者2人以上の証明)
法人又は事業を営む個人の会計に関する事務 職歴証明書
税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助の事務
税務官公署における事務
又はその他の官公署における国税若しくは地方税に関する事務
行政機関における会計検査等に関する事務
銀行等における貸付け等に関する事務
引用:受験資格について|国税庁

認定による受験資格

学識・資格・職歴、いずれの受験資格に当てはまらない場合でも、国税審議会の個別認定を受けることにより、受験資格が認められることがあります。

例として、以下のような人が対象となります。

1 問11の「学識」に掲げる者と同等以上の学識を有すると認められる方(例えば、外国の大学を卒業した方で、社会科学に属する科目※を1科目以上履修している方(問23参照))。
2 問11の「職歴」に掲げる事務又は業務に類すると認められる事務又は業務(例えば、商工会や青色申告会における複式簿記による記帳(経理)及び決算指導の事務や信用金庫(組合)や協同組合における貸付審査事務)に、通算して2年以上従事した方(問24、25参照)。

引用:受験資格について|国税庁

受験資格の認定には、国税審議会会長宛に個別認定申請に関する書類の提出が必要です。

必要書類は以下の通りです。

1 税理士試験受験資格認定申請書(様式は、問26参照)
2 学識、職歴、事務又は業務の内容を証明する書面
3 郵便番号、住所及び氏名を明記し、所要額の切手(特定記録であれば280円、簡易書留であれば470円、書留であれば600円の切手)を貼ったA4判大の返信用封筒

引用:受験資格について|国税庁

税理士の受験資格の緩和となくなる要件について

近年、税理士試験の受験資格要件が大幅に緩和されました。この章では、緩和の時期や内容について解説していきます。

受験資格の緩和はいつから?

2023年(令和5年)4月1日以降に実施する第73回税理士試験から、受験資格の緩和が実施されました。

この背景には2022年度に行われた8年ぶりの、大幅な税理士法の改正があります。

受験資格の緩和でなくなる要件は?

受験資格の緩和で撤廃・緩和された要件は次の2つです。

  • 会計学に属する試験科目受験資格の撤廃
  • 税法に属する試験科目の受験資格の緩和

これにより、より多くの人に対して受験の機会が広がりました。

会計科目の受験資格要件の撤廃

会計科目である簿記論と財務諸表論が、受験資格不問により誰でも受験可能となりました。

従前は、高校生・大学1、2年生が受験するにあたり、日商簿記1級または全経簿記上級等の合格が必須でした。

税法科目の受験資格要件の緩和

これまでは大学・短大・高専卒業者・大学3年次以上で62単位取得者・一定の専修学校の専門課程修了者は、「法律学又は経済学に属する科目」を1科目以上履修していることが受験資格要件でした。

上記が緩和され「社会科学に属する科目」に拡大されたことで、文学部や理工学部の大学生・卒業生も受験可能となりました。

社会科学に属する科目とは、法律・経済・政治・行政・社会・経営・教育・福祉など、社会に関わる幅広い分野の科目を指します。

受験資格の緩和はなぜ行われた?

受験資格見直しの背景には、以下の2つの理由が考えられます。

  • 受験生減少による将来の人員不足
  • 社会の変化に応じた多様な人材が必要

税務に関する専門家として、個人・企業への納税のサポートを行い、国家財政の確保を担っている税理士は、社会的需要が高い職業です。

しかし少子化による受験生減少によって、受験者数は減少傾向となっています。受験資格の緩和は、今後の人員不足を回避するためです。

また税務業務だけではなく、納税者と信頼関係を結ぶことも税理士の重要な業務です。

近年の税理士業界では税務・会計の知識だけではなく、広い視野で社会と関われる見識や教養のある人材が求められています。

法学部・経済学部以外の学生・卒業生にも受験資格を与えることで、より多様な人材の確保を狙ったといえるでしょう。

税理士の受験資格がない人が受けるためには?

2023年税理士試験より、会計学に属する科目は誰でも受験可能ですが、税法に属する科目の受験には、前述した4つの受験資格のいずれかを満たさなくてはなりません。

税理士試験(税法に属する科目)の受験資格を持たない人が、できるだけ短期間で効率的に受験資格を得るために、以下の方法が挙げられます。

  • 税理士、弁護士、公認会計士などの事務所で補助業務に従事する
  • 日商簿記検定1級または全経簿記検定上級に合格する
  • 大学、短大、高等専門学校などで必要科目を履修する

それぞれ詳しく解説します。

税理士、弁護士、公認会計士などの事務所で補助業務に従事する

会計事務所や税理士法人などで税理士・弁護士・公認会計士等の補助業務に2年以上実務経験を積むことで、受験資格が得られます。

具体的に挙げると、税務書類作成(財務諸表作成事務等)・税務代理などのサポート業務となります。

2年以上の実務経験は、同一勤務先でなくても問題ありません。複数の勤務先で通算2年以上の「税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助の事務」経験があれば条件を満たします。

日商簿記検定1級または全経簿記検定上級に合格する

日商簿記検定1級または全経簿記検定上級に合格することで、受験資格が得られます。

どちらも難易度・希少性の高い資格ではありますが、取得することで税理士試験の受験資格が得られるだけでなく、キャリアアップ・チェンジにも有利になることでしょう。

大学、短大、高等専門学校などで必要科目を履修する

大学・短大・高等専門学校などで社会科学に属する科目を1科目以上履修し、卒業または必要単位数を修めることで、受験資格となる学識が得られます。

具体的には下記の条件のいずれかを満たすことで受験が可能となります。

  • 大学、短大又は高等専門学校を卒業し、社会科学に属する科目を1科目以上履修する
  • 大学3年次以上で社会科学に属する科目を含め62単位以上を取得する
  • 専修学校の専門課程(修業年限が2年以上かつ、課程の修了に必要な総授業時数が1,700時間以)を修了し、社会科学に属する科目を1科目以上履修する

税理士の受験資格は高卒でも満たせる?

3章でも述べた通り、大学・短大・専門学校等で必要科目を履修する、日商簿記検定1級または全経簿記検定上級に合格する等の学識・資格による受験資格を満たせば、高卒の方でも受験が可能です。

そのほか、公認会計士試験短答式試験の合格・行政機関における会計検査等に関する事務に2年以上従事など、職歴による受験資格もあるので、ご自身にとって無理のない、効率的な方法を選びましょう。

2023年度(令和5年・第73回)税理士試験結果(学歴別)によると、高校・旧中卒の受験生の合格率は23.8%。大学卒の受験生の合格率が21.1%となっています。

このことから、受験資格さえクリアすれば、学歴に左右されず税理士資格取得が可能であるといえるでしょう。

高卒から受験するなら資格・職歴がおすすめ

税理士試験では資格・職歴による受験資格が設けられているので、大学や短大に通わずに受験資格を満たすことも可能です。

そこでおすすめしたいのは「日商簿記1級または全教簿記検定上級の取得」または「税理士事務所や会計事務所での2年以上の補助業務」。

資格取得は働きながら取得することが可能ですし、補助業務は実務を学びながらの勤務が可能です。学びと収入を両立しながら受験資格を得られます。

税理士の受験資格についてよくある疑問|通信大学・放送大学でも可?など

ここでは、税理士試験の受験資格についてよくある疑問について解説します。

受験資格の学歴は通信大学や放送大学でも満たせる?

以下の履修科目を満たしていれば、通信大学や放送大学でも学識として認められます。

  • 通信大学・放送大学を卒業しており、かつ社会科学に属する科目を1科目以上履修している
  • 通信大学・放送大学3年次以上で、社会科学に属する科目を1科目以上含む62単位以上を取得している

他の大学と同じく、通信大学や放送大学で所定の単位を修得すれば、税理士試験の受験資格を取得できるのです。

税理士の受験資格に関する問い合わせ先は?

まずは、国税庁の税理士試験に関するページをよく確認しましょう。学識・資格・職歴による受験資格、受験資格の認定について詳しく掲載されています。

それでも解決しない場合、国税庁内の国税審議会での判断となります。事務担当は国税庁人事課となっていますので、下記リンクを参考に問い合わせを行ってください。

参考:よくあるご質問 – 日本税理士会連合会

税理士試験の受験資格を解説!まとめ

2023年の税理士試験より受験資格要件の緩和が実施され、会計学科目(簿記論と財務諸表論)は誰でも受験可能となりました。

また税法科目の受験資格の要件が、「社会科学に属する科目を1科目以上履修した者」になったことで、法律学・経済学部以外の大学生・卒業生も受験できるようになりました。

税法科目の受験資格についてのまとめは以下を参照ください。

学識による受験資格
・次の学歴で社会科学に属する科目を履修した者
 -大学・短大・高専卒業者
 -大学3年次以上で62単位取得者
 -一定の専修学校の専門課程修了者
・司法試験合格者
・公認会計士短答式試験合格者

資格による受験資格
・日商簿記1級または全経簿記上級合格者
・会計士補
・会計士補となる資格を有する者

職歴による受験資格
・2年以上の一定の会計・法律事務経験者

認定による受験資格
・国税審議会による個別認定が必要

上記の受験資格をどれか一つを満たせば、年齢・学歴を問わず税理士試験は受験可能です。

難易度が高い税理士試験ですが、合格科目の有効期限はなく生涯有効となりますので、時間をかけて資格取得を目指すこともできます。

税理士は独占業務企業や個人の税務・財務をサポートし、経済的な成功に貢献できるやりがいのある仕事です。

計画的に準備と学習を重ね、合格を目指していきましょう。

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