不動産鑑定士は、不動産の適正な価格を評価する専門家であり、社会的な需要が高い国家資格です。

難関資格とされていますが、現職を続けながら合格を目指す社会人は少なくありません。

本記事では、社会人が働きながら不動産鑑定士を目指すことは可能なのかを徹底的に解説します。

また、合格するための効率的な勉強方法や働きながら資格取得を目指すメリット・デメリットも紹介します。

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不動産鑑定士は働きながらの社会人でも合格できる?

不動産鑑定士試験は、社会人でも十分に合格を目指せる資格です。

実際に、多くの合格者が仕事と両立しながら難関を突破しています。

ここでは、受験者や合格者のデータを使って、働きながらの社会人でも合格できるのか解説していきます。

働きながら不動産鑑定士を目指す人の割合と年齢層

不動産鑑定士試験の受験者や合格者には、仕事をしながら学習を進める社会人が多数を占めています。

一般的に文系の三大難関国家資格の一つに数えられますが、司法試験や公認会計士試験とは異なり、学生や受験に専念する人の割合は少数派です。

直近の試験結果から、受験者の属性を見てみましょう。

令和7年不動産鑑定士試験短答式試験の受験者数をみると、25歳以上30歳未満が408人と最も多く、20代の受験者は合計736人でした。

次いで30代が合計571人、40歳代が合計365名となっています。

以下に令和7年不動産鑑定士試験短答式試験の受験者と合格者を年齢別にまとめました。

年齢区分受験者数合格者数合格率
20歳未満21名7名33.3%
20歳以上25歳未満328名123名37.5%
25歳以上30歳未満408名164名40.2%
30歳以上35歳未満314名116名36.9%
35歳以上40歳未満257名96名37.4%
40歳以上45歳未満199名63名31.7%
45歳以上50歳未満166名63名38.0%
50歳以上55歳未満174名60名34.5%
55歳以上60歳未満146名44名30.1%
60歳以上131名43名32.8%
合計2,144名779名36.3%
参照:令和7年不動産鑑定士試験短答式試験の結果について

不動産鑑定士試験に合格した人の割合と年齢層

次に、合格者の属性を見てみましょう。

不動産鑑定士は短答式試験と論文式試験があり、短答式試験に合格した人が論文式試験を受験することができます。

そして、論文式試験に合格した人が最終合格者となります。

論文式試験は短答式試験より難易度が高く、合格率も低いです。

令和7年不動産鑑定士試験の論文式試験は、受験者981人中合格者は173人でした。

最も多いのが30代の方であり、次いで30歳未満、40代と続きます。

以下に最終合格者(試験論文式試験合格者)を年齢別にまとめました。

年齢区分受験者数合格者数合格率
30歳未満260名72名27.7%
30歳以上35歳未満151名38名25.2%
35歳以上40歳未満129名27名20.9%
40歳以上45歳未満104名12名11.5%
45歳以上50歳未満106名8名7.5%
50歳以上55歳未満79名6名7.6%
55歳以上60歳未満77名8名10.4%
60歳以上75名2名2.7%
合計981名173名17.6%
参照:令和7年不動産鑑定士試験論文式試験の結果について

以上のことから、受験者・合格者ともにほとんどの人が働いている社会人であることがわかります。

社会人が不動産鑑定士を目指して、働きながら合格を目指すことは可能だと言えるでしょう。

働きながら不動産鑑定士試験に合格する勉強方法

働きながら不動産鑑定士試験の合格を目指すには、効率的な学習戦略と、限られた時間を最大限に活用する工夫が必要です。

隙間時間の活用

働きながら勉強の時間を確保するには、隙間時間を最大限に有効活用することです。

例えば、毎日2〜3時間の勉強を確保する場合、1時間を通勤中の学習に充て、さらに自宅で1時間から2時間の勉強を積み重ねるなどの工夫をしましょう。

常に暗記用の教材を携帯し、通勤時間だけでなく、休憩や待ち合わせのちょっとした時間など、いつでも取り出して目を通せるように準備することが大切です。

教材を繰り返し見る習慣を身につけることによって、知識の定着を図れます。

不動産鑑定士試験の科目は、一部の電卓を使う科目を除けば、基本的に机に向かわなくても勉強できる内容が多数を占めます。

そのため、スマートフォンや小型タブレットを活用し、PDF形式の学習教材や基準書などを繰り返し確認することも効果的な学習方法です。

スマートフォンは手軽に取り出せるため、電車内で本を開くスペースがない場合でも学習を進められます。

不動産鑑定士試験は、長時間集中して勉強するよりも、細切れ時間を駆使してコツコツと暗記を積み重ねることが合格への最短ルートとなります。

分厚い基本書を熟読するよりも、覚えるべきポイントを繰り返し確認する学習スタイルが、働きながら勉強する社会人に比較的向いているといえるでしょう。

2段階合格を目指す

働きながら合格を目指す社会人の多くは、学習期間を1年半〜2年と設定し、2段階での合格を目指しています。

2段階での合格とは、1年目に短答式試験の合格を目指し、合格した翌年に論文式試験に集中して合格を目指すという方法です。

不動産鑑定士試験では、短答式試験に合格すると、翌年及び翌々年の2年間の短答式試験が免除されます。

その間、直接論文式試験を受けることができるため、精神的な負担を減らし、論文対策に専念できます。

また、最優先すべき科目は「鑑定理論」です。

鑑定理論は、短答式試験・論文式試験の双方で全体の約50%の配点比率を占める最重要科目であり、この科目を得意にせずして合格は実質不可能です。

短答対策の初期段階から、不動産鑑定評価基準(基準)の正確な理解と暗記を心がけ、論文式試験を見据えた学習を進めることが早期合格への鍵となります。

独学にこだわらず予備校・通信講座を最大限活用する

予備校の活用は、お金で時間を買っているようなものであり、特に社会人には推奨されます。

実際に不動産鑑定士試験は、予備校を利用して受験している人が多いです。

独学の場合、試験の範囲が広いため、どこまで勉強すればよいか、何が不要な情報かといった判断が難しくなります。

結果として、不要なことまで多く学習してしまい、最短ルートでの合格が難しくなる傾向があります。

一方で、予備校や通信講座を利用すると、プロの講師陣が過去の試験問題を分析し、合格に必要な知識と不要な知識を的確に判断してくれます。

効率的に学習を進めることができ、限られた時間の中で合格への最短ルートを駆け抜けることが可能になります。

特に社会人の場合、今後の人生設計やキャリアプランを考えると、早く合格した方が有利であることは明白です。

そのため、予備校の活用を積極的に検討し、プロのサポートを受けることで、より確実に、より早く合格を目指すことが賢明な選択といえるでしょう。

働きながら不動産鑑定士を目指すメリット・デメリット

不動産鑑定士は、弁護士や公認会計士と並ぶ三大国家資格の一つであり、その希少性の高さから高い専門性と安定したキャリアを築ける魅力的な資格です。

しかし、合格までの道のりは長く、仕事をしながら目指すことには大きな覚悟が必要です。

ここでは、働きながら不動産鑑定士を目指す際のメリットとデメリットを詳しく解説します。

働きながら学ぶデメリットと課題

働きながら不動産鑑定士を目指すことには、いくつかのデメリットや課題も伴います。

最大の課題は、やはり仕事と学習の両立です。

多忙な業務の合間を縫って学習時間を確保することは簡単ではありません。

毎日残業で帰宅が遅くなるような状況でも、時間をやりくりして勉強を続ける必要があります。

また、不動産鑑定士として登録するためには、短答式・論文式試験合格後に実務修習を修了する必要があります。

実務修習とは、実際の鑑定案件に携わりながら進めるもので、基本演習などは平日に東京の会場で行われるため、会社を休む必要が生じます。

休みを調整したり、勤務先に理解を得たりすることが必要でしょう。

また、遠方から受講する場合は、移動時間や宿泊費も考慮しなければなりません。

ただし、実務修習は1年コースと2年コースが選択できます。

期間に余裕のある2年コースであれば、働きながら実務修習を受けることも不可能ではありません。

働きながら不動産鑑定士を目指すメリット

不動産鑑定士は、一度取得すれば社会貢献性も高く、専門性を活かして長期的に活躍できる汎用性の高い専門資格です。

働きながら不動産鑑定士を目指すことは、資格取得後のキャリアにおいて大きな強みとなります。

学習と実務経験の相乗効果

不動産会社や金融機関など、不動産関連の業務に携わっている社会人であれば、日々の仕事がそのまま学習に活かせる場合があります。

机上の勉強だけでなく、実際の業務を通じて不動産の知識を深め、イメージを具体的に掴めるのは大きなメリットです。

金銭的な安定と精神的余裕

仕事を辞めて受験に専念する場合、収入が途絶えることになります。

その点、働きながら学習を進めれば、安定した収入を確保できるため、金銭的な不安なく勉強に集中できます。

また、実務修習中も給料を得ながら経験を積める可能性があるため、キャリアを中断せずにスキルアップできるのも大きなメリットといえるでしょう。

培ったビジネススキルを活かせる

不動産鑑定士の仕事は、鑑定評価だけでなく、クライアントとの交渉やプレゼンテーションなど、多様なビジネススキルが求められます。

会社員として培った時間管理能力やストレス耐性、コミュニケーション能力は、資格取得後の独立やキャリアアップにおいて大きな武器となるでしょう。

まとめ

不動産鑑定士は社会人が働きながらでも十分に合格を目指せる資格です。

長期的なキャリア形成を考えるなら、働きながらでも挑戦する価値がある資格といえるでしょう。

本コラムの内容を以下にまとめました。

  • 社会人受験者が多数を占め、30代合格者が中心
  • 短答式・論文式の2段階突破で計画的に合格を目指せる
  • 隙間時間の活用と鑑定理論を重点的に学習することが合格の鍵
  • 働きながら効率的に合格を目指すためには予備校・通信講座の活用がおすすめ
  • 仕事と学習両立の課題はあるが、安定収入や実務経験が今後のキャリアにおいて大きな強みになる

働きながら不動産鑑定士を目指すことは、楽な道のりではありません。
しかし、その過程で得られる経験やスキルは、資格取得後のキャリアをより豊かなものにしてくれます。

そのためには、社会人としての経験やリソースを活かしつつ、計画的に学習を進めることが重要です。

オンライン学習や通信講座をうまく活用し、効率的な学習環境を整え、諦めずに挑戦しましょう。

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