言語実技は、保育士の実技試験の中でも、高い表現力が求められる科目です。

「消去法で言語実技を選んだが、うまく話せる自信がない」
「台本の作り方や試験中の振る舞いがわからない」
などとお悩みの方も多いのではないでしょうか。

本コラムでは、言語実技の内容や課題の選び方などを紹介します。

不合格になる理由や、タイムオーバーしたときの対処法などにも触れているので、言語実技の受験を控えている方は参考にしてみましょう。

関連コラム:保育士実技試験の実技はどれがいい?合格率や落ちる人の特徴、不合格理由も解説

保育士試験 言語実技の内容

保育士試験における言語実技試験では、子どもに向けた物語の読み聞かせを行います。4つの課題の中からひとつを選び、一般的なストーリーを暗記したうえで、3分にまとめて表現する試験です。

本番では、3歳の幼児15人に見立てた椅子が設置され、子ども達に向けて語りかける場面を想定します。

令和5年の課題は以下のお話でした。

  • 「ももたろう」(日本の昔話)
  • 「おおきなかぶ」(ロシアの昔話)
  • 「3びきのこぶた 」(イギリスの昔話)
  • 「3びきのやぎのがらがらどん」(ノルウェーの昔話)

言語実技試験では、子どもを飽きさせない表現技術が求められます。読み方の工夫はもちろん、適度なジェスチャーを交えることが必須条件です。

また、保育士に求められる声の出し方や、子どもの聞く姿勢を引き出す話術なども重要なポイントとなります。

お話を行う際は、立っていても座っていても構いません。自分が表現しやすい姿勢で行いましょう。

なお、実技試験では以下の点に注意が必要です。

  • 開始合図があったら、まず最初に子どもに向かうことを想定して題名を伝える
  • 絵本・台本・人形・小道具の使用は一切不可
  • 3分間はタイマーによって計測され、途中での退出は不可

保育士試験 言語実技の採点基準とは

保育士試験の言語実技においては、「保育士として必要な基本的な声の出し方・表現上の技術・幼児に対する話し方ができること」が求められます。

実際の採点基準は公表されていませんが、これらのポイントを押さえた対策を行うことで、合格に近づくでしょう。

保育士業務では、子どもたちにとって聞き取りやすい発声方法や、興味を惹きつける話術が求められます。そのため、はっきりと抑揚のある読み方が効果的です。

また、場面に合わせた身振り手振りを取り入れ、子どもたちが最後まで楽しめるような工夫をアピールしましょう。

入退室時の挨拶などもチェックされているため、試験終了まで気を抜かず取り組むことが重要です。

保育士試験 言語実技の課題はどれがいい?選び方を解説

言語実技においては、4つの課題を事前に確認することができます。選び方を把握し、自分の力を発揮できる課題を選択しましょう。

ストーリーで選ぶ

それぞれのあらすじを把握し、山場の盛り上げ方などを考慮して戦略を立てましょう。自分が表現しやすく、3歳児が理解できる話し方ができるものを選ぶのがおすすめです。

以下に、令和2年度~令和5年度の課題となった4つのお話を取り上げ、それぞれの大まかなストーリーを記載します。

課題ストーリー
ももたろう桃から生まれ、老夫婦に育てられた男の子が鬼退治に向かう。道中で犬・猿・キジにきび団子を与えて仲間になる。鬼退治は成功する。
おおきなかぶおじいさんが植えたタネが巨大なかぶに成長。かぶを抜くために、親族や動物の手助けが必要となる。全員で協力し、かぶは無事に抜ける。
3びきのこぶたぶたの三兄弟が独立し、一人ずつ家を建てる。それぞれがわら・木・レンガの建材を選択するが、レンガ以外の家はオオカミによって破壊され、兄二人が食べられる。末の弟はオオカミを陥れ、復讐に成功する。
3びきのやぎのがらがらどんやぎの三兄弟が化け物のいる橋を渡ろうとする。末っ子と下の兄は化け物に襲われるが、橋を渡りきる。長男のやぎは化け物に戦いを挑み、勝利する。

言語実技の課題では、台本の指定がありません。それぞれのお話の一般的なあらすじを自分で3分間にまとめ、暗記したうえで試験に臨みます。

話を覚えるのが苦手な方は、なるべくストーリーが単純なものを選ぶと良いでしょう。

登場人物で選ぶ

お話の中には、さまざまなキャラクターが登場します。主人公・悪役・それ以外の登場人物を把握し、自分が感情を込めやすく、セリフを覚えやすいと感じるものを選びましょう。

以下に、令和2年度~令和5年度の課題となった4つのお話ごとの登場人物を記載します。

課題登場人物
ももたろう主人公:ももたろう
悪役:鬼
その他:おじいさん、おばあさん、犬、猿、キジ
おおきなかぶおじいさん、おばあさん、孫、犬、猫、ねずみ
※主人公・悪役の分類なし
3びきのこぶた主人公:末っ子のぶた
悪役:オオカミ
その他:ぶたの母・長男のぶた・次男のぶた
3びきのやぎのがらがらどん主人公:長男のやぎ
悪役:橋にいる化け物
その他:次男のやぎ・末っ子のやぎ

お話の臨場感を演出するためには、登場人物の立場によって、セリフ回しや声色を工夫しなければなりません。

また、それぞれのセリフの量や、口調なども異なります。演技が得意な方はあえて登場人物が多いお話を選び、演じ分けに挑戦してみるのも良いでしょう。

自分が得意な表現を取り入れやすく、無理なく演じられるものがおすすめです。

なお、上記で取り上げたお話は、令和2年度~令和5年度の課題例です。受験年度によって課題の内容が変更される可能性もあるため、受験を考えている方は事前にチェックしておきましょう。

保育士試験 言語実技の台本作りのコツ

言語実技試験では、お話を3分間で完結させるための台本作りが肝心です。

市販のテキストなどに掲載されている台本を使う方法もありますが、自分で作成した台本の方が覚えやすいという方も多くおられます。

ここでは、台本作りのコツやポイントについて紹介します。

あらすじをまとめる

まず、選んだ課題のお話を読み込み、大まかなあらすじをまとめます。この段階では、重要な場面だけを抜き出し、シンプルな構成にすると良いでしょう。

絵本の読み聞かせとは異なり、イラストなどで情報を補足することができないため、伝わりやすい文章を心がけましょう。

表現を工夫する

続いて、子どもが楽しめるような表現を付け加えていきます。擬音の表現や、子どもが感情を込めやすい話言葉を取り入れるのがおすすめです。

また、複雑なセリフや、3歳児にとってなじみが薄い単語が含まれている場合は、わかりやすいものに置き換えましょう。

時間を調節する

3分間で話す文字数の目安は、600文字〜800文字だと言われています。台本全体の文章量を見直し、短すぎる・長すぎる場合は調整しましょう。

台本は暗記しなければならないため、長すぎると覚えるのに時間がかかってしまう場合があります。実際に台本を読み上げ、3分の間にバランスよく収まっているかどうかをチェックするのがポイントです。

保育士試験 言語実技で不合格になる理由や落ちた人の特徴とは

言語実技で不合格になる理由のひとつとして、注意事項の確認不足が挙げられます。

例えば、開始合図に続いて最初にお話の題名を言わなかった場合は、試験の注意事項を確認していないとみなされるでしょう。

また、自作の台本や、人形・イラスト・小道具などを本番に持ち込んでしまった場合、試験そのものが失格となります。

言語実技は、楽器演奏や絵を描くことが苦手な方に選ばれやすい科目ですが、事前の確認や対策が不十分な場合は、不合格になってしまう場合があります。

言語実技で落ちる人の特徴

保育士に必要な条件を満たしていないと判断された人は、落ちる可能性が高いです。

聞き取れないほど声が小さかったり、身振り手振りが全くなかったりすると、合格は難しいでしょう。

また、早口で話しがちな人や、笑顔を作るのが苦手な人も要注意です。

緊張してしまいやすい方は、大勢の子どもたちに明るく語りかける自分をイメージし、繰り返しトレーニングを行うことがおすすめです。

実技試験は、各科目における「求められる力」を判断されるだけでなく、保育士としての適性を測る場でもあります。

試験内容を正確に遂行することも大切ですが、保育士として適切な態度をとることを重要視しましょう。

保育士試験 言語実技のよくある疑問|試験中は立つ?座る?タイムオーバーしたら?など

ここでは、保育士試験の言語実技におけるよくある疑問について解説します。

試験中は立つ?座る?

言語実技の試験では、立っても座っても構わないとされています。

本番では、床に置いた椅子を子どもに見立てて語りかけるため、座っている方が目線を合わせやすいと感じる方が多いでしょう。

また、試験当日は、座った状態から開始するよう指示される場合があります。立って話すことを希望する方は、一旦着席し、開始の合図があってから立ちましょう。

タイムオーバーしたり、時間が余る時はどうすれば良い?

言語実技では、3分間の時間計測が行われます。

話の途中でタイムオーバーしてしまった場合は、そのままお話を続けず、途中で終了しましょう。

そのまま話し続けても評価の対象にならないばかりか、「ルールを守れない人」として、試験官からの印象を低下させてしまいます。

また、3分より早く話し終えた場合も、途中で退室することはできません。時間が来るまで、なるべく明るい表情を保ったままその場で待機しましょう。

間違えたり失敗した時の対処法

お話の途中でセリフを間違えたり、ペース配分に失敗してしまったりする場合もあるでしょう。試験本番で失敗すると、動揺してしまう人がほとんどです。

しかし、実技試験では、お話の正確性よりも、表現力や保育士にふさわしい印象などが評価されると言われています。そのため、失敗しても慌てず、堂々とした態度でお話を続けましょう。

【保育士試験】言語実技についてまとめ

本コラムでは、保育士実技試験における3分野のうち、言語実技について解説しました。

言語実技は事前に課題が発表されるため、比較的対策を立てやすい科目です。
しかし、明確な採点基準が公表されておらず、うまくできたと思っても不合格になる受験者も存在します。

言語実技の受験にあたっては、言語実技において求められる力や、期待される態度などを適切に把握しましょう。試験の注意事項を遵守し、しっかりと頭に入れておくことも重要です。

本コラムを参考に言語実技に臨み、保育士試験合格の夢を実現させましょう。

その他保育士試験の日程や時間割など、保育士試験の概要については以下コラムで解説しています。あわせて参考にしてください。

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