教員の部活動手当は支給される?おかしい・負担と言われる理由6つ
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教員として働いている、または教員を目指している方で、部活動の負担や待遇に、不安を感じている方は多いのではないでしょうか。
本コラムでは、教員の部活動手当について詳しく解説します。
また、部活動手当の支給額や対象となる活動を紹介し、教員の部活動業務が「おかしい」と言われる理由をまとめました。
加えて、近年進む改革の動きや今後の課題について触れることで、部活動業務のこれからを考察します。
ぜひ参考にしてください。
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教員に部活動手当は支給されます。
しかし、その金額は十分とは言えないうえ、条件も限定的なため、教員の労働実態に見合っているとは言い難いのが現状です。
部活動手当の支給額や対象範囲を詳しく見ていきましょう。
部活動手当の正式名称と支給額の実態
教員に支払われる「部活動手当」の正式名称は「教員特殊業務手当」。
主に土日などの休日に、部活動の指導や大会の引率を行った際に支給される手当です。
文部科学省の基準では、支給額は「4時間程度」で3,600円、「2〜4時間」で1,800円とされています。
以下は、2018年に文部科学省が発表した『運動部活動の在り方に関する総合的なガイドラインの策定及び運動部活動の適切な運営等に係る取組の徹底について』より、「5公立の義務教育諸学校に係る教師に支給される部活動指導手当の支給基準について」の内容を抜粋したものです。
公立の義務教育諸学校に係る教師に支給される部活動指導手当については,地方公務員法第24条第5項及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律第42条に定めるところにより,各都道府県又は指定都市の条例等において支給要件や手当額を定めるものです。部活動指導手当に係る義務教育費国庫負担金の特殊勤務手当の算定基準は,土日4時間程度の勤務を前提に3,600円と示していますが,これは,国庫負担金算定にあたり土日4時間以上行わないと部活動指導手当を支給しないという趣旨ではなく,現在でも,各自治体の実態に応じて,「土日2時間以上4時間未満」や「土日3時間程度」など,「土日4時間程度」以外にも様々な基準を設定しているところです。
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/hakusho/nc/1402808.htm
金額は自治体の条例によって異なります。
東京都では日額3,000円ですが、そのほかの自治体では2,700円という例も。
ただし、高体連などの一部の大会の引率を8時間以上行った場合は、申請することで4,250円が支給されます。
この金額は労働基準法で定める休日手当と比較して、著しく低水準であり、「非常に少額」であることは否めません。
なお、休日であっても活動時間が規定に満たない場合は支給対象外です。
いずれにせよ、教員の実働と手当の間に大きな乖離があることは事実といえるでしょう。
手当の対象となる活動範囲と条件
部活動手当の対象となる活動には、休日の「練習指導」「公式戦などの試合引率」「野外活動」などが該当します。
ただし、放課後指導や休日の試合引率でも活動時間が短い場合(2時間未満)は、手当が支給されないケースもあるため注意が必要です。
支給されないケースもある?自治体間・学校間の差
部活動手当は、国が定めた指針に基づき「休日4時間程度の活動で3,600円」とする方針が
2018年から打ち出されていますが、実際の支給状況には地域差があります。
例えば、東京都では「日額4,000円」が支給される一方、川崎市では「3時間以上で2,700円-〜/3時間で700円/2時間未満は支給なし」と金額に大きな差があるのが実情です。
また、宮城県全体では「3時間程度2,700円」ですが、同県内の仙台市では「4時間以上で4,800円/3〜4時間未満で3,600円/2〜3時間未満で2,400円/2時間未満で1,200円」でした。
さらに、自治体や学校によっては手当自体が支給されない、もしくは上限が設けられている場合もあります。
このように、同じ勤務内容でも、自治体によって手当の有無や金額に大きなばらつきがあるため、制度の不公平感は否めないでしょう。
教員の部活動業務について「おかしい」と言われる理由
ここでは、教員の部活動業務が「おかしい」と言われる理由は以下の3つです。
- 労働時間と手当が見合っていない
- ボランティアに近い働き方
- 教員の本来業務とのバランスが崩れる
それぞれについて詳しく解説します。
労働時間と手当が見合っていない
労働時間に対して、報酬や待遇が極めて不十分であることが「おかしい」と言われる最大の理由です。
教員の部活動指導は、平日の放課後だけではなく、早朝練習や土日祝日の練習試合・大会引率までおよびます。
部活動手当は4時間以上指導して、ようやく3,600円程の手当が出るケースが一般的です。
さらに、2〜3時間の活動では1,800円程度、2時間未満では支給されないこともあります。
つまり、丁寧に指導すればするほど時間はかかるものの、その努力は金銭的に報われないという矛盾が生じています。
生徒に寄り添い頑張るほど報酬が少なくなる実態に、「教師の献身が制度的に搾取されている」という声があるのも確かです。
ボランティアに近い働き方
部活動は学校教育の一環とされつつも、多くの自治体では「勤務時間外の自主的活動」と位置づけられています。
そのため、教員の善意や責任感に依存した運営が続いているのが実態です。
部活手当が少額なうえ、勤務外の扱いであるため、実質ボランティアのようになっているケースも少なくありません。
さらに、「大会や遠征の交通費が自腹」という声も多いです。
教員が自分の時間や家族との時間を削って成り立っている部活動指導。
”自主的な活動”としてボランティアに近い働き方が常態化していることは「おかしい」という声が上がっています。
教員の本来業務とのバランスが崩れる
教員の主業務は、授業の準備・実施、教材研究・生徒指導・保護者対応などです。
しかし、多くの教員が部活動に時間を取られ、上記の本業が圧迫されている実情があります。
スポーツ庁が平成29年に公表した『運動部活動の現状について』によると、公立中学校の約9割で、全教員が部活顧問になることを原則としていたことがわかりました。
放課後や休日にも指導や試合引率を行うことが当然とされ、時間外勤務手当や休日勤務手当の対象外とされ、長時間の指導を行っても部活手当はごくわずか。
多くの教員が主業務と部活動の両立に疲弊しています。
特に若手や非正規教員は、多くの負担が集中する傾向があります。
部活顧問を任されることで、授業準備やキャリア形成にあてる準備が確保しづらいという問題も。
教育の質と教員の働き方のバランスを保つためには、部活動業務の負担を減らす抜本的な対策が求められます。
教員にとって部活動はなぜ「負担」なのか?
教員が部活動業務を負担に感じる理由は、次の3つです。
- 心身の疲労・ワークライフバランスの崩壊
- 専門性がない分野への指導負担
- 「やめたい」と思っても逃げ場がない構造
それぞれの背景を見ていきましょう。
心身の疲労・ワークライフバランスの崩壊
教員は授業や事務業務、保護者対応などに加えて、放課後や休日も部活動指導に従事しているため、長時間労働が常態化しています。
平日の放課後に練習、土日は丸一日大会引率となることも珍しくありません。
家族やプライベートの時間をもてないという声も多く聞かれます。
月に数日しか休みが取れない、疲労が蓄積しても休むことができないといった実態から、体調不良・精神不安を訴えるケースも増加しています。
専門性がない分野への指導負担
部活動顧問は、教員の専門や経験に関係なく割り当てられることがあります。
例えば、美術の教員が野球部やサッカー部を担当するケースなどです。
この場合、教員が技術指導や安全管理に強い不安を感じることは避けられないでしょう。
専門性のない分野の競技ルールを一から学ぶ必要があるため、時間・金銭的負担が発生することも多いです。
加えて、教員の専門外の分野での部活指導は、生徒への教育効果も期待できません。
生徒に対して的確な指導ができない葛藤や不安により、教員の精神的負担は非常に大きいものとなっています。
「やめたい」と思っても逃げ場がない構造
部活動顧問は「原則全教員が担当」とされる学校も多いため、顧問就任を断りづらい雰囲気があることが一般的です。
例え異動をしても、移動先でも部活動の顧問を任されるケースが多く、「どこに行っても部活動顧問から逃れられない構造」が根強く残っています。
特に若手教員ほど「断ったら評価が下がる」「職場に居づらくなる」などの不安から、断りにくい傾向があります。
改革の動きと今後の課題
教員の負担軽減を目的に、部活動を学校から地域へ移す「地域移行」が全国で進められています。
ここでは、「外部指導員の導入・地域移行の試み」と「現場とのズレや制度設計の課題」という2つの観点から改革の現状と今後の課題を考察します。
外部指導員の導入・地域移行の試み
文部科学省やスポーツ庁は、教員の長時間労働と少子化に対応するため、「地域クラブ活動への移行」や「外部人材活用」を推進中です。
これらの取り組みは、学校教員に代わって、地域の団体や人材がスポーツ・文化活動の場を提供するもので、教員の負担軽減と児童生徒の多様なニーズへの対応が期待されています。
先進事例として、長野県飯田市の「エンジョイスクエア」があります。
エンジョイスクエアは、地域の企業や団体が協力し、アロマリラクゼーションクラブや保護猫クラブなどの多様な73プログラムを提供する「まちのクラブ活動」です。
しかし、全国的には指導者不足となっていて、外部人材が十分に活用されていません。
東京都の調査でも、外部指導に「関心がある」と答えた人は34%にとどまっています。
「指導をしたことがない」理由としては、「指導できるレベルではない」「仕事が忙しい」などがあげられました。
現場とのズレや制度設計の課題
地域移行の方針は示されているものの、現場では対応が追いついていない、教員の負担が減っていないという声も多くあります。
千葉県柏市では、地域クラブが活動を担っていますが、指導者の約55%が教員の兼業で占められています。
ある教員は、部活動が地域に移行した当初は「自分の子どもとの時間をとりたい」と考えていたそうです。
しかし、子どもたちの部活動への熱意を目のあたりにした結果、「やりたい子を支えたい」と考えが変わり、兼業を引き受けたと語っています。
一方、外部指導者が集まらず、兼業を希望するように促されるケースも。
「スポーツにも文化活動にも興味がなく、顧問は苦痛でしかない。競技の専門性もないから生徒にも申し訳ない」
(フォーラム)部活動の地域移行:2 教員の声
という声もあがっています。
制度としては部活動の地域移行が進められていますが、「生徒のためにやるしかない」という教師の善意に依存する構造が根強く残っているのが現状です。
特に中小規模の学校や地方では制度移行が難航している傾向があります。
まとめ
以上、教員の部活動手当の現状と課題について解説しました。
部活動手当の金額や支給条件は不十分で、教員の負担と報酬が見合っていないのが現状です。
しかし、現場からの声や地域移行などの制度改革の動きによって、改善が少しずつ進んでいます。
確かに教員の仕事は大変な面もありますが、一方で「子どもたちと深くかかわれる」「子どもたちの成長に寄り添える」という大きなやりがいや魅力があることも事実。
現場での課題を知り、正しく備えれば、安心して飛び込める世界です。
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