海外医学部への進学を検討している方の中には、「海外医学部はやめとけ」という意見を目にして不安を感じている人も多いでしょう。

確かに海外医学部には多くのリスクが存在しますが、適切な準備と覚悟があれば成功への道筋は十分に存在します。

本記事では、海外医学部がやめとけと言われる具体的な理由を7つ挙げ、その上で成功するために必要な条件と対策法を詳しく解説します。

海外医学部進学を真剣に検討している方にとって、判断材料となる情報を提供します。

海外医学部はやめとけと言われる7つの理由

海外医学部がやめとけと言われる背景には、具体的で深刻なリスクが存在しています。

以下では、主要な7つのリスクについて詳しく解説します。

• 日本の医師国家試験受験資格が得られない可能性
• 進級率の低さ（3割進級・3割留年・3割退学）
• 語学力不足による学習困難
• 卒業後の進路が不透明
• 高い留年・退学リスクと追加費用
• 文化的適応の困難さ
• エージェントや情報の不透明性

日本の医師国家試験受験資格が得られない可能性

海外医学部進学における最大のリスクは、卒業後に日本で医師として働けない可能性があることです。

日本で医師として働くためには、厚生労働省による医師国家試験受験資格の認定審査を通過しなければなりません。この審査では、修学年数・成績・大学の教育水準などが厳しくチェックされます。

審査の結果、以下の3つのパターンにわかれます。

• 本試験受験資格：そのまま日本の医師国家試験を受験可能
• 予備試験受験資格：予備試験に合格すれば本試験を受験可能
• 受験資格なし：日本での医師免許取得が困難

特に注意すべきは、海外医学部が日本の教育基準に合致していない場合、受験資格すら得られないリスクがあることです。厚生労働省は、どの大学なら確実に受験資格が得られるかを明確に公表しておらず、進学前にリスクを完全に排除することは困難でしょう。

進級率の低さ

海外医学部の進級率の低さは、多くの学生が挫折する主要因となっています。

特にハンガリーの医学部では、「3割進級・3割留年・3割退学」という厳しい現実があります。

実際の進級率データを見ると以下のとおりです。

• 1年次から2年次：進級率約60%
• 2年次から3年次：進級率約65%
• 3年次から4年次：進級率約70%

つまり、入学した学生の約40%が3年次までに留年または退学を余儀なくされているのが現状です。

進級困難の主な要因は以下の通りです。

• 口頭試問形式の試験制度への適応困難
• 医学専門用語の理解不足
• 膨大な暗記量への対応不足
• 語学力不足による授業理解困難

語学力不足による学習困難

医学部の授業は、高度な専門用語が頻繁に使用されるため、一般的な英語力では対応が困難です。

医学英語の特徴として、以下の点が挙げられます。

• 専門用語の多さ：一般英語にない医学専門用語が大量に存在
• ラテン語由来の単語：発音や意味の理解が困難
• 解剖学用語：人体の構造に関する詳細な用語
• 疾患名：病気の名称と症状の関連付け

実際の授業では、教授との口頭でのやり取りや、クラスメートとのディスカッションが求められます。語学力不足の学生は、授業内容の理解が遅れ、試験で十分な成果を上げられない傾向にあります。

卒業後の進路が不透明

海外医学部卒業後の進路は、日本の医学部卒業生と比べて不透明な部分が多く存在します。

主な課題は以下のとおりです。

• 研修先の確保：海外医学部出身者の研修先は限定的
• 専門医取得：専門医資格取得までの道筋が複雑
• キャリア形成：日本の医療界での人脈形成が困難
• 就職活動：病院側の海外医学部に対する理解不足

また、海外で医師として働く場合も、各国の医師免許制度や就労ビザの取得など、複雑な手続きが必要となります。

高い留年・退学リスクと追加費用

留年や退学のリスクは、経済的な負担を大幅に増加させる要因となります。

• 授業料：年間180万円（ハンガリーの場合）
• 生活費：年間100-150万円
• 合計：年間約300万円の追加負担

退学した場合、これまでに支払った費用は基本的に回収できません。6年制の医学部で3年次に退学した場合、約1,000万円の損失となる計算です。

さらに、退学後の進路変更も困難で、日本の医学部再受験や他分野への転身を余儀なくされるケースが多く見られます。

文化的適応の困難さ

海外生活における文化的適応の困難さは、学習面以外でも大きなストレス要因となります。

主な適応課題は以下のとおりです。

• 生活習慣の違い：食事・住環境・社会制度
• コミュニケーション様式：直接的な表現文化への適応
• 孤立感：友人関係の構築困難
• ホームシック：家族や友人との物理的距離

特に医学部は学習量が膨大で、ストレス管理が重要です。文化的適応に失敗すると、学習面にも悪影響を及ぼし、進級困難に繋がる可能性があります。

エージェントや情報の不透明性

海外医学部に関する情報の不透明性は、適切な判断を困難にする要因となっています。

情報の不透明性の例は以下のとおりです。

• 卒業率の非公表：実際の卒業率データが入手困難
• 就職実績の曖昧性：卒業生の具体的な進路情報不足
• エージェントの利益相反：留学斡旋業者の偏った情報提供
• 現地情報の入手困難：実際の大学生活に関するリアルな情報不足

エージェントを使わずに入学手続きを行う能力がない学生は、進級自体が困難という指摘もあります。情報収集力と行動力が、海外医学部成功の重要な要素となっているのが現状でしょう。

海外医学部の学費比較｜本当に安いのか徹底検証

海外医学部は「学費が安い」というイメージがありますが、実際の費用を詳しく検証してみましょう。

ハンガリー：年間180万円（6年間総額約1,880万円）

ハンガリーの国立大学医学部は、日本人に最も人気の高い海外医学部のひとつです。

詳細な費用

• 授業料：年間約180万円
• 生活費：年間約130万円
• その他費用：年間約20万円
• 6年間総額：約1,980万円

センメルワイス大学・ペーチ大学・セゲド大学・デブレツェン大学の4つの国立大学が日本人留学生を積極的に受け入れています。現地には約550名の日本人医学生が在学しており、大きなコミュニティを形成しているのが特徴です。

チェコ：年間150万円

チェコの医学部は、ハンガリーよりもやや学費が安く設定されています。

主要大学の学費

• カレル大学医学部：年間約150万円
• マサリク大学医学部：年間約150万円
• パラツキー大学医学部：年間約140万円

生活費を含めた6年間の総額は約1,700万円となります。チェコはEU加盟国でありながら物価が比較的安く、学生生活を送りやすい環境が整っています。

ブルガリア：年間80万円

ブルガリアの医学部は、ヨーロッパの中でも特に学費が安い国として注目されています。

費用の詳細：

• 授業料：年間約80万円
• 生活費：年間約70-90万円
• 6年間総額：約1,000万円

ブルガリアは物価が非常に安く、学生寮なら月1.6-3.2万円、民間アパートでも月4-6.4万円程で住居を確保できます。食費や交通費を含めても月6.4-9.6万円程で生活が可能でしょう。

中国：約年間500万円

中国の医学部は、授業が中国語で行われるため、中国語習得が必要となります。

特徴：

• 授業料：年間約500万円
• 5年制プログラム：日本の医師国家試験で予備試験認定の可能性
• 中国語での医師免許取得：本試験認定への道筋

中国の場合、中国語での医師免許試験に合格すれば、日本の医師国家試験で本試験認定を受けられる可能性があります。中国語学習への意欲がある学生には魅力的な選択肢といえるでしょう。

日本の医学部学費との比較

海外医学部の学費を正確に評価するため、日本の医学部との比較を行います。

国立大学：6年間約400万円

日本の国立大学医学部は、世界的に見ても非常に学費が安い水準にあります。

国立大学の学費内訳

• 入学金：28.2万円
• 年間授業料：53.58万円
• 6年間総額：約350万円

生活費を含めても6年間で約1,000-1,200万円程となり、海外医学部と比較して経済的負担は軽くなります。ただし、入学の難易度は極めて高く、偏差値70以上が必要な大学がほとんどです。

私立大学：平均約3200万円

日本の私立医学部は、高額な学費で知られています。

主要私立医学部の学費

• 慶應義塾大学：約2,200万円
• 順天堂大学：約2,080万円
• 日本医科大学：約2,200万円
• 帝京大学：約3,750万円

最も高額な大学では6年間で4,000万円を超える場合もあり、さらに寄付金を求められるケースも存在します。

海外医学部で成功する人の条件と対策法

海外医学部で成功するためには、以下の3つの条件を満たすことが不可欠です。

十分な語学力（医学英語対応レベル）

海外医学部成功の第一条件は、医学英語に対応できる高い語学力です。

必要な語学力の目安

• IELTS：7.0以上（各セクション6.5以上）
• TOEFL iBT：100点以上
• 医学専門用語：基礎的な解剖学・生理学用語の理解

単なる日常英会話レベルでは、医学部の授業に対応することは困難でしょう。特に重要なことは、以下の能力です。

• リスニング力：講義内容の正確な理解
• スピーキング力：口頭試問での的確な回答
• ライティング力：レポート作成やノート取り
• リーディング力：医学文献の読解

明確な医師になる意志と目的意識

海外医学部での厳しい環境を乗り越えるためには、医師になる強い意志が必要です。

重要な心構え：

• なぜ医師になりたいのかの明確な理由
• 困難な状況での挫折しない精神力
• 継続的な学習への意欲
• 文化の違いを受け入れる柔軟性

「日本の医学部に入れないから」という消極的な理由では、海外医学部の厳しい環境で成功することは困難でしょう。医師として社会に貢献したいという積極的な動機が、困難な状況を乗り越える原動力となります。

経済的余裕と精神的タフネス

海外医学部進学には、相当な経済的余裕と精神的タフネスが求められます。

経済的準備：

• 留年リスクを考慮した追加資金の準備
• 為替変動リスクへの対応
• 緊急時の帰国費用確保

精神的準備：

• 孤立感に対する耐性
• 文化の違いへの適応力
• ストレス管理能力
• 困難な状況での問題解決能力

海外での生活は、想像以上のストレスを伴います。精神的にタフでない学生は、学習面での困難と相まって、挫折してしまう可能性が高くなるでしょう。

効果的な準備方法

海外医学部成功のためには、入学前の十分な準備が欠かせません。

入学前の語学研修・予備コース活用

多くの海外医学部では、入学前の語学研修や予備コースが用意されています。

ハンガリーの予備コース例：

• 1年間コース：医学英語と基礎科学の集中学習
• 6か月コース：英語力向上と医学基礎知識習得

予備コースでは、以下の内容を学習します：

• 医学英語の基礎
• 解剖学・生理学の基本概念
• 大学での学習方法
• 現地文化への適応

予備コース受講により、本コース入学後の成功率が大幅に向上することが確認されています。

医学用語の事前学習

医学専門用語の事前学習は、入学後の学習効率を大幅に向上させます。

推奨する学習内容：

• 基礎解剖学用語：骨格・筋肉・臓器の名称
• 生理学用語：身体機能に関する専門用語
• 病理学用語：疾患に関する基本用語
• 薬理学用語：薬物に関する基本知識

日本語で医学の基礎知識を習得してから英語での学習に移行することで、理解度が大幅に向上するでしょう。

現地情報収集と先輩医師への相談

海外医学部に関するリアルな情報収集は、成功のために不可欠です。

情報収集の方法：

• 卒業生医師への直接相談
• 現地在学生との交流
• 大学公式説明会への参加
• 複数の情報源からの情報収集

特に重要なことは、エージェントだけでなく、実際の卒業生や在学生からの生の声を聞くことです。成功者の体験談だけでなく、困難を経験した人の話も聞くことで、より現実的な判断ができるでしょう。

海外医学部の大学選びのポイント

海外医学部選択時には、以下の基準を重視して判断することが重要です。

最も重要な判断基準は、過去の卒業生が日本の医師国家試験受験資格を取得できているかどうかです。

確認すべきポイント

• 過去5年間の認定実績
• 本試験認定と予備試験認定の比率
• 認定審査での問題発生の有無

国内に事務局を設けて学生募集を行っている大学は、基本的に認定実績があると考えられますが、個別の確認は欠かせません。

卒業生の日本での医師合格状況

卒業生が実際に日本で医師として働いているかの確認も重要です。

調査すべき内容

• 年間の日本人卒業生数
• 医師国家試験合格率
• 日本での研修先確保状況
• 専門医取得実績

2019年の第113回医師国家試験では、95名の海外医学部卒業生が合格しており、一定の実績があることが確認できます。

日本語サポート体制の有無

特に重要なのは、現地での日本語サポート体制の充実度です。

サポート体制の例

• 日本人カウンセラーの常駐
• 日本語での学習サポート
• 生活面での相談窓口
• 緊急時対応体制

サポート体制が充実している大学ほど、日本人学生の成功率が高い傾向にあります。

海外医学部はやめとけと言う人の特徴

海外医学部について「やめとけ」と言う人には、いくつかの共通する特徴があります。

挑戦を恐れる心理的要因

人間は本能的に新しい挑戦や変化を恐れ、現状維持を好む傾向があります。

心理学では、この安全な場所を「コンフォートゾーン」と呼びます。

コンフォートゾーンとは、その人が慣れ親しんでいてストレスや不安を感じずに過ごせる心理的な安全領域のことです。

多くの人が新たな挑戦を避けたいと感じることは自然なことでしょう。

海外医学部への進学は、まさに未知の領域への挑戦であり、不安や恐れを感じることは当然の反応といえます。

情報不足による偏見

海外医学部に関する正確な情報を持たずに、偏見に基づいて「やめとけ」と言う人も存在します。

よくある偏見

• 「海外の医学部は質が低い」
• 「日本で医師になれない」
• 「就職できない」
• 「お金の無駄」

しかし、実際には多くの海外医学部卒業生が日本で医師として活躍しており、偏見だけで判断することは適切ではありません。

失敗体験からの過度な一般化

海外医学部で挫折した経験や、周囲の失敗例を見て、すべての海外医学部進学を否定する人もいます。

確かに海外医学部にはリスクが存在しますが、適切な準備と覚悟があれば成功する道筋は十分にあります。

失敗例だけを見て全体を判断するのではなく、成功例と失敗例の両方を検討することが重要でしょう。

海外医学部進学を成功させる具体的ステップ

海外医学部進学を成功させるためには、計画的な準備が不可欠です。

高校生時の準備スケジュールについて解説します。

高校2年生：情報収集と語学力向上

高校2年生の段階で行うべき準備

4月-6月：基本情報収集

• 海外医学部の基本情報収集
• 各国の医学部制度理解
• 費用と期間の把握

7月-9月：語学力測定と目標設定

• 英語力の現状把握（IELTS/TOEFL受験）
• 目標スコア設定
• 学習計画策定

10月-12月：集中的な語学学習

• 医学英語の基礎学習開始
• 英語4技能の総合向上
• 医学用語の暗記開始

1月-3月：進路の絞り込み

• 志望国・大学の絞り込み
• 説明会参加
• 先輩医師への相談

高校3年生：出願準備と入試対策

高校3年生での具体的なスケジュール

4月-6月：出願書類準備

• 必要書類の確認と準備
• エッセイ作成
• 推薦状依頼

7月-9月：入試対策

• 化学・生物の集中学習
• 面接対策
• 模擬試験受験

10月-12月：出願手続き

• 出願書類提出
• 入学試験受験
• 合格発表待ち

1月-3月：入学準備

• 合格後の手続き
• ビザ取得
• 渡航準備

入学前：集中的な語学研修と医学基礎学習

入学前の最終準備段階：

語学研修（3-6か月）

• 現地での集中語学研修
• 医学英語特化コース受講
• 現地文化への適応

医学基礎学習

• 解剖学・生理学の基礎習得
• 医学用語の完全マスター
• 学習方法の確立

入学後の成功戦略

1-2年次：基礎医学での確実な単位取得

医学部最初の2年間は、基礎医学科目の習得に集中します。

重要科目と対策

• 解剖学：膨大な暗記量への対応
• 生理学：機能の理解と暗記の両立
• 生化学：化学反応の理解
• 病理学：疾患メカニズムの習得

基礎医学は医学の土台となるため、確実な理解が必要です。特に解剖学は暗記量が膨大で、多くの学生が苦労する科目でしょう。

成功のための学習戦略

• 毎日のコンスタントな学習
• 暗記と理解のバランス
• グループスタディの活用
• 口頭試問対策の徹底

3-4年次：臨床医学への適応

3年次以降は臨床医学が中心となり、実際の医療現場に近い内容を学習します。

主要科目

• 内科学
• 外科学
• 小児科学
• 産婦人科学
• 精神科学

臨床医学では、基礎医学で学んだ知識を実際の症例に応用する能力が求められます。症例を通じた学習方法に慣れることが重要でしょう。

5-6年次：日本の医師国家試験対策開始

最終学年では、大学の卒業試験と並行して、日本の医師国家試験対策を開始します。

対策の重要ポイント

• 日本独自の医療制度理解
• 公衆衛生分野の集中学習
• 過去問演習の徹底
• 模擬試験による実力確認

日本の医師国家試験は、海外医学部で学んだ内容と重複する部分も多いですが、日本特有の医療制度や公衆衛生分野については別途学習が必要でしょう。

まとめ

海外医学部について「やめとけ」と言われる理由は確かに存在します。

日本の医師国家試験受験資格が得られない可能性、厳しい進級率、語学力不足による困難など、無視できないリスクがあることは事実です。

しかし、これらのリスクは適切な準備と覚悟があれば克服可能なものでもあります。

十分な語学力、明確な目的意識、経済的余裕という3つの条件を満たし、計画的に準備を進めることで、海外医学部での成功は十分に現実的でしょう。

重要なことは、「やめとけ」という意見に惑わされることなく、自分自身の状況と能力を冷静に分析し、リスクとリターンを慎重に検討することです。海外医学部は確かに困難な道ですが、医師になる夢を諦める必要はありません。

適切な情報収集と十分な準備を行い、強い意志を持って取り組めば、海外医学部は医師への有効な道筋となり得ます。