インテリアコーディネーター資格試験は、学科の一次試験とプレゼンテーションの二次試験からなります。

二次試験を突破することで、晴れてインテリアコーディネーターの資格を手にすることができます。

学科試験については、なんとなく想像できても、二次試験のプレゼンテーションとは、具体的にどんな試験なのか気になりますね。

この記事では、インテリアコーディネーター資格試験の二次試験について、試験の内容や、失敗しないための効率的な勉強方法などをお伝えします。

二次試験合格のポイントを把握して、試験突破を目指していきましょう。

インテリアコーディネーター 二次試験概要

インテリアコーディネーターの二次試験概要をご紹介します。

試験の概要や詳細は、インテリアコーディネーター資格を認定するインテリア産業協会のホームページで発表があります。

二次試験概要について

二次試験は、一次試験合格者を対象に、毎年12月に実施されます。

試験日12月第一日曜日(2023年度は12月3日(日))
試験時間180分
受験資格一次試験合格者
受験地北海道・岩手県・宮城県・群馬県・東京都・愛知県・石川県・大阪府・広島県・香川県・福岡県・沖縄県の全12地域

※試験会場の確保状況により、近隣の都府県に試験地を設定する場合があります。
※最終的な受験会場は、受験票で確認。

申し込みから二次試験受験の流れは下記の通りです。

全体の試験スケジュール

申込から二次試験の合格発表までは、下記のような流れです。

申込み一次試験一次発表二次試験二次発表
7月下旬~9月中旬~10月中旬11月下旬12月上旬2月中旬

受験タイプと受験料

二次試験は、一次試験の合格者のみが受験可能です。
一次試験合格の翌年から3年間は、一次試験が免除されるしくみです。
二次試験の申込には、3つのタイプがあります。

➀基本タイプ(一次試験+二次試験)※一次試験が不合格の場合、二次試験受験不可。14,800円(税込み)
②一次試験先取りタイプ(一次試験のみ)※一次試験のみ受験、同年の二次試験は受験不可。11,550円(税込み)
③二次試験タイプ(一次試験免除)※すでに一次試験に合格をしている場合。 11,550円(税込み)

二次試験科目について

二次試験の科目は、プレゼンテーションと論文(記述式)です。

いずれの科目も、インテリアコーディネーターとして、住まいを中心に依頼主のさまざまな要望を具現化していくことが必要です。
過去10年の間には、企業の研修施設など住まいではないインテリアコーディネートの提案もありましたが、基本である依頼主の要望の具現化は同じです。

ふたつの試験科目について詳しく解説していきます。

プレゼンテーションとは

プレゼンテーションでは、インテリアコーディネーターとして与えらえた条件のもと、依頼主の希望する空間を計画し、図面や仕上げ表を使って提案していきます。

与えられる条件の一例

  • 建物構造(木造やRCなど)
  • 家族構成(4人家族、一人暮らしなど)
  • インテリアの具体的な要望(家具の種類やカーテンなど)

条件や要望は、建物や家族構成、インテリアの好みや設置したい家具など、かなり具体的なものとなっています。

二次試験では、これらの条件を正確に読み取っていくことが大切なポイントとなります。

図面の種類

プレゼンテーションで課される図面には、下記のような種類があります。二次試験では、もっとも基本となる平面図と、いずれかの図面を組み合わせて出題されます。

平面図建築物を、床から1500mm程度の高さで水平に切り取り、真上から見た状態を図面化したもの。
壁、建具、家具の配置などのさまざまな情報を表せる。
展開図部屋の中央に立ち、四方に見える壁面の形状を描いた図。
平面図では描ききれない、建具や家具の高さ、コンセントの位置などを表現できる。
断面図建物を垂直面で切断した形状を表した図。
構造や下地と仕上材の関係など、断面の形状を表現できる。
パース図建物を人の目で見るのと同じように、遠近感をつけて立体的に表した図。
部屋の奥行き感を表現できる。
アイソメ図建物を、XYZ軸が120°になるよう立体的に表した図。
家具図家具を表した図。

平面図で計画の全体を表し、他の図面を組み合わせてプレゼンテーションを完成させます

例えば、平面図で描いた空間の一面を展開図として表し、設置する家具をアイソメ図で表すといった具合です。

一部の図面は、色鉛筆での着色も必要となります。

毎年、平面図以外は、どの図面が出題されるかは明らかになっていません過去の出題を参考に対策を立てる必要があります。

仕上げ表

仕上げ表は、素材の種類や寸法、特徴などをまとめた表です。各部屋の床や壁、天井の仕上げを、材料や品名などで表します。

部屋名天井
リビング無垢フローリング珪藻土塗りスギ羽目板

論文とは

論文は、与えられたテーマに対しての意見を550~600文字の文章でまとめます

インテリアコーディネーターとして問われたテーマを理解することはもちろんですが、提案を実現するための問題点や対処方法を示す判断力や提案力も必要とされます。

また、環境問題や高齢化対策など、昨今の時代背景と関連した出題もあります。
コロナ禍で行われた令和2年第38回の試験では論文のテーマが「住まいにおける空気汚染と自然換気」でした。
一見インテリアと関係ないように思えることでも、毎日の暮らし方に関わればインテリアコーディネーターの試験範囲になります

審査基準について

二次試験は、次のような審査基準が設けられています。

二次試験は、インテリアコーディネーターの業務を想定した試験です。そのため、審査基準は、インテリアコーディネーターとしての総合力が判断されます

【プレゼンテーションに関するもの】
・一次試験で得た基礎知識を元にできているか
・インテリア計画に関して基本的なコンセプトができているか
・図面による提案の実技能力が有されているか
【論文に関するもの】
・インテリア計画に関する課題や問題点を的確にとらえているか
・快適な住まいのコンサルティングにおける、理解力、判断力、表現力を備えているか

二次試験は難しい?その理由とは

インテリア産業協会の試験データでは、二次試験合格率は、55%〜60%で推移しています。

一見、高い合格率のように見えますが、これには二次試験に複数回挑戦している人も含まれます。

インテリアコーディネーターの二次試験合格は、そう簡単ではありません。

 二次試験が難しいと言われる理由

二次試験合格が難しいといわれる理由は、依頼主の要望を汲み取り、インテリアコーディネーターとしての提案力が求められる点です。

インテリアコーディネーターとしての実務経験がない受験者は、一次試験で得た知識を最大限に活用していかなければなりません。

この点は、できるだけ過去問題をさかのぼって演習し、経験値に変えていくことで克服していきましょう。

さらに、二次試験の難しさは、一次試験のように正誤がはっきり分からない点です。

答案を仕上げても、合格ラインに達しているのかどうか、個人で判断していると、気づかないミスをしている可能性もあります。

第三者に判断してもらえる環境をつくることも検討していくとよいでしょう。

プレゼンテーション試験の難しさ

プレゼンテーション試験は、インテリアコーディネーターが実務で行っていることの実践です。

経験が少ない受験者なら、難しく感じるのは当然のことでしょう。

合格を勝ち取るには、建物や依頼主の条件を正確に読み取る理解力、インテリアの基礎知識による判断力、図面を描く表現力など、さまざまな能力が必要となります。

論文の難しさ

論文の難しさのひとつは、文章を書くテクニックを習得することです。論文を書くためには、コツや法則があります。

さらに、論文を書くために必要なインテリアの基礎知識を養う必要があります。テーマに沿った内容を書くため、関連した事柄が思いつかないと文章をつなげることができません。

過去の出題テーマに目を通すことはもちろんですが、インテリアのトレンドや環境問題などの時事ネタにもアンテナを張って、情報収集をしておきましょう

このように、インテリアコーディネーターの二次試験は、総合的な能力が問われます。

二次試験の合格が難しいのは、短期間でこのような能力を身に付けることが簡単ではないからと言えます。

二次試験対策・勉強方法

二次試験は、プレゼンテーションと論文といった、ふたつの科目をこなさなければなりません。
それぞれの科目ごとに対策をとっていくことが必要です。どちらも過去問題を徹底的に実践することが大切です。

プレゼンテーションと論文、それぞれの勉強法をご紹介します。

プレゼンテーション

プレゼンテーションは、図面を描くスキルを身に付けることが基本です。まずは製図の練習をしましょう。

図面には決まった様式があり、下図の例のように線の太さや種類を使い分ける必要があります。単に線を描くだけでなく、図面のルールもしっかり頭にいれておきましょう。

【例~製図における線の種類~】

最初は、線の引き方や定規の使い方に慣れるため、線をたくさん描いてみましょう

【例~ダイニングセットの寸法~】

次に、インテリア計画に必要なダイニングテーブル、リビングボード、ソファなどのパーツを描く練習をします。
主要な家具の形状や寸法をあらかじめ把握しておくと、二次試験で出題があったときにも慌てずに対応することができます。

2人用テーブル900✕900   イス450✕450
4人用テーブル1350✕900  イス450✕450
6人用テーブル1800✕900  イス450✕450

ここまで練習できたら、いよいよ過去問題に取り組みます。

まずは、解答例をそのまま写していきます。

模範解答を写すことは、図面の練習になるだけでなく、出題された条件を図面にどう表現したらよいかを具体的にイメージできるようになります

その後は、過去問題を繰り返し演習していきます。

図面は、描けば描くほど慣れていき、どんどん上手になります。二次試験までには一枚でも多くの図面を仕上げていくように練習に励んでください。

論文

論文は、構成が大事です。

論文と聞いただけで苦手意識を持ってしまう人は、次のような構成を覚えておくと便利です。

ただ、ここ数年の論文の出題傾向は「箇条書き」または「3段落に分けて」という要求が続いています。

【論文の構成】

➀序論(全体の1割~2割程度) これから述べることの概要などを述べる。
②本論(全体の7割~8割程度) 序論の説明、問題点、解決法、その根拠などを順番に述べる。
③結論 (全体の1割~2割程度)まとめを述べる。

二次試験合格するためのポイント

二次試験合格のポイントを科目別にまとめます。

プレゼンテーション

プレゼンテーション合格のポイントは、図面を見栄えよく正確に仕上げることにつきます。

見やすい図面は、内容が正確に伝わるだけでなく、見た目の印象が良くなります。

色鉛筆の着彩は丁寧に行いましょう
配色としてのカラーコーディネーションも大事な要素となります。
持ち込める色鉛筆の本数は18本以内と制限されてるので、部屋を構成する仕上げの色をイメージして準備しておきましょう。

もちろん、条件に則ったプランを立てることが必須です。そのためには、与えられた条件をよく読み、プランとの整合性をチェックしながら仕上げていくことがポイントとなります。

論文

論文試験合格のポイントは、使用しなくてはいけない用語や、既定の文字数をしっかり守ることが大前提です。文末の表現(〜である調など)も統一します。

論文の基本構成となる➀序論②本論③結論といった流れを踏まえて内容をまとめます

本論には、テーマに沿って具体的な事例をいれると、内容豊かなものになります。

ネットや雑誌のコラムなどで、日頃からインテリアの情報を積極的に仕入れておくと役立ちます。

二次試験で落ちてしまう人にありがちなことは?

一次試験を突破しても、二次試験に失敗してしまう人には、いくつかの共通点があります。
よくある失敗例を時系列にまとめました。

試験前まで

二次試験の勉強を始めるのが遅い

ひとつめの失敗例は、二次試験の勉強を始める時期が遅くなってしまうことです。

一次試験の発表があってから、二次試験までの期間は約1か月です。1か月という期間は、初心者が手書き製図のスキルを身に付けるには短いと言えます。

実際に、二次試験の図面を描いてみると分かりますが、最初は時間内で描ききることはかなり難しいでしょう。

手描き製図のスキルは一朝一夕では身につきません。早めに勉強のスケジュールをたてて取り組んでいくことが大切です。

一次試験が終わった翌日には、二次試験の対策を開始する人が多いようです。
それでも学習できる時間が限られています。さらに合否が確定していない状況の学習ではモチベーションも上がりにくいです。

二次試験の勉強時間が少ない

ふたつめの失敗例は、二次試験の勉強時間が少ないということです。

たとえ早い時期から勉強を始めても、全体の勉強時間が少なければ、結局はスキルを身に付けることはできません。

二次試験の勉強時間は100時間〜150時間程度が目安です。

一次試験の合格で、つい油断してしまうことのないよう、勉強時間をしっかり確保しましょう。

試験当日

条件を見落としている

試験問題の条件を見落としている場合は、減点対象となります。

二次試験では、与えられた条件を余すことなく表現しなければいけません。
落ち着いて問題文をよく読み、条件を整理してから答案に取り組みましょう。

条件にないことをしている

二次試験のプレゼンテーションでは、条件にない余計な提案をしても意味がありません。条件に則った提案が合格への早道です。

試験時間の配分ミス

二次試験の試験時間は180分です。この時間内にプレゼンテーションと論文の両方をこなさなくてはなりません。

二次試験では、プレゼンテーションにかかりきりになってしまい、気が付くと論文の時間がとれなかったという失敗を耳にすることがあります。

個人差はありますが、プレゼンテーション150分、論文20分、見直し10分というように、時間配分を意識して答案を作成しましょう。

二次試験に失敗しないために 

インテリアコーディネーターは、二次試験の合格をもって資格取得となります。確実に二次試験を突破していきたいですね。

そのためには、二次試験の出題内容を把握して、合格のポイントを整理し、早めの対策をとっていくことが必要です。

ぜひ、これまでお伝えした勉強方法やポイント、失敗を防ぐために気を付けるべき内容を参考にしてみてください。

二次試験合格をお祈りしています!

この記事の監修者

虎岩 さおり 講師

インテリア小売業にて家具・カーテンの販売接客、VMD演出、法人デベロッパーへのモデルルームコーディネート提案、インテリア社内講師に従事。
その後ハウスメーカーで新築戸建・分譲住宅のインテリア提案、展示場の設営などを行う。


独立後は、エンドユーザーへの提案をはじめ、御殿場プレミアムアウトレット第四期増床工事内の飲食店舗のインテリアデザイン提案や、海外のクライアントのインテリアコーディネート・デザイン、街づくりの景観に携わるなど活動は多岐にわたる。


現在は虎岩インテリアデザイン事務所にてインテリアコーディネーター、インテリアデザイナーとして活躍している。

インテリアコーディネーター資格試験講座を見る