中小企業診断士試験を勉強されている方の中には、財務会計科目において簿記を勉強した方がいいのでは?と考える方もいるでしょう。

また、中小企業診断士資格取得後の活動を見据えて、簿記資格は必須なのではないかと不安になる方も少なくありません。

今回は、中小企業診断士資格と簿記資格、両方勉強するべきか?を解説していきます。

財務会計と企業経営理論の体験講義&テキストが今なら無料で!

1次1.97倍、2次1.98倍と、全国平均を上回る高い合格率!

1次2次の一括対策から2次試験に絞った過去問分析まで多様なラインナップ!

1分で簡単無料体験(会員登録→お申込み→視聴)

20日間無料で講義を体験!

中小企業診断士試験に簿記の知識は必要なのか

結論から述べますと、簿記の知識は中小企業診断士試験合格に大いに有効

一次試験であれば簿記2級レベル、二次試験であれば望ましいのは簿記1級レベル、少なくとも2級レベルがあれば有利になります。

以下でより具体的に解説していきます。

中小企業診断士試験の試験内容

一次試験及び二次試験で具体的にいかなる科目で簿記の知識が有効なのか、解説します。

一次試験で簿記の知識が有効な科目

まず、中小企業診断士試験の一次試験科目は、7科目です。

具体的には、以下の通り。

  • 経済学・経済政策
  • 財務・会計
  • 企業経営理論
  • 運営管理
  • 経営法務
  • 経営情報システム
  • 中小企業経営・政策

この7科目のうち、簿記の知識が有効な科目は「財務・会計」科目

出題内容は簿記原理、会計帳簿、決算処理一巡(試算表・精算表の作成、決算仕訳、貸借対照表・損益計算書の作成)です。

まさに簿記によって身につく財務諸表の読み取り、分析の知識が中小企業診断士試験の問題にも活用できます。

財務会計は一次試験7科目のうちの1科目分であるため、割合としてはさほど大きいとは言えません。

しかし、財務会計は時間さえかければ合格できるという性質の科目とは異なり、一次試験のポイントであるとも言えます。

そのため、強みにできた場合はとても有利になる科目と言えるでしょう。

※関連コラム:中小企業診断士試験を突破する財務会計の勉強法4つのポイント

二次試験で簿記の知識が有効な科目

二次試験の試験科目は4つの事例についての筆記試験ですので、4科目です。

具体的には、以下の通り。

  • 事例Ⅰ「組織・人事
  • 事例Ⅱ「マーケティング・流通」
  • 事例Ⅲ「生産・技術」
  • 事例Ⅳ「財務・会計」

このうち、簿記の知識が有効な科目は事例Ⅳ「財務・会計」

一次試験と同様に、財務諸表を読み取り、分析する能力が必須であり、簿記を学び、日商簿記に合格していればこの能力が身についているといえるため、大いに有利になります。

二次試験4科目のうちの1科目分であるため、簿記の知識を活用できる割合は大きいといえます。

また、二次試験は筆記の中でも実際に文書を作成することも求められるため、難易度が高いところ、簿記の知識があるのは大きな助けになるといえます。

中小企業診断士に必要な簿記のレベルは?

中小企業診断士試験において、会計関係知識が有効であることはわかりました。

しかしその一方、簿記資格がないと絶対に受からない、というわけではありません。

資格を取ることを目的とせず、資格取得後の活動に活かすという観点で、簿記の勉強は役に立つでしょう。

以下では簿記のそれぞれの級について、診断士試験にどう役立つかを見ていきます。

簿記3級と中小企業診断士について

東京商工会議所検定サイトにおいて、簿記3級は「すべてのビジネスパーソンに必須の基本知識が身に付いていることを多くの企業から評価されている。経理関連書類の読み取りができ、適切な処理を行えるようになる」とあります。

簿記3級は比較的難易度が低いとされており、簿記3級合格イコール中小企業診断士財務会計が合格できる、とはなりません。

一方で、中小企業診断士を受験する方の中には会計とは遠い業務をされている方も多くおり、財務会計に馴染みがない方も多くいます。

初学者の方が着手するのには中小企業診断士の財務会計はハードルが高いため、簿記3級レベルの知識習得を目指すことはひとつのステップとして検討の余地があると考えます。

特に中小企業診断士は必要勉強時間約1000時間と長い時間がかかるとされている点からも勉強途中で形になる成果を得ることはモチベーションの維持にも大いに役立つと言えるでしょう。

簿記2級と中小企業診断士について

同じく2級は「高度な商業簿記および工業簿記(原価計算を含む)を修得し、財務諸表を読む力がつき、企業の経営状況を把握できる。相手の経営状況もわかるので、企業の経営管理に役立つ。2級以上の合格者は 大学などの推薦入学に有利です。」とあります。

そのため、中小企業診断士財務会計受験時に大いに役に立つと言えるでしょう。

基本的な表の読み方が身についており、中小企業診断士の本質である企業の状況を把握することができるレベルです。

中小企業診断士一次試験は計算問題かつ選択問題であり、選択肢の中には財務諸表などから誤った状況把握をしたときに出る数値などが混ざっています。

簿記2級レベルの知識を身に着けておけば、一次試験を有利に進めることができるでしょう。

③簿記1級と中小企業診断士について

同じく1級は「公認会計士、税理士などの国家試験の登竜門。極めて高度な商業簿記、工業簿記、原価計算ならびに会計学を修得し、財務諸表規則や企業会計に関する法規を理解し、経営管理や経営分析ができる。1級の合格者は 税理士試験の受験資格が与えられます。」とあります。

簿記1級は合格率10%程度と資格そのものが難関資格です。加えて、税理士を目指す方が受験資格獲得のために取得される内容。

簿記1級を持つレベルになると中小企業診断士1次試験は余裕を持って合格点を取れるレベルでしょう。

必ずしも中小企業診断士合格に簿記1級は必須とは考えません。

しかし、二次試験では記述問題が出題されることなど、難易度が上がることを踏まえると、簿記1級を持っていることは大きな強みとなるでしょう。

中小企業診断士と簿記のダブルライセンスについて

中小企業診断士の活動の中に企業の財務分析がありますが、基本的に財務諸表を読み解く必要があります。

あくまでも企業の経営課題を解決するための財務分析であるため、税理士業務ができるレベル感である必要はありません。

ただし、中小企業診断士として信頼を得るためには、財務会計に関しても高い能力を持つことを知ってもらう必要があり、能力を知ってもらうために資格は大きな力を発揮します。

簿記2級は前述の通り、あくまでも「実務上の最低限の知識」といったレベル感であるため、「高い能力を持つことを知ってもらう」には至りにくいでしょう。

企業内診断士として活動する場合は、会社員という立場であることが多いです。

その際には資格保有者として認められますが、独立中小企業診断士として活動する場面では簿記2級を保有していることが、大きく影響するとは考えにくいです。

簿記1級は高度な財務分析ができるとされる資格レベルであることから、保有していることで高い能力を知ってもらうことができるでしょう。

財務を中心とした経営課題に対して期待され、中小企業診断士と簿記のダブルライセンスで活動する価値があると言えます。

※関連コラム:中小企業診断士のダブルライセンスにおすすめの資格を紹介

中小企業診断士と簿記はどちらを先に取得すべき?

結論的には、中小企業診断士と簿記どちらを先に取得するかは取得後の活動や自分が目指す方向性などによって決まります。

中小企業診断士は経営課題を解決するコンサルタントとして、財務会計を手段として学びます。

中小企業の経営課題は多岐に渡り、システムや法務といった領域も同様です。

財務会計は中小企業において重要ではありますが、そういった領域の中でも、あくまでひとつのものとして押さえておくべき科目。

簿記は財務諸表の作り方など、財務会計のプロとして財務会計を学ぶ方向性に合う資格。

その後のキャリアとして税理士や会計士といった会計の専門家として活動していくことを目指すことが可能です。

企業コンサルなどを目指してスキルアップを図る場合は、中小企業診断士を先に取得し、会計領域を中心に活動する専門家を目指すなら簿記を先に取得するといいでしょう。

なお、一つ注目点として、それぞれの資格の試験間隔があります。

中小企業診断士は原則1年に1回(1次試験1回、2次試験1回)開催される試験です。合格できなかった場合は翌年の受験まで時間があくことになります。

科目合格なども制度として存在し、1年後に再び中小企業診断士の勉強だけに専念するという方針もあります。

しかし、主に2月、6月、11月と、その年の中でも複数回受験可能である簿記試験に挑戦し、中小企業診断士試験が近づいてきたタイミングで再び中小企業診断士試験の勉強に切り替えるといった年間計画も検討の余地があります。

※関連コラム:2022年中小企業診断士試験の概要|試験日・申し込み方法も解説

中小企業診断士試験では簿記資格があると免除を受けられる?

中小企業診断士試験1次試験では、各科目において、受験者の保有資格に応じて科目免除となる場合があります。

財務会計が免除となる資格は「公認会計士、公認会計士試験合格者、会計士補、会計士補となる有資格者、税理士、税理士試験合格者、税理士試験免除者、弁護士または弁護士となる資格を有する者」とあります。

従って、簿記は1級を含めて「中小企業診断士の財務会計科目の免除を受けることはできない」ことになります。

なお、財務会計「以外」も含めた科目免除制度全般に関しては以下のコラムも参考になります。

※関連コラム:中小企業診断士1次試験の科目免除とは?対象になる資格や期限を解説

まとめ

いかがだったでしょうか。

中小企業診断士試験においても簿記の知識は役に立つということがわかりました。

特に、簿記2級以上であれば大いに有利に働くといえます。

中小企業診断士試験は一次試験、二次試験ともに試験科目が多いため、活用できる知識は大いに活用し、学習の負担を軽減することが大切です。

簿記について学んだことがある方や、簿記を取得している方はぜひ中小企業診断士試験にもチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

財務会計と企業経営理論の体験講義&テキストが今なら無料で!

1次1.97倍、2次1.98倍と、全国平均を上回る高い合格率!

1次2次の一括対策から2次試験に絞った過去問分析まで多様なラインナップ!

1分で簡単無料体験(会員登録→お申込み→視聴)

20日間無料で講義を体験!

この記事の執筆者:WebライターSouta

MBA/中小企業診断士、経営コンサルタント

金融業界のコンサルティングを長く経験。資格取得、投資、ファイナンシャルプランニングを得意とし、個人向けコンサルティングにも取り組んでいる。

現在は、Webライターとしての活動の幅も広げている。

アガルートの診断士講座を見る