教員採用試験に挑戦したいけれど、「どの科目なら受かりやすいのだろう?」と気になっていませんか。
倍率が低い科目があると耳にすると、そこを狙えば合格しやすいのではと考える方も多いでしょう。

しかし実際には、「倍率が低い=簡単に合格できる」というわけではありません。

倍率の背景には、免許取得の条件が厳しい科目や、教職経験者という強力なライバルが多いといった事情が隠されています。

このコラムでは、教員採用試験の科目ごとの倍率傾向をもとに、「受かりやすい」と言われる科目を詳しく解説します。

さらに、倍率をどう活用すべきか、そして合格を掴むために欠かせないポイントまで紹介します。

このコラムを読むことで、「自分に合った科目選び」と「合格のための正しい戦略」がわかるはずです。

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教員採用試験で「受かりやすい」科目はある?

結論から言えば、倍率が低く「受かりやすい」とされる科目は存在します。
ただし、倍率の数字だけを見て「簡単に合格できる」と判断するのは危険です。

教員採用試験の全体倍率は近年下がり続け、直近では3.4倍と過去最低を更新しました。
一見すると合格しやすい試験に思えますが、実態は異なります。

まず、受験者の層に特徴があります。受験生の約6割は既卒者で、その多くが複数回挑戦している経験者です。

さらに合格者の半数近くは非常勤講師などの教職経験者であり、現場で培った指導力や実践力を武器に試験へ臨んでいます。

また、民間就職のように気軽に併願できない点も重要です。

多くの自治体で試験日程が重なるため、いわゆる「お試し受験」が少なく、受験者は本気度の高いライバルばかり。

大学入試以上にシビアな競争が繰り広げられているのが現実です。

つまり、倍率が低い科目を狙うことは戦略の一つにはなりますが、それだけで合格できる保証はありません。

むしろ、人物試験や専門試験でしっかり実力を示せるかどうかが、最終的な合否を大きく左右します。

【校種別】教員採用試験の「受かりやすい科目」を倍率から徹底解説

教員採用試験の倍率は「全国平均」だけでは見えにくい部分があります。
校種や教科ごとに倍率は大きく異なり、同じ試験でも合格しやすさに差が出るのが実情です。

一般的に、免許を取得する人が多い教科や、採用枠が少ない教科は倍率が高くなる傾向にあります。

逆に、免許を取得する人が少なかったり、専門性や実務経験が必要な教科は倍率が低くなりやすいのです。

ここからは、小学校・中学校・高等学校・特別支援学校など、校種ごとの倍率の傾向を詳しく見ていきましょう。

小学校教諭の倍率傾向

小学校教員の倍率は、全国的に見ると2.0〜2.5倍前後と、他の校種に比べて低い水準で推移しています。
直近4年間の全国平均は以下の通りです。

全国平均の推移(直近4年間)

年度(実施年)倍率
令和3年度(2021)2.6倍
令和4年度(2022)2.5倍
令和5年度(2023)2.3倍
令和6年度(2024)2.2倍

このように、小学校は長期的に見ても「最も倍率が低い校種の一つ」と言えます。
その背景には、少子化による児童数減少を見越しつつも、学級規模の改善や学習指導要領の改訂に伴い一定数の教員を確保する必要があることがあります。

ただし、全国平均が低いからといって油断はできません。

自治体ごとに差が大きく、東京都や北海道では2倍を切る一方で、関西や四国の一部自治体では5倍を超えるケースもあります。

つまり「小学校は受かりやすい」と一括りにするのではなく、受験予定の自治体の採用数と倍率をしっかり確認することが大切です。

中学校教員の倍率傾向

中学校教員の倍率は、全国平均で6〜7倍程度と言われていますが、教科ごとに大きな差があります。
特に技術や家庭、美術など一部の科目は比較的低倍率で推移しており、狙い目とされることがあります。

教科別倍率(全国平均・直近5年間の傾向)

教科平均倍率(目安)特徴
技術約1.9〜2.3倍プログラミング必修化により需要増、供給不足
家庭約2.3倍専門学科での免許取得が必要
美術約2.5倍専門性が高いため志望者が少なめ
理科約2.6倍実験・観察など実技力も問われる
国語約2.8倍基本科目だが比較的低倍率
英語約2.9倍教員数の需要が高いが志望者も多い
音楽約3.9倍専門性が高く採用枠が少ない
社会約5.5倍有資格者が多く、倍率が上がりやすい
保健体育約7.6倍体育大出身者など有資格者が多く最難関

特に技術科(平均2倍前後)は、全国的に見ても最も低倍率の科目の一つです。
背景には、2021年からのプログラミング必修化で人材需要が増えたこと、また専門分野に強い人材が限られていることが挙げられます。

一方で、保健体育(平均7.6倍)は非常に競争が激しい科目です。

体育系大学でも免許が取得できるため有資格者が多く、倍率が高くなっています。

高等学校教員の倍率傾向

高等学校教員の倍率は、中学校と同様に6〜7倍程度が全国平均ですが、教科ごとの差がより顕著です。
特に専門資格や実務経験が必要な科目は倍率が低く、逆に有資格者が多い教科や採用枠が少ない教科は高倍率となります。

教科別倍率(全国平均・直近5年間の傾向)

教科平均倍率(目安)特徴
看護約1.6〜1.9倍看護師等の資格+3年以上の実務経験が必要
水産約2.0〜2.3倍海技士資格+5年以上の経験が必要
工業約2.4〜3.6倍専門性が高いが人材不足傾向
農業約3.4〜4.9倍農学系の専門免許が必要
家庭約4.1倍教員免許取得機関が少なく志望者も少ない
英語約3.8倍中学に続き需要が高い
国語約4.3倍基本科目だが比較的受かりやすい傾向
数学約6.9倍専門性が高く採用数も多い
理科約6.6倍実験・観察対応の専門性が必要
情報約5.1倍ICT需要増加により注目度上昇
商業約6.1倍資格や実務経験を重視
美術約6.9倍採用枠が少なく倍率が高い
音楽約7.5倍専門性+採用枠の少なさが影響
地理歴史約8.2倍大学で取得しやすく有資格者が多い
公民約9.5倍取得可能学部が多く志望者が集中
書道約8.8倍採用枠が少なく常に高倍率
保健体育約10.6倍体育系大学で免許取得が容易で志望者過多

特に看護科(平均1.8倍)や水産科(平均2.2倍)は、受験資格が厳しいため倍率が低くなっています
一方で、保健体育(平均10.6倍)や公民(約9.5倍)などは有資格者が多いことから、最難関といえる状況です。

特別支援学校教諭・養護教諭・栄養教諭の倍率傾向

小・中・高校に比べ、これらの校種は倍率の変動が非常に大きいのが特徴です。
自治体や年度ごとの採用数の違いが影響しやすいため、最新情報を確認することが欠かせません。

全国平均倍率(直近5年間)

校種・職種平均倍率(目安)特徴
特別支援学校教諭約2.7倍一部自治体では1倍台、他方では20倍超のケースもある
養護教諭約6.8倍地域差が大きく、20倍超の自治体も存在
栄養教諭約8.3倍採用枠が少なく、毎年倍率は高めに推移

特別支援学校教諭は全国平均では2.7倍と低めですが、宮城県(25.8倍)や沖縄県(11.5倍)のように極端に高倍率の地域もあります。

養護教諭は全国平均6.8倍ながら、京都府(20.4倍)、福岡市(29.3倍)と非常に高倍率になることも少なくありません。

栄養教諭は採用数自体が限られるため、毎年安定して高倍率の傾向があります。

教員採用試験で「受かりやすい科目」を狙う際の注意点

倍率が低い科目を狙うことは戦略の一つですが、「低倍率=簡単に合格できる」という誤解は危険です
受験を検討する際には、次のような注意点をしっかり押さえておく必要があります。

倍率が低いからといって試験が「簡単」なわけではない

採用枠に対して受験者数が少なければ、試験自体の難易度に関係なく倍率は低くなります
例えば高校の看護科や水産科は確かに低倍率ですが、免許取得には専門資格や実務経験が必須です。

そのため受験生一人ひとりのレベルは高く、むしろ合格のハードルは非常に厳しいといえます。
倍率の数字だけで難易度を判断するのは危険です。

実務経験者という「ライバル」のレベルの高さ

教員採用試験の受験生の約6割は既卒者で、そのうち多くが教職経験を持っています。
合格者全体の半数近くは、非常勤講師など教育現場での経験者です。

特に人物試験(論文・面接・模擬授業など)では、現場経験に基づいた具体的な回答が求められるため、経験者が大きく有利になります。
未経験の学生にとっては、しっかりとした準備が不可欠です。

自治体や年度によって倍率は大きく変動する

倍率は毎年一定ではなく、採用人数や退職者数の変動によって大きく上下します。
同じ科目でも、ある自治体では2倍程度、別の自治体では10倍を超えるといった差が生じるのが現実です。

したがって、過去の倍率データに頼るだけでは不十分です。
最新の採用情報を確認し、受験計画を柔軟に調整することが大切です。

「受かりやすい科目」で合格を掴むための重要ポイント

倍率の数字を参考にすることは大切ですが、最終的に合格を勝ち取るためには「科目選び」だけでは不十分です。
むしろ、合格者に共通するのは「人物試験への徹底対策」「効率的かつ深い専門学習」「柔軟な受験戦略」の3点です。
ここでは、合否を左右する重要ポイントを詳しく見ていきましょう。

合否を左右する人物試験対策を徹底する

近年の教員採用試験では、筆記よりも「人物試験」に重きを置く自治体が増えています。
人物試験には以下のような形式があります。

  • 論文試験(教育課題や教育観を問う)
  • 個人面接(志望動機や教育理念、場面指導への対応)
  • 集団面接・集団討論(協調性やリーダーシップを評価)
  • 模擬授業(授業構成力・児童生徒への関わり方を確認)

人物試験は「教師としての適性」を多面的に測るために行われ、配点も高めに設定されています。
特に論文試験は「書く面接」とも呼ばれ、教育に関する知識や思考力が問われる重要科目です。

教職経験のない学生は、とくに人物試験で不利になりやすい傾向があります。

経験者との差を埋めるためには、教育現場の実態をリサーチし、模擬面接や論文演習を繰り返すことが欠かせません。
「人物試験で差をつける」ことこそ、合格への最大の近道です。

筆記試験は効率的に、専門性は深く学習する

筆記試験は大きく「教養試験」と「専門試験」に分かれます。

  • 教養試験…教職教養(教育原理・教育法規・教育心理など)+一般教養(人文・社会・自然科学や時事問題)
  • 専門試験…志望する校種・教科の専門知識+学習指導要領・指導法

教養試験は範囲が広く、すべてを完璧に網羅するのは現実的ではありません。

過去問の傾向を分析し、頻出分野に絞って効率的に学習することが重要です。
一方、専門試験は深い理解が求められるため、付け焼き刃の対策では通用しません。

特に中高の専門教科では大学レベルの問題が出題されるため、基礎固めのうえで多くの演習をこなす必要があります。

つまり、「教養は効率的に、専門は徹底的に」というメリハリをつけた学習が合格への最短ルートです。

複数自治体への併願も選択肢の一つに

教員採用試験は原則として「ブロックごとに同一日程」で行われるため、併願できない場合も多いです。
しかし、日程が異なる自治体を選べば併願は可能です。

例えば、一次試験が5月に行われる自治体と、7月に行われる自治体であれば、両方を受験できます。
併願のメリットは以下の通りです。

  • 合格のチャンスを増やせる
  • 本命自治体の予行練習になる
  • 試験慣れができる

ただし、デメリットとして「移動費・宿泊費などの経済的負担」「自治体ごとの出題傾向に合わせた準備の必要性」「二次試験の日程重複のリスク」があります。

無理のない範囲で併願を検討し、リスクとリターンを天秤にかけて判断するとよいでしょう。

受かりやすさよりも教師としての適性を磨く

倍率が低い科目を狙うのは戦略の一つですが、それだけに頼ってしまうと本番で力を発揮できません。
むしろ、「この科目を通じて子どもたちに何を伝えたいのか」という教育観や教師としての姿勢が、面接や模擬授業で評価されるポイントです。

教員採用試験において最終的に求められるのは、「数字に左右されず、子どもたちの前に立てる人材」であることを忘れてはいけません。

まとめると、

  • 人物試験(論文・面接・模擬授業)対策に全力を注ぐ
  • 筆記試験は「教養は効率的に」「専門は深掘り」で取り組む
  • 可能なら複数自治体を受験してチャンスを広げる
  • 「倍率」より「教育者としての適性」を重視して準備する

この4点を徹底することが、「受かりやすい科目」を活かして合格を掴むための最重要ポイントです。

まとめ

教員採用試験は、全国平均で見ると過去最低の倍率を更新しており、「受かりやすくなった」と言われることが増えています。
しかし、実際には既卒や教職経験者が多く受験しており、人物試験の比重も高まっているため、決して簡単な試験ではありません。

校種・教科別に見ると、小学校(2.2〜2.6倍)や中学の技術科(約2倍)、高校の看護科(約1.8倍)など、比較的低倍率の分野は存在します。
一方で、中高の保健体育(中学:約7.6倍/高校:約10.6倍)、高校の公民(約9.5倍)、書道(約8.8倍)のように、依然として狭き門となっている科目もあります。

ただし、倍率が低いからといって「受かりやすい」とは限りません。
専門資格や実務経験が必要な科目では受験者のレベルが高く、人物試験でも経験者が有利に働きます。
さらに自治体や年度によって採用数が変動し、倍率が大きく揺れる点にも注意が必要です。

最終的に合格を掴むために重要なのは、次の4点です。

  • 人物試験への徹底対策(論文・面接・模擬授業など)
  • 教養は効率的に、専門科目は深く学習すること
  • 可能であれば複数自治体を受験し、合格のチャンスを増やすこと
  • 倍率だけでなく、自分の教育観や教師としての適性を磨くこと

数字に一喜一憂するのではなく、「子どもたちの前に立つにふさわしい力を身につけること」こそが、合格への最短ルートです。

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