本コラムでは、看護大学の実習スケジュールを詳細に解説していきます。

看護大学への進学を考えるうえで、実習について気になる人は多いのではないでしょうか。

さまざまな臨床現場で行われる実習は、看護大学の大きな特徴のひとつです。

看護大学での学生生活をイメージするのに役立ててくださいね

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看護大学の実習とは

看護大学の実習を知るうえで、2つの視点から理解を深めておきましょう。

「実習が何のために行われるのか」ということ、そして「どんな実習が行われるのか」ということです。

それぞれを詳しく説明します。

実習の目的

看護職を目指す人材にとって、実習は「看護のノウハウを実践する段階に到達させるため」のものと位置づけられています。

どんな学問でも同じように、講義を受けたり教材を読み込んだりすることは大切です。

しかし、実践において力を発揮するためには、どれだけ経験を積んでいるかが大きな要因となります。

つまり、看護のノウハウを「知っている」段階から「実践できる」段階に上げることが重要です。

一人ひとり異なる健康・心理状態の患者とのベストな向き合い方を実践するには、それまでの看護の経験が大きな武器となるでしょう。

学生時代から行う実習とは、看護のリアルな経験を積み、状況によって異なるベストな看護を提供できる看護職になるための土台として重要な役割を担っています。

実習の内容

看護大学で実施される実習時間や内容は、厚生労働省が定めるガイドラインによって定められています。

単位数で考えた場合、すべての実習を合わせて計23単位以上の取得が必要です。

1単位は45時間のため、合計すると非常に長い時間を実習に費やすことになるでしょう。

内容を見ると、「地域・在宅看護論」といった地域での看護を学ぶ実習や、「成人看護学」「老年看護学」「小児看護学」といった年齢に応じた看護を学ぶ実習が指定されています

実習期間や時期は?

本章では、さらに具体的に実習スケジュールを確認していきます。

4年制の看護大学を例に具体的な実習期間や時期・回数を整理しましょう。

なお、以下に挙げるのは一般的な実習スケジュールのため、進学先の実習スケジュールについては改めてチェックするようにしてくださいね。

1年生

1年生の授業は講義形式のものが多く設けられています。

その中でも「基礎看護学」にあたる実習のみは、1年生のうちから行なわれる実習の代表例です。

春または秋に1~2週間程度行われ、臨床現場での体験を経て看護職の役割や看護の実際を考える目的がメインです。

2年生

2年生からは複数の実習がカリキュラムに組み込まれます。

大学ごとに2年次に行う実習が異なりますが、主に「老年看護学」や「成人看護学」といったものが代表例と言えるでしょう。

合計して少なくとも4週間程度の実習期間があるため、臨床現場での学びが少しずつ増えていきます

3年生

実習の期間・内容ともに最も比重が高まるのが看護大学3年生であることは間違いありません。

後期からスタートする実習期間は、10月から2月まで、冬期休暇をはさんで約5ヶ月続きます。

「母性看護学」や「精神看護学」などのコアな看護実習も組まれており、さまざまな医療現場を間近で体験しながら看護職としてのノウハウを身につけます。

3年後期は実習とそれに付随するレポート課題などに追われることになるでしょう

4年生

3年生の実習ピークを追えれば、残る実習もあとわずかです。

4年生で行う実習は、基本的に前期と後期の早い段階で終了します。

「看護の統合と実践」にあたる実習として、3年次までの実習から得た各領域の看護スキルやノウハウを実践的に発揮する場を体験します

実習の1日のスケジュール例

続いては、看護学生の実習を1日のスケジュールで確認してみましょう。

6:00起床、準備
7:00出発
8:00実習開始
8:30職員間での情報共有(申し送り)
9:00患者さんの健康状態チェック
11:00口内ケアの介助、歩行訓練など
12:00看護の振返り
12:15昼休憩
13:15患者さんの健康状態チェック、服薬管理
15:30学生カンファレンス
16:30指導者報告
17:00実習終了
17:30記録作成
19:00帰宅
21:00実習の事前学習、復習
22:30就寝

非常にハードな1日であることが読み取れますね。

実習は朝早くからスタートするため、大学での講義の日よりも早く起床し準備する必要があります。

午前中の実習は基本的に「申し送り」からスタートです。

患者さんの情報共有を行うことで、病棟やチーム内で誰もが適切な対応をできる体制を整えます。

申し送りの後、バイタルサイン測定と呼ばれる脈拍や体温、血圧などの測定を患者さんの病室にて行います。

加えて、患者さん一人ひとりに合わせた環境整備も行います。

指導者のアドバイスを受けながら、実践的に看護ケアを行うのです。

昼休憩前には指導者へ報告を行い、適切な看護ができているかどうか、より良い看護にはどんな視点が必要かなどのフィードバックをもらいます。

午後にもさまざまな看護を実践しますが、「学生カンファレンス」というものが行われるのが特徴的です。

指導者と看護学生によるミーティングで、より良い看護に向けた振返りを行う時間です。

実習を追えれば、記録作成をして帰路につきます。

とは言え、翌日以降の実習に向けた事前学習や当日の復習も必要なため、家庭学習も必要となるでしょう。

実習のよくある質問

最後に、看護学生の実習についてよくある質問への回答を整理しました。

看護実習に関する疑問を解決するのに役立ててくださいね。

何が大変?

看護実習における大変さは、次の3つのポイントに分かれます。

1.事前学習(予習)すべき量が多い

2.記録をとる工数がかかる

3.厳しい指導を受けることが多い

まずは「事前学習(予習)」の大変さです。

学生とは言え、看護実習では実際の患者さんを相手に看護を実践することになるため非常に大きな責任を担うことになります。

準備もなく、ただなんとなく実習当日を迎えるようなことがあれば、患者さんの健康や生命にダイレクトにかかわる可能性も否定できません。

そのため、臨床現場に入る前にはできる限りの事前学習を行う必要があります。

実習が始まってから直面する大変さとしては、記録の多さと指導の厳しさでしょう。

実際に看護職として働き始めてからも、看護をしたあとには必ず「看護記録」を残します。

そのため、当然ながら看護実習でも同様の記録を作成することになります。

加えて「実習記録」も記入しないといけないため、非常に多くの記録作成に時間を割くことになるでしょう。

ハードスケジュールな中で記録作成をしっかり行うことに大変さを感じる看護学生は少なくありません。

さらに、実習中の指導の厳しさも大変さの要因と言えます。

患者さんの生命を扱う臨床現場だからこそ、その中で働く看護師は非常に責任感が強いことが多いです。

だからこそ、看護学生にも強い責任感を持って指導にあたることは自然なことですね。

逆に言えば、学生のうちから看護師に求められる責任感をしっかり味わうことができるとも考えられます。

乗り越えるコツは?

看護実習を乗り越えるコツは、前述した「3つの大変さ」それぞれへの向き合い方です。

1.目指す目標を明確にして、事前学習にあたる

2.記録作成をスキマ時間に行い、後回しにしない

3.優れた看護師になるため、アドバイス内容に意識をフォーカスする

事前学習が大変なことは変えられない事実です。

やらされている感覚だけでは事前学習が苦痛になってしまいます。

だからこそ、「何のために学ぶのか」をしっかり意識することが求められます。

例えば「来週の実習では、患者さんとのコミュニケーションをしっかりとる!」といった目標を定めることで、事前学習に大きな意味が生まれるでしょう。

目標を設定し、事前学習と紐づけることで意欲的に学べるようになりますよ。

続いては実習中に意識したいコツです。

最も意識していきたいのは「記録作成を効率的に行う」ことです。

面倒になったり疲れていたりすると記録作成を後回しにしたくなりますが、これは人間だれしもが通る道。

看護学生でも看護職員でも、そして多くの人が記録作成のタイミングを遅らせた経験を持っています。

だからこそ、意識的に記録作成を行うことを意識する必要があります。

最初は気が乗らなくても、慣れていくことでスピーディかつ的確な記録作成をできるようになりますよ。

最後のコツは、指導者からのアドバイスをしっかり吸収することです。

中には厳しい言葉や怒った口調で指導する看護師もいるでしょう。

しかし、そんなときこそ「アドバイス内容にフォーカスする」ことを忘れないでください。

医療現場で活躍する看護師は、看護学生を叱りたいわけでは決してありません。

仕事への責任感と患者さんへの思いから、キツい伝え方になってしまっているだけですよ。

だからこそ、指導者の言葉尻や表現方法をくよくよ考えるのではなく、いただいたアドバイスの内容にフォーカスして吸収することを心がけてください。

本当に伝えてくれたことが何かを考えて吸収することが、良い看護師になるための最善手と言えるでしょう。

まとめ

本コラムでは、看護大学における実習スケジュールを詳細にチェックしました。

コラム内容をまとめると以下のとおりです。

  • 看護実習は看護スキルを実践できるようになるために行なわれる
  • 看護実習は1~4年生にかけて行われ、3年生でピークがくる
  • 実習のある日は忙しく、事前学習や復習もセットで行う必要がある
  • 実習は大変だが、良い看護師になるための目標設定をすることで乗り越えられる

学生時代から非常にリアルな経験ができるのも看護学生ならではと言えます。

自分の理想である看護職になるため、実習を有意義な時間として捉えてみてくださいね。

実習をはじめとした充実した看護大学での学生生活をイメージして、目標に向かっていきましょう

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この記事の監修者 山崎 敬太

山崎 敬太

筑波大学人間学群心理学類 卒業。

大学卒業後、英語講師として、難関大・医学部・看護学部・看護学校の志望者計300名以上に指導経験をもつ。

その後、小中高生向けキャリア教育事業の施設長として、生徒やご家族へ進路の相談援助を実施。

現在は医学部・看護学部・看護学校受験向けメディアのライターとしても活動中。

医学部や看護学部・看護学校の受験生に向けて、役立つ入試情報等を発信。