「教員になりたい」という想いを抱えながらも、「まだ3年生だけど受験できるの?」と不安に感じている方は少なくありません。

かつては大学4年生での受験が当たり前だった教員採用試験ですが、近年では制度が大きく変わりつつあります。

実は今、大学3年生のうちから教員採用試験にチャレンジできる「前倒し受験」制度が全国的に広がっているのをご存じでしょうか?
本コラムでは、その最新制度の仕組みや対象自治体、メリット・デメリット、合格率、向いている人の特徴まで、わかりやすく丁寧に解説します。

これから教員を目指すあなたにとって、「3年生からの挑戦」が夢の実現をぐっと近づける一歩になるかもしれません。

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大学3年生でも教員採用試験は受験可能!「チャレンジ受験」「前倒し受験」とは?

近年、教員採用試験において新たに導入された制度として注目されているのが、大学3年生が受験できる「前倒し選考」「チャレンジ選考」と呼ばれる制度です。

これは、従来大学4年生でしか受験できなかった教員採用試験を、大学3年次でも受験可能にする制度で、東京都や埼玉県などを皮切りに全国の自治体で急速に広がっています。

制度導入の背景

この制度の導入背景には、深刻化する教員不足の問題があります
教育現場では担い手が年々減少しており、各自治体は「優秀な人材をより早期に確保したい」という意図のもと、大学3年生を対象にした選考制度を新たに設けるようになりました。

実施の拡大状況

2023年にはまず8つの自治体で試験的に実施され、2024年にはなんと39自治体(全体の約60%)まで拡大。

東京都、埼玉県、福岡県、茨城県など、多くの地域が「チャレンジ受験」制度を取り入れています。

制度の呼び方や実施内容は自治体によって異なる

この制度は、

  • 「大学3年生前倒し選考」
  • 「チャレンジ選考」
  • 「JUMPUP特別選考」
    など、名称も実施時期も自治体によってさまざまです。

詳細な日程や試験内容も地域により異なるため、志望自治体の教育委員会公式サイトをこまめに確認することが重要です。

チャレンジ選考対象自治体一覧

大学3年生が教員採用試験にチャレンジできる「前倒し選考」や「チャレンジ受験」は、2023年度以降、全国的に拡大しています。

ここでは、主な対象自治体をまとめてご紹介します。

実施名称や試験日程、対象校種などは自治体ごとに異なるため、必ず各教育委員会の公式ページで最新情報を確認してください。

地域自治体名選考名称
東京都東京都大学3年生前倒し選考
関東埼玉県大学3年生チャレンジ選考
関東さいたま市StepUp選考
関東千葉県・千葉市ちば夢チャレンジ特別選考
関東茨城県前倒し選考
関東栃木県特別選考
関東群馬県3年生等対象選考
東北宮城県推薦による特別選考
東北山形県特別選考
東北福島県小・特支対象特別選考
北海道北海道教養検査
北海道札幌市前倒し選考
甲信越・北陸新潟県・新潟市特別選考
甲信越・北陸山梨県特別選考
甲信越・北陸福井県チャレンジ選考
甲信越・北陸富山県・石川県特別選考
東海愛知県前倒し特別選考
東海岐阜県・三重県・静岡県特別選考
東海名古屋市障害者特別選考含む
関西大阪府・大阪市前倒し特別選考
関西京都府・京都市JUMPUP特別選考
関西兵庫県・神戸市・堺市チャレンジ選考
関西滋賀県・奈良県・和歌山県特別選考
中国・四国岡山県・岡山市特別選考
中国・四国広島県・広島市・山口県事前認定選考等
中国・四国香川県・愛媛県・高知県特別選考
九州福岡県・北九州市チャレンジ特別選考
九州佐賀県・鹿児島県チャレンジ受験
その他相模原市・川崎市・横浜市・豊能地区推薦・選考実施

今後も多くの自治体で継続実施

現在多くの自治体で、3年生向けのチャレンジ選考が継続または新規導入されています。

「自分の志望自治体が対象かどうか」を必ず確認し、出願要件・対象校種・申込時期を見落とさないよう注意しましょう。

大学3年生で教員採用試験を受けるメリット・デメリット

「大学3年生で教採を受けるなんて早すぎるのでは?」と感じる方も多いかもしれませんが、実は早期受験ならではの大きな利点があります。

ただし、当然ながら注意すべき点も存在します。

ここでは、3年次受験のメリットとデメリットを整理してご紹介します。

大学3年生で教員採用試験を受けるメリット

1.受験機会の実質的な増加

これまで教員採用試験は大学4年生の1回限りというのが一般的でした。

しかし、「前倒し選考」の導入により、3年次+4年次の最大2回受験が可能になりました。
1回目で合格すれば4年次は準備不要、不合格でもその経験が次の本試験に活かせます。

2.学習負担の分散化

3年次で筆記試験(教職教養・専門教養など)を済ませておけば、4年次には面接・論文・模擬授業といった人物試験に集中できます。

これにより、より質の高い対策が可能になります。

3.教育実習や就職活動との両立がしやすい

4年次には教育実習や卒業研究、就活、公務員試験の併願などが重なる時期です。
3年次に筆記試験を終えておくことで、他の活動に十分な時間と余裕を持つことができます。

4.戦略的な準備が可能になる

2年次から準備を始め、3年次前期に筆記試験対策、後期に実践的な対策へ——という段階的なアプローチができるため、計画的なスケジュール管理がしやすくなります。

5.不合格でも「経験」が活きる

仮に3年次で不合格となっても、「本番と同じ形式の受験経験」は大きな武器に。
場慣れ・出題傾向の把握・自己分析を経て、4年次受験に向けた質の高い準備が可能になります。

大学3年生で教員採用試験を受けるデメリット

1.情報収集の手間と負担が増える

チャレンジ受験は自治体によって実施時期・形式・対象校種が大きく異なります。
そのため、自分で詳細を調べる能力・行動力が求められます。

制度が変わる可能性もあるため、最新情報の確認は必須です。

2.学業と受験準備の両立が難しい

大学3年生は専門科目やゼミ活動なども本格化する時期。

そこに加えて教員採用試験の対策を進めるには、高い時間管理能力と計画性が必要です

人によっては大きなプレッシャーになることもあります。

3.実習未経験のまま受験するケースもある

教育実習前に受験する場合、「実際の教壇経験がない状態」で人物試験(模擬授業・面接など)に挑むことになる可能性もあります。

教職への理解が浅いまま臨むことに、不安を感じる人もいるでしょう。

このように、3年次受験は「先手を打ちたい人」にとって大きな武器になりますが、自分の状況や学習スタイルに合っているかを見極めたうえでの判断が重要です。

教育採用試験のチャレンジ選考での合格率

チャレンジ選考は一見ハードルが高そうに感じられますが、実は多くの自治体で高い通過率を記録しています。

制度の導入目的が「教員確保」にあるため、意欲や適性を持つ学生を積極的に次のステップへ進める傾向が強いのです。

主な通過率データ(一次選考)

自治体年度選考名称通過率
東京都2024年度(令和7年度採用)大学3年生前倒し選考83.0%
┗小学校全科同上同上94.1%
┗中・高共通等同上同上72.8%
┗特別支援学校同上同上96.4%
埼玉県令和6年度実施チャレンジ選考85.3%

このように、校種によって通過率に差はあるものの、いずれも高水準です。

特に小学校・特別支援学校を希望する場合は、非常に高い確率で一次を突破しています。

なぜ高い通過率なのか?

高通過率の背景には、以下のような要因があります。

  • 教員不足対策としての制度設計:基準を満たす受験者は、できるだけ早く現場に出てほしいという思惑がある。
  • 筆記中心の内容:3年生選考では、教職教養や専門教養など基礎的な内容がメイン。早めに準備すれば対応しやすい。
  • 人物重視の傾向:特に人物試験では、学力だけでなく教員になりたい理由や教育観を丁寧に語れるかが大切。
  • 受験者のモチベーション:早期受験に臨む学生は、目標意識が高く対策に前向きな人が多いため、結果的に合格率も上がる。

高通過率でも準備は必須

「通過率が高いから簡単に受かる」と油断してしまうと、思わぬ落とし穴にハマってしまいます。

特に、面接や論文といった人物試験は差がつきやすいポイント。

教職への適性や、これまでの経験から得た学びなどを、しっかり言語化しておく必要があります。

また、筆記においても、基礎的とはいえ範囲は広く、出題傾向の分析と対策は欠かせません。

チャレンジ選考は「挑戦すれば通る」試験ではなく、「しっかり準備した人には大きなチャンスがある制度」です。

数字の高さに安心しすぎず、筆記と人物の両面からバランスよく対策を進めていきましょう。

3年次受験に向いている人・向いていない人

大学3年生で教員採用試験を受ける制度は、大きなチャンスである一方で、全ての人に適しているとは限りません。
ここでは、どのような人がチャレンジ選考に向いているのか、また慎重に検討した方がよいタイプについて具体的に解説します。

教員になりたい気持ちが明確な人は有利

チャレンジ選考に向いているのは、教員という仕事に対する意欲や目標が明確な人です。

  • 「子どもに関わる仕事がしたい」「地域の教育に貢献したい」など、将来像をしっかり描いている人は、面接や論文など人物重視の選考で高い評価を得やすくなります。
  • また、こうした人は早い段階から教職教養の学習にも取り組む傾向があり、筆記対策もスムーズに進められます。

特に、小学校や特別支援学校など幅広い教育的視点が求められる校種では、強い目的意識が高評価につながることが多いです。

迷いがある・実習経験がない人は慎重に

一方で、次のようなタイプの方は、受験時期を慎重に見極める必要があります。

  • 「教員になりたい気持ちはあるけれど、他の職業も気になる」
  • 「教育実習をまだ経験していないので、現場での自分の適性が分からない」
  • 「目指す校種が明確に決まっていない」

このように、まだ将来の方向性に不安がある状態で受験すると、準備に集中できず負担が増えるリスクがあります。

特に教育実習を経験していない場合、面接や論文で語る内容に説得力を持たせにくく、「教員としてのリアリティ」が薄く見えてしまうことも。
まずは現場体験や自己分析を通して、本当に教員を目指したいのかどうかを見極める時間を取ることが大切です。

3年生で受験する場合の準備スケジュール

大学3年次で教員採用試験に挑戦する場合、早期かつ計画的な準備が合格の鍵となります。

4年生での通常受験とは異なり、3年生での受験はスケジュールがやや前倒しになるため、「いつ、何を始めればいいか?」を明確にしておくことが重要です。

いつから勉強を始めるべき?

チャレンジ選考で合格を目指すなら、大学2年生のうちから基礎固めを始めるのが理想的です。

  • 2年次後期〜3年次前期:教職教養・専門教養など筆記試験の基本科目を集中して学習
  • 3年次後期以降:模試や過去問演習、人物試験(論文・面接)の対策へ段階的に移行

特に3年次前期には、学業と並行して試験対策のベースを作る期間として捉えると、後半に向けて余裕を持って対応できます。

実習なしでも合格するための工夫

多くの大学では、教育実習が4年次に行われるため、チャレンジ選考を受ける3年生は「現場経験がないまま面接や論文に臨む」ことになります。

そのような状況でも高評価を得るためには、次のような工夫が有効です。

  • 教育実習の代わりとなる体験を積む
     学校ボランティアや児童館での活動、塾や教育支援系のアルバイトなど、子どもと関わる経験があれば、それを軸に教育観を語ることができます。
  • 模擬授業や面接の練習を積極的に行う
     大学のキャリアセンターや教育学部のゼミ、あるいは予備校などで、実践形式の練習を重ねておくと安心です。
  • 他の受験生との差別化ポイントを明確に
     実習経験がないことを不利にせず、自分がこれまでの学びや経験からどのような教育観を育んできたかを、論理的に伝える工夫が必要です。

大学と受験勉強の両立方法

3年次は、専門科目の履修やゼミ、課題など大学の学業も本格化する時期です。

そのなかで教員採用試験の対策を進めるには、時間の使い方と勉強環境の整備がカギとなります

  • 学習負担の分散を意識する
     3年次で筆記試験に集中し、4年次は人物試験に専念することで、1年分の負荷を2年に分けられます。
  • オンライン学習や通信講座を活用する
     空き時間を活かせるよう、スマホやPCで学べる教材を選ぶと、スキマ時間の勉強がしやすくなります。
  • 計画表や学習スケジュールの作成
     週単位・月単位で進捗を管理すると、試験日から逆算した「今やるべきこと」が明確になり、モチベーション維持にもつながります。
  • 必要に応じて予備校のサポートを活用する
     予備校や専門スクールでは、論文添削や面接練習など、自力では対策しづらい部分を強力にサポートしてくれます。

3年次受験は「やることが多い」と感じられるかもしれませんが、逆に言えば「先に片付けておけることが多い」という大きな利点でもあります。
無理のないスケジュールで、一歩ずつ積み上げていきましょう。

まとめ

「教員採用試験は大学4年生で受けるもの」というこれまでの常識は、今、静かに変わり始めています。
大学3年生のうちから受験できる「前倒し選考」「チャレンジ選考」の制度は、年々導入自治体が増え、教員を目指す学生にとって非常に有利なチャンスとなりつつあります。

特に、3年次での受験には以下のような大きな魅力があります。

  • 合格のチャンスが実質的に2回になる
  • 学習負担を分散できる
  • 教育実習や就職活動との両立がしやすくなる
  • 合格率が比較的高い自治体も多い

その一方で、情報収集・スケジュール管理・自己分析といった自己主導の準備も必要不可欠です。
自分の進路に迷いがある方や、実習を経験していない場合は、慎重に受験タイミングを見極めることも選択肢のひとつです。

この制度は「早く行動した人が有利になる」制度です。
もしあなたの中に「教員になりたい」という確かな想いがあるなら、ぜひチャレンジ選考制度を活用して、夢への第一歩を早く踏み出してみてください。

最新情報は各自治体の教育委員会HPで随時更新されています。
志望自治体が対象となっているかを確認し、早めに準備を始めることで、合格への道は大きく開けていくでしょう。

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