医学部の地域枠とは?入りやすいって本当?条件や奨学金を紹介!デメリット・メリットも解説
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入試の倍率が低いので入学しやすく、高額な奨学金も貸与されるという医学部地域枠制度が注目を集めています。
一方でデメリットもある地域枠の制度をよく理解しましょう。
お金のために進学するのはお勧めしません。
医師が集まらない地域、業務だからこそ優遇されているのです。
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医学部の地域枠とは
医学部の地域枠とは、地方における医師不足や診療科の偏在といった問題を受けて、医師少数区域を解消することを目的として作られた制度です。
医師不足が深刻な地域において、原則卒業後規定の年数その地域で働くことを出願条件にしています。
平成30年の法改正によって、医療法第30条の23 第5号にもとづき、都道府県知事から大学に向けて、地域枠の設定、拡充の要請をすることが可能となりました。
また都道府県がこれらの取り組みを支援することとされています。
地域枠は今後ますます拡大していくと予想できるでしょう。
なお、地域枠とひと口に言っても、選抜の時期、卒後の従事条件の有無、奨学金の貸与の有無によって制度は多岐に渡ります。
更に、出身地の指定があるもの(地元出身者枠)と、指定がないものに分かれますが、ここでは両者をまとめて地域枠と呼びます。
医学部の地域枠のメリットは入りやすい!
地域枠は入りやすい
勉強に苦労する受験生にとっての大きなメリットとして、地域枠は入りやすい、ということがあります。
医学部入試が激化する中、地域枠は一般的に受験生の人気があまり高くなく、定員割れを起こしている大学も複数あるほどです。
例えば旭川医科大学では、医学部の定員のうち半数ほどが地域枠とされていますが、2010年度には合格ラインに達する合格者が定員には遥か及ばなかったといいます。
その結果次年度から合格基準を引き下げるとの発表がなされ、話題になりました。
また、一般枠のほか推薦枠もある、編入者にも適用される場合があるというのもメリットとして挙げられるでしょう。
入学後の勉強の質は保証される
偏差値が低く入りやすいのであれば、学力が低くストレート卒業率や国家試験現役合格率も低いのでは、という懸念もあるでしょう。
2008年度、2009年度の地域枠入学生については、ストレート卒業率が90%ほど、国家試験現役合格率が97%ほどと、全国平均を上回っています。
入学後の勉強についてはあまり心配する必要はなさそうです。
卒業後の進路が確約されているので、マッチングに苦労することもないでしょう。
自分の将来の進路と方向性が合致する制度があった場合は大変有効な制度です。
学費が抑えられる
また、学費減免制度や奨学金がセットになっているものもあります。
卒後の進路が拘束されている分、かなり高額なので、経済的理由から医学部進学を諦めていた受験生にとっては、希望の道となるでしょう。
医学部の地域枠のデメリット
メリットばかりではありません。地域枠を志望するうえで気を付けるべき点を3つ挙げます。
奨学金の返済
地域枠を離脱する場合、利子を付けて奨学金を一括返済する義務が生じます。
6年間の奨学金総額はおよそ1500万円。
中途離脱を防ぐため、奨学金の利子も10%と非常に高く設定されています。
マッチングやキャリアの問題
地域枠を離脱して従事要件外の病院とマッチングした医師が複数名いることが明らかになりました。
これを防ぐため、地域枠の学生はマッチングの際にその旨を申し出る必要があるほか、従事要件と齟齬がある場合はマッチングに参加させないことが求められました。
これに違反した病院には補助金の減額、研修医の採用人数の減員という厳しい処置が取られます。
地域枠の離脱はますます困難になるでしょう。
また、卒後に選択できる診療科の制限がある場合があります。
支援体制がまだ不十分な中、僻地や離島での勤務で最新の設備や知識に触れられず、専門医や学位の取得などのキャリアアップに支障が生じる懸念もあります。
ライフイベントとの両立
ひとたび地域枠の道を歩み始めると、通常在学中の最低6年間+研修2年間+7年間の15年間に渡って30代半ばまで将来を拘束されます。
特に女性医師は結婚や出産で一時現場を離れることもあるでしょうが、地域枠制度はこういったライフイベントを無視した制度になっています。
国立医学部で地域枠のある大学一覧
地域枠のある国立大学医学部を紹介します。
令和6年度募集定員も記載しているので参考にしてみてください。
| 地域 | 大学名 | 令和6年度募集定員 |
| 北海道 | 旭川医科大学 | 47 |
| 北海道 | 札幌医科大学 | 90 |
| 青森 | 弘前大学 | 82 |
| 岩手・宮城 | 東北大学 | 岩手県 2 / 宮城県 7 |
| 秋田県 | 秋田大学 | 29 |
| 山形県 | 山形大学 | 13 |
| 福島県 | 福島県立医科大学 | 87 |
| 茨城県 | 筑波大学 | 36 |
| 群馬県 | 群馬大学 | 18 |
| 千葉件 | 千葉大学 | 20 |
| 埼玉県・茨城県 | 東京医科歯科大学 | 埼玉県 5 / 茨城県5 |
| 山梨県 | 山梨大学 | 35 |
| 神奈川県 | 横浜市立大学 | 33 |
| 新潟県 | 新潟大学 | 40 |
| 富山県 | 富山大学 | 35 |
| 福井県 | 福井大学 | 20 |
| 石川県・富山県 | 金沢大学 | 石川県 10 / 富山県 2 |
| 岐阜県 | 岐阜大学 | 28 |
| 静岡県 | 浜松医科大学 | 15 |
| 愛知県 | 名古屋大学 | 5 |
| 愛知県 | 名古屋市立大学 | 37 |
| 三重県 | 三重大学 | 35 |
| 滋賀県 | 滋賀医科大学 | 16 |
| 京都府 | 京都府立医科大学 | 7 |
| 大阪府 | 大阪公立大学 | 15 |
| 兵庫県 | 神戸大学 | 10 |
| 奈良県 | 奈良県立医科大学 | 38 |
| 和歌山県 | 和歌山県立医科大学 | 36 |
| 鳥取県・兵庫県 | 鳥取大学 | 鳥取県 5 / 兵庫県 2 |
| 島根県 | 島根大学 | 26 |
| 岡山県・兵庫県・鳥取県・広島県 | 岡山大学 | 岡山県 4 / 兵庫県 2 /鳥取県 1 /広島県 2 |
| 広島県 | 広島大学 | 18 |
| 山口県 | 山口大学 | 45 |
| 徳島県 | 徳島大学 | 17 |
| 佐賀県・長崎県 | 佐賀大学 | 佐賀県 22 / 長崎県 1 |
| 長崎県 ・佐賀県・宮崎県 | 長崎大学 | 長崎県 30 / 佐賀県 2 / 宮崎県 2 |
| 熊本県 | 熊本大学 | 8 |
| 大分県 | 大分大学 | 13 |
| 宮崎県 | 宮崎大学 | 40 |
| 鹿児島県 | 鹿児島大学 | 20 |
| 沖縄県 | 琉球大学 | 17 |
医学部地域枠で定員割れしている大学はある?
2024年度入試において、医学部地域枠の定員割れが発生したのは以下の大学です。
- 岡山大学医学部医学科
- 奈良県立医科大学医学部医学科
岡山大学医学部医学科
- 岡山県枠(定員4名):出願者25名(倍率6.3倍)に対し、合格者1名。3名の欠員が生じ、実質倍率は25倍となりました。
- 広島県枠(定員2名):出願者4名(倍率2倍)に対し、合格者は0名。2名の欠員が発生しました。
- 鳥取県枠(定員1名):出願者2名(倍率2倍)に対し、合格者1名。定員通りの結果となりました。
- 兵庫県枠(定員2名):出願者11名(倍率5.5倍)に対し、合格者1名。1名の欠員が生じ、実質倍率は11倍となりました。
これらの結果、岡山大学の地域枠全体で定員割れが生じました。
奈良県立医科大学医学部医学科
奈良県立医科大学では、募集人員22名に対し、志願者数は57名で志願倍率は2.6倍でしたが、最終的に合格者数が募集人員を下回り、定員割れが発生しました。
医学部の地域枠の条件と例
医学部の定員はおよそ9000人前後を推移しています。
そのうち地域枠は平成19年度には医学部の定員の僅か2.4%にあたる183人でしたが、平成20年以降割合が増加して、令和2年度には18.2%にあたる1679人まで増設されました。
地域医療に向けた奨学金の先駆けとも言えるのが自治医科大学です。
入学者全員に6年間の学費相当の総額2300万円が貸与されます。
更に希望者には最高月額15万円まで奨学資金が貸与されます。
ただし卒後の従事要件が定められています。
また、自治医科大学の卒業生が中心に設立した公益社団法人地域医療振興協会では、大学を問わず僻地医療に従事することを要件に月額20万円を貸与する奨学金制度があります。
同様に大学ごとに設置されている地域枠の例として、順天堂大学医学部一般入試の東京都枠「東京都地域医療医師奨学金」を見てみましょう。
卒後9年間指定の病院で、産科、救急、離島医療などに従事することを条件として、2080万円の学費全額と生活費として月額10万円10名に支給する制度があります。
この制度は地元出身者枠で、都内在住または都内の高校を卒業していることが条件となります。
このほか、都道府県ごとの自治体奨学金や、地域医療を目的に設立された医療法人の奨学金制度もあります。
こちらも同様に卒業後の就業規定が定められているので、規定をよく読みましょう。
医学部の地域枠まとめ
医学部の地域枠は、医師が不足している地域を解消することを目的として作られました。地域枠のメリットとしては合格しやすいケースがあるほか、手厚い奨学金があることが魅力です。
一方で、卒業後には特定地域で一定期間の勤務が求められるため、進路の選択肢が制限される可能性があります。制度を利用する際は、地域医療への貢献意欲やライフプランを考慮し慎重に判断することが大切です。
メリットとデメリットを理解した上で、自身に合った選択をするように心がけましょう。
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