無線従事者資格を調べていると多くの資格があり、どれを取得すれば良いかよく解らないという場合があります。

このコラムでは、どの無線従事者資格(特に陸上系)を取得すれば良いのか解説いたします。

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無線従事者とは

無線従事者には23種類あります。

これらを大きく分類すると、総合無線従事者、陸上無線従事者、海上無線従事者、航空無線従事者、アマチュア無線従事者に分けることができます。

それぞれ、大まかには次のような資格です。

1 総合無線従事者

陸上・航空・海上における全ての無線設備を扱えます。

総合無線通信士の最上位である第一級総合無線通信士は、無線従事者資格の中で最難関の「通信操作」を行う資格です。

2 陸上無線従事者

陸上における無線設備の操作が可能となります。

陸上無線従事資格の中の最上位である第一級陸上無線技術士は、無線従事者資格の中で最難関の「技術操作」を行う資格です。

3 海上無線従事者

船舶に関する無線設備の操作が可能となります。

4 航空無線従事者

航空機に関する無線設備の操作が可能となります。

※無線における操作は、通信操作と技術操作に分かれます。通信操作は実際にモールス符号などにより実際に信号を送る操作のことです。技術操作は、無線設備の調整などの無線設備の操作です。

各資格の具体的な操作範囲は省きますが、操作範囲の包括関係は次のようになっています。

一陸技(第一級陸上無線技術士)とは

陸上無線技術士の操作範囲は次の通りとなっています。

資格 操作範囲
一陸技 1.無線設備の技術操作
2.第四級アマチュア無線技士の操作の範囲に属する操作
二陸技 1.次に掲げる無線設備の技術操作
イ 空中線電力2kW以下の無線設備(テレビジョン基幹放送局の無線設備を除く。)
ロ テレビジョン基幹放送局の空中線電力500W以下の無線設備
ハ レーダーでイに掲げるもの以外のもの
二 イ及びハ以外の無線航行局の無線設備で960MHz以上の周波数の電波を使用するもの
2.第四級アマチュア無線技士の操作の範囲に属する操作

なお、4アマの操作範囲は次の通りとなります。

資格 操作範囲
4アマ アマチュア無線局の無線設備で次に掲げるものの操作(モールス符号による通信操作を除く。)
1.空中線電力10W以下の無線設備で21MHzから30MHzまで又は8MHz以下の周波数を使用するもの
2.空中線電力20W以下の無線設備で30MHzを超える周波数の電波を使用するもの

陸上無線技術士を有していれば、1アマ~3アマの無線機の技術操作はできますが、モールス符号の通信操作が行えない都合で、4アマのみ包含しています。

この通り、一陸技をとれば全ての無線設備の技術操作が行えます。

また、陸技を有することで、次の資格を得ることができます。

資格 実務経験不要 要・実務経験
共通 ・登録点検事業者の点検員
・技術基準適合証明の登録証明機関の証明員
・無線従事者国家試験機関の試験員・登録周波数終了対策機関の給付金の交付決定者
・指定較正機関の較正員・甲種(特類を除く)消防設備士の受験要件
・社会保険労務士の受験要件
・職業訓練指導員 (電子科)の受験要件
・登録点検事業者の判定員
・無線従事者国家試験一部免除認定校の教員
・無線従事者養成課程の講師
・無線従事者認定講習課程の講師
・主任無線従事者講習の受講要件
・警察庁の一般職技術系職員(一陸技のみ。国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)で、面接のみとなる。)
・陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊の技術陸曹、海曹、空曹
一陸技 ・高等学校一種(工業)臨時免許状
・中学校二種(職業)臨時免許状
・高等学校一種(工業)免許状
・中学校二種(職業)免許状
二陸技 なし ・高等学校一種(工業)臨時免許状
・中学校二種(職業)臨時免許状

また、陸技を有することで、次の資格試験の免除を得ることができます。

資格 実務経験不要 要・実務経験
一陸技 ・一総通、二総通、一海通、二海通(工学の基礎、無線工学A、無線工学B)
・三総通(工学の基礎、無線工学)
・三海通、四海通、海特、航空通、航空特(無線工学)
・電気通信主任技術者の基礎・電気通信主任のシステム
・工事担任者の基礎・職業訓練指導員(電子科)(実技、系基礎学科、専攻学科)
なし
二陸技 ・一総通、一海通(工学の基礎)
・二総通、二海通(工学の基礎、無線工学A、無線工学B)
・三総通(工学の基礎、無線工学)
・三海通、四海通、海特、航空通、航空特(無線工学)
・電気通信主任技術者の基礎・電気通信主任のシステム
・工事担任者の基礎
・一陸技(工学の基礎、法規)

このとおり、陸上無線技術士はレベルが高いため、幅広く免除等が存在します。

また、大学院によっては、一陸技を有すれば大学卒業していなくても大学院入学資格となる場合があります。

一陸特(第一級陸上特殊無線技士)とは

陸上特殊無線技士の操作範囲は次の通りです。

資格 操作範囲
一陸特 1.陸上の無線局の空中線電力500W以下の多重無線設備(多重通信を行う事ができる無線設備でテレビジョンとして使用するものを含む。)で30MHz以上の周波数の電波を使用するものの技術操作
2.多重無線設備以外の操作で第二級陸上特殊無線技士の操作の範囲に属するもの
二陸特 1.次に掲げる無線設備の外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさないものの技術操作
イ 受信障害対策中継放送局及び特定市区町村放送局の無線設備
ロ 陸上の無線局の空中線電力10W以下の無線設備(多重無線設備を除く。)で1606.5kHzから4000kHzまでの周波数の電波を使用するもの
ハ 陸上の無線局のレーダーでロに掲げるもの以外のもの
二 陸上の無線局で人工衛星局の中継により無線通信を行うものの空中線電力50W以下の多重無線設備
2.第三級陸上特殊無線技士の操作の範囲に属する操作
三陸特 陸上の無線局の無線設備(レーダー及び人工衛星局の中継により無線通信を行う無線局の多重無線設備を除く。)で次に掲げるものの外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさないものの技術操作
1.空中線電力50W以下の無線設備で25010kHzから960MHzまでの周波数の電波を使用するもの
2.空中線電力100W以下の無線設備で1215MHz以上の周波数の電波を使用するもの
国内電信 陸上に開設する無線局(海岸局、海岸地球局、航空局及び航空地球局を除く。)の無線電信の国内通信のための通信操作

また、陸特を有することで、次の資格を得ることができます。

資格実務経験不要要・実務経験
共通・甲種(特類を除く)消防設備士の受験要件・主任無線従事者講習の受講要件
一陸特・登録点検事業者の点検員・登録点検事業者の判定員

このように、陸技に比べると難易度が低いため、できることも少なくなっています。

一陸技と一陸特の違い 仕事内容

陸上無線従事者の資格により具体的には次のような機器を操作できるようになります。

資格操作対象となる無線設備の概要
一陸技放送局(テレビ、ラジオ)、固定局、無線標識局などの無線設備
二陸技小・中規模放送局、航空用無線航行局などの無線設備
一陸特多重無線設備を使用した固定局などの無線設備
二陸特陸上移動系の無線局、VSAT(ハブ局)などの無線設備
三陸特タクシー無線の基地局などの無線設備
国内電信国内通信を行う固定局などの無線設備の無線電信による通信操作
出典:総務省電波利用ホームページ

そのため、仕事としてはおおよそ次のようになります。

<陸技>の仕事内容

  • 大規模無線局の無線従事者
  • 無線機の設計
  • 無線局の施工、保守、点検

<一陸特>

  • 無線局の施工、保守、点検

<二陸特・三陸特>

無線機を使うだけの資格なので、これにより行える仕事は殆どありません。

一陸技と一陸特の違い 試験内容

各種試験の内容は次のようになっています。

  一陸技 二陸技 一陸特 二陸特 三陸特
受験科目 法規無線工学の基礎
無線工学A
無線工学B
法規
無線工学
科目合格 あり なし
問題数 法規:20問
無線工学の基礎:25問
無線工学A: 25 問
無線工学B: 25 問
法規:12問
無線工学:24問
法規: 12 問
無線工学: 12 問
試験時間 法規:2時間
無線工学の基礎:2.5時間
無線工学A: 2.5 時間
無線工学B: 2.5 時間
3時間 1時間
合格点 各科目6割以上
試験方法 マークシート方式(CBTは選択方式)

基本的に陸上特殊無線技士と陸上無線技術士は全く異なる資格試験だと思って問題ありません。

一陸技と一陸特の違い 試験難易度

試験範囲

具体的な試験範囲は次のようになっています。

無線工学系

資格 試験範囲
一陸技 イ 無線工学の基礎
(1) 電気物理の詳細
(2) 電気回路の詳細
(3) 半導体及び電子管の詳細
(4) 電子回路の詳細
(5) 電気磁気測定の詳細
ロ 無線工学A
(1) 無線設備の理論、構造及び機能の詳細
(2) 無線設備のための測定機器の理論、構造及び機能の詳細
(3) 無線設備及び無線設備のための測定機器の保守及び運用の詳細
ハ 無線工学B
(1) 空中線系等の理論、構造及び機能の詳細
(2) 空中線系等のための測定機器の理論、構造及び機能の詳細
(3) 空中線系及び空中線系等のための測定機器の保守及び運用の詳細
二陸技 イ 無線工学の基礎
(1) 電気物理
(2) 電気回路
(3) 半導体及び電子管
(4) 電子回路
(5) 電気磁気測定
ロ 無線工学A
(1) 無線設備の理論、構造及び機能
(2) 無線設備のための測定機器の理論、構造及び機能
(3) 無線設備及び無線設備のための測定機器の保守及び運用
ハ 無線工学B
(1) 空中線系等の理論、構造及び機能
(2) 空中線系等のための測定機器の理論、構造及び機能
(3) 空中線系及び空中線系等のための測定機器の保守及び運用
一陸特 (1) 多重無線設備(空中線系を除く。以下この号において同じ。)の理論、構造及び機能の概要
(2) 空中線系等の理論、構造及び機能の概要
(3) 多重無線設備及び空中線系等のための測定機器の理論、構造及び機能の概要
(4) 多重無線設備及び空中線系並びに多重無線設備及び空中線系等のための測定機器の保守及び運用の概要
二陸特 無線設備の取扱方法(空中線系及び無線機器の機能の概念を含む。)
三陸特

法規

資格 試験範囲
一陸技 電波法及びこれに基づく命令の概要
二陸技
一陸特
二陸特 電波法及びこれに基づく命令の簡略な概要
三陸特

求められる知識

これらより以下のように理解してかまいません。

  • 一陸技・二陸技:無線に関する詳細な知識
  • 一陸特:多重無線設備を点検するための最低限の知識
  • 二陸特三陸特:無線の使い方

なお、「試験科目の試験の出題については、当該無線従事者の資格を有する者の行い、又はその監督を行うことができる無線設備の操作の範囲を考慮して行うものとする」とされており、同じ試験範囲であっても、上位の資格の方が難易度が上がります。

試験レベル

なお、試験のレベルは

  • 一陸技:大学工学部卒
  • 二陸技:工学系の短大卒
  • 一陸特:工業高校卒

となっています。

なお、いずれも「優秀な成績で」という前提です。

工学部卒でも一陸特が難しいという人も数多くいるぐらいです。

必要な勉強量・年数

勉強量としては、

  • 二陸特、三陸特⇒対策すれば取得可能
  • 一陸特⇒しっかり対策すれば取得可能
  • 一陸技、二陸技⇒複数年かけて徹底的に勉強すれば取得可能

という感じになります。

一陸技と一陸特の取得順

全く理系の知識の無い状態からであれば、

二陸特または三陸特⇒一陸特⇒一陸技

の順番をお勧めします。

理系の知識をある程度有しているのであれば、

一陸特⇒一陸技

でも取得することは可能です。

仕事で考えると、無線局の点検であれば一陸特で十分ですが、無線従事者として働くのであれば、一陸技を取得することをお勧めします。

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この記事の著者  橋爪 兼続 講師

橋爪 兼続 講師 講師紹介はこちら


【保有資格】
・第一級陸上無線技術士
・第一級海上無線通信士
・航空無線通信士
・第二級アマチュア無線技士

海上保安大学校卒業後、大型巡視船の主任通信士として通信業務に携わりました。
退職後、地場鉄道会社の子会社において、鉄道関連の無線設備の保守等に従事し、社内向けに第一級陸上特殊無線技士の取得講座を行っています。

その一方で、他社からの依頼により、第二級及び第三級陸上特殊無線技士並びに第三級及び第四級アマチュア無線技士の養成課程講師としても活動しています。

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