これから大学進学を考える高校生にとって、必要な資格を知っておくことは非常に大切です。

特に海外大学の進学については情報を手に入れるのが難しいと感じている人も少なくないでしょう。

そこでこの記事では、国内・国外大学受験の、どのようなケースでIELTSが必要になるのか、またどのくらいのスコアが求められるのかを解説します。

目次

大学受験にIELTSは必要?受けられる優遇制度

まずは、高校生がIELTSのスコアを持つことによって国内大学受験の際に得られる主な優遇制度について紹介します。

出願資格の獲得

まず1つ目は、出願資格の獲得です。

大学が提示するスコア以上を取得することで、出願資格を得ることができます。

英語試験免除

2つ目の優遇は、英語試験の免除です。

入試科目のうち、IELTSの一定のスコアを保持することで英語試験を受ける必要がなくなります。

英語試験が免除されることで他の教科の勉強に集中ができるというメリットがあります。

総合得点に加算

3つ目の優遇が、入試の総合得点に加算されるケースです。

入試の当日に若干点数を落としてしまったとしても、IELTSのスコアが加算されるので合格につながる可能性もあります。

英語試験の点数に換算される

4つ目に受けられる優遇が、英語試験の点数への換算です。

IELTSのスコアに応じて英語試験の点数へ換算されます。こちらはあくまで換算なので、加算とは異なります。

つまり、IELTSである程度高いスコアを持っていない限りは、入試で英語試験を受けた方が良いでしょう。

判定優遇、合否参考

最後に、IELTSが判定優遇や合否参考に役立つことがあります。

これは、推薦入試などで合否に迷った際に、判定の参考にIELTSが用いられるケースです。

以上がIELTSを使って得られる優遇制度になります。

覚えておきたい点に、これらの優遇制度はIELTSに限られている訳ではなく、多くの大学がTOEFL®やTOEIC®も対象にしています。

そのため、IELTSでなければならないという訳ではないと覚えておきましょう。

高校生がIELTSを受験したほうが良いのはどんな時?

過去に複数回IELTSを受験している筆者も、初めての試験は高校生のときでした。

高校でIELTSを授業に取り入れているところは滅多に無く、わざわざ独学で学んでまで受験する必要があるのかと疑問に感じる高校生も少なくないはずです。

実際に受験をしてみて感じた、高校生がIELTSを受験した方が良い場合について紹介します。

英語が好き

まずは純粋に、英語が好きな場合はIELTSの受験を検討しても良いでしょう。

自分の好きなことが大学受験に活かすことができます。

IELTSはライティング・スピーキングを含めた4技能の試験です。

高校の授業はリスニングやリーディングに特化した授業が多いですが、IELTSのためにライティング・スピーキングを練習することで、英語の総合力を伸ばすことができます

英語が好きで、将来は英語を使って仕事をしたい、外国の友人を持ちたいといった目標がある場合、IELTSに挑戦してみるのがおすすめです。

留学を考えている

留学を検討している人はIELTSを受験し留学準備をしておくと良いでしょう。

IELTSは、世界のさまざまな教育機関で認められている試験です。

特にオーストラリアやイギリス、カナダへの留学を考えている場合、取得したIELTSをそのまま出願で活用できるかもしれません。

その際は期限は2年なので注意が必要です。

帰国子女受験

第4章で詳しく紹介しますが、帰国子女受験にIELTSを採用している大学も多く存在します。

そのため、帰国子女受験を検討している人は、IELTSを受験をしてみてどのくらいのスコアが取れるか事前に確認するのもおすすめです。

国内の大学や大学院でIELTSを利用する際の注意点

IELTSを大学受験で使うには、注意点がいくつかあります。

大学受験の英語とIELTSの試験の違い

国内の大学の多くは文法や読解力に焦点を当てており、逆にIELTSは実際に使える英語力を試す試験となっています。

大学受験の英語とIELTSの試験は大きく異なると考えましょう。

そのため、IELTSと大学受験の試験の準備を同時に進めていくことは、よほど時間に余裕がない限り困難になります。

最初から大学入試かIELTSか、選択肢を狭めてから勉強を進めていくことがおすすめです。

ジェネラルはほとんど使えない

国内の大学では基本的にアカデミックを使用する大学がほとんどです。

大学によってはジェネラルも受け入れている可能性もあるので、必ず志望大学と確認をしたのち、準備を進めましょう。

IELTSには「アカデミック・モジュール(以下アカデミック)」と「ジェネラル・モジュール(以下ジェネラル)」の2種類があります。

アカデミックは海外大学を含めた教育機関に出願する際に使用し、ジェネラルは就職や移住の際に用いる資格なのです。

各バンドスコアが必要な場合も

IELTSは、オーバーオールスコアと呼ばれる総合点の他、各4技能の点数が定められます。

多くの大学はオーバーオールスコアのみを基準としていますが、各スコアにも最低ラインを定めている教育機関があります。

その場合はオーバーオールスコアが足りていても、1つの技能でスコアを落としてしまっていれば出願できなくなってしまうので気をつけましょう。

大学にIELTSのスコアの結果をどうやって送れば良いのか

IELTSのスコアの結果の送り方は、各大学と確認をするようにしましょう。

注意したい点は、多くの大学がIELTSの成績表の原本のみ受け付けています。

コピーは受け付けてもらえない可能性があるので、必ず志望校数に足りるように成績表をもらうようにしましょう。

大学受験と大学院受験で必要スコアはどのように変わるのか

大学受験と大学院受験の必要スコアの違いは、各教育機関ごとに異なるので一概には言えません。

以下は、大学院で用いられているIELTSスコアの例です。

大学名受験形式学部IELTSスコア出願/換算
北海道大学修士課程入学試験機械系5.5出願
早稲田大学修士課程入学試験社会科学研究科5.5外国語試験免除

次の章で紹介するように、大学入試でも6.0以上を用いている大学は存在します。

そのため、IELTSの基準は大学受験の方が低い、大学院の方が高い、と考えるのではなく、各大学・大学院ごとに異なると考えましょう。

関連コラム:IELTSの目標別スコアの目安と必要な勉強時間

IELTS、TOEFL®、TOEIC®、英検での優遇制度や出願資格

多くの大学は、IELTSだけでなくTOEFL®やTOEIC®、英検を優遇条件に採用しています。

IELTSは英語の総合力が求められる試験であるため、なかなか点数が伸びずに悩んでしまう人も少なくありません。

すでにTOEIC®や英検の受験経験がある人は、TOEIC®や英検に集中した方が効率的に高得点を取得でき、大学の出願や優遇を受けることができるかもしれません。

一方で、次の章で紹介しますが、IELTS4.0〜5.0といった比較的達成しやすいスコアでも出願資格を受けられる大学が存在します。

志望校の定める各英語試験のスコアを確認した上で、達成できそうな試験を選び集中的に勉強を進めるのがおすすめです。

関連コラム;高校生の大学受験にTOEFL®は必要?国内・海外の出願資格に必要なスコアや優遇制度

【スコア別】大学入試でIELTSのスコアが利用できる大学

それではここで、実際にIELTSを入試の制度に取り入れている大学を紹介します。

大学の入試制度は変更になることがあるので、必ず公式のウェブサイトで事前に確認をするようにしましょう。

IELTS 4.0~を採用している大学・学部と制度

IELTS4.0を出願条件にしている大学は複数あります。

IELTS4.0は、TOEIC®に換算すると450点前後であり、高校生レベルの英語がきちんと身についていれば、比較的簡単に達成できるスコアでしょう。

大学名学部制度
芝浦工業大学全学部出願
東京理科大学全学部出願/加算
明治大学商学部出願
駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部加算

IELTS 4.5~を採用している大学・学部と制度

IELTS4.5以上を採用している大学は、以下の通りです。

大学名学部制度
中央大学文学部英語試験免除
学習院大学国際社会科学部加算
法政大学人間環境学部加算

IELTS 5.0~を採用している大学・学部と制度

IELTS5.0以上を採用している大学は以下の通りです。5.0を取得すれば、出願に使えるチャンスがぐっと上がります。

また、千葉大学の文学部や理学部は、5.0から5点加算、5.5なら10点加算と、スコアが高ければ高いほど加算点も上がるという制度を取り入れています。

大学名学部制度
千葉大学文学部・理学部加算
法政大学現代福祉学部・加算

IELTS 5.5~を採用している大学・学部と制度

IELTS5.5を採用している大学と学部は下の通りです。

IELTS5.5は、TOEIC®700〜800点ほどと言われており、難易度がぐっと上がります。その分出願だけでなく入試の総合点に加算をしてもらえる大学や学部が増えてきます。

大学名学部制度
法政大学法学部国際政治学科加算
専修大学英語学部加算
早稲田大学文学部出願

IELTS 6.5~を採用している大学・学部と制度

IELTS6.5以上を採用している大学と学部は下の通りです。

IELTS6.5以上は、TOEIC®940点前後で、英語の総合力が求められます。

早稲田大学の国際教養学部や南山大学など、英語に特化した学部が豊富な大学の優遇制度に採用されているスコアと考えて良いでしょう。

大学名学部制度
早稲田大学国際教養学部転部入学試験の出願資格
南山大学全学部加算

IELTS 7.0~を採用している大学・学部と制度

IELTS7.0以上を採用している大学と学部は下の通りです。

IELTS7.0以上はTOEIC®満点に近いスコアで、定めている大学や学部のレベルも高くなってきます。

大学名学部制度
法政大学グローバル教養学部加算
学習院大学国際社会科学部加算

帰国子女の大学受験の場合はどのくらいのスコアが必要?

帰国子女の大学受験で求められるスコアは大学によって異なりますが、一例を挙げると、東大早慶帰国子女入試の基準には、滞在歴が3年ほどの人はスコア6.5、5年以上の人は7.0以上と定められています。

日本の大学の帰国子女枠受験でも、IELTSを提出できる大学が増えてきています。

関連コラム:帰国子女の大学入試で必要なTOEFL®のスコアは?帰国子女の大学入試で必要なIELTSのスコアは?

海外大学を受験(留学)する際に必要なIELTSのスコアは?

ここでは、海外大学受験を視野に入れている高校生向けに、アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリアの大学進学に必要なIELTSのスコアを解説します。

アメリカ

アメリカの多くの大学は、入学までに指定されたIELTSを取得することで入学が許可される「条件付き入学」を採用しているので、出願の手続きが進めやすいという特徴があります。

一方で、さまざまな分野で最先端を誇るアメリカは、大学進学先としても人気があります。

オーストラリアやカナダの教育機関と比較すると、ややIELTSの基準が高くなっています。

アメリカの大学進学に必要なスコア

教育機関名大学進学に必要なスコア
マサチューセッツ工科大学7.0
シカゴ大学7.0
コロンビア大学7.0
ミシガン州立大学6.5

イギリス

イギリスの大学は国際的にも優れた評価を受けており、教育水準が高い分、入学基準もやや厳しい傾向にあります。

イギリスは英語の発祥の地として、英語を学ぶのに最適な国でもあります。イギリス大学進学を視野に入れている高校生は、英語の勉強を早めに始めましょう。

イギリスの大学進学に必要なスコア

教育機関名大学進学に必要なスコア
オックスフォード大学7.0
ケンブリッジ大学7.0
マンチェスター大学6.0
インペリアル・カレッジ・ロンドン7.0

カナダ

カナダは大学が定める入学基準もイギリスやアメリカと比較するとやや低く、入学を狙いやすい国です。

カナダは治安がよく過ごしやすい国として留学生に人気があります。大学卒業後に卒業ビザが発給されるので、そのまま移住できるチャンスも高くなります。

カナダの大学進学必要なスコア

教育機関名大学進学に必要なスコア
トロント大学6.5
ブリティッシュコロンビア大学6.5
マギル大学6.5
アルバータ大学6.5

オーストラリア

オーストラリアは入学基準もIELTS6.5を受け入れる大学が非常に多く、決して届かない目標ではありません。

移民の国とも呼ばれるオーストラリアは、様々な国から来た人々が住む国際的な国。その分留学生としても過ごしやすく、進学先として人気があります。

オーストラリアの大学進学に必要なスコア

教育機関名大学進学に必要なスコア
メルボルン大学7.0
オーストラリア国立大学6.5
シドニー大学6.5
アデレード大学6.5

海外大学に必要なIELTSのスコアを紹介しました。

海外大学の多くでは、準備コースや入学前に大学で勉強をできるディプロマコースなど、英語力が足りなくても勉学をスタートできる選択肢が準備されています。

英語力が足りない、と言う理由だけで諦めず、進学できる方法を探してみましょう。

関連コラム:留学するために必要なIELTSのスコアは?

高校生がIELTSで必要なスコアを達成するためには?

最後に、高校生がIELTSで必要なスコアを達成するために必要なことを紹介します。

実際に、IELTS5.0から8.0まで上げた筆者の体験を元にしています。

高校生がIELTSのスコア6を取るのは簡単?

結論から言うと、学ぶスピードが早い高校生が日本人の平均スコアを超えることは決して不可能ではないと言えます。

IELTSスコア6までは平均的な日本人の英語力で取得が可能であり、それ以上は英語の総合力を上げる必要が出てきます。

日本人がどのくらいのスコアを取得しているかを見てみましょう。

4以下44.555.566.577.588.59
0%2%6%17%25%23%15%8%3%1%0%0%
アカデミックのIELTSのスコア分布

2019年度の日本人のIELTSスコア分布は上の通りです。

5.5を取得する人が最も多く25%となっていますが、6を達成している人も23%と大差はありません。

逆に7.0以上になると一桁になってしまい、難易度が高くなります。

もちろん日本人の平均値は年齢に関わらず表示されているので一概には言えません。

関連コラム:IELTSのスコア別難易度と目標スコアをとるためには?

IELTSのスコア4の人がスコア6を取るまでにかかる勉強時間はどのくらい?

IELTSのスコアを4から6に上げるには、400〜1200時間もの準備期間が必要となります。

1200時間というと膨大な時間に感じますが、1日3時間を1年続ければ達成できる時間です。

一般的に言われていることですが、IELTSのオーバーオールを0.5上げるためには、100〜300時間の準備が必要と言われています。

ただ闇雲に時間を費やしても意味がないので、IELTSに特化した教材を使ったり、受験経験のある人にアドバイスをもらいながら勉強を進めていくと良いでしょう。

筆者は高校2年生の春にオーバーオール5.0を取得し、高校2年生の冬にオーバーオール6.0を達成しました。

この期間には、高校の英語の勉強に加え、毎週末にIELTSの過去問を時間を測りながら行い、SkypeでIELTSに特化したスピーキングレッスンを受けていました。

オーバーオールを1上げるのに半年ほどかかってしまいましたが、早めに準備を進めれば進学に間に合うことがわかりました。

関連コラム:IELTSの目標別スコアの目安と必要な勉強時間

大学受験の何ヶ月前までにスコアを取る必要があるのか?

IELTSの有効期限は2年間なので、理想的には大学受験の2年前(ギリギリ有効期限が切れない時点)で取得してしまうのが最善でしょう。

なぜ2年も前に取っておくのが理想的かというと、スコアを達成してしまえば、他の教科の勉強に集中することができるからです。

逆に優遇を受けるためにIELTSの勉強に集中しすぎると、入試の準備ができなくなってしまうので、早めの準備が大切です。

また、ギリギリで受験をする場合は、結果が届くまでに2週間ほどかかるという点も覚えておきましょう。

関連コラム:IELTSの結果はいつわかる?何ヶ月前に受験したら良いの?

大学受験にIELTSのスコアを活用したいならいつからIELTSの勉強をし始めたほうが良いのか

まずは一度IELTS対策をしてみて、早めに受験をしてみましょう。

必要なスコアが取れそうなら、受験から逆算して2年の時点で再受験をしましょう。

逆に必要なスコアが取れそうになければ、今すぐにIELTSの対策を始めた方が良いでしょう。

IELTSには試験独特の特徴やコツがあるので、OA6.0までは、勉強量でなんとかスコアを上げることができます。

早めにIELTSのコツを掴みながら英語力を底上げし、受験に間に合うように準備を進めましょう。

この記事の著者



 

橋本志保

高校卒業後、オーストラリアのGriffith大学に進学。国際観光学とホスピタリティを学び学位を取得し、卒業。
大学卒業後は外資系旅行会社に勤め、海外からのクライアントとの会話など、ビジネス英語を使う経験をする。
2021年にIELTS8.0を達成。
現在はカナダに移住し、英語学習のコーチング、翻訳や執筆業にも従事。

 

 


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