介護福祉士の試験勉強をしている中で、「一度にすべての科目に合格しないと資格がとれないのは、正直つらい」と感じている方は多いのではないでしょうか。

実は、2026年1月に実施される試験から、仕組みに「パート合格」が導入されることになりました。

本コラムでは、パート合格制度の概要・開始される時期・導入される背景などについて詳しく解説します。

さらにパート合格制度のメリット・デメリットも紹介するため、ぜひ最後までご覧ください。

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介護福祉士国家試験のパート合格制度とは?

介護福祉士国家試験のパート合格制度とは、13の試験科目を3つのパートにわけ、パートごとの合格を認める制度です。

ここでは、パート合格制度の概要・試験科目の分割・受験方法・合格基準まで、わかりやすく解説します。

パート合格制度の概要

新たに導入されるパート合格制度とは、介護福祉士試験を3つのパートに分割し、それぞれのパートで合格点に達すれば「部分合格」として認められる仕組みです。

これまでの介護福祉士試験では、全13科目を一度に受験し、総合的に合格点を取らないと資格取得はできませんでした。

パートごとの合格制度の導入により、従来よりも資格取得への心理的・物理的負担が軽減され、段階的に合格を目指せる制度へと進化しています。

特に働きながら資格取得を目指す人や外国人の受験者にとって大きなメリットとなるでしょう。

なお、一度合格したパートは2年間有効となり、翌年または翌々年の試験で不合格だったパートのみを受験することが可能です。

つまり、1年で全科目に合格する必要がなくなり、最大3年間かけて着実に資格取得を目指せます。

パートごとの科目構成

パート合格制度では、介護福祉士国家試験の13科目が、下記のように3つのパートに分けられます。

【Aパート】

  • 人間の尊厳と自立
  • 介護の基本
  • 社会の理解
  • 人間関係のコミュニケーション
  • コミュニケーション技術
  • 生活支援技術

【Bパート】

  • こころとからだのしくみ
  • 発達と老化の理解
  • 認知症の理解
  • 障害の理解
  • 医療的ケア

【Cパート】

  • 介護過程
  • 総合問題

下記は、現行の試験時間割と、予定されている3分割の方法です。

▼現行

領域試験科目出題数
午前の試験人間と社会人間の尊厳と自立2
人間関係とコミュニケーション4
社会の理解12
こころとからだのしくみこころとからだのしくみ12
発達と老化の理解8
認知症の理解10
障害の理解10
医療的ケア5
午後の試験介護介護の基本10
コミュニケーション技術6
生活支援技術26
介護過程8
総合問題12
引用:介護福祉士国家試験におけるパート合格(合格パートの受験免除)の導入について

▼3分割

試験科目領域出題数
A人間の尊厳と自立2
介護の基本10
社会の理解12
人間関係とコミュニケーション4
コミュニケーション技術6
生活支援技術26
小計60
Bこころとからだのしくみ12
発達と老化の理解8
認知症の理解10
障害の理解10
医療的ケア5
小計45
C介護過程8
総合問題12
小計20
合計125
引用:介護福祉士国家試験におけるパート合格(合格パートの受験免除)の導入について

試験の運営方法

パート合格制度が導入されても、初回受験時は原則として導入前と同様に全パートを受験しなければなりません。

受験後は、仮に総合得点で不合格だった場合でも、各パートごとに合否が判定されます。

また、次回以降の受験では、「不合格だったパートのみを再受験」もしくは「再度全パートを一括で再受験」の2パターンから好きな方を選択できます。

なお、試験本番は、導入前と同様に1日で実施され、午前にAパート、午後にB・Cパートが実施される予定です。

全科目・パートごとの合格基準

全科目を受験した場合の合格基準は、従来と変わらず総得点の約60%以上が基本です。

ただし、問題の難易度によって多少調整される場合があります。

さらに合格するためには、すべての試験科目の分野で得点していることも必要です。

また、パートごとの合格基準に関しても、定められた一定の得点を満たさなければなりません。

各パートの合格基準は、全科目受験者の平均得点をもとに決定される予定です。

介護福祉士国家試験のパート合格はいつから始まる?

介護福祉士国家試験のパート合格制度は、第38回(令和7年度)の試験から実施されます。

また、第38回は制度導入後初めての試験のため、すべての受験者が全パートを受験することになります。

翌年の第39回(令和8年度)からは、パート合格している受験生は、不合格のパートのみを選んで再受験が可能です。

なぜパート合格制度が導入されるのか?背景と目的

パート合格制度が導入される背景と目的について解説します。

この制度が取り入れられる理由には、以下のような3つの大きなポイントがあります。

  • 介護業界で働く人材の確保と増強
  • 働きながらでも無理なく取り組める環境の整備
  • 多様な受験者が受験しやすくなる仕組みづくり

介護業界で働く人材の確保と増強

パート合格制度を導入する大きな目的は、介護業界で働く人材の確保と増強です。

日本は、世界でも有数のスピードで高齢化が進んでおり、今後ますます介護を必要とする人が増えていくと予想されています。

対して、介護現場では深刻な人手不足が続いており、このままの状況だと質の高い介護サービスを提供し続けることが難しくなるでしょう。

介護福祉士試験にパート合格制度を導入すれば、受験へのハードルや心理的負担を下げることができ、人材の裾野を広げられると期待されています。

より多くの人が資格取得を目指せる体制を整えることで、安定した介護提供体制の維持・強化につなげられます。

働きながらでも無理なく取り組める環境の整備

パート合格制度を活用すれば、働きながら受験する方も無理なく段階的な資格取得が可能です。

介護福祉士試験の受験者のおよそ8割は、実際に介護の現場で働きながら受験を目指す「実務経験ルート」の人たちです。

制度導入前は全13科目を一度に学び、全科目合格しなければ資格が取れないため、仕事と勉強の両立が大きな負担となっていました。

パート合格制度であれば、試験科目が3つのパートにわかれることに加え、合格したパートは2年間有効の部分合格として認められます。

そのため、最大3年間かけて資格取得を目指せることとなり、自分のペースで試験に挑戦できるようになりました。

試験勉強との両立がしやすく、心理的負担が軽減したことで、より多くの人が資格取得に対して前向きになれる制度となっています。

多様な受験者が受験しやすくなる仕組みづくり

パート合格制度を導入する目的のひとつに、外国人などを含む多様な受験者が受験しやすくなる仕組みづくりがあります。

人手不足が続く介護の現場では、外国人の就労者の割合が増加中です。

そのため、日本語能力に不安がある外国人受験者にとって、日本語の試験科目を一度に13科目こなすことは難しく、不合格の原因にもなっていました。

パート合格制度により、試験を長期的かつ段階的に進められることで、日本語に不安がある受験者でも確実に知識を身につけながら合格を目指せるでしょう。

外国人を含む多様なバックグラウンドをもつ人材がよりスムーズに資格を取得できるよう支援することで、介護現場の人材確保にもつながります。

パート合格制度のメリット・デメリット

次に、パート合格制度のメリット・デメリットを解説します。

パート合格制度のメリット

パート合格制度を導入する大きなメリットは、受験者の負担を軽減できることです。

試験科目が3つのパートにわかれることで、一度に全範囲を学ぶ必要がなくなり、学習の計画が立てやすくなります。

特に仕事と両立しながら受験する人にとっては、精神的・時間的な余裕が生まれるでしょう。

また、部分合格により受験を継続するモチベーション維持につながり、最終的に全パート合格に至る可能性が高まります。

さらに合格したパートは2年間有効であるため、努力が無駄にならず、段階的に資格取得が目指せる点も魅力です。

パート合格制度のデメリット

パート合格制度の導入により考えられるデメリットは、受験期間の長期化です。

各パートの合格を積み重ねる形式となるため、1回の試験で全科目に合格できなかった場合、資格取得までに複数年かかる可能性があります。

受験期間が長期化すると、「まだ時間がある」といった気の緩みから、学習の習慣やモチベーションを維持することが難しくなることもあるでしょう。

また、制度に頼りすぎると計画性をもたずに受験を繰り返してしまう恐れもあるため、受験する際には長期的な視点での受験計画が求められます。

介護福祉士国家試験  パート合格制度のQ&A

パート合格制度について、受験者からのよくある質問と回答を紹介します。

Q1. 2024年度(第37回)以前の試験で不合格だった場合、その時の成績はパート合格制度に引き継がれますか?

引き継がれません。

第37回以前の試験はパート合格制度が導入されていないため、過去の成績が部分的に合格として扱われることはありません。

制度の対象は、2025年度(第38回)以降の試験結果に限られます。

Q2. パートごとに合格率は公表されますか?

パートごとの合格率が公表される予定はありません。

従来と同じく、試験全体を通じて合格した人を対象として合格率のみが発表されます。

Q3. パート合格者は、介護福祉士として配置基準や報酬の算定に含まれますか?

パート合格の対象者は、配置基準や報酬の算定に含まれません。

パート合格は一部科目の通過を意味しますが、資格取得とは異なります。

すべてのパートに合格し、登録手続きを完了してはじめて介護福祉士として認められます。

Q4. 試験の運営方法(試験時間や日程)は変わりますか?

試験の基本的な運営方法は変わりません。

試験は従来通り1日で実施される予定で、午前にAパート、午後にB・Cパートが行われる予定です。

Q5. 受験手数料はパートごとに分割されますか?

現状では、パートごとの手数料設定はされておらず、従来どおりの受験料がかかる見込みです。

再受験の詳細は今後発表予定であり、不合格パートのみの再受験にも手数料がかかる可能性があります。

まとめ

本コラムでは、パート合格制度について詳しく解説しました。

以下、コラムの要点を振り返ります。

  • パート合格制度は、2025年度(第38回試験)から導入される新制度
  • 試験科目がA・B・Cの3つのパートにわけられ、それぞれのパートで合否判定される
  • 合格したパートは2年間有効で、次回以降は不合格パートのみ再受験できる
  • 制度導入の目的は、介護人材の確保・受験者の負担軽減・多様な受験者への配慮
  • メリット:学習負担・精神的負担の軽減・合格へのチャンスが広がる
  • デメリット:資格取得が長期化し、モチベーション維持が難しくなる可能性がある

パート合格制度は、これまで「一発合格」に大きなプレッシャーを感じていた多くの受験者にとって、まさに現実的なチャンスを広げてくれる制度です。

仕事や家庭と両立しながら、自分のペースで資格取得を目指せる点は、特に現場で働く人や外国人受験者にとって大きな支えとなるでしょう。

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