不動産鑑定士に興味をお持ちの方は、以下の点が気になっているのではないでしょうか。

「不動鑑定士の資格を取ったら、どんなところで働ける？」

「不動産鑑定士は就職できないって本当？」

不動産鑑定士試験は難易度が高いため、資格取得後の働き方をイメージしてから、試験に挑戦するかどうかを判断したいですよね。

本コラムでは、不動産鑑定士の就職事情や、就職できないという噂の真偽について解説します。ぜひ最後までご覧ください。

不動産鑑定士の就職先・転職先は？どこで働く？

不動産鑑定士の主な就職先・転職先は、以下の通りです。

• 不動産鑑定事務所
• 不動産業界の企業
• コンサルティングファーム
• 金融業界の企業
• 独立開業

それぞれについて、詳しく解説します。

不動産鑑定事務所

不動産鑑定士の主な就職先は、不動産鑑定事務所です。

不動産鑑定士事務所の多くは、国や自治体、および個人や法人など、幅広い顧客からの依頼を請け負っています。

また、不動産鑑定士の仕事内容は鑑定評価だけでなく、不動産に関する相談業務や、コンサルティング業務などを行う場合もあります。

多様な業務に携わることで、不動産鑑定士としての経験値を得られるでしょう。

ただし、一口に不動産鑑定事務所といっても、事務所の規模や、取り扱う業務の内容はさまざまです。

数名規模の事務所と、数百名以上が在籍する大手事務所とでは、経験できる業務の内容は異なります。

自分が経験したい業務や、目指したいキャリアに応じて就職先を選択しましょう。

不動産業界の企業

不動産鑑定士は、不動産業界の企業で働くことも可能です。

不動産鑑定士は、不動産の評価を鑑定するための幅広い知識を有しています。

企業内鑑定士として働くだけでなく、鑑定部門や管理部門での業務においても、不動産鑑定士としての知識やスキルを活かせるでしょう。

また、不動産開発や、不動産に関する企画や立案などの業務でも活躍できる可能性があります。

コンサルティングファーム

コンサルティングファームも、不動産鑑定士の就職先のひとつです。

コンサルティングファームでは、主に不動産運用に関するコンサルティング業務において、不動産鑑定士の知識を活かせます。

コンサルティング業務の例としては、賃貸経営・不動産の有効活用・マンションの建て替えに関するアドバイスに加え、市街地開発や街づくりに関する提案などがあげられます。

金融業界の企業

不動産鑑定士は、金融業界の企業に就職できる可能性があります。

銀行や信託銀行などでは、顧客への融資を行う際に、担保不動産の鑑定評価を行う場合があります。

また、不動産の有効活用や、不動産運用に関する相談などの業務において、不動産鑑定士に対する一定のニーズが期待できるでしょう。

独立開業

不動産鑑定士としての経験を積めば、独立して自分の事務所を構えることも可能です。

不動産鑑定士は、国や都道府県などから公的評価の依頼を受けられます。

公的評価に加えて、個人や法人からの依頼による民間評価の仕事を組み合わせれば、自分の努力次第で収入を増やせるでしょう。

また、不動産鑑定士は、公認会計士や税理士などと相性が良い資格であるため、ダブルライセンスを取得したり、有資格者と協力したりすることで、仕事の幅を広げられます。

参考：不動産鑑定士って、こんな仕事です。

不動産鑑定士は就職難？就職できないって本当？

結論から述べると、不動産鑑定士は就職できないという噂は、事実ではありません。

現在の日本は少子高齢化が進んでいるため、地方の過疎化によって、不動産鑑定士の仕事が減りつつあると言われています。

しかし、都市部では、比較的仕事を得られやすい傾向があります。

地方で就職しにくいと感じたら、都市部で仕事を探すという選択肢もあるでしょう。

また、不動産鑑定士は、「不動産の鑑定評価業務」を独占する業務独占資格であるため、一定の需要があります。

何も資格をもっていない人と比べれば、就職活動を有利に進められるでしょう。

加えて、不動産鑑定士の仕事は、鑑定業務だけではありません。

個人や法人の顧客に対して、不動産の有効活用や、開発計画に関する提案などのコンサルティングを行う場合があります。

独占業務だけでなく、さまざまな仕事に携われることは、不動産鑑定士の強みのひとつです。

不動産鑑定士資格の実施団体である公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会のホームページには、不動産鑑定士に対する多くの求人が掲載されています。

新しい求人も多く見受けられるため、積極的な就職活動を行えば、仕事が見つかる可能性は高いと考えられます。

不動産鑑定士としての知識や情報をアップデートし、自分の強みをアピールできれば、スムーズな就職を目指せるでしょう。

不動産鑑定士が「就職できない」と言われる5つの構造的な理由とその対策

不動産鑑定士が「就職できない」と言われる背景には、資格取得者が直面しやすい5つの構造的な理由があります。
ここでは、それぞれの理由と具体的な対策を解説しますので、就職活動の参考にしてください。

年齢の壁:30代後半以降は実務経験が求められる

不動産鑑定士試験の合格者は、30代以降の方も少なくありません。
しかし、30代後半を過ぎると、実務未経験での就職は難易度が上がります。

企業側は即戦力を求める傾向があるため、資格だけでなく実務経験やマネジメントスキルが重視されるのです。

対策

• まずは中小規模の鑑定事務所で実務経験を積む
• 公認会計士や税理士などのダブルライセンスを取得する
• 前職での不動産関連の経験をアピールする

実務経験を2~3年積めば、大手への転職も視野に入るでしょう。

待遇面の厳しさ:初任給が期待より低い場合がある

不動産鑑定士の初任給は、事務所の規模や地域によって大きく異なります。
特に中小事務所では、年収300万円台からスタートするケースもあるでしょう。

難関資格のイメージから高収入を期待していた方にとっては、ギャップを感じるかもしれません。

対策

• 最初の数年は修行期間と割り切って実務経験を優先する
• 実績を積んでから大手への転職や独立を目指す
• 副業可能な事務所を選び、コンサルティング業務で収入を補う

実務経験を積めば、年収600万円~1,000万円以上も十分可能な資格です。

地域格差:地方では求人数が限られている

都市部と地方では、不動産鑑定士の求人数に大きな差があります。
地方では少子高齢化や人口減少により、不動産取引自体が減少している地域も少なくありません。

そのため、地方在住の方は「就職先がない」と感じやすいのです。

対策

• 東京・大阪・名古屋などの都市圏での就職を検討する
• リモートワークを導入している事務所を探す
• 地方自治体の公的評価業務に特化した事務所を狙う

地方でも公的評価の需要はあるため、その分野に強い事務所を選ぶのも一つの方法でしょう。

求人情報の少なさ:一般的な転職サイトに掲載されにくい

不動産鑑定士の求人は、大手転職サイトにはあまり掲載されません。
日本不動産鑑定士協会連合会のホームページや業界内のネットワークが主な情報源となります。

そのため、一般的な方法で就職活動をしても、求人を見つけにくいのです。

対策

• 日本不動産鑑定士協会連合会の求人ページを定期的にチェックする
• 業界内のセミナーや勉強会に参加してネットワークを構築する
• 不動産鑑定士に特化した人材紹介会社を活用する

業界内のつながりが就職成功の鍵となるケースも多いでしょう。

専門性の高さ:即戦力として活躍するまで時間がかかる

不動産鑑定士の実務は、試験知識だけでは対応できない専門性の高い業務です。
実際の鑑定評価では、地域特性や市場動向の分析など、経験に基づく判断力が求められます。

そのため、資格取得直後は即戦力とみなされにくく、採用を見送られるケースもあるのです。

対策

• 試験勉強中から実務補習を積極的に受講する
• 不動産業界での実務経験がある場合は積極的にアピールする
• 研修制度が充実している事務所を選ぶ

あなたが学び続ける姿勢を示せば、育成を前提に採用してくれる事務所も見つかるはずです。

不動産鑑定士は大手に就職できる？

不動産鑑定士の資格を取得すれば、大手鑑定事務所や大手コンサルティングファームへの就職・転職も不可能ではありません。

ただし、ほかの仕事と同様に、不動産鑑定士の業界においても、年齢や経験によって就職の難易度が変わります。

資格を取得して間もなく、実務が未経験の状態では、大手企業へ入社することは難しいと考えましょう。

特に、30代後半を過ぎてから大手企業への就職を目指す場合は、不動産鑑定士としての実績や、公認会計士をはじめとする別の資格を持っている方が有利です。

大手の鑑定事務所やコンサルティングファームで働きたい方は、不動産鑑定士としての経験を積み、自分の市場価値を高めてから挑戦することをおすすめします。

まとめ

本コラムでは、不動産鑑定士の就職事情について解説しました。

不動産鑑定士資格の取得によって、不動産・金融・コンサルティングなどの業界で働く道が開けます。

また、不動産鑑定士としての実績を積めば、独立開業も可能です。

不動産鑑定士は業務独占資格であるため、働き方にかかわらず、一定の需要が見込まれるでしょう。

不動産鑑定士は、専門性が高く、ほかの資格との組み合わせによって市場価値を高めやすい資格です。

就職に役立つ資格を取りたいと考えている方は、不動産鑑定士を目指してみてはいかがでしょうか。