「医学部はやめとけ」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

医学部受験を検討している多くの人が、この言葉に迷いを感じています。

実際に医学部に通う学生や医師からも同様の声が聞かれることがあり、その背景には医学部特有の厳しい現実が存在。

一方で医学部を卒業し医師になった人たちの中には「医学部に進んで良かった」と語る人も多くいます。

医学部への進学は人生を大きく左右する重要な決断でもあるでしょう。

この記事では、医学部やめとけと言われる具体的な理由から、医学部進学のメリット、さらには自分に医学部が向いているかどうかの判断基準まで、客観的な情報を紹介します。

医学部やめとけと言われる7つの理由

医学部がやめとけと言われる理由は多岐にわたります。ここでは主要な7つの理由について詳しく解説しましょう。

• 膨大な暗記量と終わりない勉強の現実
• 留年率の高さ
• 医師国家試験の厳しさ
• 閉鎖的な人間関係と特殊な医学部文化
• 高額な学費と経済的負担の重さ
• 医師になってからの長時間労働とプレッシャー
• AIの台頭による将来性への不安

膨大な暗記量と終わりない勉強の現実

医学部の勉強量は他の学部と比較して圧倒的に多いのが現実です。

医学部生の1週間あたりの勉強時間は約40時間となっており、これは他学部の約2倍に相当します。

解剖学、生理学、病理学など、覚えなければならない専門用語や知識は膨大で、まさに暗記の連続といえるでしょう。

特に基礎医学の期間中は、人体の構造から疾患のメカニズムまで、詳細な知識を完璧に覚える必要があります。

夏休みや冬休みも試験勉強に追われ、一般的な大学生活とは程遠い日々を送ることになるのです。

医学部生の中には「朝から晩まで勉強漬けで、友人と遊ぶ時間がほとんどない」と嘆く声も多く聞かれます。

学習環境に適応できない場合、大きなストレスを感じることになるでしょう。

留年率の高さ

医学部は他学部と比べて留年率が非常に高いことで知られています。

一般的な大学では入学すれば卒業までたどり着ける確率が高いものですが、医学部では異なります。

私立医学部の中には、1学年で30人近くが留年する大学も存在し、受験戦争を勝ち抜いた優秀な学生でも留年のリスクが常に高いです。

医学部では全科目が必修科目となっており、ひとつでも単位を落とすと留年が確定します。

また、欠席日数が一定数を超えただけでも留年になる場合があり、体調不良や家庭の事情があっても休むことが困難な環境といえるでしょう。

留年すると追加の学費が発生するだけでなく、精神的なダメージも大きく、医学部を諦める学生も少なくありません。優秀だった学生が複数回の留年を経験し、最終的に医学部を去るケースも珍しくありません。

医師国家試験の厳しさ

医師国家試験の合格率は約90％と聞くと高く感じるかもしれませんが、実際はそう単純ではありません。

この合格率は医学部6年生まで進級できた学生のみを対象としています。

前述の通り、医学部では多くの学生が留年や中退により6年生に到達できません。

私立医学部の中には国家試験合格率を上げるため、成績不振の学生を意図的に留年させ、国家試験を受験させない大学も存在します。

つまり、医学部入学者全体で考えると、実際に医師になれる確率はさらに低くなります。

受験戦争で10倍以上の倍率を勝ち抜いた学生が本気で勉強しても1割は不合格になる試験の難易度は相当高いといえるでしょう。

国家試験に不合格になった場合、翌年の再受験まで1年間待つ必要があり、その間の経済的・精神的負担も考慮しなければなりません。

閉鎖的な人間関係と特殊な医学部文化

医学部は他学部と比較して非常に閉鎖的な環境です。

医学部の定員は他学部と比べて圧倒的に少なく、例えば日本大学では法学部の定員が約1,283名に対し医学部は120名程度となっています。

参照：マナビジョン

少人数での6年間という長期間の共同生活により、人間関係が固定化しやすく、一度トラブルが発生すると回避することが困難でしょう。

また、医学部には独特の文化や上下関係が存在します。部活動も医学部独自のものが多く、他学部との交流は限定的です。このような閉鎖的な環境が合わない学生にとって、医学部生活は大きなストレスとなる可能性があります。

実習では少人数のグループで長期間行動を共にするため、グループ内での人間関係が学習効果に直接影響することも珍しくありません。コミュニケーション能力や協調性が特に重要視される環境といえるでしょう。

高額な学費と経済的負担の重さ

医学部の学費は他学部と比較して非常に高額です。

国公立大学の医学部でも6年間で約350万円、私立大学医学部では2000万円から3000万円を超える場合もあります。さらに教材費、実習費、生活費を含めると、総額はさらに膨大になるでしょう。

多くの学生が奨学金を利用しますが、医学部卒業後は研修医として働くことになり、初期の給与は決して高くありません。

研修医の時給は一般的なアルバイトと同程度という場合もあり、高額な奨学金の返済が重い負担となります。

家庭の経済状況によっては、医学部進学により家族全体が経済的困窮に陥るリスクもあります。学費だけでなく、6年間という長期間の教育投資を慎重に検討する必要があるでしょう。

医師になってからの長時間労働とプレッシャー

医師の労働環境は一般的な職業と比較して過酷です。

特に手術を行う診療科では緊急手術による不規則な勤務が常態化しており、プライベートな時間の確保が困難な場合も多いです。

医師は人の命を預かる職業であり、医療ミスが許されないという極めて大きなプレッシャーの中で働かなければなりません。

患者やその家族からのクレーム、医療訴訟のリスクなど、精神的な負担も相当なものでしょう。

研修医時代は特に厳しく、コンビニエンスストア店員よりも時間あたりの賃金が低い場合もあります。

高い専門性を身に付けた後でも、責任の重さと労働条件のバランスに疑問を感じる医師は少なくありません。

AIの台頭による将来性への不安

近年のAI技術の進歩により、医療分野でも自動化が進んでいます。

画像診断や手術支援システムなど、従来医師が行っていた業務の一部がAIに代替される可能性が現実味を帯びてきました。

放射線診断医や病理診断医など、画像や検査結果の読影を主とする分野では、将来的にAIの精度が人間を上回る可能性も指摘されています。

また、医療費抑制政策の影響で医師の給与が減少傾向にあることも懸念材料のひとつです。

現在は高収入の代表格とされる医師という職業も、将来的には収入面での魅力が減少する可能性があるでしょう。

ただし、患者とのコミュニケーションや総合的な判断が必要な分野では、依然として医師の役割は重要です。

AIの進歩を脅威として捉えるのではなく、どのように活用していくかという視点も重要になってくるでしょう。

医学部やめとけに反対する意見とメリットも解説

医学部やめとけという意見がある一方で、医学部進学には多くのメリットも存在します。

• 医師としての安定した収入と社会的地位
• 人の命を救うやりがいと達成感
• 将来AIに代替されにくい職業
• 医学部仲間との一生の絆と人脈

医師としての安定した収入と社会的地位

医師は他の職業と比較して収入が安定しており、不況の影響を受けにくい職業です。

厚生労働省の統計では、医師の平均年収は約1400万円となっており、一般的なサラリーマンの年収を大きく上回っています。

開業医になれば年収3000万円以上を得ることも可能で、経済的な安定を求める人にとって魅力的な職業といえるでしょう。

また、医師は社会的地位が高く、多くの人から尊敬される職業です。

結婚相手として人気が高いのも事実で、社会的な信頼度も抜群でしょう。

景気に左右されにくく、定年まで働き続けられる安定性も医師という職業の大きな特徴です。

一度医師免許を取得すれば、全国どこでも働くことが可能で、転職に困ることはありません。

人の命を救うやりがいと達成感

医師という職業の最大の魅力は、人の命を救うやりがいにあります。

患者の病気を治し、苦痛を取り除き、健康な生活を取り戻すお手伝いをするという使命は、他の職業では得られない深い充実感をもたらします。

患者やその家族からの感謝の言葉は、どんな困難も乗り越える原動力となるでしょう。

特に救急医療や外科手術などでは、医師の技術と判断により患者の生死が左右されることもあります。このような場面で患者を救えたときの達成感は計り知れません。

医学の進歩に貢献し、新しい治療法の開発に携わることも可能です。研究者として医学の発展に寄与し、将来の患者のために貢献するという社会的意義も大きいでしょう。

将来AIに代替されにくい職業

AIの進歩が懸念される一方で、医師の多くの業務はAIに完全に代替されることは困難とされています。

患者とのコミュニケーション、複雑な症例の総合的判断、倫理的な問題への対応など、人間ならではの能力が求められる分野は今後も医師の重要な役割として残るでしょう。

AIは医師の診断や治療をサポートするツールとしての役割が期待されており、医師の能力を補完する存在として発展していく可能性が高いです。

また、高齢化社会の進行により医療需要は今後も増加傾向にあります。

在宅医療、予防医学、メンタルヘルスなど、新しい医療分野も拡大しており、医師の活躍の場は多様化しているといえるでしょう。

医学部仲間との一生の絆と人脈

医学部での6年間は、他学部では経験できない濃密な人間関係を築く機会となります。

困難な勉強や実習を共に乗り越えた仲間との絆は強固で、卒業後も続く一生の友人関係を築くことが可能です。

医師になった後も、学生時代の同期は貴重な相談相手やネットワークとなるでしょう。

医師同士のネットワークは転職や開業時に大きな助けとなります。

専門分野の異なる同期に患者を紹介し合ったり、最新の医療情報を共有したりと、プロフェッショナルとしての成長にも寄与します。

医学部での人間関係は、単なる友人関係を超えて、将来のキャリア形成にも直接的な影響を与える重要な財産となります。

医学部に向いている人の5つの特徴

医学部に向いている人には以下の共通した特徴があります。

1. 強い学習意欲と集中力を持っている人

医学部での学習は量的にも質的にも他学部を大きく上回ります。

膨大な暗記と理解を継続的に行える学習能力と、長時間の集中力を維持できる人が医学部に適しているでしょう。

2. 人とのコミュニケーションを大切にする人

医師は患者やその家族、医療スタッフなど多くの人と関わる職業です。

相手の気持ちを理解し、適切にコミュニケーションを取れる人は医師として成功する可能性が高いといえます。

3. 責任感が強く冷静な判断ができる人

医師の判断は患者の生命に直結します。

プレッシャーの中でも冷静さを保ち、責任を持って行動できる精神的な強さが不可欠でしょう。

4. 継続的な学習を苦にしない人

医学は日進月歩で発展しており、医師になった後も継続的な学習が必要です。

新しい知識や技術の習得を楽しめる人は医師として長く活躍できるはずです。

5. 人の役に立ちたいという強い動機を持つ人

医師という職業の本質は人を助けることにあります。

困難な状況でも初心を忘れずに患者のために尽力できる使命感のある人が医師に向いているでしょう。

医学部をやめた方がいい人の3つのサイン

一方で、以下のような特徴がある人は医学部進学を慎重に検討した方が良いかもしれません。

1. 周囲の期待や収入面だけで医学部を志望している人

「親に勧められたから」「将来安定しているから」といった外的動機だけで医学部を志望している場合、困難に直面したときに乗り越える原動力が不足する可能性があります。

真の医療への関心がなければ、6年間の厳しい学習を続けることは困難でしょう。

2. 暗記や継続的な学習が極端に苦手な人

医学部の学習は暗記の連続であり、卒業後も生涯にわたって学習が続きます。

基本的な学習習慣が身についていない人や、暗記を極端に嫌う人は医学部での成功が困難かもしれません。

3. 人とのコミュニケーションを避けたがる人

医師は患者や医療スタッフと密接にかかわる職業です。

人とのかかわりを避けたがる人や、コミュニケーションに極度の苦手意識がある人は、医師として働くことに困難を感じる可能性があります。

医学部受験を迷っている人がすべき3つの行動

医学部受験を迷っている人は、以下の行動を取ることで判断材料を集めましょう。

医療現場の見学や体験をしてみる

実際の医療現場を見学することで、医師の仕事の実態を理解できます。

病院でのボランティア活動や、医療現場での職業体験プログラムに参加してみましょう。

医師や看護師がどのような環境で働いているか、患者とどのようなかかわりを持っているかを直接観察することで、医療への関心の度合いを測ることができます。

医療現場の見学を通じて、自分が想像していた医師像と現実とのギャップを確認することも重要です。理想と現実の差を事前に把握しておくことで、後悔のない選択につながるでしょう。

現役医師や医学生に直接話を聞く

実際に医学部で学んでいる学生や、医師として働いている人から生の声を聞くことは非常に有益です。

医学部の勉強の実態、学生生活の様子、医師になってからの仕事内容や働き方など、具体的な情報を収集しましょう。

特に、医学部生活の困難な面についても率直に質問することが大切です。

複数の医師や医学生から話を聞くことで、多角的な視点で医学部進学の検討ができます。

診療科によって働き方が大きく異なることも理解できるはずです。

他の進路との比較検討を冷静に行う

医学部以外の進路についても十分に検討しましょう。

自分の興味や適性を客観的に分析し、医学部以外でも自分の目標を達成できる可能性がないか検討することが重要です。

例えば、人の役に立ちたいという動機があっても、必ずしも医師である必要はありません。

他の職業の将来性、やりがい、労働条件なども調査し、医学部進学と比較検討してみましょう。

冷静な判断を行うためには、感情的にならず客観的な情報に基づいて検討することが不可欠です。

よくある質問｜医学部やめとけについて

医学部に関してよく寄せられる質問にお答えします。

医学部を途中でやめることはできる？

医学部を途中で退学することは制度上可能です。

ただし、高額な学費を既に支払っている場合、経済的な損失は避けられません。また、他大学への編入や就職活動において、医学部中退という経歴をどう説明するかという課題もあります。

医学部を辞める場合は、将来の明確な目標を持ち、家族ともよく相談した上で決断することが重要でしょう。感情的な判断ではなく、冷静に将来を見据えた選択をすることが必要です。

医学部以外で医療にかかわる方法はある？

医師以外にも医療にかかわる職業は多数存在します。

看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、臨床検査技師、診療放射線技師など、医療従事者として患者に直接かかわる職業があります。また、医療機器メーカーや製薬会社で働くことで、間接的に医療に貢献することも可能です。

医療への関心があっても、必ずしも医学部進学が唯一の選択肢ではないことを理解しておきましょう。自分の適性と興味を考慮して、最適な進路を選択することが大切です。

親に反対されても医学部をやめるべき？

家族の意見は重要ですが、最終的な判断は本人が行うべきです。

医学部進学には高額な費用がかかるため、家族の経済状況を考慮することは必要です。しかし、親の期待だけで医学部に進学し、後に後悔するケースも少なくありません。

家族とよく話し合い、自分の本当の気持ちと将来の目標を明確にした上で決断することが重要でしょう。周囲の期待に応えることも大切ですが、自分の人生は自分で決める覚悟も必要です。

まとめ

医学部やめとけという意見には確実な根拠があります。

膨大な学習量、高い留年率、経済的負担、閉鎖的な環境など、医学部進学には多くの困難が伴うのが現実です。

しかし一方で、医師という職業には他では得られない大きなやりがいと社会的意義があります。

人の命を救う使命感、安定した収入、社会的地位など、医学部進学のメリットも十分に存在するでしょう。

重要なのは、これらの情報を冷静に分析し、自分自身の価値観や目標と照らし合わせて判断することです。周囲の意見に惑わされることなく、自分にとって最適な選択を行ってください。

医学部受験を検討している人は、医療現場での体験や現役医師との対話を通じて、より具体的な情報を収集することをおすすめします。

十分な情報収集と冷静な判断により、後悔のない進路選択を実現してください。

医学部進学は人生を大きく左右する重要な決断です。

「やめとけ」という声も「おすすめする」という声も、どちらも参考程度に留め、最終的には自分自身の意志で決断しましょう。