競売不動産取扱主任者は、2011年から実施されている比較的新しい資格です。

民間資格であることに加え、不動産競売という専門知識を扱うために、一般的に試験の情報があまり出回っていないという特徴があります。

そういった中で試験の難易度や対策法を知るには、合格率が重要な手がかりになります。

今回は、競売不動産取扱主任者の合格率から試験のカギとなる部分の解説に加えて、他の不動産資格を持っている場合に有利にはなるかどうかという点について解説していきます。

競売不動産取扱主任者試験の受験をお考えの方は、ぜひチェックしてみてください。

競売不動産取扱主任者試験の合格率と推移

競売不動産取扱主任者の合格率は30%〜40%ほどで、2023年度の合格率は34.4%です。

2019年度以降は合格率が30%台と、それ以前と比べて10ポイントほど合格率を下げています。

実施年度 受験者数 合格者数 合格率 合格点
2023年度
(第13回)
1,336人 459人 34.4%

33

2022年度
(第12回)
1,460人 444人 30.4% 32点
2021年度
(第11回)
1,452人 479人 33% 非公開
2020年度
(第10回)
1,513人 459人 30.3% 35点
2019年度
(第9回)
1,755人 547人 31.2% 31点
2018年度
(第8回)
1,958人 792人 40.4% 34点
2017年度
(第7回)
2,201人 890人 40.4% 32点
2016年度
(第6回)
1,985人 759人 38.2% 30点
2015年度
(第5回)
1,922人 736人 38.3% 30点
2014年度
(第4回)
2,002人 747人 37.3% 31点
2013年度
(第3回)
1,949人 799人 40.9% 31点
2012年度
(第2回)
1,655人 701人 42.3% 35点
2011年度
(初回)
1,065人 448人 42.0% 公表なし

近年の合格率は30%台

競売不動産取扱主任者は、2011年度の初回試験から2018年度まで合格率は40%前後でした。

しかし、2019年度からの合格率は約30%台に下がっています。

競売不動産取扱主任者試験は「何点を取れば合格とする」という絶対評価の試験ではなく、合格は全体の得点率や問題の難易度をみて相対的に評価され決まります。

2019年度以降は問題の難易度が上がり、合格率も抑えられていると考えられます。

試験実施団体である不動産競売流通協会の公式サイトでも、「合格率は30〜35%が一応の目安」とされているため、今後も30%ほどの合格率のまま推移していく可能性が高いでしょう。

簡単な試験といわれることもありますが、近年ではそこまで受かりやすい試験ではないといえます。

合格得点率は60~70%

競売不動産取扱主任者試験は50問出題されます。

合格点が公表されている年の最高点は35点のため、6割では安心できず、7割の正答率が必要です。

参考:2023年度の最年少合格者は22歳、最年長は78歳、平均年齢は46.6歳

2023年の競売不動産取扱主任者試験の最年少合格者は22歳、最年長は78歳、平均年齢は46.6歳でした。

競売不動産取扱主任者試験は、不動産業界関係者の受験が多く、合格者の約半数を占めています。

業界の中でも競売不動産に携わる実務者や、ビジネスの幅を広げたい不動産営業担当者等の受験が中心になるため、ビジネスパーソンが多く平均年齢が高い傾向にあります。

競売不動産取扱主任者試験の合格率が「高め」な理由

競売不動産取扱主任者は宅建や、管理業務主任者、マンション管理士などの他の不動産資格と比較して、合格率が高く、易しい試験だと言われています。

2018年度までは合格率が40%前後であったため、資格全体としても決して合格率が「低い」とは言えず、取りやすい資格と認識されています。

どうして合格率は低くなく「高め」なのでしょうか。その理由を見ていきましょう。

合格率が高めな理由1 受験者に宅建合格者・実務者が多い

競売不動産取扱主任者の受験者には宅建合格者、または実務者が多いために、合格率が高めになっています。

競売不動産取扱主任者試験は、かつては宅建の合格者であることが受験資格となっていました。

受験資格が撤廃された現在でも、主任者登録には宅建試験の合格が必要であり、また不動産業界関係者の受験が多いため、受験者には宅建合格者が多くいます。(2018年度の合格者の宅建士保有割合は79%でした)

さらに、競売不動産取扱主任者試験は、公式サイトによると「宅建合格者は宅建の知識に加えて20〜25時間の対策で合格が可能」と謳われています。

そのため、宅建合格者がキャリアアップのために意欲的に受験するケースも多いでしょう。

不動産業の受験者が4割未満の宅建と比較し、ある程度知識がある層が受験。

かつ仕事に活かそうという意欲的な実務者が多いため、競売不動取扱主任者試験の合格率は高くなっています。

合格率が高めな理由2 実際の出題範囲はそう広くない

競売不動産取扱主任者試験の試験範囲は、不動産競売手続きに関する基礎知識から、競売を理解する上で必要な前提知識として、民法、民事執行法、建築基準法などの法律、登録免許税、不動産取得税などの税に関する知識など、広い分野から出題されます。

これだけの分野を全て勉強するのは大変ですが、出題は「不動産競売手続きに関する基礎知識」「不動産法理論と実務」の分野を中心になされるので、競売についての知識を重点的に学習することで試験対策は可能です。

多少難易度が上がったここ数年でも、得点率60〜70%ほどで合格できるので、細かい点まで完璧に覚える必要はありません。

公式テキストを中心に、対策をしっかりとしていけば合格しやすい試験だといえます。

合格率が高めな理由3 公式テキストと試験対策講座がある

競売不動産取扱主任者試験には、公式テキストと問題集、試験実施団体の不動産競売流通協会主催の試験対策講座があります。

公式のテキストとは、文字通り試験のもととなるテキストです。公式テキストの内容を完璧に学習すれば、試験に合格する実力を身に着けることができます。

「簡単な試験」という印象が強く、勉強量が少ない人も多数いるため、テキストに準じてコツコツと勉強をするだけでも合格の可能性は高くなるでしょう。

さらに試験対策講座を受講してしっかりと対策をすると、自信を持って受験することができます。

最近では資格予備校、通信講座でも対策講座が設けられており、自分に合った学習法の選択肢が増えてきています。

他不動産資格を持っていると難易度は下がる?

不動産関連の資格にはさまざまなものがあります。

宅建や賃貸不動産経営管理士といった他資格を持っていると、競売不動産取扱主任者試験の難易度は下がるのでしょうか。

まずは、不動産系資格試験の合格率をチェックしていきます。

年度競売不動産取扱主任者宅地建物取引士マンション管理士管理業務主任者賃貸不動産経営管理士
2023年34.4%17.2%10.1%21.9%27.9%
2022年30.4%17%11.5%18.9%27.7%
2021年33%15.6%9.9%19.4%31.5%
2020年30.3%17.9%8.6%23.9%29.8%
2019年31.2%13.1%8.2%23.2%36.8%
2018年40.4%17.6%7.9%21.7%50.7%
2017年40.4%15.6%9.0%21.7%48.3%
2016年38.2%15.6%8.0%22.5%55.9%
2015年38.3%15.4%8.2%23.8%54.6%

不動産資格で最もメジャーな資格である宅建士の合格率は、おおむね15〜17%で推移しています。

マンション管理士は宅建を基準とすると難易度が高く、合格率も低くなります。

管理業務主任者は、宅建、マンション管理士とともに不動産の三冠資格と呼ばれていますが、難易度は宅建と同程度かやや易しい程度。

三冠資格の出題範囲は、民法、区分所有法、借地借家法、不動産登記法、宅建業法、土地計画法、建築基準法が重複しているため、1つの勉強をすると他資格の試験対策がとりやすく、ダブル受験・トリプル受験をする人もいます。

賃貸不動産経営管理士はこの中では難易度が低く、取りやすい資格と言われていましたが、直近3年間は合格率が30%前後に下がり、難化傾向です。

さらに2021年(令和3年度)より国家試験化されたことに伴い、試験の問題数、試験時間も変更されたため、合格率が下がり難化されることが予想されています。

宅建資格合格者だと難易度は下がる

競売不動産取扱主任者試験は、不動産の基礎知識に加え、民法、借地借家法、建築基準法などの宅建の出題範囲と重複した法律知識が出題されるため、宅建の合格者であることは試験を受ける上でプラスになります。

しかし、出題の中心となるのは不動産競売手続きに関する基礎知識、不動産の法理論と実務の分野であり、専門テキストを中心とした競売不動産取扱主任者試験対策は必須です。

宅建の試験内容も時が経つにつれて忘れていってしまう部分が多いので、単に資格を持っているだけでは、慢心できるほどのアドバンテージにはならないでしょう。

その年の宅建試験で合格したり、合格点近くまで達している人は、民事執行法など競売不動産取扱主任者試験特有の分野の勉強を集中的に行うことで、数十時間の学習での合格が可能です。

賃貸不動産経営管理士を持っていることはそこまで関係がない

賃貸不動産経営管理士資格は、かつて民間資格でしたが、2021年度(令和3年度)より国家資格化された試験です。

平成25年の創設年から翌年の合格率は80%前後、それ以降も合格率が50%前後であり、競売不動産取扱主任者よりも易しい試験だとも言われていましたが、国家資格化に伴い難易度が調整されました。

比較的易しい試験であったため、賃貸不動産経営管理士の過年度の合格者であることが、そのまま競売不動産取扱主任者の試験の合格に有利になるとは言えません。

また、国家資格になったあとの令和3年度の試験は、「管理業法」を中心とした問題構成へと変化しています。

不動産を扱う試験として一定の共通点はあるものの、競売不動産取扱主任者で扱う「民事執行法」などの分野とは異なります。

賃貸不動産経営管理士の資格を持っていることが、競売不動産取扱主任者試験の難易度を下げることには繋がらないでしょう。

マンション管理士・管理業務主任者は宅建資格と同程度意味がある

マンション管理士と管理業務主任者は出題範囲が宅建と重複し、かつ宅建よりも難しい(管理業務主任者は宅建と同等程度から少し易しい)とされている試験のため、資格を持っている人は競売不動産取扱主任者に合格しやすいと言えるでしょう。

ただし、上記2つの資格を持っているからというよりも、

  • 競売不動産取扱主任者試験の方が出題範囲が狭く、簡単に感じる
  • マンション管理士・管理業務主任者は、宅建にも合格している場合が多いため、宅建の知識と重複する競売不動産取扱主任者試験の対策も取りやすい

といった理由からです。

マンション管理士や管理業務主任者特有の、区分所有法や規約・会計の分野、維持・保全の分野は、競売不動産取扱主任者試験にはあまり関係がありません。

宅建を持っていることと同等の意味で有利と言えるほか、難易度の違いから、両試験にかけた労力と同じ程度の学習をすると、難易度は低く感じられ手ごたえを得ることができるでしょう。

あなどっているとなかなか合格できない

競売不動産取扱主任者は、合格率が高めだと言われてきましたが、近年の合格率は30%ほどであり、受験者に不動産業界関係者が多いこと、宅建合格者など前提知識がある人が多い割には少し低めの印象です。

また、試験対策としても「公式テキストの内容が難しい」と抵抗感を感じる人にとっては、一般に流通する市販テキストの選択肢がないことは、勉強のしづらさに繋がるでしょう。

さらには、試験問題は回収され過去問が出回っていないために試験の傾向が掴みづらく、過去問が数十年分ある試験と比較すると、対策は取りにくくなっています。

もちろんコツコツと勉強を積み重ねれば合格できる試験ですが、「合格率が高いから大丈夫」「直前の対策で足りる」などと侮っていると、不合格を繰り返すことになりかねません。

実務者や宅建合格者というライバルの中で3割の合格者に入れるよう、しっかりと学習内容を頭に入れることが重要。

安易に合格率に左右されず、対策講座を利用するなど、気を引き締めて勉強を進めていくことが大切です。

この記事の監修者 横田 政直 講師

横田 政直 講師 (講師紹介はこちら

1992年 中央大学 法学部卒業
2006年 専修大学大学院修了
2001年 宅地建物取引士試験合格
2018年 行政書士試験合格
2019年 競売不動産取扱主任者試験合格
2020年 賃貸不動産経営管理士試験合格

延べ20年近くにわたり宅建の企業研修、大学の課外授業、予備校での授業、個人レッスンを通して1,000名以上の合格者をサポートしてきました。
法律や制度について分かりやすく説明します。

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