若い頃から税理士を目指す方の中には、

「税理士になるためには、どの大学・学部を選べばよいのか?」
「税理士を目指すなら大学生活は遊べないの?」

など、大学・学部選びや学生生活に疑問や不安を抱える方もいるのではないでしょうか。

本コラムでは、税理士を目指せる大学・学部の選び方について解説します。

また、在学中に税理士を目指すメリットも紹介。

資格取得と勉強の両立のコツ・卒業後のキャリアパスについても詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

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税理士試験の概要

まずは税理士試験の概要をご紹介します。

試験時期

税理士試験は年1回、例年8月上旬の火・水・木曜日の3日間にわたって実施されます。

2025(令和7)年度(第75回)の試験時期は、2025年8月5日(火)〜8月7日(木)です。

例年通り、全国の国税局・国営事務所などに設けられた会場で実施となります。

受験資格

税理士試験の科目は「会計学に属する科目」と「税法に属する科目」に分かれており、それぞれ受験資格も異なります。

会計学に属する科目(簿記論・財務諸表論)は受験資格の制限なし。誰でも受験可能です。

一方、税法に属する科目(所得税法・法人税法など)は、以下のいずれかの受験資格を満たす必要があります。

学識による受験資格

  • 大学・短大・高専卒で社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
  • 大学3年次以上かつ、社会科学科目を含む62単位以上取得した者
  • 一定の専修学校(2年以上・1700時間以上)修了者で社会科学科目を履修した者
  • 司法試験合格者
  • 公認会計士試験(短答式)合格者(平成18年度以降)

資格による受験資格

  • 日商簿記検定1級合格者
  • 全経簿記検定上級合格者(昭和58年度以降)

職歴による受験資格

  • 法人または個人事業主の会計業務に2年以上従事した者
  • 金融機関で貸付・運用業務に2年以上従事した者
  • 税理士・弁護士・公認会計士等の補助事務に2年以上従事した者

上記のいずれにも該当しない場合でも、国税審議会による個別認定を受けることで受験資格を得られる場合があります。

試験科目

税理士試験では、会計学に属する2科目と、税法に属する3科目の合計5科目に合格する必要があります。

会計学に属する科目は「簿記論」「財務諸表論」の2科目で、いずれも必須科目となります。

税法に属する科目は、所得税法・法人税法・相続税法・消費税法又は酒税法・国税徴収法・住民税又は事業税・固定資産税の9科目。

上記から、「所得税法」または「法人税法」のいずれか1科目以上を含む、3科目を選択します。

分野科目選択/必須
会計学・簿記論
・財務諸表論
必須
税法・所得税法
・法人税法
1科目以上の選択必須
・相続税法
・消費税法 又は 酒税法
・国税徴収法
・住民税 又は 事業税
・固定資産税
1~2科目を選択

なお、税理士試験では科目合格制となっているため、1回の試験で5科目すべてに合格する必要はありません。

1科目ずつ受験することも可能であり、合格した科目は生涯有効です。

合格基準

税理士試験合格には、会計学に属する2科目・税法に属する3科目の合計5科目に合格しなくてはなりません。

各科目の合格基準は、満点60%(60点以上)とされています。

ただし、実際の合格率などから鑑みると、絶対評価だけではなく相対評価の要素もあると推測されます。


税理士試験の受験資格や試験制度についてより詳しく知りたい方は、下記コラムをご覧ください。

関連コラム:税理士試験とは?科目や試験内容を詳しく解説!

税理士を目指せる学部とは?

試験科目と関連した学問を学ぶことができる、代表的な「税理士を目指せる学部」は次の4つです。

  • 商学部
  • 経営学部
  • 経済学部
  • 法学部

「税法に属する科目」の学識による受験資格に「大学・短大・高専卒で社会科学に属する科目を1科目以上履修した者」がありますが、この「社会科学」の対象範囲が2022年度の税制改正により拡大されました。

法律学・経済学に加え、社会学・政治学・ビジネス学・教育学・心理学なども該当するようになったことで、より多くの学部で受験資格を得やすくなっています。

商学部

企業の経済活動や会計、税務、生産管理などビジネスに直結する内容を実践的に学べます。

中でも会計学は税理士試験の必須科目のひとつ。これを体系的に学べる点は大きなメリットです。

企業のリアルなお金の流れを理解しながら学習できるため、税理士として働くイメージもしやすくなるでしょう。

経営学部

経済学部は、企業の「経営」や「マネジメント」にフォーカスした学部です。

簿記・会計の基本から応用、経済学や法学、社会学といった社会科学の基礎も学びます。

企業会計システムへの理解も深まるため、将来、税理士として企業の経理や財務にかかわる際に活かせるでしょう。

経済学部

社会全体の経済活動や人とお金の動き、経済思想などの理論を中心に学びます。

マクロ経済・ミクロ経済の理論に加えて、データ分析や統計的手法を身につけられる点が、税理士として働くうえでのメリットとなります。

また、税法科目の受験資格における「経済学」の履修に該当する可能性があります。

法学部

法律学や商法を含む基本六法、経営法学などを学びます。

税理士試験の税法科目は法律の一分野であるため、法学の基礎知識は税法科目の理解に役立ちます。

ただし、会計や簿記に関しては講義で扱われることはほとんどないでしょう。そのため、自主的な学習が必要になります。

税理士を目指すための大学の選び方

「税理士を目指すための退学の選び方」のポイントは次のとおりです。

  • 受験資格が得られる学部を選ぶ
  • 税理士の資格取得者が多い大学を検討する
  • 資格取得が単位になる大学を検討する
  • 大学院での科目免除を見据えた学部選び

各ポイントについて解説します。

受験資格が得られる学部を選ぶ

税法科目の受験には、「社会科学に属する科目を1科目以上履修している」など、学識による受験資格が必要です。

志望する大学・学部でこれらの単位が取得可能か確認しましょう。

なお、文学部や理工系学部でも、該当科目を履修すれば受験資格を満たせます。

税理士の資格取得者が多い大学を検討する

税理士試験の合格者を多く輩出している大学は、学習環境が整っている可能性が高いと考えられます。

大学の公式サイトで合格実績が公開されている場合もあるため、事前にチェックしてみましょう。

資格取得が単位になる大学を検討する

税理士試験の科目合格を、大学の単位として認める制度を導入している大学がいくつかあります。

資格と単位が同時に取得できる大学を選ぶことで、学習のモチベーション維持にも繋がるでしょう。

大学院での科目免除を見据えた学部選び

大学院で税法または会計学に属する分野を修了し、特定の要件を満たすことで、税理士試験の科目が免除される制度があります。

将来的に大学院進学を視野に入れる場合は、該当分野の研究ができる大学院に進みやすい学部を選ぶことも選択のひとつです。

大学院の科目免除の詳細については、下記コラムをご覧ください。

関連コラム:【税理士】大学院の科目免除制度とは?税法含む3科目の免除も!おすすめの選び方も解説

大学在学中に税理士を目指すメリット

大学在学中に税理士を目指すメリットは次の4つです。

  • 合格率が高い傾向にある
  • 勉強時間を確保しやすい
  • 卒業後の選択肢が広がる
  • 科目合格で社会人になってからの負担を軽減

それぞれの具体的な利点を紹介します。

合格率が高い傾向にある

過去の税理士試験結果を見ると、「大学在学中」の合格率がほかの学歴区分と比較して高い傾向にあります。

例えば、令和6年度では、26.2%と、大学卒(15.1%)や専門学校卒(12.6%)よりも高い結果が出ています。

さらに、令和2〜6年度すべてで、大学在学中の合格率がトップクラスであることから、有利な学習環境であることがうかがえるでしょう。

▼過去5回の試験の学歴別合格率(%)

大学卒大学在学中短大・旧専卒専門学校卒高校・旧中卒その他
令和6年度(第74回)15.126.29.612.621.636.0
令和5年度(第73回)21.130.513.616.423.832.7
令和4年度(第72回)18.629.813.817.922.142.0
令和3年度(第71回)17.731.114.316.122.543.5
令和2年度(第70回)19.332.617.316.823.842.2
参考:税理士試験|国税庁

勉強時間を確保しやすい

大学生は、社会人と比較して自由な時間を確保しやすく、学業と並行して税理士試験の勉強に集中できる環境があります。

夏季休暇や冬期休暇など、長期休暇を有効活用できることも強みです。

卒業後の選択肢が広がる

在学中に複数科目に合格していれば、就職活動でのアピールポイントとなります。

さらに、卒業後の実務経験期間を短縮できる可能性もあります。

在学中に科目合格しておくことは、早期キャリア形成につながるでしょう。

科目合格で社会人になってからの負担を軽減

仮に在学中に全科目に合格できなくても、一科目でも取得している科目があれば、社会人になってからの試験勉強の負担を減らせます。

在学中に科目合格をしておくことが、将来の自分を助けることに繋がるでしょう。

税理士を目指す大学生は遊べない?勉強と両立するためのポイント

税理士を目指していても、工夫次第で勉強と遊びは両立可能です。

ここでは税理士試験の勉強をしながら、学生生活を充実させるポイントを4つ紹介します。

  • 隙間時間の有効活用
  • 優先順位と計画の明確化
  • モチベーションの維持
  • 学外活動で得られる学び

隙間時間の有効活用

大学生活には、授業の間の空き時間や通学時間など、細かい隙間時間が意外と多くあります。

こうした時間を活かして、コツコツと勉強時間を積み重ねることが大切です。

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サポート体制が整っている講座を選べば、初学者でも安心して学べるでしょう。

優先順位と計画の明確化

勉強と遊びを両立するためには、「今、自分にとって何が大切か?」をしっかり考えて、やるべきことの優先順位を決めることが大切です。

年間や月間のスケジュールを立てて、あらかじめ勉強時間と遊ぶ時間の両方を確保しておくと、無理なく両立しやすいでしょう。

モチベーションの維持

税理士試験の勉強は長期戦となることが多いため、モチベーションを保つことがとても大切です。

目標を明確にしたり、勉強の成果を実感したり、同じ目標をもつ仲間と切磋琢磨しながら進めると、モチベーションを維持しやすいでしょう。

また、時には趣味や友人との交流でリフレッシュすることも必要です。

学外活動で得られる学び

大学では、サークル活動やゼミ、インターンシップなどに積極的に参加することも大切です。

こうした経験を通じて、税理士に必要なコミュニケーション能力や問題解決力などの素養が身につきます。

また、さまざまな人とかかわることで視野が広がり、多様な価値観に触れることができるでしょう。

税理士を目指す大学生のキャリアパス

税理士を目指す大学生の代表的なキャリアパスは以下の3つです。

  • 会計事務所・税理士法人
  • 一般企業の経理職
  • 金融機関・コンサルティングファーム

会計事務所・税理士法人

税理士の最も一般的な就職先であり、法人・個人の税務相談、税務申告業務、記帳代行などの税務・会計に関する実務経験を積むことができます。

在学中に税理士資格を取得した場合、規模の大きな税理士法人への就職も視野に入れられるでしょう。

一般企業の経理職

税理士資格は一般企業の経理部門でも活かすことができます。

財務諸表や税務申告書の作成業務に役立つため、会社の経営を内側から支える役割を担えるでしょう。

また、会社の内情やお金の動きを理解することで、将来的に経営層への昇進を目指せる可能性もあります。

金融機関・コンサルティングファーム

銀行や証券会社などの金融機関では、融資先の経営状況分析などに税務・会計の専門知識が欠かせません。

企業の財務データを正しく読み解く力が求められます。

また、コンサルティングファームでは、クライアントに対して税務の観点からアドバイスを行う税務コンサルティングが主な業務となります。

財務状況を分析し、節税対策や経営改善の提案ができる点が強みです。

まとめ

以上、税理士試験の概要や税理士を目指すための大学・学部選びについて解説し、勉強と遊びの両立法やキャリアパスなどを紹介しました。

本コラムの要点は以下のとおりです。

  • 税理士試験は年1回・8月上旬に3日間の日程で実施される
  • 税理士試験の合格には「会計学に属する科目(必須2科目)」と「税法に属する科目(選択3科目)」の計5科目の合格が必要
  • 科目合格制で合格した科目は生涯有効、一科目ずつ受験することも可能
  • 税理士を目指せる学部は「商学部」「経営学部」「経済学部」「法学部」の4つ
  • 大学の選び方のポイントは「受験資格が得られる学部がある」「税理士の資格取得者の実績」「資格取得が単位になる」「大学院での科目免除を見据えた学部の有無」の4つ
  • 大学在学中に税理士を目指すメリットは「合格率が高い」「勉強時間が確保しやすい」「卒業後の選択肢が広がる」「卒業後の勉強の負担軽減」の4つ
  • 勉強と遊びを両立させるポイントは「隙間時間の有効活用」「優先順位と計画の明確化」「モチベーション維持」「学外活動での学び」
  • 卒業後の代表的なキャリアパスは「会計事務所・税理士法人」「一般企業の経理職」「金融機関・コンサルティングファーム」の3つ

税理士試験は難易度が高く、長期戦になりやすいため、効率的に学ぶには通信講座の活用が効果的です。

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