教員としてさらなる高みを目指したいと考えている方の中には、教員専修免許状の取得について気になっている方もいるのではないでしょうか。

一種免許状や二種免許状とは何が違うのか、取得することでどのようなメリットがあるのか、具体的な取得方法はどうすれば良いのかなど、疑問を抱く方は少なくありません。

このコラムでは、教員専修免許状の基本的な情報から、一種・二種免許状との違い、取得するメリット、そして具体的な取得方法まで、徹底的に解説します。

教員としてのキャリアアップを真剣に考えている方、教育現場でより高度な専門性を発揮したいと考えている方は、ぜひ最後まで読み進めて、自身の将来設計に役立ててください。

教員専修免許状とは？一種二種免許との違い

教員免許状にはいくつかの種類があり、その中でも「普通免許状」が一般的です。

普通免許状は、卒業した学校や取得した課程によって、専修免許状、一種免許状、二種免許状の3つに区分されます。

これらの免許状は、取得するために履修した科目の単位数と、必要とされる基礎資格が異なります。

• 二種免許状：短期大学卒業程度の単位（45単位）を修得し、専門士または短期大学士の学位が基礎資格として必要です。
• 一種免許状：大学卒業程度の単位（67単位以上）を修得し、学士の学位が基礎資格として必要です。
• 専修免許状：大学院修了程度の単位（91単位以上）を修得し、修士の学位が基礎資格として必要です。

特に高等学校の教員免許状には二種免許状の区分がないため、高等学校の教員を目指す場合は一種免許状以上の取得が必須です。

一種二種免許との違い 

教員免許状の種類によって、小学校教諭としての仕事内容に差や制限はありません。二種免許状を所持していても、一種免許状や専修免許状の所持者と同様に、クラス担任や学年主任などを任される可能性があります。

しかし、免許の種類がキャリアパスに影響を及ぼす場合があります。

私立学校の中には、採用条件として「一種免許または専修免許所持」と規定している場合があるため、二種免許状では応募できないケースも存在します。

また、二種免許状を所持している教員には、教育職員免許法において一種免許状の授与を受けるように努める「努力義務」が課されています。

さらに、将来的に校長や教頭、副校長といった管理職を目指す場合、一種免許状以上が必要となります。

給与面においても、正確には教員免許の種類ではなく、「修士」「学士」といった最終学位によって差が出ることがあります。

そのため、キャリアや収入面を考慮すると、最初から一種免許状、あるいは専修免許状の取得を目指す方が、よりスムーズなキャリア形成につながると考えられます。

教員専修免許状を取得するメリット

教員専修免許状の取得は、教員としてのキャリアを大きく広げ、専門性を深めるための重要なステップとなります。

高度な専門知識と教授能力の向上 

専修免許状は、一種免許状を基礎として、大学院でさらに深く専門分野を研究することで取得できる免許状です。

大学院での学びを通じて、高度な専門知識と教授能力を向上させることが可能です。現代の教育現場では、日々変化する状況に対応するため、より深い専門知識や実践的な教授法が求められています。

専修免許状の取得は、このような教育現場のニーズに応え、自身の教育者としての力量を高める上で大きな意味を持ちます。

管理職を目指せるキャリアパスの拡大 

教員専修免許状を所持していると、管理職（校長、教頭、副校長など）を目指すキャリアパスが拡大します。

地域によっては、管理職になるための必須条件として専修免許状の取得を推奨している場合もあります。

教育現場でリーダーシップを発揮し、学校運営や教育方針の決定に携わりたいと考える教員にとって、専修免許状の取得は不可欠な要件となるでしょう。

給与面での優遇 

教員免許の種類自体が直接給与を決定するわけではありませんが、修士の学位を有することが、給与面での優遇につながる場合があります。

専修免許状の取得は、大学院修了と修士の学位取得を伴うため、結果として給与体系において有利な位置付けとなる可能性があります。

自身の専門性向上だけでなく、経済的な安定も視野に入れるならば、専修免許状の取得は有効な選択肢となります。

多様な人材が教育現場に出る意義への貢献

教員専修免許状の取得は、自身のキャリアアップに加えて、教育現場全体への貢献にもつながります。

社会人経験を積んだ多様な人材が、大学院で専門性を深め、教員として学校現場に出ることは、子どもたちに多様な価値観や知識、スキルを伝える機会を拡大します。

異なるバックグラウンドを持つ教員が増えることで、学校教育はより豊かになり、子どもたちの学びを広げることにも貢献します。

文部科学省も「令和の日本型学校教育」において、「社会人等多様な人材の活用」を人材確保の重要な要素として位置付けています。

専修免許状を取得するには

専修免許状は、現職の教員が保有する一種免許状から上位の免許状へステップアップするための制度です。現在の免許状と教職経験を活かして、比較的短期間で取得することが可能です。

取得に必要な条件・要件

専修免許状を取得するためには、以下の基本的な条件を満たす必要があります。

現在の免許状（一種免許状の保有）

小学校、中学校、高等学校、特別支援学校のいずれかの一種免許状を保有していることが前提条件となります。

文部科学省によると、教員免許状を取得するためには原則として大学等において学士の学位等の基礎資格を得るとともに、教職課程において所定の単位を修得することが必要ですが、専修免許状の場合は既に保有している一種免許状が基礎となります。

教職経験年数（3年以上の在職要件）

該当する免許状での教職経験が3年以上あることが必要です。

この経験年数は、実際に教員として良好な勤務成績で勤務した期間として計算されます。

都道府県によって在職年数の算定方法が異なる場合があるため、申請前に勤務する学校所在地の教育委員会に確認することが重要です。

修得すべき単位数（15単位以上）

専修免許状への上進には、通常15単位以上の修得が必要です。

大学院によっては、4科目（16単位）の単位修得で専修免許状への上進が可能としています。これらの単位は、免許法認定通信教育などを通じて取得することができます。

免許法認定通信教育の活用

専修免許状取得の最も効率的な方法が、免許法認定通信教育の活用です。

通信教育プログラムへの申し込み

免許法認定通信教育は、一定の教員免許状を有する現職教員が、上位の免許状や他の種類の免許状を取得するために開設されている制度です。

PCを利用する通信教育のため、自宅ですべて学修を完了することができ、1科目からの申し込みも可能です。

レポート・試験による単位修得

学修の流れは以下のようになります。

• テキスト学修（指定されたテキストを読む）
• レポート作成・提出（学修指導書の課題に基づく）
• 科目修得試験の受験（自宅で受験可能）
• 単位認定

スクーリングは不要で、レポートと試験のみで単位修得が可能です。不合格になった場合も開講期間内は何度でも再提出できます。

学力に関する証明書の取得

指定の単位数をすべて修得後、「学力に関する証明書」の発行申請を行います。この証明書は、教育委員会への免許申請時に必要な重要書類となります。

申請手続きの流れ

専修免許状取得のための具体的な手続きは以下の通りです。

教育委員会への申請準備

まず、勤務する学校所在地の都道府県教育委員会に、申請可能な条件を満たしているかを確認します。

都道府県によって必要単位の内訳や在職年数の算定方法が異なるため、この確認は必須です。

必要書類の提出

申請には以下の書類が必要となります。

• 学力に関する証明書（大学院等で修得した単位の証明）
• 実務証明書（勤務校の管理職による証明）
• 現在保有している免許状の写し
• その他、各教育委員会が定める書類

専修免許状の交付

書類審査を経て、問題がなければ専修免許状が交付されます。

これは「教育職員検定」と呼ばれる制度によるもので、実際には試験があるわけではなく、学力の検定は大学での単位修得、人物・実務・身体の検定は勤務校の管理職による書面での証明によって行われます。

短期間での取得方法

現職教員が効率的に専修免許状を取得するためのポイントをご紹介します。

現職教員向けの効率的なルート

免許法認定通信教育を活用することで、大学院に通学することなく必要な単位を修得できます。

例えば、小学校教諭一種免許状を持つ教員が、3年以上の教職経験を活かして免許法認定通信教育で15単位以上を修得し、専修免許状を取得するルートが代表的です。

通信教育を活用した学習方法

• PCを使用した完全オンライン学習
• 自分のペースでの学修進行
• 平日の勤務後や休日の活用
• 1科目ずつの段階的な取り組み

開講期間（通常4月から翌年2月）内に計画的に学修を進める必要があります。

科目修得試験は年間複数回実施されるため、自分のスケジュールに合わせて受験日程を選択できます。1日に複数科目の受験も可能なため、効率的な単位修得が期待できます。

まとめ

教員専修免許状は、教員としての専門性を深め、キャリアパスを拡大するための重要な資格です。

一種免許状や二種免許状と異なり、大学院修了相当の高度な知識と技能を証明するものであり、管理職への昇進や給与面での優遇といった具体的なメリットをもたらします。

教員免許状の取得は、単に資格を得るだけでなく、自身の教育観を深め、子どもたちの未来を担う教育現場でより大きな貢献を果たすための重要な投資となります。

教員としてのさらなる成長を目指し、教員専修免許状の取得を検討してみてはいかがでしょうか。