今回は、競売不動産取扱主任者と宅建の関係性、競売不動産取扱主任者試験の受験前に宅建試験に合格しておくべきなのか、ということについて詳しく解説していきます。

競売不動産取扱主任者は、競売不動産の専門家としての知識、能力を証明する資格です。

試験の内容は競売不動産に特化したものですが、不動産を取り扱うことから、競売不動産取扱主任者と宅建資格は非常に近い関係にあります。

競売不動産取扱主任者と宅建資格の関係性は?

競売不動産取扱主任者と宅建にはどのような関係性があるのでしょうか。2つの資格は、登録要件や学習内容等、複数の面で深い関わりがあります。

  • 競売不動産取扱主任者登録は宅建合格者でないとできない
  • 競売不動産取扱主任者試験の受験者は宅建合格者が多い
  • 宅建を持っている方と競売不動産取扱主任者試験の受験難易度が下がる

順番に解説していきます。

競売不動産取扱主任者登録は宅建合格者でないとできない

競売不動産取扱主任者の登録のためには、宅建試験の合格が必須です。

競売不動産取扱主任者試験には受験資格がなく、誰でも試験を受けることができます。

しかし、競売不動産取扱主任者として活動をするためには合格後に主任者登録をする必要があり、主任者登録は宅建試験合格者でないと行うことができません。

競売不動産取扱主任者試験は、2011年の資格新設当初、受験資格として宅建合格者であることが要件となっていました。

しかし、この受験資格要件は2013年度試験から撤廃され、「宅建合格」は合格後の登録要件へと変更されています。

競売不動産取扱主任者資格制度の目的は、競売不動産に関する一定の知識と能力の証明をすることによって、一般消費者が安心して取引を行えるようになることです。

競売不動産取扱主任者は、競売不動産について的確なアドバイス・サポートをでき、トラブルを未然に防ぐことができる人材でなくてはならず、そのためには不動産全般に関する一定の知識も不可欠であり、知識の裏付け、担保として宅建試験の合格も要されるのです。

試験の合格は生涯有効で宅建合格後に登録も可能

競売不動産取扱主任者試験に合格した人は、「宅建試験に合格していない」ほか登録排除要件に当てはまらない限り、主任者登録講習を受講・修了により登録手続きを行うことができます。

主任者登録は任意で、試験合格のみで登録を行わない場合もあります。

また、合格後すぐに登録をしなければならないわけでもありません。

試験合格の効力は生涯消えることがないため、宅建試験に合格など、登録要件を満たした時点で、登録および主任者証の発行手続きをすることも可能です。

競売不動産取扱主任者試験の受験者は宅建合格者が多い

競売不動産取扱主任者試験の受験者には、宅建合格者が多くいます。

競売不動産取扱主任者試験の受験者は、不動産業界従事者のうち一般不動産に加えて競売不動産へのビジネスの拡大を目的としている人、業界内での他者との差別化、顧客の信頼獲得のために取得を志す人が多くいます。

不動産業界において基本となり、最も評価されるのは宅建資格のため、受験者層の多くが宅建資格を既に持っているのです。

また、不動産業界に直接的に従事していない場合も、宅建取得後のスキルアップ、知識の知見を広げる目的で取得をする人もいます。

合格をしても登録には宅建試験合格が必要であることも理由の一つに挙げられるでしょう。

宅建を持っていると競売不動産取扱主任者試験の受験難易度が下がる

競売不動産取扱主任者試験は、宅建試験との親和性があり、宅建合格者は試験の難易度が下がります

競売不動産取扱主任者試験の内容は、不動産競売の実務や民事執行法、民事訴訟法などの競売に関する法律知識が中心となります。

しかし、不動産を扱う上で一般的な不動産取引に関する知識は必須であり、民法や宅建業法、建築基準法などの宅建試験で取り扱う内容からも出題がなされます。

競売不動産取扱主任者試験の試験範囲である「不動産競売を理解する前提となる法律知識」及び、「競売不動産の移転、取得等に関する税金等」は宅建試験との重複範囲であり、試験問題の約3割程度がこの範囲からの出題です。

試験実施団体である(一社)不動産競売流通協会の公式サイトにおいても、直近の試験の合格者、または宅建試験で合格点に近い得点を取れる実力のある方は、宅建の学習に加えて20〜25時間程度の学習で合格圏に入ることができると明記されています。

一方、宅建等の前提知識のない場合は、不動産に関するある程度の学習が必要となります。

知識の習得にかかる時間は個人差がありますが、宅建未習の方は7月ごろから学習を始める方が良いでしょう。

宅建資格とのダブル受験もおすすめ

競売不動産取扱主任者と宅建試験は、双方を学習することによるメリットがあるため、ダブル受験もおすすめです。

一般的な不動産取引と競売不動産取引の違いや、一般債権者と差押債権者の違い等を通して、双方に関わる法律、実務への理解が深まり、効率よく学習を進めることができます。

宅建試験においても、宅建の難問とされる民法に関わる問題にも対応できる力が身に付きやすくなるでしょう。

2つの試験の合格後は、一般不動産に加えて競売不動産の知識を得て、幅広い市場での活躍が期待できます。

競売不動産取扱主任者を取得する前に宅建を取ったほうがいい?

競売不動産取扱主任者と宅建は近しい関係にあり、特に主任者登録をする場合は宅建試験の合格が必須となります。

競売不動産取扱主任者試験の受験者は、宅建の取得を優先させるべきなのでしょうか。

これは、競売不動産取扱主任者試験を受験する目的や、知識の習得度によって変わってきます。

目的別、知識レベル別に詳しく解説していきます。

業務において顧客からの信頼を得る目的ならば、宅建を先または同時に取得する方が良い

競売手続き代行業務や不動産関連業務を行う上で、顧客からの信頼を獲得する目的で競売不動産取扱主任者を受験する場合は、宅建を先に、またはダブル受験で同時に取得する方が良いでしょう。

競売不動産取扱主任者は登録をしなければ、主任者を名乗って活動をしたり、名刺等に記載することはできません。主任者登録には、宅建試験の合格が必要です。

もちろん受験のみでも、不動産競売についての知識が身につく等のメリットはありますが、顧客や取引先の信頼を獲得することが目的ならば、主任者を名乗り、知識の証明をしておきたいところです。

また、宅建を取得をすることによって、一般不動産についての確かな知識を身に着けることができます。一般不動産と競売不動産両方の知識を証明することで、不動産のプロフェッショナルとして、さらに信頼性は高まるでしょう。

キャリアアップ目的なら、宅建を先または同時に取得する方が良い

現在不動産業従事者で宅建を取得していない人、不動産業界への転職希望者や学生、新卒等でキャリアアップの目的で競売不動産取扱主任者の取得を考えている方は、宅建を先に、または同時の取得がおすすめです。

競売不動産市場はブルーオーシャンとも言われていて、非常に魅力的な市場ではありますが、一般不動産と比較して未だニッチな分野であることにはかわりありません。

独占業務や必置義務のある宅建資格の方が、不動産業界では需要があり、知名度も高いため評価されやすいでしょう。

一般的な不動産業界においては、宅建資格は圧倒的なメリットがあるため、他の資格の取得よりも優先すべきです。

しかし、競売不動産取扱主任者資格も取得すれば他者と差別化を図ることができたり、業務知識の証明になりキャリアアップや評価等も期待できたりする資格です。

宅建と競売不動産取扱主任者資格は試験内容に親和性もあるため、ダブル受験がおすすめです。

両方の資格取得によって、より飛躍的なキャリアアップが見込めるでしょう。

不動産競売の知識を得る目的で受験するならば、必ずしも宅建を取得する必要はない

一般消費者や投資家が、自ら競売不動産を購入する上で知識の獲得のために試験を受ける場合には、必ずしも宅建を取得する必要はありません

競売不動産取扱主任者試験は、競売不動産を専門に取り扱う唯一の資格です。

試験内容も入札から落札、明け渡しに至るまで必要な知識を網羅的に問う問題になっているため、試験対策をすることで、不動産競売の基礎的な部分を体系的に学習することができるでしょう。

価格が安いなどのメリットの多い一方で、リスクもある競売不動産に関して、一般消費者や投資家が損をしないためにも、ぜひ学んでおきたい内容です。

ただし、一般消費者や投資家が主任者登録までする必要があるかというと、そこまでは言えない面があります。

登録をすると講習や主任者限定セミナー等でより深い知識を得ることはできますが、内容が一般消費者各個人のニーズに適するものかどうかはわからないためです。

主任者を名乗る必要もない一般消費者や投資家の方は、試験勉強を通した学習をした上で、各個人の目的に合わせた自主学習を進めていく方が、必要な知識が身につき効率的である場合が多いでしょう。

前提知識がない場合は、宅建を先または同時に取得する方が良い

不動産について前提知識がない場合は、宅建を先に取得、またはダブルで学習を進めていった方が効率的な場合があります。

競売不動産取扱主任者試験は、宅建合格の知識に加えて20〜25時間程度の学習の上乗せで合格圏に入ることができると言われています。

試験内容の重複箇所もあり、また競売不動産と一般不動産の違いを意識することで、理解がより深まっていくためです。

また、宅建は不動産取引の専門家として各不動産資格の根幹にもなる資格です。

宅建の学習を通して、不動産に関する基礎的かつ重要な知識を得ることができるでしょう。

前提知識が乏しい場合は、競売不動産取扱主任者試験よりも先に、または同時に宅建の学習を進めていく方がおすすめです。

不動産競売について一定以上知識がある場合は、無理に宅建を優先させる必要はない

不動産競売についての知識が一定以上ある場合は、無理に宅建取得を優先する必要はありません

競売不動産取扱主任者試験は、宅建との親和性もありますが、あくまで民事執行法や民事訴訟法などの不動産競売に関わる実務、関連する法律がメインの資格です。

宅建の知識があれば有利にはなりますが、前提として必ずしも知識を得ている必要はなく、あくまでも持っていれば学習が容易になるというレベルです。

宅建の学習範囲は広く、競売不動産取扱主任者試験と重複しない部分ももちろん沢山あります。細かな点を問われることもあり、簡単な試験とは言えません。

競売不動産取扱主任者試験の学習範囲は限られているので、既にある程度知識がある場合は、競売不動産取扱主任者試験に集中して学習した方が効率的な場合もあります。