弁理士法人みなとみらい特許事務所の小西川 昂己様にインタビューを行いました。

現在の業務やスケジュール、今後の展望などについて詳しくお答えいただいています。

また、弁理士試験の特徴や資格勉強のアドバイスもいただきました。

これから弁理士を目指す方は、ぜひ参考にして下さい。

なぜ資格を取得しようと思ったのですか?

就活アドバイザーからの勧めもあり、特許事務所から内定を貰い、内定を貰ったタイミングで勉強を始めました。

事務所の方針として、日本一の特許事務所を目指していると聞いていたので、まずは弁理士試験に受からないと話にならないだろうと考えたことからモチベーションが生まれました。

また、学生時代から気象予報士や環境計量士(濃度関係)等の資格を趣味として取っており、資格勉強のノウハウがあったため、勉強することに抵抗がなかったのもすぐに始められた要因であったと思います。

主にどのような業務をされているのですか?

弁理士の主な業務は、①お客様のアイデアを聞き、②文書にまとめて権利という形にすることです。また、③権利を使う際や使われる際にお客様をサポートする役割もあります。

①アイデアを聞く段階では、権利取得の観点から見て必要な事項を聞き出します。
発明について、出願に必要な様々な質問を投げかけるのは、傍からみればインタビュワーのように見えるかもしれません。

②文書化する際には、その後に発生する特許庁とのやりとりやその後に発生しうる権利行使を見据えて作成します。
発明のポイントを確実に抑えながら、抜けや漏れがないように多角的な視点でものを見て言語化する必要があるので、特に神経を使います。
また、私が担当する機械や日用品の特許出願や意匠出願を行う際には、図面がほぼ必須なので、CADやグラフィックデザイン系のソフトを使って発明の内容を説明する図面を作成することも多いです。

③お客様サポートの際には弁理士試験等で学んだ法律知識を総動員して顧客に最善となる提案をします。
弁理士試験の二次試験(必須科目)で出題されるような相談を受けることはよくありますので、弁理士試験と実務は地続きになっていると言っていいと思います。

1日の簡単なスケジュールを教えて下さい

4時30分起床
ランニング・勉強等
8時30分出社・メールチェック
お客様からの質問に必要に応じて答える。
10時~12時特許庁から特許審査の結果が送られてくる。
お客様への報告をし、審査の結果が芳しくなかったときには、対応を考える。
12時~13時お昼休み
みなとみらいの景色を見ながら弁当を食べる。
13時~16時お客様の製品が権利侵害になるか否かや、特許出願の前にどのような技術があるかについて、特許文献の調査を行う。
16時~19時30分   調査結果をもとに、お客様に提案する特許出願の権利範囲を検討し、まとめる。
出願書類を作成。
19時30分退社
20時30分帰宅
22時30分就寝

仕事の魅力ややりがいを感じる時を教えて下さい

業種が異なる、様々な製品の開発に携われることが魅力であると思います。

通常の開発部とは異なり、便利グッズから家具、家電、エンジンに至るまで、様々な分野の製品開発に携わることができることや、その製品の開発者の話や思い、裏話を直接聞くことができることは魅力の一つです。

携わった製品が実際に販売されていたり、テレビで紹介されたりしたときには、妻に自慢しながらやりがいを感じています。

印象に残っている仕事・案件のエピソードがあれば教えて下さい

マットレスを販売しているお客様から「どうしてもこの製品の技術を権利化したい」との依頼がありました。

しかし、調査してみると既存の技術と大きな違いがないため、新規性の主張が難しい状況でした。

そこで、お客様は実際のマットレスを送ってくださり、その寝心地の良さを実物で確認できました。

また、実物を実際に目にして、お客様でさえ気が付かなかった(無意識で作っていた)特許権取得に有効に働く工夫点を見つけられました。この工夫点を出願書類に詳細に記載した結果、特許権を取得することができました。

さらに、その技術を用いた製品のクラウドファウンディングが行われ、「特許取得済」を銘打って販売したところそのサイトの週刊ランキングで一位になるという快挙を上げました。

後に、お客様から直接お礼のお電話をいただき、頑張りが報われたと感じました。

なぜ当事務所に所属をしようと考えたのですか?

大学生の時、就活アドバイザーに特許事務所の仕事が向いていると言われ、内容を調べたところ面白そうだと思ったからです。

職務開始後、最も苦労されたのはどのような部分ですか?

特許出願後、特許庁の審査官から、既に類似の技術があるから、権利化するために権利範囲を調整するように通知する書類(拒絶理由通知)が返ってきます。

この類似技術には英語の文献が挙げられていることがよくあり、読み解くのに最初は苦労しました。今は自分の実力に加え、AIの力もあるので、大きな苦労はありません。

他にも資格を所有されていらっしゃいますが、業務においてダブルライセンスであることの強みはございますか?

気象予報士の資格を持っていたことで、避雷針メーカーのお客様の信用を得られ、そこを起点に話が盛り上がったことがあります。

今後の展望等がありましたら教えて下さい

今後は、やはり当初の目標である日本一の弁理士を目指していこうかなと思います。

そのためには、法律制度だけではなく技術知識を絶えずアップデートし、その時できる最高の書類を絶えず書いていきたいと思います。

これから資格取得を目指している方へメッセージをお願いします

弁理士の仕事は、ものづくりに関わる仕事ではあるものの、仕事中に実際の製品に触れることはまれで、1日中パソコンに向かっている日が多いです。

また、あくまでもお客様のサポートを行う立場であり、自分が主体となって事業を動かすわけではありません。正直、向き、不向きは大きいと思います。

しかし、知的好奇心旺盛で想像力が豊かな方にとっては、その能力を最大限に生かせるこの上なく面白い仕事だと思いますので、是非資格の取得を目指してみてください。

具体的な試験のアドバイスとしては、弁理士試験は範囲が広く、覚えることも複雑です。一方、ほとんどの項目に理屈が立てられるので取り組みやすい部類だと思います。

資格試験の勉強方法全般に言えることですが、少なくとも自分が忘れる速度よりも1日の勉強量が上回らなければ合格はできません。

まずは、自分が忘れる速度を踏まえた一日の最低限の勉強量を定めてください。次に、その最低限の勉強量を基準に、自分の実力に合わせたちょっときついくらいのノルマを定めます。

自分の理解度に応じてノルマを柔軟に変えつつ、勉強を続けていれば必ず合格できます。

この記事の著者 弁理士法人みなとみらい特許事務所 小西川 昂己

2020年、東京海洋大学 大学院を卒業。

新卒でみなとみらい特許事務所に入所し、在職中に弁理士試験の勉強を始め、2022年度に合格。

好きな言葉は「案ずるより産むがやすし」だが、発明や意匠のことを、あれこれ案ずる日々を送っている。

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