税理士として登録するためには、税理士試験に合格後、2年以上の実務経験が必要です。

税理士試験に合格した方や、税理士を志している方は、実務経験について詳しく知りたいのではないでしょうか。

事前に実務経験の概要を把握し、スムーズに登録したいですよね。

本コラムでは、税理士登録に必要な実務経験について解説します。

実務経験を積める勤務先の例や、2年間の現実なども紹介するため、ぜひ参考にしてください。

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税理士登録に必要な実務経験とは?

税理士として登録するためには、通算して2年以上の実務経験が必要です。

実務経験として認められる業務の内容は「租税に関する事務」または「会計に関する事務」となっています。

実務経験のタイミングは、税理士試験の合格前後を問いません。

例えば、税理士試験合格前に半年間の実務経験がある場合、合格後は1年半以上の実務経験を積めば良いことになります。

また、一定の要件を満たせば、アルバイトやパートといった非正規雇用での実務経験も対象となります。

なぜ2年の実務経験が必要なのか

2年間の実務経験が必要な理由は、業務に必要なスキルや、税理士に求められる倫理観・責任感を身に付けるためと考えられます。

税理士は税法の正確な運用を支える役割を担っているため、実務に即した判断力や対応力が必要です。

実務経験を通して、税に関する知識だけでなく、現実的な問題をスムーズに処理する力が身に付きます。

また、税理士の仕事では、クライアントの財産や税務にかかわる場面が多くあります。

実務経験の中で情報の取り扱いや職業倫理に関する意識を学び、信頼される専門家としての人格を育めるでしょう。

税理士の実務経験はどこで積める?

税理士の実務経験を積める環境の例は、以下の通りです。

  • 税理士事務所・会計事務所
  • 税理士法人
  • 企業の経理部門
  • 国税局・税務署
  • 地方公共団体

税理士事務所・会計事務所

税理士事務所や会計事務所は、実務経験を積む環境として最も一般的な選択肢といえます。

税理士事務所や会計事務所で勤務すれば、税務代理や申告書の作成補助、帳簿記帳、税務相談などの実務経験を積めます。

日々の仕訳業務や月次処理、決算業務などのさまざまな実務を経験できるでしょう。

また、専門分野をもつ事務所で勤務すれば、各分野に特化した経験が得られます。

資産税や国際税務、コンサルティングなど、自分が興味のある分野を取り扱う事務所を選ぶと良いでしょう。

税理士法人

税理士法人では、主に法人顧客を対象とした税務業務に携われます。

税理士法人は規模によって取り扱う業務が異なる場合があるため、自分に合った法人を選びましょう。

企業の経理部門

一般企業の経理部門では、税務申告書の作成や会計処理、決算業務などを通して実践的なスキルを身につけることができます。

ただし、単なる事務職や経理補助業務に従事する場合は実務経験として認められない場合があるため、注意が必要です。

法人税や消費税、源泉所得税などの申告業務に携われることを確認しておきましょう。

国税局・税務署

国税局や税務署といった税務官公署で税務に関する業務に従事した期間も、実務経験として認められます。

税務調査や申告指導などの業務を通して、税務の現場で必要な知識やスキルが身につくでしょう。

国税局や税務署のOBの方が税理士として登録する場合は、すでに実務経験を満たしている場合があるため確認してみましょう。

地方公共団体

市役所などの地方公共団体での税務関連業務でも、税理士登録に必要な実務経験を得られます。

市役所の税務課で勤務した場合や、固定資産税・住民税などの課税・徴収事務に携わった場合は、実務経験として認められるでしょう。

なお、実務経験として認められるかどうかは、実際に税務にかかわる業務に従事していたかが重要です。

勤務先や業務内容に関する証明書の提出が求められるため、いずれの場合も事前に条件などをよく確認しておきましょう。

実務経験として認められる業務・認められない業務

業務の内容によっては、税理士登録に必要な実務経験として認められない場合があります。

入力などの単純作業や、簿記や会計の知識がなくてもできる事務などに従事していた期間は、実務経験としてカウントされません。

以下に、実務経験として認められる業務、および認められない業務の具体例を紹介します。

実務経験として認められる業務

実務経験として認められる業務は、「租税に関する事務」および「会計に関する事務」と定められています。

以下のような業務に従事していれば、実務経験として認められるでしょう。

  • 簿記に基づく 取引仕訳・転記
  • 元帳整理・試算表作成
  • 決算手続き・財務諸表作成
  • 帳簿組織の立案・照合点検
  • 税務署・官公署での税務事務 など

実務経験として認められない業務

一方で、単純な事務作業や入出力などの業務は実務経験として認められません。

経理業務に携わっていても、以下のような業務に従事していた期間は実務経験から除外されるため注意しましょう。

  • 単なる会計ソフトへの入力
  • 電卓での単純計算
  • ファイリングや来客・電話対応
  • 税務判断を伴わない雑務 など

税理士登録での実務経験証明方法

ここでは、税理士登録における実務経験の証明方法、および必要書類について解説します。

実務経験証明のための必要書類

税理士登録に必要な実務経験を証明するためには、書類の提出が必要です。

実務経験証明のための必要書類は、以下の通り。

No.必須書類必要部数
【13】在職証明書(第2号様式)[PDF/61KB]1式
【14】在職証明書に係る印鑑登録証明書
【15】源泉徴収票又は確定申告書のコピー1式
引用:登録に必要な提出書類等 – 日本税理士会連合会

実務経験を満たしていることを証明するためには、勤務先の代表者によって証明された在職証明書が必要です。

指定のフォーマットがあるため、日本税理士会連合会の公式サイトよりダウンロードすると良いでしょう。

また、在職証明書に押印された印鑑の印鑑登録証明書も提出しなければなりません。

加えて、源泉徴収票または確定申告書のコピーも必要です。

在職証明書の内容を裏付けるための必要書類となるため、忘れず添付しましょう。

なお、勤務先の種類によっては、以下の書類の提出が求められる場合があります。

No.場合により提出する書類必要部数
【16】税理士事務所(税理士法人)と会計法人の関係について[PDF/64KB]1通
【17】職務概要説明書[PDF/57KB]必要数
【18】勤務時間の積上げ計算書[EXCEL/54KB]
勤務時間の積上げ計算書[PDF/180KB]
必要数
【19】大学院通学状況説明書[PDF/147KB]必要数
引用:登録に必要な提出書類等 – 日本税理士会連合会

証明が難しい場合の対処法は?

実務経験の証明が難しい場合も、いくつかの対処法があります。

例えば、勤務していた事務所が閉鎖された場合や証明者と連絡が取れない場合は、実務を知る第三者の証明で代替できる可能性があります。

連絡を取れる同僚や、別の上司に証明書の作成を依頼してみましょう。

また、具体的な業務内容の証明を得られない場合は、資料の添付によって証明が認められる場合があります。

業務日報やメール、申告書の作成記録など、税務に従事していた事実を客観的に確認できる資料を添付すると良いでしょう。

タイムカードなど勤務の実態を証明できる書類がない場合は、勤務日数や時間などを自己申告のうえ、資料として雇用契約書などを提出することも可能です。

このように、実務経験を証明できない事情は多岐にわたり、個々の事情に応じた対応が求められます。

実務経験の証明について不安がある方は、日本税理士会連合会へ相談しましょう。

税理士の実務経験2年の現実とは?

税理士の実務経験2年の現実は、決して簡単であるとはいえません。

一般的に、税理士になるための最大の関門は試験に合格することとされています。

そのため、「実務経験2年」という条件は簡単だと思っている方も多いでしょう。

実際のところ、税理士登録に必要な実務経験は通算できるため、ひとつの勤務先で2年間勤続する必要はありません。

勤務先の選択肢は一般企業の経理部門や税務署、会計事務所など幅広く、自分に合った環境を選択できます。

また、一定の条件を満たしていれば、アルバイトやパート、派遣社員として勤務していた期間を通算できます。

試験合格前に実務経験を満たしている方は、試験に合格してすぐに税理士として登録できる場合もあるでしょう。

しかし、業務内容や環境の厳しさは、勤務先によってさまざまです。

例えば、税理士事務所は激務になりがちであり、特に繁忙期は長時間労働を求められる場合があります。

試験勉強と実務経験を両立したいと考えている方は、勤務先の環境をよく確認する必要があるでしょう。

また、5科目合格者が実務経験を積むために就職すると、従業員の独立を警戒される場合も。

さらに、一般企業に経理事務として就職したものの、単純な事務作業しかさせてもらえず実務経験を積めないといったケースも見られます。

このように、税理士の実務経験に必要な2年間は、環境によって厳しいものとなる可能性があります。

自分のキャリアプランを定め、目的に合った働き方ができる勤務先を見つけましょう。

2年の実務経験を効率的に積むには?

効率的に2年の実務経験を積む方法は、以下の通りです。

  1. 実務経験が認められる職場を選ぶ
  2. フルタイムで働く
  3. 実務内容を記録しておく
  4. 幅広い業務にチャレンジする
  5. 環境が悪い場合は早めに見切る

1. 実務経験が認められる職場を選ぶ

効率よく実務経験を積むためには、適切な職場を選ぶことが重要です。

職場選びで迷った場合は、 会計事務所または税理士法人を優先すると良いでしょう。

会計事務所や税理士法人は、申告書作成や決算業務、記帳代行など、実務経験として認められる業務が豊富です。

また、税理士や会計士が所属している事務所は、実務経験の証明書類の発行に慣れている場合が多いと考えられます。

そのため、証明書類が必要な場合もスムーズに対応してもらえるでしょう。

 一般企業で勤務したい場合は、経理部門で申告業務に関与できる部署を選びましょう。

ただし、経理部門であっても、経費精算や伝票処理のみの業務は実務経験として認められない可能性が高いと考えられます。

法人税や消費税などの申告作業に携われるかどうかを確認しておきましょう。

 2. フルタイムで働く

フルタイムで働けば、効率的に実務経験を積めるでしょう。

アルバイトなどの短時間勤務で実務経験を満たすためには、実働時間の累計が2年分に達する必要があります。

つまり、1日あたりの勤務時間が短いと、その分必要な期間が長くなってしまいます。

フルタイム勤務であれば、在籍期間がそのまま実務経験の期間として認められるため、短時間勤務よりも早く実務経験を満たせるでしょう。

また、フルタイム勤務で多くの仕事を任せてもらえれば、成長のスピードも速くなる可能性があります。

3. 実務内容を記録しておく

効率的に実務経験を満たしたい場合は、客観的に証明できる形で実務内容を記録しておくと良いでしょう。

実務経験を証明するためには、証明書類の提出が必要です。

毎月どんな業務を行ったかを記録しておくと、証明書作成時に役立つ場合があります。

「法人決算:3社担当」「所得税申告:個人顧客10件」といった簡単なメモでも構わないため、控えておくようにしましょう。

また、上司や証明者との関係構築を心がければ、勤務先の証明が必要な書類の作成を依頼しやすくなるでしょう。

4. 幅広い業務にチャレンジする

幅広い業務にチャレンジすることも、実務経験の効率アップに役立ちます。

税理士登録に必要な実務経験では、業務内容と期間の両方を満たすことが重要です。

同じ経理事務に従事していても、入力作業だけでは実務経験として認められない可能性があります。

確定申告や年末調整、税務相談対応、修正申告など幅広い業務にかかわることで、着実に実務経験を積めるでしょう。

また、業務の幅を広げることで実務経験の質が向上する効果も期待できます。

5. 環境が悪い場合は早めに見切る

勤務先の環境が悪い場合は、早めに見切って次の職場へ移るという選択肢もあります。

「実務経験を満たし、税理士になる」という観点からは、教育体制が整っておらず、単純作業しか任せてもらえない環境は非効率です。

また、長時間労働に従事させられるばかりで経験を積めない環境や、証明書の記入を拒否される環境も不適切といえるでしょう。

実務経験は複数の職場の通算でも認められるため、転職も視野に入れつつ柔軟に対応しましょう。

まとめ

本コラムでは、税理士の実務経験について解説しました。

税理士として登録するためには、税理士試験に合格後、2年以上の実務経験を積む必要があります。

実務経験として認められる業務の内容は、「租税に関する事務」または「会計に関する事務」です。

実務経験として認められる業務の例は、以下の通り。

  • 簿記に基づく 取引仕訳・転記
  • 元帳整理・試算表作成
  • 決算手続き・財務諸表作成
  • 帳簿組織の立案・照合点検
  • 税務署・官公署での税務事務 など

一方で、以下の業務は実務経験として認められません。

  • 単なる会計ソフトへの入力
  • 電卓での単純計算
  • ファイリングや来客・電話対応
  • 税務判断を伴わない雑務 など

実務経験を積める勤務先は、税理士事務所や会計事務所、税理士法人、企業の経理部門など多岐にわたります。

また、国税局や税務署、地方公共団体などで税務に従事した期間も、実務経験として認められます。

税理士を目指している方は、自分に合った方法で実務経験の要件を満たしましょう。

税理士試験の合格を
目指している方へ

  • 税理士試験に合格できるか不安
  • 勉強をどう進めて良いかわからない
  • 勉強時間も費用も抑えたい

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